2010年10月22日

追悼 アリ・アップ

Ari.jpg


2007年3月17日の記事から抜粋

もしかしたら10年後に僕が観るスリッツのステージで歌っているのはホリーなのかもね(いや、僕がまだライヴ行けるほど元気なら、僕よりほんの少しだけ年上のアリが引退してる訳もないか)。

まだあれからたったの3年半しか経ってないよ…


10月20日、48歳で永眠。重病だったということしか、義理の父親であるジョン・ライドンのホームページには書いてない。「もう二度と観られないかも」が本当になってしまった。

こないだ届いてまだ封も開けてないCDが沢山あるけど、明日はスリッツ聴こう。
posted by . at 00:36| Comment(3) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月13日

Kasim Sulton live in Tokyo

Kasim Sulton Solo.jpg

<前回までのあらすじ>
3連休の最終日、予想外に満喫したトッド・ラングレンのライヴ会場で知った、翌日のカシム・サルトン、ソロ公演。今回僕がある意味トッドより観てみたかった彼の、おそらく日本で最初のアクースティック・ライヴ。この機会を逃すと、もしかしたらもう一生観られないかもしれない。果たして僕は連休明けのオフィスを6時に抜け出すことはできるのか。手に汗握る展開!


というわけで、ここは銀座。誰も手に汗なんて握ってなかったと思うけど。朝一で「今日は6時に消えるので用のある人はそれまでに」とのメールで関係者を牽制。5時を過ぎたあたりで誰とも口をきくのを止めて防災体制。6時きっかりに予言通りオフィスから消え、電車を乗り継いでここに来た。銀座5丁目の交差点をちょっと裏通りに入ったところにある老舗のライヴハウス、タクト。僕は名前を聞くのも入場するのも初めてなんだけど、なんと1958年創業とのこと。すごいね。

会場に着いたあたりでちょうど地下のお店に人がぞろぞろ入っていくところが見えた。ちょうど開場したばかりか。階段を下り、入口で当日券を買う。手書きの番号は25番。なるほど、テーブル席の前の方は半分方埋まっているよ。皆ちゃんと予約して来たのかな。熱心だね。しかも、意外なことに(?)女性客が多いのにはびっくり。

7時の開演時間までには、ほぼ全部の席がゆったり気味に埋まるぐらい(おそらく50人ぐらい?)の入りとなった。ろくに宣伝もしていなかった(僕が知らなかっただけかもしれないけど)こんなマイナー(失礼)なアーティストの弾き語りライヴにこれだけ人が入るんだもんね。たいしたもんだ。

昨日同様に開演時間を10分弱押した頃、ギターヘッドのところにカポとチューナーをくっつけたギブソンのアコギを片手に、カシム登場。さすがにこの至近距離で見るとピーコには全然似ていない。とはいえ、ユートピア時代の彼しか知らない僕から見ると、やっぱり年相応だなあという感じ。最後に彼を見た92年の五反田ゆうぽうとは、とても顔のしわまで見える距離じゃなかったからね。それでも、若い頃は美形だったというのは、今見てもよくわかる。確かにこれは女性ファンが多いのもうなづけるね。

「こんばんは」「ありがとう」という日本語も交えた丁寧な挨拶のあと、ギターをゆっくりつま弾きながら歌い始めたスローバラッドは、なんと「I Just Want To Touch You」。ユートピアが80年に発表したビートルズのパロディ(というにはあまりにもオリジナルすぎる)アルバム『Deface The Music』のオープニング曲。ビートルズよりもビートルズらしいこの曲、てっきりトッドが書いたのかと思ってたけど、言われてみればコード進行とかやっぱりカシム節全開だね。ちょっともう、いきなり声も出ないぐらい感激。

僕はカシムのソロアルバムは、ちょっと前にひょんなことでLPを手に入れた82年のファースト『Kasim』しか持っていないので、ソロ曲はほとんどわからない。でも、どれもこれも、カシム・サルトンが書いたとすぐにわかる、奇妙かつ気持ちのいいコード進行の曲ばかり。

Kasim.jpg
カシム・サルトン 『Kasim』 (当然廃盤)

そんなにわかファンの気持ちを察したのか、「次の曲は、みんなにコーラスを手伝ってほしいんだ」と、「Libertine」の一節を歌う。ところが、僕も含めてみんな声が小さい(笑)。だって、あんな高い声出ないよ。それにしても、この人全然声が変わらないね。相変わらずちょっと甘めのいい声。これ82年の『Utopia』の1曲目だよ。もう30年近く前になるのか。あれLPしか持ってないから最近はなかなか聴くことないけど、地味ながらいい曲の多いアルバムなんだよね。忘れないようにレコードラックからここに持ってきたから、この週末にでもゆっくり聴こう。

またソロ曲を挟み、数年前にトッドと一緒に参加したバンドの話を。もちろん、トッドのファンにもカーズのファンにも賛否両論だった、ニュー・カーズ(The New Cars)だ。「こんなにいい曲を歌わせてもらえて感謝している」と言いながら歌い始めたのはもちろん、ニュー・カーズで故ベンジャミン・オーに代わって歌ったカーズの大ヒット曲、「Drive」。

キーボードに移り、「ユートピアのファンはいる?」と質問。逆に、ユートピアのファンじゃなかった人はここにいるのか?とも思ったよ。曲は、もう一枚80年に出た(こっちの方が先だったけど)アルバム『Adventures In Utopia』から、「Love Alone」。そういえば、この時期、ユートピアとトッドのソロとで(あと、カシムのソロも)物凄い数のアルバムを出してたよね。しかも、問題作はあれど失敗作なんて一つもなかった。一体、80年から82年までに何枚関連アルバム出てたんだっけ。

続けて、ユートピアに20歳で参加して(76年だっけ?)最初に書いた曲、「ベアズヴィル・レコードのアルバート・グロスマンに却下されたんだよ」と説明しながら歌い始めたのは、同じアルバムからの「Set Me Free」。なんでこんないい曲を却下できるんだ? 4年間もお蔵入りしてたのか。

ビートルズのコピーバンドでポール・マカートニー役を頼まれたけど、真似をするのは嫌だからと断ったエピソードに続けて、「でもこの曲は大好きなんだ」と、「The Long And Winding Road」、そして更に「Lady Madonna」。あまりにもベタだけど、これも、日本のファンが知ってる曲を演奏してあげようという気持ちからかな。と、そんな風になんでもポジティブに取ってしまうほど、あらゆる局面でこれ以上ないほど感謝の気持ちを述べまくっていた彼。日本なんかで今でもこんなにファンが集まってくれるというのがよほど嬉しかったんだろうね。なんか、いい人オーラ出まくりだったよ。

ギターに戻り、トッドとの出会いを語る。20歳の自分をユートピアに入れてくれてとても感謝しているということ(実際にはトッドは嫌がったけど、ロジャーとウィリーが薦めてくれたんだとか。あれは冗談なのかな)。それ以来、自分のライヴでは必ず1曲は感謝の気持ちを込めてトッドの曲を歌っているということ。この日歌ったのは、「Cliche」。まだベーシストがジョン・シーグラーだった頃のユートピアが実質バックを務めたトッドの76年のソロアルバム『Faithful』から。

前日のトッドの会場でも情報の載ったカードが配られていたけど、カシムはニューアルバムを製作中で、先着1000名の写真がモザイク状に使われてカシムの顔になるというジャケットになるらしい。参加料金とCDの送料を足すと70ドルになるけど、高くて悪いね、いや、今円高だから高くないよね、とかいろいろ言いながら宣伝してたのがかわいいね。「抽選で誰かの家まで出張して生演奏もするし」と。でも、カードの日本語訳を見ると、「日本の方が当選された場合は(交通費と宿泊費は)別途ご相談」とか書いてあるぞ。下手に抽選に当たると、70ドルどころじゃない出費かも(笑)

またしてもビートルズのカバーを2曲続けて。「I'm Looking Through You」と「Across The Universe」。さっきほどベタな選曲ではないけど、こんなにビートルズ演るんなら、どうせなら『Deface The Music』からの曲をもっと演ってほしかったな。あのアルバム、作曲クレジットは全部ユートピアになってるけど、他はどれがカシムの曲なんだろうな。「That's Not Right」とか「Life Goes On」とか?

ラストは、82年の『Swing To The Right』から「One World」。え?これもカシムの曲なの?てっきりトッドの代表曲だと思ってたのに。いくつか聴いたトッドのライヴ録音ではそれぞれご当地の地名に置き換えて歌っている“From Berlin to San Francisco, From New York to Tokyo”の歌詞は当然そのままで。

アンコールに応えて1曲。この前後でもまた何度も何度も感謝の言葉を述べるカシム。「もしまた日本に来れたらライヴに来てくれる?」って、本当に今日は嬉しかったんだね。最後に主催者が挨拶して、もう一回楽屋からカシムを引っ張り出して挨拶させる。「パーティーで会おう」と言い残して去るカシム。あ、そうか、今日はこのままこの場所でパーティーがあるんだね。いいな。きっと予約してまで来た女の人たち(カシムに“Kasim Girls”って呼ばれてたね)とか参加するんだろうね。

僕は、会場で500円で売っていた、カシムのソロアルバム3枚のうち1枚をダウンロードできるコードのついたクーポンを購入して、おとなしく帰ることにした。帰って、トッドのライヴ記事を仕上げて、さて3枚のうちどれにしようと思ってサイトを覗くが、当然のごとく決められない。しまった、あと1000円ぐらいけちらないでクーポン3枚買っとけばよかった。というか、CD-Rに焼いてジャケットつけて売ってくれていれば、たとえ1枚1500円でも僕はその場で3枚とも買ったのにな。いくら嫌いでも、もうそろそろこういうダウンロード・オンリーみたいなのに慣れないといけないのかな、と未使用のコードの載ったクーポンを眺めながら思う今日この頃(というか、今日)。
posted by . at 23:17| Comment(4) | TrackBack(1) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月12日

Todd Rundgren live in Tokyo

Todd Rundgren's Johnson.jpg

正直言うと、自分でお金を出してチケットを買ったコンサートでは、ここ数年で一番乗り気じゃなかった。トッド・ラングレンのことは、もう20年以上も前からずっと大好きだったから、今まで僕が日本にいる限りは全ての来日公演に足を運んでいたぐらいだったけど、今回のは、ロバート・ジョンソンの曲だけを演奏するという企画と聞いたから。なんなんだ、それは。この人ってそんなにどっぷりブルーズに浸かっていたっけ。どちらかというと出自はもっとソウル〜R&B系の人だったはずだよね。エリック・クラプトンと間違えて観に来る人がいるとでも思ったのか。

そんな心境だったので、そこそこの整理番号のチケットを持っていたにも関わらず、会場に着いたのは開場時刻をちょっとまわった後。僕が入り口に着いたときにはもう僕のチケットよりもうんと大きな番号を呼んでいた。入場しても、前の方に陣取るわけでなく、さりとて椅子席ももう空いていない。なんだか中途半端な場所で開演までの1時間をぼーっと過ごす。腹減ったな。朝起きてパスタ食ったきりだよ。いつも仲良くしてくれる友達が何人か来ていたので、終わったら一緒に何食べようかな、とかそんなことばかり考えながら。

開演時間を10分ほど過ぎて、メンバーが姿を現す。トッドは一時写真で見かけていたほどは太っていないけど、黒のタンクトップが似合うとはお世辞にもいえない中年体型。ナチュラルのテレキャスターを持っている。珍しいな。どうせなら上に載せたチラシの写真もテレキャスを弾いてるとこにすればよかったのにね。

ステージ左にはレスポールを抱えたジェシ・グレス(Jesse Gress)。あまりよく知らない人だけど、ずっとトッドと一緒に演ってるんだね。ステージ奥にはドラムスのプレイリー・プリンス(Prairie Prince)。終わってから友達に聞いたんだけど、この人チューブスのドラマーなんだって。全員、黒の上下にサングラス。プレイリー君は白縁サングラスだったけど。

そして、ステージ右側には、今日の僕のお目当て気分の半分ぐらいを占めていた、カシム・サルトン(Kasim Sulton)。トッドと並ぶと、背低いな。カシムを観るのは、僕が最後にトッドを観たユートピア(Utopia)のライヴ以来のはずだから、92年のことかな。あの、ライヴCD/DVDになった公演。それにしても、茶色いサングラスをかけたカシム、遠目にはピーコに似てるぞ。

ロバート・ジョンソンのCDは、2枚持っている。あの一番有名なジャケのやつじゃないけど、まあ、入っている曲はほぼそっちと同じだし、そもそもどの曲を聴いても区別つかないからね。普段めったに聴くCDじゃないけど、今回のチケットを押さえたときに予習しようと思って聴いて、今朝また予習のためにもう一回ずつ聴いてみたけど、やっぱり全然曲覚えられない。インストゥルメンタルでもないのに。全然最後まで集中して聴けない。駄目だ、やっぱり僕、ブルーズって性に合わないのかも。

King Of The Delta Blues Singers.jpg King Of The Delta Blues Singers Vol.2.jpg


そんなわけで、トッドがそういう僕にはよくわからないブルーズ曲を1-2時間演奏するのをぼんやり聴いて帰ろう、もしかしたらアンコールで自分の曲を演るかもしれないし、ぐらいの気分でのんびり構えていたら、演奏が始まった。おそらくロバート・ジョンソンの曲だというのはわかるけど、曲名わからない。

何曲も演らないうちに、自分のそんな姿勢が思いっきり間違っていたことに気付く。これ、めちゃくちゃ格好いいよ。4人それぞれ演奏は完璧と言っていいほど上手だし、トッドは年齢を全く感じさせないほど声が出ているし(あんなに叫びまくるとは)、それに、クアトロってもう十何年ぶりかに来たけど、やっぱりここ音いいね。下手にステージ直前とかに行かなかったのが逆によかったのかな。

何曲進んでも相変わらず曲名は殆どわからないけど、トッドが新曲ばかりを披露しているライヴだと思えば全然違和感ない。元々この人、こういうブルーズがかったハードロック(ヘヴィメタに非ず)も沢山演ってるし。聴いてて連想するのは、オールマン・ブラザーズ・バンドとか、ジョニー・ウィンターとか、ロリー・ギャラガーとか。普段このブログにはあまり書かないけど、そういえば僕はその人たちのCD、何十枚も持ってるじゃないか。こういう音、大好きだったよね。

典型的なブルーズ・マナーに則った曲ばかりだから、全部の曲にギターソロが入る。これがまた、いい。この人、あまりギターテクニックについて語られることはないけど、ギター上手いんだよね。それこそ、上に書いた人たちに匹敵すると言っても過言ではないほどに(異論のある人は多いと思うけど)。

どんなブルーズを演っても、カシムがコーラスにまわると、なんだかどれもユートピアの曲みたいに聴こえるんだよね。なんかおかしい。この人の声、そんなにすごく特徴あるってわけでもないのに、こうして聴いてみると、むしろトッドの声よりもユートピアを象徴しているような気がする。

「ブルーズィーというよりは、ちょっとファンキーなのを演ろう」。そう言って始めたのは、なんだか聴き覚えのあるメロディー。“Don't be sad, now”え?これ「Bleeding」? すごいや。僕が一番最初に聴いたトッドのアルバム『Runt: The Ballad Of Todd Rundgren』収録の、同アルバム内ではそれほどバラッドではない曲だけれど、それをこんなアレンジで聴けるとは。

ギターをお馴染みの赤のギブソンSGに持ち替えて、今度は「Black Maria」。トッドの曲の中では一二を争うブルーズ曲とはいえ、まさかこんなに自分の持ち歌バンバン演るとはね。その後も、「Broke Down And Busted」とか「I Went To The Mirror」とか「Born To Synthesize」とか、とにかく初期の曲、それも普段のライヴでは滅多に演奏しないような曲ばかり(「Born To Synthesize」なんて、タイトルを歌うまで何の曲かさっぱりわからなかったよ)。比較的新しめの曲は、89年の『Nearly Human』からの「Unloved Children」ぐらいか。もっと最近のももしかしたら演ったかもしれないけど、あんまり覚えていないもので。

そんな中でいきなり飛び出してきたあの印象的なリフ。「Open My Eyes」! なんと! トッドのプロデビューを飾る、ナッズ(The Nazz)のファーストアルバム冒頭のあの曲。僕に言わせれば、世界で一番かっこいいギターリフを持つナンバー。年甲斐もなくちょっとぴょんぴょん跳ねながら観てしまったよ。足つりそう。涙出そうになった、ほんとに。いや、足つったからじゃなくて。

「今のは全然ブルーズじゃなかったね」とは、その「Open My Eyes」を終えたときのトッド。「じゃあ次は思いっきりブルーズィーなのを演ろう」と言って始めたのは何だったかな。またロバート・ジョンソンの曲だっけ。とにかくそんな風に、「今度はちょっとジャズ風のブルーズ」とか、一応バラエティをもたせて延々と演奏が続く。本編最後の曲が何だったかもう覚えてないや。

アンコールにすぐ応えて再登場。「みんな、本当はブルーズなんて聴きに来たんじゃないんだろ」とニヤリ。そして、自らの代表曲「I Saw The Light」を。さらに、「Boogies (Hunburger Hell)」。どひゃー、超かっこいい。この手のハード・ロック・トッド、普段の自分のライヴやユートピアではあんまり演奏することないからね。ほんとに、来てよかったよ。あんなに乗り気じゃなかったのが嘘みたい。“今年のベストライヴかも”と思う瞬間も何度もあったからね。

また退場してしばらくじらすから、最後にもう一回アンコールあるかな、「Just One Victory」で来るだろう、と思っていたら、残念ながらそこで客電が点いた。初日だからセーブしたのかな。でも、アンコール入れて2時間は演ったよな。満足、満足。ちょっとこれ、金曜の最終公演も行きたくなってきたよ。


ところで、入場したときにもらったチラシを見てびっくり。カシム・サルトンのソロ公演があるって? 全然知らなかった。しかも、明日! 連休明けの火曜日かよ。それはちょっと厳しいよなあ。でも、カシムのソロなんて、これ逃したらもう一生観られないかも。うーん、どうしようか。迷う… <続く>
posted by . at 23:44| Comment(3) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月11日

逃避行 - Gin Blossoms

No Chocolate Cake.jpg
ジン・ブラッサムズ 『No Chocolate Cake』

4年前のちょうど今頃。LAに出張する機会があり、空港での待ち時間を利用してCDを8枚ほど買いこんできた。その8枚の中でも僕が大層気に入り、立て続けにこのブログに取り上げたうえ、その年の年間ベストアルバムの第四位と第三位に選んだのが、一昨日の記事にしたレイ・ラモンターニュの前々作『Till The Sun Turns Black』と、今日これから書くジン・ブラッサムズの前々作『Major Lodge Victory』だった。

その後、レイ・ラモンターニュは08年に、ジン・ブラッサムズは09年に、僕にとってはちょっと今一つの(なので記事にはしていない)アルバムを出した後、今年になってまたほぼ同時にニューアルバムを発表し、僕がたまたまそれらをアマゾンで一緒にオーダーし、つい先日一緒に届いたのもまたなんか妙な偶然。ちなみに記事の順番は逆だったけれど、そのレイ・ラモンターニュの記事を書いたのがちょうど4年前の今日だった。

派手さ・話題性皆無なのも共通していると言っていいだろう。音楽性はずいぶん違うけれど、どちらもアメリカ音楽最後の良心と言っても過言ではないような音。他にも偶然共通する歌詞が出てくるとかあるけど、そんなの書いてると長くなるし、レイのことは一昨日書いたばかりで今日改めて書くことはあまりないので、今日はジン・ブラッサムズの話を。

4年前の記事にも書いたとおり、新しいアルバムだからといって音楽性ががらりと変わるようなバンドじゃない。今作もまた、いつもどおりの疾走感溢れる曲ばかりが11曲。とはいえ、いくつか目立った変化もある。

まず一番最初に気付くのは、上に載せたダサいジャケット。これまでの彼らのアートワークって、取り立てて素晴らしいものばかりというわけではなかったけれど、前作の薄曇りの青空とか、音楽性に見合ったこざっぱりしたものが多かったはず。それが一体どうしたことか。これはちょっと、よほどのファンでもなければ購買欲そそられないよね。ニセモノかと思ったよ。

音楽的な面から見ると、解散前も再結成後もずっとプロデュースにあたっていたジョン・ハンプトン(John Hampton)の名前が見当たらないこと。今回はバンドメンバーによる初のセルフ・プロデュース(デビュー時からのプロデューサーと別れて初のセルフ・プロデュースというところも、レイ・ラモンターニュのニューアルバムとのもうひとつの偶然の一致)。

それがまた、全11曲中、7曲がギターのジェシ・ヴァレンズェラ(Jesse Valenzuela)と元レンブランツ(The Rembrandts)のダニー・ワイルド(Danny Wilde)の共同プロデュース、3曲がヴォーカルのロビン・ウィルソン(Robin Wilson)によるプロデュース、そして最終曲がジェシ、ダニーとリード・ギタリストのスコッティ・ジョンソン(Scotty Johnson)3名によるプロデュース。一体なんでそんなバラバラにやるんだ?仲悪いのか?

そして、再結成時に唯一戻ってこなかったオリジナル・ドラマーに代わって前作でドラムスを叩いていたスコット・カズミレック(Scott Kusmirek)は今回1曲だけに参加。残りは新規でメンバー扱いされているジョン・リチャードソン(John Richardson)という人が担当。

「もうとにかくこのアルバムを聴いて僕の印象に残るのがドラムの音」。4年前の記事に僕はこう書いた。今回のアルバムも当然のようにスネアの音で幕を開けるほど、ドラムスの音が全体の音作りの中で重要な位置を占めている。今回のドラマーもとてもいいんだけど、この手のライヴ・バンドに於いて、サウンドの要となるべきドラマーが固定しないというのは、かなり致命的ではないだろうか。

といった、いくつかの変化を別にすれば、先述したとおり、いつもどおりのジン・ブラッサムズ。疾走感いっぱいなのに、聴いていると何故か切なくなるメロディーライン、正統派アメリカン・ロックの直系としてイーグルズやポコの流れを汲む素晴らしいハーモニー、そして、やはり僕はこのバンドのここが一番好きだったんだと今回改めて気付かされた、ロビン・ウィルソンのタフなくせに甘い声。

全11曲、どれも粒よりなんだけど、欲を言えば、このアルバムといえばこれ!というキラー・チューンが欲しかったかな。デビュー作『New Miserable Experience』なら「Hey Jealousy」、「Until I Fall Away」、「Found Out About You」。セカンド『Congratulations I'm Sorry』なら「Follow You Down」、「As Long As It Matters」。前作『Major Lodge Victory』なら「Learning The Hard Way」、「Come On Hard」といったところ。

今作で強いて言えばどれだろう。「I Don't Want To Lose You」か「Go Crybaby」か。アルバム中唯一のスローナンバー「If You'll Be Mine」もいいね。なんだか今の気分に左右されてそうなチョイスではあるけれど、前作のように一回聴いただけで「これ!」とわかる曲がないのも事実。まあ、逆に言うとどれも皆おしなべてそこそこ高水準とも言えるんだけどね。

ところで、ちょっと調べ物をしているときに気付いた。このアルバム、iTunesだとボートラが1曲追加されてるんだね。なんでわざわざ高い金払って、ダサいジャケ(笑)のCD買って、現物がドンブラコと届くまで何週間も待たされて、おまけに曲数まで少ないんだ? CD売上が落ちているとか言うけど、その一因はこういう訳のわからない商品設定だろうが。でも、いいよ。どんな扱いを受けようと、僕は多分ずっとCDやLPを買い続けるから。ボートラの「Please Don't Ask Me」もそのうち再発盤とかシングルのカップリングとかで入手できるだろうし。


三連休の中日の今日、昨日から朝まで降り続いていた雨も昼までにはあがって、空が高く見える薄曇りのいい天気になった。まるで『Major Lodge Victory』のジャケみたいな。3年前に日本に戻ってきてから一度も車を運転していないけど、今日はなんだか無性にどこかに行きたくなった。本当はどこまで行っても羊と牛しかいないようなNZの田舎道を頭をからっぽにして延々と走れたらいいんだけど、そんな贅沢は言わない。自分では買わないような真っ黒なオープンカーを借りて、Tシャツの上に合皮のジャケットを羽織って、誰も僕のことを知らない、誰とも口をきかなくていい場所へ。どこか観光地でもなんでもない山奥がいいな。そんなとき、レンタカーのカーステでずっとリピートしているのはきっとこのアルバムだ。
posted by . at 00:20| Comment(3) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月10日

→Pia-no-jaC← live in Tokyo

Autographed This Way Up.JPG

3時間越え。3500円のチケット代で割ると1時間あたり1000円ちょっと。今どきの大学生のバイトの時給並み。しかも、単に安いだけでなく、笑いありシャカシャカありピアノありカホンあり、の充実したライヴだった。

朝からあいにくの降りしきる雨で、こんな用事がなければなんとかして家に引きこもっていたいような空模様。電車を乗り継いで来たのは、僕にとっては88年のニック・ロウ以来となる、ほぼ四半世紀ぶりの九段会館。地下鉄の出口からなにげに道を間違えて武道館の方に歩いて行きそうになったのも四半世紀ぶり。

九段会館ってこんなに狭かったっけ。二階席・三階席がなければ、最近のちょっとしたライヴハウスよりも小さいかも。僕は二階席の前の方。ステージ奥まで見やすい、遠すぎることもない、いい席だった。下手に一階の真ん中あたりなんかよりよっぽどよかったかも。前の席との間隔がやたら短くて膝がつかえるけど、通路沿いだったのがラッキー。

開演時刻の5時を10分ほど過ぎたところで暗転。白い緞帳に緑色のレーザー光線が幾何学模様を描くオープニング。それが止むと、緞帳の向こうに赤いライトで照らされた二人が演奏を始める。ステージ奥から赤いライトで照らしているから、緞帳に映る大きな影と透けて見える本人達のコントラストが不思議な感じ。

僕は彼らのCDは一応(コラボ盤などを除いて)全部持っているんだけど、なかなか曲名を覚えられない。みんなインストゥルメンタル曲のタイトルってどうやって覚えているんだろう。この緞帳の向こうのオープニング曲は、新作『This Way Up』の1曲目でもある「Chaos In "Em"」のはず。だとすると、CD同様にこの曲がふっと途切れた瞬間に…

真っ白な緞帳が切って落とされ、床から壁から一面真っ黒なステージが現れる。曲は、『This Way Up』2曲目の「残月」。相変わらずのもの凄い速弾き。ピアノも、カホンも。ステージだけでなく、メンバー二人も上から下まで真っ黒ないでたち。いつものつなぎでなく、黒いベストに黒いシャツ、それに黒いパンツ。HAYATOはお馴染みの黒い帽子。HIROはもちろん黒いサングラス。

2曲目が終わったところで、これまたいつものハイテンションなMC。しゃべるのは主にカホンのHIRO。HAYATOもしゃべる。「それでは、次が最後の曲です」。相変わらずのゆるいボケ。

MCのコーナーが結構長い。今回のツアーのこと。どんどんメジャー展開してきた今年あった色々なこと(僕が行きそこなった1月1日の下北沢ヴィレッジ・ヴァンガードでの年明けライヴから、嵐のレコーディングの話、そのあとすぐに偶然お茶の水のVVで生ニノと会ったことなど)。「この前のクラブでのイベントに来てくれた人は?」と手を上げさせて、「あのメガネをかけて首にタオルを巻いた人がイベントの話をしてくれるから、このライヴの後であの人のところに集まるように。サインももらえます」とかお客さんをいじったり。

そんな風なMCも面白いんだけど、僕にとってもっと面白かったのが、演奏中のネタ。キーボードを弾きながら演奏のテンポを全く変えずにそのままぐるっとキーボードの後ろ側まで廻り込んで反対側から演奏するとか。キーボードと全然違う方を向いてエアピアノをしながら、後ろ足で鍵板を叩いて音を出すとか。去年の暮に観たインストアでもやってた、HIROが手を振って退場した途端にHAYATOがピアノをジャーンって弾いてHIROが慌てて戻ってくるやつとか。

ピアノの速弾きもすごいんだけど、HIROのカホン(+その他沢山の打楽器類)も圧巻。基本は素手の左手と右手に持った金属製のブラシみたいなのでカホンを叩き、同じ曲中でドラムスティックや大太鼓を叩くようなスティックに次から次へと持ち替えて、ものすごく多彩な音を出す。マイクスタンドに据え付けてあるパフは、当然「うさぎDASH」専用。

開始後ちょうど1時間でお色直し。ステージ背後のスクリーンにYouTubeからピックアップした→PJ←のコピーバンドの演奏を次々に流す。小学生もいるよ。みんな上手だね。

お馴染みのPとJの文字が胸のところと背中についた黒いつなぎを着て二人が再登場したのが、その約30分後。「これから後半戦」と言ってたときには、まさか本当にそれからアンコールまで含めて1時間半もぶっ続けで演るとは思わなかった。後半戦1曲目は確か「第九」だったかな。

ひよりさんのブログを事前に読んでいたので、ちゃんと家から用意して行ったシャカシャカ袋。とはいえもちろん僕のは本物のシャカシャカ大作戦袋じゃなく、先日10枚のLPが入っていたフラッシュ・ディスク・ランチの透明袋。大きいからシャカシャカ音も大きくていいと思って。黄色いロフトの袋を持ってきてた人はカメラで大写しされて指摘されてたね。僕ももっと目立つ袋持ってくればよかった。

ステージ直前に敷かれたレールの上を左右に移動するカメラを始め、ステージ上や僕のいる二階席などに沢山のプロ用のビデオカメラが設置されていると思っていたら、やっぱり今日のこのライヴがDVD化されるんだって。これは楽しみ。僕の実物を知っている人なら、一部の方々にはお馴染みの僕のトレードマークの例のシャツを着て行ったので、そのDVDが出たら二階席を探してみて。

そのDVDのお知らせ以外にも、来月ソウルと東京で行われる日韓共同音楽フェスに出演することや、来年1月に渋谷で五夜連続ライヴが決定したことなどをアナウンス。うーん、1月の日程、既にチケットを確保したGのつく人の東京公演と思いっきりかぶってるな。かぶってないのはとても6時半の開演時間には間に合わないような平日だし。残念。

本編最後はHAYATOのしみじみとした語りに続けて、また新作からの「Friends」。いい曲だね。この曲と、あと途中で弾いた何曲かは自前のキーボード(ヤマハのS90XS)でなく、グランドピアノを演奏。「グランドピアノはめっちゃ緊張するわ」って言ってたね。もちろん、とても上手だったけど。

アンコールは2回。白いシャツに胸のところに黄色い→PJ←シールを貼ったオーバーオールのお揃いの二人。最初のアンコールが「うさぎDASH]で2回目が「組曲『 』」だったかな。そのうちどこかにセットリストがあがるかもしれないし、件のDVDが出たらきっとわかるだろう。アンコールが全部終わっても、二人は延々とステージに残って挨拶しながら、いろんなものを客席に投げ込む。ハロウィンのバケツに入ったお菓子とか、自分たちの汗を拭いたサイン入りのタオルとか。HAYATOはがんばって三階席まで届かせるけど、二階には全然飛んでこないよ。

終演後、物販でも見てから帰ろうかと思ってたけど、予想通り物凄い人出。会場限定グッズとかサイン入りCDやDVDも売ってたみたいだけど、とてもあの人混み(しかもほぼ100%女子)に割り込んでいく気力なし。それでもこの記事の冒頭にサイン入り『This Way Up』の写真が載っているのは、先日出かけた下北沢のVVで偶然見つけたのを入手したから。

夜になってもまだ降り止まない雨の中を、ロシア料理ではなく黒胡麻坦々麺を食べてから帰った。坦々麺屋のオヤジがなにやら日本人離れした顔立ちだったのは、もしかしたらひよりさんとグリンさんが食べたロシア料理店のオヤジと入れ替わっていたのかも。
posted by . at 01:40| Comment(4) | TrackBack(1) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月09日

前の季節の終わりに - Ray LaMontagne and The Pariah Dogs

God Willin' & The Creek Don't Rise.jpg
レイ・ラモンターニュ 『God Willin' & The Creek Don't Rise』

あんなに暑かった夏。誰もが口を揃えて異常気象だと言っていた季節。あまりにずっと続いてたから、いつのまにか、なんとなく、あのままずっと終わることなんてないような気がしていた。そんなことあるはずないのに。でも、なんだかんだ言っても、居心地よかったんだよ、僕は。不快なほど暑くても、やっぱり夏だからね。

オフィスの中ではまだ腕まくりをするぐらいだったそんな一日。なんの変哲もない木曜日。駅からの帰りみち、吹き付ける夜風はもう冷たかった。まくった袖を戻しながら、もうすっかり体に馴染んでいたあの季節は終わってしまっていたんだと気づく。

いつもよりちょっとたくさんため息をつきながら帰宅すると、シカゴから届いていた小さな茶色い箱がそこに。ああ、そうか、しばらく前に買い損ねていたCDを何枚かまとめて注文したんだった。

派手なジャケットのCDにまじって、ひときわ地味な文字だけのジャケのこのアルバムから聴くことにした。2年ぶりのレイ・ラモンターニュ。ライヴ盤を除けばきっちり2年毎にアルバムを出している彼。そう思うと、あの大好きだった『Till The Sun Turns Black』からもう4年になるんだな。あの記事を書いたのも、4年前のちょうど今頃だった。それを書いた僕のまわりの季節は今とは正反対だったけれど。

地味なジャケとは裏腹に、たくさんの素晴らしく美しい写真と一緒に収められた内ジャケの写真には、レイを含めた5人のメンバーが仲睦まじく収まっている。

これまでのすべてのアルバムをプロデュースしていたイーサン・ジョンズ(Ethan Johns)とは別れ、今回は初のセルフ・プロデュース。それに、上のジャケをちゃんと読めばわかるとおり、今回からはレイ・ラモンターニュ&ザ・パライア・ドッグス(Ray LaMontagne & The Pariah Dogs)というバンド名義。とはいえ、メンバーは、前作『Gossip In The Grain』でもバックを務めていたギターのエリック・ヘイウッド(Eric Heywood)、ベースのジェニファー・コンドウズ(Jennifer Condos)など、大きな変化はない。

一番の変化はきっと、今回のアルバムの音をまるっきり彼の色に染めている、グレッグ・リーズ(Greg Leisz)の存在だろう。このブログにも何度か名前は登場している(主にマシュー・スウィート関連で)、敏腕ペダル・スティール奏者。

彼の貢献は大きいと思う。ちょっとファンキーなオープニング「Repo Man」とブルーズがかったエンディング「Devil's In The Jukebox」を除けば、あとはいつもながらのレイ・ラモンターニュ色が8曲。そのほとんどで(もちろん前出の2曲にも)ペダル・スティールはもちろん、ラップ・スティール、リゾネイター、バリトン・ギター、アクースティック・ギターなど様々な種類の弦楽器で彩りを添えている。

ちょうど帰りみちに聴いていたマナサスの72年の未発表曲集と同じ匂いがしたと思った。スティーヴン・スティルスの、せつなさという概念をかためたような声とはちょっと違うけれど、6年前のデビューから全然変わらないレイの声もまた、ささくれだった気持ちをなだめてくれるようだ。いつものように、無骨に。

そういえば、偶然だね。さっきリンクした4年前の記事に書いたけれど、この人が曲を作って歌っていくことを決意したのは、スティーヴン・スティルスの「Treetop Flyer」を聴いたことがきっかけなんだった。音的にはそれほど酷似しているというわけではないけれど、そうだな、同じ匂いという言い方がいちばんしっくりくる。

  何が起こってるんか、わかってへん振りできたらええのに
  耐えてみるつもりや、もうちょっとだけな
  でも、俺が倒れそうになったら、誰か支えてくれるかな
  なあ、俺ら、ほんまにもう終わってしもたんかな

アルバム中もっとも静かな一曲「Are We Really Through」が何故か気持ちに沁みる。聴くだけで自分も失恋したような気分になれる曲(笑)。急に寒くなったこんな季節のせいかな。

とても暑かったこの前の季節は、ジェブ・ロイ・ニコルズの『Long Time Traveller』がヘヴィ・ローテーションだった(少なくとも、アラーム祭り開催前まではね)。暑かったけど楽しかった季節の終わりを告げた日に届いたこのCDが、僕のこれからの季節を代表するアルバムになるんだろうな。
posted by . at 02:40| Comment(4) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする