2010年03月13日

秒殺 - Sambassadeur

European.jpg Sambassadeur 『European』


ジェットコースターに乗るのは好きかな。あんまり最新の、後ろ向いたまま何十メートルも垂直に落とされたり、椅子にも座らず足元ぶらぶらさせて何回転もさせられたりするようなのじゃなくて、わりと昔ながらの、どこの遊園地にもあるようなやつを想像してほしい。

一番前の席に座り、セーフティー・バーを下ろして、さあ出発。カタカタカタと音を立てながら、車両が上に向かって進みはじめる。背中に自分の体重を感じる。周囲の景色が少しずつ下のほうに消えて行き、やがて目の前にはまっすぐなレールと空しかなくなる。

カタカタカタ。ゆっくりと頂上が近づいてきた。小さな子供の頃なら、今この瞬間から味わうことになるスリルに押しつぶされて、もう目をつぶっていたかもしれない。カタカタカタ。目の前のレールが途切れる。


CDショップの試聴機でこのアルバムの1曲目を聴いたときに僕の頭に浮かんだ映像がこれだ。ロイ・ビタンが奏でる「Backstreets」のイントロさながら、あざといまでにセンチメンタルな、ゆったりしたピアノのイントロに、ドラムとベースが入ってスピードアップする瞬間。続けざまにかぶさる豪華なストリングス。これはやられた、と思った。

でもよくあるんだよな、1曲目だけこういう華やかな曲で、後は平凡な曲だけが10個ほど詰まったつまらないアルバムって。なんて勘繰りながら、その1曲目を最後まで聴かずに試聴機のスイッチを押し、2曲目へ。

その2曲目は、5秒も聴いていられなかった。嫌な曲だったんじゃない。それ以上、試聴機なんかでつまみ聴きするのがあまりにももったいないと思ったからだ。

スウェーデン発、これがサードアルバムとなる、サンバサダーの『European』。僕はあまりよく知らなかったんだけど、その筋では結構有名なバンドなんだね。買って帰ってネットで調べたら、もうあちこちで取り上げられていたよ。

インストを1曲含んだ、全9曲入り。4人のメンバーの誰がどの楽器を演奏しているのかは書いてないけど、メンバー以外にドラム、ピアノ、サックス、ギター、パーカッション、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの奏者が参加している(メンバー4人は一体何を演奏しているんだ?笑)。

そんなに沢山の楽器が入ってはいるけれど、決して分厚い音じゃない。こっちの勝手な思い込みかもしれないけれど、いかにも北欧らしい、豪華ながらもすっきりした音。ちょっとハスキーな女性ヴォーカルもいい。

試聴機のヘッドフォンで聴いてももちろんよかったんだけど、ひとつ発見したのは、ちゃんと部屋のスピーカーの前に座って、自分の耳とスピーカーとの間の空気を少し大きな音で震わせながら聴くと、これがまた格別にいい。いいプロダクションって、こういうところでわかるよね。

「ん?」っていう声が冒頭にぽつりと入っている美しいギター・インストの「A Remote View」がふっと終わり、次の「Sandy Dunes」のドラムの乱れ打ちみたいなイントロにつながる瞬間で、再びジェットコースターが頂上から落ちる瞬間の気分を味わえる。

カセットテープを巻き戻すような音で始まり終わる最終曲「Small Parade」はブックレットに歌詞が載っていなかったので調べてみたら、元ガイデッド・バイ・ヴォイセズのトビン・スプラウト(Tobin Sprout)がマタドール・レコードのオムニバスに提供した曲のカバーという、なんともマニアックな選曲だった。

ほぼ捨て曲なしと言ってもいいぐらい気に入ったこのアルバム、内容に負けず劣らず素敵なのが、ブックレット。上に載せた表ジャケと同じ淡い色合いの水彩画が、裏ジャケ含めてあと4枚載っている。どれもこれも、そのまま額に入れて部屋に飾りたいぐらい。

キム・ステンスランドっていう人が描いたのか。あ、ブックレットにアドレスが載ってる。うわ、この人の絵、かなり好き。サイトの上の方の小さなサムネイルだけ見てると写真かと思うけど、拡大するともちろん全部水彩画なんだね。

上に書いたようないきさつで、僕は最初に聴いて数十秒という単位で買ってしまったけど、今からこのアルバムを買おうという人は、ちょうど今日、ディスクユニオンから国内向け仕様の日本盤が出たようなので、そちらを買って、アップル・クランブルの松本さんがライナーに書いた内容を僕に教えてください(笑)


posted by . at 17:44| Comment(2) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。