2010年02月28日

Mayer Hawthorne & The County live in Tokyo

バブルっていつ弾けたんだっけ?と思うような場所だったね、ミッドタウンって。東京に帰ってきてもう2年以上経つというのに、それ以来ほとんど足を踏み入れたことのないこのエリア。ずらりと並んだレストランのエントランスに掲げられたメニューの、冗談みたいな値段を見るにつけ、そんな風に思った。

再来月に来日予定の某アーティストのチケットを取りたくて、ビルボードライブ東京のメンバー登録をした。せっかくだからと、最近聴いてちょっと気になっていたメイヤー・ホウソーンに行ってみようと思い立つ。結構直前になって予約したのに、全然問題ない整理番号だったね。まあ、デビューしたての、しかも日本盤も出ていないようなアーティストのライヴに、ビルボード基準のチケット代を払って来ようという人が何人いるのか。おかげで、一番前のテーブルに席を取ることができた。いろんな人から、ここの最前列は音がよくないって聞いてはいたけど、再来月に備えてどの程度よくないのか確認のために、とも思って。

Mayer Hawthorne & The County.jpg


時間通りに客電が落ち、4人のメンバーがまず登場。ドラムス、ベース、キーボードの3人が黒人、ギターが白人という混成チーム。そして、MCの紹介で出てきたメイヤーは、CDのジャケットどおりのメガネ青年。僕の位置からはかなり見上げる感じになるから実際はどれぐらいなのか見当つけ難いけど、決して背が高いわけでもないこのタレ目のメガネ君が、CDで聴いたあのゴージャスなブルー・アイド・ソウルを歌うというのが、いつまでたっても違和感。蝶ネクタイにベストという格好なのに、足元だけが赤と黒のナイキというミスマッチも可笑しい。

オープニングは、韻を踏んだタイトルもいかした、僕がアルバム中で一番好きな「Your Easy Lovin' Ain't Pleasin' Nothin'」。このモータウン・ビート、いきなり盛り上がるね。

次から次へとメドレーのように曲を繋いでいくところとか、観客に話しかけながらそのまま歌詞になだれ込んでいくところとか、伝統的なソウル・マナーに則ってるよね。2曲目が終わったところで、「昨日J-Waveの番組に出て、この次の曲を演奏してくれるかって訊かれたんだけど」って言いながら「Maybe So, Maybe No」を歌い始めるところなんて、うまいなあって思ったよ。

一番前の席はあまり音がよくないって言われた意味はなんとなくわかった。会場全体に向けたPAよりも、ステージからの音が直接耳に届くから、音のバランスが悪いってことなんだね。でも、僕の位置からは、PAを通さないドラムの音と、VOXのギターアンプの音がストレートに聴こえてきて、それはそれで楽しめたよ。このバックバンド、もの凄く上手い。CDで聴くのとは全然違うよ。この人たちが演ってるのなら、メイヤー・ホウソーンのソロ名義なんかじゃなくて、ちゃんとメイヤー・ホウソーン&ザ・カウンティー名義でアルバムを作ればよかったのに。

A Strange Arrangement.jpgファースト・アルバム『A Strange Arrangement』からの曲と、モータウンとか古いソウル/R&Bの曲を織り交ぜて演奏。僕の席のすぐ近くにセットリストが置いてあり、開演前からそれを見ることができたのと(見ないようにはしていたけど)、曲に入る前に「これは僕たちの好きなモータウンの曲だ」とか「ヒップホップは好き?」とか言っていたのでかろうじてそういう曲だとはわかったけど、実は帰ってきてからセットリストに書いてあった(必ずしも全部正確ではない)曲名を頼りに検索するまでは、誰の曲かも僕にはわからなかった。マーヴェレッツとかアイズリー・ブラザーズとか。なるほど。あと、1曲だけ新曲と言って紹介していた曲は、ギターのお兄ちゃんが歌ってたね。

そのギタリスト、調べてみたらトファー・モーア(Topher Mohr)っていう名前なんだけど、一人だけ飛びぬけてイケメン。上の写真では一番右側に写ってるけど、この写真じゃわからないか。メンバー紹介のときに、他の全員がメイヤーと同じミシガンだったけど、彼だけはLA出身って言ってたっけ。どうしてギターにはピックガードが必要なのかということが逆説的にわかるような、弦の下側の塗装がいい感じに剥げたサンバーストのレスポール・カスタムに、“War Is Not The Answer"と書かれたマーヴィン・ゲイのステッカー。「Green Eyed Love」のギター・ソロはすごかった。へヴィ・メタリックでないギター・ソロの理想形。ソロ・アルバムも出しているようだね。買ってみようとまではまだ思わないけれど。

本編終盤で演った「Love Is All Right」は、『A Strange Arrangement』の初回盤CDに入っていた4インチアナログに収録されているという曲だった。それって、終演後のロビーで売ってたやつだったよ。よく見ずにスルーしてきたけど、そんな珍しいものだったのか、あれは。この曲の最中にメンバー紹介。「ドラムマシーンのように正確なリズムを刻むけど、彼は正真正銘の人間のドラマー」と、やたらと“Human Being”というところを何度も強調されていたドラマーはクエンティン・ジョゼフ(Quentin Joseph)。メイヤーが「みんな、ジェームズ・ブラウンは好き?」と訊いた後にドラム・ソロに入ったけど、あれはJB風のソロだったんだろうか。さっき、このバンドが上手いって書いたけど、その大部分はこの人の技量に負っていると言っても過言ではないね。

他のメンバーは、いかにも60年代風というか、リントン・クゥエシ・ジョンソンをいいとこのお坊ちゃん風にした感じの風貌のキーボーディスト、クインシー・マクラリー(Quincy McCrary)と、ゼブラ柄のベース・ストラップをつけた、ふわふわのアフロヘアのジョー・エイブラムス(Joe Abrams)。この人はアンコールで出てきたときもゼブラ柄のタオルを頭にかぶってたな。

その曲からメドレーで繋げた、アルバム中でもかなり盛り上がる「The Ills」で本編終了。一旦引っ込んで再登場。「When I Said Goodbye」という、デビューシングル「Just Ain't Gonna Work Out」のB面(ということを後で知ったことは後述する)を演奏。「みんな、ディナーはおいしかった?全部平らげているところを見ると、きっとおいしかったんだろうね」とか言いながら僕のテーブルを見て、「君のは残ってるね」なんていじられてしまった。まだ食べてる途中にあんた達が出てきたからだよ。

セットリストには「Mehna Mehna」と書いてあったけど、YouTubeとかで調べてみたら、Piero Umilianiという人の「Mah Na Mah Na」というちょっとコミカルな曲と、最後はアイズリー・ブラザーズの「Work To Do」で、アンコール含めて1時間ちょっとのステージが終了。

完全に予想以上。よかった。予想以上に美味しかった食事や豪華な場所を抜きにしても、本当に贅沢な時を過ごした気がする。でも、本当なら、これはこんな着座のレストランとかじゃなくて、ライヴハウスで聴いてみたかったな。あのバックバンド、ただものじゃないよ。と思いながら、ロビーの物販のところに行くと、『A Strange Arrangement』のインストゥルメンタル版なんていうのがあったから、即座に買ってしまった。あの人たちが演ってるんなら、インスト版でも聴いてみたいと思って。それに、もしかしたら単なるインスト(カラオケ)じゃなくて、ちょっとぐらいはアレンジも変えてあるかもしれないしね。

A Strange Arrangement Instrumental.JPG

帰って見てみたら、このアルバムでほとんどの楽器を演奏してるのは、メイヤー本人だった(よく考えたら、最初にアルバムを買ったときにチェックしてたのを思い出した。宅録ブルー・アイド・ソウルってのがなんともこのオタクっぽい風貌にぴったりだなって)。ザ・カウンティとしてマイスペに名前が載っているメンバーも何名かアルバムに参加しているけど、そのうちの誰も今回の来日メンバーとは重なってないよ。なんだ、この人たちって今回きりなの?でも、もし流動的なメンバーのバンドだったとしても、今後は今回のこの面子で固定してほしいな。だって、改めてアルバム(オリジナルとインスト版の両方)を聴いてみても、今回のバンドの方が圧倒的によかったからね。

ついでに、一緒に売ってたデビューシングル「Just Ain't Gonna Work Out」を購入。特に好きな曲というわけでもなかったんだけど、ハート型ディスクが珍しくて。おかげで、さっき書いた「When I Said Goodbye」がこれのB面だということに気づいたし。

Just Ain't Gonna Work Out.JPG

これがセットリスト。いくつかの曲名は短縮してあるし(「JAGWO」を「Just Ain't Gonna Work Out」だと解読するのに相当時間がかかってしまった…)、一番最初に書いてある「Star Time」は記憶にないんだけど(もしかしたらMCがメイヤーを呼び出すときにバンドが演奏していたインスト曲なのかな)、記憶と検索を元に曲名を修正したものを下に書いておくね。

MH&TC Setlist.JPG


Setlist 27 February 2010 @ Billboard Live Tokyo (1st set)

1. Your Easy Lovin' Ain't Pleasin' Nothin'
2. Make Her Mine
3. Maybe So, Maybe No
4. Shiny & New
5. I Wish It Would Rain
6. Ruthless (lead vocal: Topher Mohr)
7. Don't Mess With Bill (Smokey Robinson / The Marvelettes)
8. One Track Mind
9. Fly Or Die (?)
10. Green Eyed Love
11. Biz (?)
12. Just Ain't Gonna Work Out
13. Love Is All Right
14. The Ills

<encore>
1. When I Said Goodbye
2. Mah Na Mah Na (Piero Umiliani)
3. Work To Do (The Isley Brothers)


posted by . at 14:01| Comment(6) | TrackBack(1) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月16日

追悼 ダグ・ファイガー

First Things First.jpg

半年ほど前に、しばらくアルバム出てないなと思って調べてみたら、闘病中だということを知った。

もう治る見込みのない病気だったということも。

ずっとフィーガーだと思っていた苗字は、実はファイガーと発音するんだと知ったのもその頃。


ナックの思い出。意識して音楽を聴き始めたころに、「ビートルズの再来!」みたいな紹介をされているのを雑誌で見て、自分の中である種スタンダードみたいな位置づけに勝手に収まっていた。

「My Sharona」という大きな花火がすっかり夜空から消えてしまっても、彼らは僕の中のその場所からいなくなることはなかった。

まるで、もうすっかりプレイヤーに乗せて聴くことはなくなったのに、永遠にそこにあるビートルズのレコードのように。


世間の大半には、もうすっかり忘れられてしまったまま逝ってしまったのが寂しい。

彼のことを知らない人へ。この人はね、とびきりかっこいいバンドのリーダーだったんだよ。

僕はこれから先、何回彼のことを思い出して、何回「ファイガー」と口に出して言うのかな。
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2010年02月13日

先にいってしまう人たちへ - The Durutti Column

2001-2009.JPG The Durutti Column 『2001-2009』

イアン・カーティス、マーティン・ハネット、トニー・ウィルソン。ファクトリー・レコードのいちばん最初の頃に一緒に大きなこころざしを持ってがんばっていた仲間たちがひとりずつ亡くなってしまい、ヴィニ・ライリーはきっとすごく寂しい思いをしているんだろう。特にここ数年は出すアルバムのすべてにトニー・ウィルソンへの鎮魂曲を入れているのを見ると、きっと彼とは一番仲がよかったんだろうね。

ドゥルッティ・コラムが01年から去年までにかけて出したアルバム5枚にボーナストラックを少しずつ付けて、つるつるした紙質のジャケットと一緒に、これもつるつるした箱に収納したセット。

解説もアルバム毎のクレジットも何もついてないそっけない作りだし、最近のアルバムをマメに買っていた人たちにとってはきっと痛し痒しな再発なんだろうけど、最近はこの人の新しいアルバムを買うのをさぼってしまっていた僕にとっては、すこし嬉しい箱。上にリンクしたアマゾンでも(5枚組としては)それほど高くないけど、行くところに行けばもっと安く手に入るし。

今日は朝からこれを順番に聴いているところ。順番はバラバラにだけどね。今かかってるのは『Idiot Savants』。これにも「Interleukin (For Anthony)」という曲が入っているね。この次に聴く予定の『Someone Else's Party』には「Requiem For My Mother」が入っているし。あれは確かヴィニ自身のお母さんが亡くなったときだったよな。


友達の大事な家族が先週亡くなってしまった。ずっと病気で臥せっておられたその人のことは、僕は友達を通じてしか知らなかったんだけど、今日は一日喪に服すつもりで、その友達も好きだと言っていたドゥルッティ・コラムを一日聴いて過ごそうと思った(ちょっと遅くなってしまったけど。それに、別にこんなことが服喪にあたるわけじゃないのはわかっているけれど)。


そういえば、その友達もいちばん好きだと言っていたドゥルッティ・コラムの最初のアルバムの2曲目が、こんなタイトルだったよね。アーティストとしてこの世に出てきたときからずっと、先にいってしまう人たちにむけた曲をたくさん作ってきた人だったね。

Requiem for a father.JPG

元気だしてくださいね。
posted by . at 16:10| Comment(3) | TrackBack(1) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月06日

女友達 - Curly Giraffe

タマスの追っかけで会社をさぼったツケが来たわけではないけど、仕事が相当忙しくなってきた。ちょっと先の見通しがつかないほどテンパって来てるし、明日からはまたシンガポール出張が入ってしまったんだけど、このまま流されてしまうともう当分ここに書きに来られなくなってしまいそうなので、テンポを落とさないために、ちょっと軽めのを書いておこう。

Thank You For Being A Friend.jpg
Curly Giraffe 『Thank You For Being A Friend』

正月に親戚の家に行く途中で立ち寄った、とある地方のヴィレッジ・ヴァンガードで偶然見つけたこのアルバム。名前も知らないアーティスト(人?グループ?)だったけど、VV特有の派手な手書きのPOPに書いてあったCoccoの名前に惹かれて試聴、即買い。ちょっと高かったけど、自分へのお年玉のつもりで。キリン柄のステッカーももらえたし。

調べてみたら、カーリージラフって、日本人のベーシストだった。本名、高桑圭(たかくわきよし)。ロッテンハッツとかGREAT3にいた人。なるほど、うすぼんやりと記憶にあるな。で、このアルバムは、彼がこれまでアルバムに参加したりプロデュースしたりした女性アーティスト達が、カーリージラフ・バンドをバックに彼の過去曲を歌うという企画もの。

日本の女性ヴォーカルって自分の守備範囲から微妙に外れてる僕にとっては、お目当てのCocco以外は、全然知らない人と名前ぐらいは知ってる人がそれぞれ1:1ぐらい。自分でCDまで持っている唯一の例外は、Kumiの単独参加でなく、カーリージラフ・バンドに混じってNaokiがギターを弾いているLove Psychedelicoぐらい。

コロコロしたウィスパー・ヴォイスが心地よい新居昭乃。いつもびっくりしたような顔してる派手なお姉さん程度のイメージしか持ってなかったけど意外によくて見直した木村カエラ。北欧音楽好きなら名前ぐらい知らないはずはないけどCDは持ってないBonnie Pink。「自分達で作った歌です」と言われてもそうかと思ってしまうぐらい大ハマリのLove Psychedelico。そのあたりが今のところのお気に入り。それにしてもみんな、英語うまいなあ(全部英語詞)。

それにしてもCocco。全13曲のうち、ひとりだけ3曲受け持ち。僕のひいき目もあるんだろうけど、声にマジックのある人は違うね。リラックスした歌い方が、彼女の初期〜中期のアルバムに少しずつ入っていた軽めの英語詞の曲を思い起こさせる。いいな、やっぱり。

あと、このアルバムすごく音が気持ちいい。ベーシストらしく、きっちりとベースの音が自己主張してるんだけど、それが全体の音のバランスを壊すどころか、しゃきっと引き締めているのがセンスの良さを表している。ヘッドフォンで聴いていると、どの場所にどんな楽器が配置されてるのかが全部わかるみたい。アクースティック・ギターのキュッキュッっていうストリング・ノイズがいいね。

何枚か出ているアルバムのジャケットも全部かっこいいな。カーリージラフ、ちょっとずつ集めてみようかな。もうすぐ新作も出るんだね。あと、気になった新居昭乃。調べてみたら、アニソンとか歌ってる人なんだね。え?この人僕より年上だよ。それでこの声。すごいな。この人のもCD探してみようかな。なんかこういういいアルバム聴くと、すぐこうやって欲しいものが増えてしまうんだよね。困った。
posted by . at 23:23| Comment(3) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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