2010年01月24日

Tamas Wells live in Singapore

シンガポールからの空の上で今これを書いているところ。こうして機上でブログの記事を書くのも随分久しぶりなら、アーティストの追っかけで海を渡るというのも、個人的には生涯で二度目。07年8月、まだ僕がオークランドに住んでいたときにその初来日公演を観るためにはるばる東京に飛んできたのと同じく、今回はシンガポールで開催されているアート・フェスティバルに出演するタマス・ウェルズを観るための二泊三日の週末旅行だった。前回もそうだったけど、いつまで待っても来ないなら、こちらから観に出かけるしかないよね。

Fringe Poster.JPG


エスプラナード・シアターズ・オン・ザ・ベイ(Esplanade Theatres On The Bay)という、シンガポールのマリーナ地区でもひときわ目を引く巨大なドーム。こんな馬鹿でかいホールで演るのかと思ったが、実際のライヴが行われたのはその建物の中のリサイタル・スタジオという300人程度収容の小ぢんまりしたところ。客席には傾斜がつけられているし、音響もそこらのライヴハウスなど比べ物にならないぐらいに素晴らしいホールだった。

シンガポールに着いた晩(ライヴの前日)、散歩ついでに会場を下見。7時半開始とチケットには書いてあるけど何時ごろ来ればいいのかなと受付で聞いてみる。「7時半開場、8時開演なので、7時ごろ来ればいいんじゃない」とのこと。なので当日はちょっと余裕を見て7時少し前に到着。ほとんど誰もいないので物販のお姉ちゃんと話していたら、後ろから来たシンガポール娘に先を越されたので慌ててその後ろに並ぶ。まぁ、4番目だから悪くはないよ。

実際には7時15分ごろにはもうドアが開いた。僕の前にいたシンガポール娘たちは何故かちょっと脇の方の席へ。最前列ど真ん中が空いていたのでそこを確保。うん、悪くはないよ。ちなみにこの後、実際にライヴが始まったのは7時45分。昨日の受付嬢の言ってたことは何だったんだろう。まあ、7時に来いというアドバイスだけは的確だったけど。

前座と言ってはなんだが、今回のライヴはタマスとフリカ(flica)というマレーシアのエレクトロニカ・アーティストの共演で、最初に登場するのはフリカ。ステージ(というか、最前列の僕がいる場所とは同じ高さのフロア。仕切りも段差も何もない、目の前3メートルぐらいの場所)にはテーブルが置いてあり、その上にノートPCとごちゃごちゃした機器。いろんな色のコードがあちこちから出て絡み合っていて、間違った色のを迂闊に切ってしまうと爆発しそうだ。

左後方にはグランドピアノ。右後方にはフェンダーのストラトキャスター。後方上部には大きなスクリーンが設置されている。CDにはギターやピアノの音も入っているフリカだから、一体これらの楽器をどう演奏するのか見当もつかない。PCからベーシックトラックを出しながら、ギターやピアノを弾くのかな。

フリカ登場。上に載せたポスターのプロモ写真(中央下段)と同じような、グレイのカーディガンにロールアップしたパンツという、失礼ながらちょっと野暮ったい服装になんだか劇団ひとリみたいなぼさっとした髪型。置いてあったストラトを肩から下げて、テーブルの前へ。

想像どおり、PCから音を出し、それに合わせてギターを弾きはじめた。手元を見ていると単音を延々と反復させて弾いているというのはわかるんだけど、実際の音はエフェクターやPCを通して加工されたうえで(しかもちょっと遅れて)出てきているもんだから、会場に鳴り響く様々な音色のうち、彼が今実際に弾いている音がどれなのかわからない。

今回のライヴのタイトルにもなった新作『Telepathy Dreams』は事前に日本で買って何度か聴いて予習してきたんだけど、さすがにこの手のアブストラクトな曲は全然タイトルを憶えられない。何度か聴いたことのあるフレーズが出てきたので、そのアルバムからの曲をメインに演ったんだろうと思うけど、どちらかというとビートに乏しくアンビエントな造りのそのアルバムよりも一般的には聴きやすいだろうと思われるファーストアルバム『Windvane & Window』からの曲も演っていたかも(セカンドは僕は未聴なので)。

聴きやすいとはいえ、ほとんどがタマス・ウェルズ目当てだと思われる聴衆にとっては、かなりキツい45分間だったんじゃないかな。音同様にアブストラクトな映像が延々と流される後ろのスクリーンも含めて、きっと普段こういう音楽を聴き慣れていない人にとっては、催眠効果十分だったんじゃないかと心配になってしまう。

音的には、僕としては十分楽しめたんだけど、これを着座という形のライヴで観ることにどれだけの意味があるのかはちょっと疑問。ずっとギターを弾いているフリカが曲が終わるときにマウスを使って曲を止める操作をするのがなんだか気になってしまって。それに、極端なことを言えば、あのPCでCDをそのまま再生していたとしても、聴こえてくる音はほとんど同じだったろうし。

やっぱりこういう音楽って、こんな風にきちんと正座して(正座はしてないけど)じっと耳を傾けるものじゃなくて、自分の部屋で何かしながら聴くのが一番なんだと思う。BGMなんて呼んでしまうと身も蓋もないけど、高級なインセンスで部屋の香りを変えるのと同じように、自分の部屋の空気に静かに色を灯すための音楽。僕の印象で言うと、『Windvane & Window』はジャケットよりも濃い目のタンジェリンオレンジで、『Telepathy Dreams』はグレイがかった紺かな。

Windvane & Window.jpg flica 『Windvane & Window』

Telepathy Dreams.jpg flica 『Telepathy Dreams』


15分のインターバルの間に、テーブルとストラトが下げられて、タマスのためのセッティングが始まる。ボーカルマイクとギターマイクが2組ずつ出てきたぞ。もしかして今回は、タマス・ウェルズ・バンドで演るのか。それに、さっきフリカがピアノを使わなかったということは、あのグランドピアノはタマスのために用意されていたんだ。

そんなことを考えていたときに裏手からミャンマー・バンジョーを持って出てきたのは、見覚えのある髭面。アンソニーだ。暗いステージで顔を覗き込むように見ていると、向こうもびっくりした顔で手を振ってくれた。後で話したけど、お互い「なんでお前がこんなところにいるんだ」って思ったね。でも、右側のアクースティック・ギターをセッティングしている人はネイサンじゃないね。誰だろう。新メンバーかな。

客電が落ちて、タマスが一人で登場。前回の来日公演時よりも少し伸びた程度の短髪と、相変わらずの無精髭。少し頬がこけて見えるほど精悍な顔つき。ちょっと痩せたかな。

「My name is Tamas Wells」と、いつもどおりの自己紹介に続いて爪弾き始めたのは、ファーストアルバムからの「When We Do Fail Abigail」。実は、フェスティバルのパンフレットには、「今回の公演はアルバム『Two Years In April』を初の全曲演奏、しかも映像つき」みたいなことが書いてあって、前回の来日公演では聴けなかった数曲を初めて生で聴けるという楽しみと、アルバムそのまま続けて演奏ってなんかサプライズがなくてつまらない、という気持ちの両方が入り混じっていたんだけど、いきなりこの予想外のオープニング。

タマスによると、最初は『Two Years In April』全曲演奏も考えたんだけど、それじゃ面白くないんでいつもどおりにしたとのこと。うん、やっぱりそうだよね。これで前回聴けなかった『Two Years In April』の曲がいくつか聴ければ最高なんだけどな(ちなみに、今回の記事内のタマスの発言は、彼がステージで喋ったことと、ライヴ後の僕との会話を混ぜて書いている)。

タマスが使っているギターは、おなじみのミャンマー製の8ドルのじゃなく、なんとマーティン。フェス用の借り物かなと思って訊いてみたら、最近タイで買ったんだって。でも、ミャンマーは湿気が多すぎていいギターは置いておけないから、今回アンソニーにメルボルンに持って帰ってもらうらしい。

「今日は3枚のアルバムから少しずつ演奏するよ」と言いながら始めたのはセカンドからの「Lichen And Bees」。そんなことを言いながら、終わってみれば実はこの日の演目は半分がセカンド『A Plea En Vendredi』からだった。やっぱりタマスもあのアルバムが一番気に入ってるんだろうか。それとも、また『Two Years In April』の曲は歌詞を忘れたのかな(笑)

「僕が住んでいたのはメルボルンでも特に治安の悪い場所で」と説明を始めたのは3曲目「Stitch In Time」。この曲に出てくる可哀相な女の子の話は何度か聞いたことがあったけど、今回が一番たくさん話してたかな。「もし君が麻薬ビジネスに関わっているなら、僕が住んでいた場所はきっと住むには最適だよ」とかジョークも交えながら。

「Opportunity Fair」に入る前に「皆さん、アンソニー・フランシスです」と呼び出すも、全然出てこない。そのうち「アンソニー・フランシス。アンソニー!」とかって大声で呼んだりして可笑しかったな。「彼の持っているミャンマー・バンジョーはシンガポールドルで5ドルもしない。でも演奏者の魂がそれを補うんだ」とか。やっぱりちゃんとその地の通貨に変換して説明するんだね。そういう細かい気遣いがさすがタマス。

Tamas and Anthony.JPG


アンソニーがそのままピアノに移動して、「Vendredi」。さらに、サポートのギタリストが出てきたのが次の「I Want You To Know It's Now Or Never」からだったかな。やっと『Two Years In April』の曲が出てきた。サポートの兄ちゃん、タマスのあの声のさらに上のパートでハモってるから、きつそう。しっかり声は出てたけどね。

後ろのスクリーンには、ミャンマーの風景(おそらく)や、『Two Years In April』のジャケのアウトテイクみたいな絵が次々に映し出される。その絵のことを後でアンソニーに聞いてみたら、実はあれはもっと大きな絵で、CDのジャケットに使われたのはそのほんの一部分らしい。今回スクリーンに映し出されていたのは、同じ絵の別の部分だそうだ。

「It's Now Or Never」に入る前の話だったかな。今回のツアーに出る前に自宅で練習しようと思ったら、自分の書いた曲の歌詞を完全に度忘れしてしまって、ネットで中国のサイトに行って調べ、いざそれを見ながら歌おうとしたら、全然デタラメな歌詞だったそうで。「中国のサイトは信じるな」だって(笑)

「ビートルズの曲を」と次に「Nowhere Man」を。え、もう演るのか。まさかもう終わりじゃないよね。と思ったら、「今からアンソニーがピアノでインストゥルメンタルを2曲演奏するよ」と言って、タマスは一旦退場してアンソニーのソロコーナー。「Melon Street Book Club」のときに一音あきらかなミストーンを入れてしまい、照れくさそうにしていたのが可愛い。

後でその話をしていたときに、前から気になっていたことをタマスに訊いてみた。CDでは、あの2曲のインストでピアノを弾いてるのは誰? 答えは、「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」がアンソニーで、「Melon Street Book Club」がタマスなんだそうだ。『A Plea En Vendredi』セッションの「Melon Street」の録音のとき、ちょうどアンソニーにお子さんが生まれて参加できなかったんだって。と、ちょっとしたタマス・ウェルズ・トリビア。

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再びタマスとサポート・ギタリストのキム・ビールズ(Kim Beales)が参加して、後半一曲目は「Reduced To Clear」。それに続けるように「Open The Blinds」。さらに、2〜3音試し弾きをした後にイントロなしで歌い始めた「Valder Fields」。何度聴いても、いつも息が詰まりそうになるよ、この曲だけは。

今回のシンガポール公演の前に立ち寄った香港での話。観客にリクエストを募ったら、ある女性客に「The Martyn's Are Scared As Hell」という曲をリクエストされ、そんな曲は知らないからできないと断ったら、その客がステージに上がってきて自分のiPodで聴かせてくれて、初めてそれが自分が過去に作ったことを思い出したらしい。アンソニーによると、昔あるコンピレーション・アルバムに提供した曲なんだって。

「だからもうリクエストなんて募らない」と笑わせながら「Broken By The Rise」を演奏した後、ミャンマーの話に。あの国は検閲が厳しくて、ある地元のブルーズ・ミュージシャンが自作の曲を発表するのに歌詞を検閲され、「Everything Is Going To Be Alright」という歌詞を、「Everything Is Alright」と書き直させられた。なんて、ジョークにもならないような可笑しい話を披露。そして、ミャンマーの話が出たらもちろん次は「Signs I Can't Read」。

さっきの「Nowhere Man」や「Open The Blinds」、そしてこの「Signs I Can't Read」など、過去のライヴで締めくくりに歌われた曲が登場するたびに「もうこれで終わってしまうのか」と心配になる。でも、すぐ続けざまに「From Prying Pans Into The Fire」に入ったので一安心。

「今回のツアーは、ヤンゴンの僕、メルボルンのアンソニー、ダーウィンのキムと、3人バラバラの場所から集まったので移動が大変だった。香港に行くためにシンガポール空港で6時間待ちをしていたときに、キムが駐車場で眠り込んでしまって現れなくて大変だったよ」なんて話を(キムによると、それもまたタマスの作り話だそうだよ。まったく)。

なんかこの日のライヴ、最後に近づくにつれてタマスやたらと喋るね。あの初来日のときに、はにかみながら「タマちゃんと呼んでください」なんて言ってたのとは大違い。ライヴの流れみたいなのを考えると、本当はもっと中盤あたりでトークを入れて、終盤はどんどん曲だけで押していった方がいいんだろうけど、そういうことを考えない天然っぽさもまたタマス。

そして、例のキッチンの逸話。一通り話し終えたところで、アンソニーが「まるでその場にいたかのように知ってるよね」と茶々を入れる。あ、そうか、あれって実はタマス自身の話?(と思ったけど、違うらしい。アンソニーも、いつもステージであることないこと冗談にして言われるので、仕返しにああ言ったそうな。ネイサンのシャツの話を思い出すね)。

「“Friday”という歌詞のところで皆でコーラスして」と、「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」を全員で練習。「声が小さい。やり直し」とか、「実際は後半の繰り返しのところだけで歌うんだよ。アンソニーが合図するから彼のことをよく見てて」とか、逐一指図する場馴れしたタマス(笑)

そして、最後は『Two Years In April』から「For The Aperture」。曲が始まる前に「この曲は皆で手拍子を頼むよ」と言ってたんだけど、シンガポール人、何故拍の頭で手を叩く?宴会か。やりにくくてしょうがないよ。タマス達も苦笑いしながら演奏。そして、アンコールはなく、ちょうど一時間のライヴが終了。新曲も一切なく、初めてライヴで聴いたというような珍しい曲もなかったけれど、久しぶりにあの声を生で聴けて、十分に堪能したよ。来てよかった。


会場入り口の物販テーブルのところには既にタマスのサインをもらおうと長蛇の列。そこに向かうタマスが僕のことを見つけ、「終わったら戻ってくるから、待ってて」とか言ってくれて嬉しい。アンソニーとしばらく話してたけど、彼のところにもファンが集ってくるので僕はしばらく離れたところで待機。アンソニーによると、ネイサンが今回不参加なのは、先月子供が生まれたからなんだって。去年はデビューアルバムも出したし、子供も生まれたし、いいこと尽くめだね、ネイサン。

サインをもらおうかと一応日本から『A Plea En Vendredi』を持って行ってたんだけど、物販で見かけた中国盤を見て、それを買うことにした。デジパックの『A Plea En Vendredi』だよ。初めて見た。

Vendredi Digipak.JPG


さっきはあれこれ文句みたいなこと書いてしまったフリカことユーセン・シト君も出てきたので、こちらも日本から持参した『Telepathy Dreams』にサインをもらう。文句書いてごめんよ。CDは大いに気に入ってるんだからね。ジャケにサインをもらおうとしたら、「このジャケットは僕がデザインしたものだから、サインで汚したくないんだ。CDにサインしてもいい?」だって。ははは、僕みたいなこと言うね。結局、サインは内ジャケにしてもらった。

Signed Telepathy Dreams.JPG



タマスたちも疲れてただろうに、ずいぶん遅くまで色々話させてもらった。そこでの話の内容までは逐一書かないけど、きっと日本のファンが一番気にしてるに違いないこの件のことだけは書いても怒らないだろうね。ニューアルバム用の曲はもう既にいくつか書けていて、レコーディングの機会を探してるんだって。今回はどこで?と訊いたら、メルボルンに戻って録音することを考えているらしい。新しいギターを使いたいんだね。そりゃそうだ。

「次回は冬の日本に行って、雪を見てみたい」と話すタマス。なら、それまでにアルバム完成させなきゃね。楽しみにしてるよ。次の来日はキムにベースやってもらって、ネイサンがドラムスで、初めてのバンド編成でのタマス・ウェルズ・バンド公演になればいいな(この部分は僕の妄想)。


Setlist 23 January 2010 @ Esplanade Recital Studio Singapore

1. When We Do Fail Abigail
2. Lichen And Bees
3. Stitch In Time
4. The Opportunity Fair
5. Vendredi
6. I Want You To Know It's Now Or Never
7. Nowhere Man
8. Melon Street Book Club
9. A Dark Horse Will Either Run First Or Last
10. Reduced To Clear
11. Open The Blinds
12. Valder Fields
13. Broken By The Rise
14. Signs I Can't Read
15. From Prying Plans Into The Fire
16. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
17. For The Aperture


<1月27日追記>




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2010年01月19日

Chris Garneau live in Tokyo

garneau_flyer.jpg


「8時には間に合わないと」

机の上に残った仕事はとりあえずなかったことにして、一路渋谷に向かった。今日行けるとは思ってなかったけど、やっぱり行っとかなくちゃ。下手するともう一生観る機会ないかもしれないし。

2年半前にタマス・ウェルズを観たのと同じ会場、渋谷O-nest。6階の受付にたどり着いたのは、開演時間8時の15分ほど前。なんとか間に合った。

Garneau at O-nest.jpg


5階の会場に降りていくと、なんだかがらんとしている。一番前でもテーブルのところでも、好きな場所に陣取れるよ。うわ、あまりチケット出てないとは聞いてたけど、大丈夫かな。とりあえず前回タマスを観たのと同じあたりで観よう。

8時を10分ぐらい回ったところで、前座のおおはた雄一が登場。夢の中で組み立てたみたいな不思議な形をしたギターを抱えて、優しい声で優しい歌を歌う人。曲ごとにカポをあっちにつけたりこっちにつけたり。スライドバーをはめてかなりヘヴィな演奏も披露したり。糸井重里と共作したという「キリン」という曲とか。そのときについでに作ってもらった歌詞を適当な曲にあてはめた「ロバ」という曲とか。ギター上手いなあ。なんだかんだで、結構気に入ったよ。前座をこんなにちゃんと身を入れて聴いたのも久し振りかも。

彼が退場し、後方に置いてあったキーボードを前に動かしたりしている人たちに混じって、今日の主役のクリス・ガノとチェリストのアナ・コールナー(Anna Callner)が出てきたのは9時ちょうどぐらいだったかな。おもむろに椅子に腰掛け、ホタルの光みたいなかぼそい声でひそひそと挨拶を始めたもんだから、後ろの方でそれが聴こえない観客はまだガヤガヤと喋ってる。

ライヴがもう始まってるんだと皆が気づいて一瞬しんとなって、弾き始めた1曲目は確か新作からの「Hands On The Radio」だったと思う。残念ながら、セットリストをきちんと覚えるほど彼の曲を把握しているわけじゃないので、今日は曲目も順番も全然当てにならないよ。

ファーストアルバム『Music For Tourists』と昨年出た新作『El Radio』からの曲をほぼ交互ぐらいに演奏してたように思う。3曲目が新曲だという「October, October, October…」と何度も繰り返した題名の曲だったな。

両脚をぴったりと揃えてキーボードの前に座り、ちょっとこの世のものでないような光を目に湛えて歌うクリス。おそらく僕よりも背が低いこの人は、今までずいぶん生き難い人生を送ってきたんだろうなと想像してしまう。

いや、背が低いからとかいうんじゃなくてね。なんて言うんだろう。美しい音色のピアノを弾きながら、震えるような悲しい声で歌う、それだけを目的として生まれてきた生き物、みたいな。この人、普段人並みの生活を送るなんてことができるんだろうか、なんて思える。肉食系とか草食系とか言うけど、あえて言うなら草食系にすら食べられてしまいそうな植物系というか。

タマス・ウェルズが、あの天使の歌声に反して地声がごく普通の低めの声なのに比べて、クリスの声は、ボソボソと曲間にしゃべるときですら、まるでタマスの歌声のようなか弱さ。と思えば、歌うときには決して声を高めることのないタマスとは逆に、クリスの歌声は時折りまるで悪魔かなにかが乗り移ったかのように激昂する。きっとこの人は、普段は何か薄い膜のようなものに包まれていて、歌を歌っているときにだけ本当の人生を送っているんじゃないか。

なんてことを考えながら。最近始めて耳にしたセカンドよりも個人的にはもう2年ぐらい聴いて耳に馴染んでいるファーストからの曲が多かったのが嬉しかった。大好きな「Baby's Romance」も、キュートな「Blue Suede Shoes」も演ってくれたし。

「あと2曲」と前置きして歌い始めたのが、エリオット・スミスのカバー「Between The Bars」。Liricoのブログに、つい最近の台湾でのこの曲のライヴ映像が載ってたね。目の前であの声で歌われるとやっぱり全然違うけど。

アンコールは2回。2回目に出てきたときに「もうこれが最後だからね。これ以上呼ばれるとビートルズの曲でも演るしかなくなるよ」なんて冗談言ってたね。ちょうど2年半前にこの場所でそれをやった人がいることを知ってて言ったのかな(笑)


2度目のアンコールが終わったのが、10時をちょっと回った頃だったかな。ちょうど1時間ぐらいか。でも、濃密だったよ。ほんとうに、無理して来てよかった。危うくこれを見逃すところだったかと思うと。東京在住じゃなくて観られなかった人、残念でした。今日来ようと思えば来られたのに、月曜だからとか最近来日ラッシュだからとかいう理由でスルーした人、とんでもなくもったいないことをしたよ。


終演後は6階に戻って、今日は来るつもりじゃなかったからサイン用のCDも何も持ってきてなかったからセカンドアルバムを買おうと思ったら、なんと中国プレスのファーストも売ってるよ。ボートラ3曲入りで、なんだか不思議な作りのケース。スリップケースに入ったボール紙の内側に蛇腹状の歌詞カード。当然これも買いでしょう。2枚まとめて大人買い。つい2日前のコメント欄で「しばらくCDは買わないことにした」なんて書いてたのはどこの誰なのか。

Chinese Music For Tourists.JPG


あ、このボートラの曲(「Blackout」)、さっきアンコールで演った曲だね、きっと。何年か前にニューヨークが2日間停電になったときの曲とか言ってたから。

サイン会が始まったので、列に並んでクリスとアナのサインをもらう。しゃべってみたら、あれ?全然普通の気のいいお兄ちゃんだね。さっきの何かが乗り移ったみたいな雰囲気はどこへやら。でも、サインの字はやっぱりひそひそとかぼそいね。アナの方がよっぽど豪快なサインだよ。ハートマークの中にスマイル描いてくれるし、チェロの絵も描いてくれるし、サービス精神旺盛。

「もう明日NYに帰るの?」と訊いたら、アナのいとこが長野に住んでいるとかで、あと一週間日本に滞在するとのこと。さっきライヴの途中に寒い季節が好きだと言ってたクリス、寒い日本を満喫して帰ってね。

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2010年01月16日

Tinted Windows live in Tokyo

Duo.JPG


今年一発目のライヴは、渋谷Duo Music Exchangeで昨晩行われたティンテッド・ウィンドウズ。当初、Zepp Tokyoの予定だったのが、随分規模の小さなこちらのハコに変更。あまりチケット売れてなかったのかな。まあ、僕にとっては地の果てみたいなZeppまで足を運ばされなくてラッキー。開始時間も遅くなったので、会議が終わってから駆けつけてもまだ開演まで余裕があったし、おまけに小さな会場だから、真ん中あたりでも結構至近距離で観られて、いいことづくめ。

予定時刻を15分ほど押したところで、客電が落ちてメンバーがステージに登場。CDの裏ジャケやPVと同じく、ステージ左からジェームズ・イハ、テイラー・ハンソン、アダム・シュレシンジャー、一番右にサポートのギタリスト、中央後方にバーニー・カルロス。右手のギタリストは帰って調べてみたら、ジョシュ・ラッタンジ(Josh Lattanzi)という人。アルバート・ハモンド・ジュニアのバンドのべーシストらしい。

オープニングは、アルバム最終曲「Take Me Back」。ドラムの音がかっこいいよ。さっきリンクした記事にも書いたけど、このバンドの音の要はやっぱりバーニーのドラムだね。それにしてもバーニー、鼻の頭と両方のほっぺにまるで赤いクレヨンでぐるぐると丸く塗ったみたいで、すごく可愛い(笑)。酔っ払ってるのか?なんであんなに赤いんだ?ヒゲを短く刈ってこざっぱりしたサンタクロースみたい。野球帽かぶって軍手はめて、プロモ写真のスーツ姿とは大違い。いいな、この人。

続いて、アルバム中僕が一番好きな「Can't Get A Read On You」。もう演るのか。ギターのリフもかっこいいんだけど、僕の位置からだとイハのギターが全然見えない。顔だけ見ててもしょうがないので、自然と視線は目の前のアダムに。塗装のはげたフェンダーのジャズベースをかかえ、時折りコーラスをかぶせる。この人もプロモ写真とは違って、無精髭に労働者風のグレーの簡素なシャツ。ちょっと東欧系というかアラブ系っぽい顔つきなんだね。シュレシンジャーってどこ系の名前なんだろ。

その後もアルバムからの曲を順不同に立て続けに演奏。テイラーが、「久しぶりに日本に来られて嬉しい」って言ってたから、ハンソンは来日したことがあるんだね。だとすると、15年ぶりぐらいになるのかな。アダムは曲が終わるたびに「アリガトゴザイマス」って言ってたね。丁寧。

6曲目で演った「New Cassette」(多分)は新曲なのかな。どの曲のときに言ってたか忘れたけど、次のアルバムを作ろうとしてるらしく、それは「Tinted Windows 3」になるんだって(笑)。トラベリング・ウィルベリーズか。

「次はちょっとスローダウンしよう」って言うから、あのアルバムにスローな曲なんて入ってたっけと思ったら、「Back With You」か。「次はもっとロックンロールっぽいのを」と続けた「Cha Cha」と全然テンポ変わらないじゃない(笑)。まあ、そういうところがいいんだけどね、あのアルバム。

10曲目で「次の曲は日本盤のボーナストラックだから、日本人しか聴いたことがないんだよ」とアダム。ごめん、僕は安い輸入盤買ったからその曲知らないんだけど。「この曲には、天井のディスコボールを使って」って、多分予定されてなかっただろうミラーボールを急遽動かしてた。

「アジアン・カンフー・ジェネレーションから花をもらった」って言ってたっけ。「アメリカでは誰も花なんてくれないからね。歓迎されてる気持ちが伝わって嬉しいよ」と。そういうMCは大体アダム。テイラーもいろいろ喋ってたけど、どうも彼のマイクちょっと音が割れてたのか、えらく言葉が聴き取りにくかった。イハもたまに喋ってたけど、バーニーは終始後ろで(赤いぐるぐるほっぺで)ニコニコしてるだけ。

そのボーナストラック「The Dirt」のエンディングを延々引っ張った挙句に、あのメタリックなギターのフレーズでメドレーのように始まったのが「Kind Of A Girl」。うひゃー、かっこいい。

てっきりそれがエンディングかと思ったら、続けてもう1曲演った後に「最後はナックの曲」と言って、ジョシュがこの日初めてリードギターを弾いた「Let Me Out」を。ナックだって。なんかすごい嬉しい。そういえば、そもそもこのグループを始めたきっかけが、“バズコックスからナック、チープ・トリックまでを意識して”ということだったよな。

とか思ってたら、アンコールで登場したアダムが「バズコックスを演るよ」と、「I Don't Mind」を始めた。そう、こういう趣味の人たちだから、年齢も見た目も元いたバンドのテイストもバラバラなのに、出てくる音のセンスがこんなにいいんだよね。

もうこの頃になると、ピンホールカラーの白いシャツに細身のネクタイで決めたテイラーが、一番ばててたかな。なんかハアハア言ってるよ。一番若いのにね。でも、あの格好はさすがに暑いだろう。観てるこっちもダウンのジャケットで相当汗だくだったけどね。

最後に「Without Love」で終了。結局、日本盤ボートラも含んだアルバム全曲と、新曲1曲、ナックとバズコックスのトータル15曲でわずか1時間。正直言って腹八分目の長さだったけど、それがちょうどよかったかも。もしかしたらファウンテンズ・オヴ・ウェインかチープ・トリックの曲を演るかなと思ってたけど、そういうのはやらないお約束なのかもね。

そう思うと、来週のファウンテンズのアコースティック・ライヴ観たくなってきたよ。ちょっと仕事が立て込んでて行けそうにないんだけどね。他にも行きたいライヴがいくつもあるし、なんでこの時期にこんな来日ラッシュなんだ?さては、去年の急な円高の時期に、あちこちのプロモーターが調子に乗って一斉にオファーしたのがちょうど今の時期に重なったのかも。


Setlist 15 Jan 2010 @ Shibuya Duo Music Exchange

1. Take Me Back
2. Can't Get A Read On You
3. Nothing To Me
4. Dead Serious
5. Messing With My Head
6. New Cassette
7. Back With You
8. Cha Cha
9. We Got Something
10. The Dirt
11. Kind Of A Girl
12. Doncha Wanna
13. Let Me Out

Encore
1. I Don't Mind
2. Without Love
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2010年01月09日

2009年個人的ベストアルバム

なんか久しぶりだな。冬眠で寝過ごした気分。もう正月気分もすっかり抜けたけど、一応一年の最初の記事なんで、恒例の去年の総集編記事をやろう。実は、この記事に書いたインドネシアでのCD屋巡りで自分の買い物心に火がついてしまったのか、12月中はもの凄い勢いで買ってしまっていて、数えてみたら先月だけで全部で85枚。1月に入ってからもその勢いが止まらず、最初の4日で13枚、あと正月に友人に「これいいから聴いてみて」と貰った1枚も含めると、この約1ヶ月でちょうど99枚。自分でも笑えるほどの枚数だ。

その85枚も含めた、去年一年間の購入枚数がこれ。

フォーマット      枚数    対前年
CD              275枚     −7枚
CDシングル        17枚     +3枚
CD+DVD          12枚    −7枚
DVD/BD           2枚     −4枚
ダウンロード          1枚    増減なし
LP               9枚     −1枚
シングル           11枚    +8枚
ボックスセット         3箱     +2箱


というわけで、全部で330枚。去年の記事のコメント欄で立てた目標その1:去年以上買わないをかろうじてクリア(一昨年は336枚)。しかもこの330枚のうち85枚が最後の1ヶ月の駆け込みだから、それまでの11ヶ月間では、わずか245枚(一応ツッコミどころ)。なんか、それまでがんばってダイエットしてたのに、ついドカ食いして急に太ってしまった、みたいな感じ。

そして、目標その2:総額50万円を下回るも楽々達成。一枚あたりの平均単価1244円は、06年の1234円についで自分史上2番目の安さ。シングル盤が多少増えてるからというのもあるとはいえ、例の自分史上最高金額だったグレン・ティルブルックの『Aussie P』とかを入れてもその平均なんで、普段地道に安いブツばかりを選んで買ってるのが功を奏したと言えるだろう。

年末にそれだけまとめて買った理由の一つが、09年の個人的ベストアルバムを選ぶために、買い残していたものや、普段よく行く音楽ブログで昨年のベストに選ばれていたものなんかをまとめて買ったこと。そういうのを含めたベスト10選考会が延々終わらなかったのが、この今日の記事がこんなに遅れてしまったことの言い訳。言い訳ついでに書いておくと、結局今日になっても激戦の選考会は終わらず、どうしても最後の1枚を落すことができなくて、やむなく去年のベストアルバムは11枚という結果になってしまった。


<第十位(同点)>
Iron And Wine 『Around The Well』
Around The Well.jpg

07年の個人的ランキングでは一位だったアイアン&ワインのシングルB面曲や未発表曲集。CDは2枚組で、僕の買ったLPだと3枚組になる大作だ。実はこのアルバムと、ほぼ同時期に出たライヴ盤と、当時彼のサイトでフリーダウンロードしていた『The Shepherd's Dog』のアコースティックヴァージョンを全部まとめた記事を脳内で構成していたんだけど、ちょうどその頃忙しくしていて長文記事を書く暇がなく、結局その記事はお蔵入りしてしまった。

02年の『The Creek Drank The Cradle』から07年の『The Shepherd's Dog』に至るまで。『The Creek〜』の簡素なジャケに描かれた一本の樹のようなシンプルなアコースティックサウンドが、ブライアン・デックが生み出したまるで樹海のような入り組んだ音に成長するまでの変遷が聴いて取れる。サム・ビームとブライアンが6年をかけて丁寧に編み続けてきた緻密なタペストリーを、裏側から透かして見ているようなアルバム。単に未発表曲集と呼んでしまうにはもったいないほどの構成だ。

それだけではない。LPだと最終面全部を占める「The Trapeze Swinger」という超弩級の名曲が最後に控えていることが、このアルバムの価値を更に高めている。とはいえ、実は僕がこの曲を最初に聴いたのは、先述のライヴ盤『Norfolk 6/20/05』だったんだけど、ブライアンの手になる緻密なスタジオ録音よりも、サムの弾き語りだけのそのライヴ録音の方が心にずしんとくるという、いかに優れたプロデュースワークも曲自体の良さにはかなわないということを、それが見事に証明していた。そんなライヴ盤による好アシストをも含めての入選。

最初に見たときは単なる幾何学模様だと思っていたけど、LPを手にしてみて、実はアメリカの農場の航空写真だと気づいた秀逸なジャケも好印象。とか、お蔵入り記事に書きたかったことがどんどん出てくるけど、このままだと今日の記事が終わらないので、次に行こう。


<第十位(同点)>
Landon Pigg 『The Boy Who Never』
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こういうのを教えてくれるから、xiao61さんのブログからは目を離せないんだよね。彼女の昨年度ベストには選ばれなかったようだけど、このアルバムが取り上げられた最初の記事を読んで興味を持ってすぐ入手し、大いに気に入っているアルバム。買ってからすぐに(ブログ的には)冬眠状態に入ってしまったから記事にはしてないけど、これはxiaoさんが「自信を持っておすすめできます。もっともっと、多くの人に聴いてほしい」と書きたくなる気持ちがよくわかるよ。イケメンだしね(笑)


<第九位>
Bruce Springsteen 『Working On A Dream』
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去年の初頭に出たのに、これも記事にはしなかったアルバム。DVDとの2枚組。実を言うと、最初に何度か聴いてみて、あまりピンと来なかったんだ。日本盤の広告曰く「ボス史上最もPOPな作品」ということだったけど、それほどポップだとも思えなかったし、なにより冒頭の「Outlaw Pete」がちょっとしたハードルだった。8分にも及ぶ大作なんだけど、初期の「New York City Serenade」や「Jungleland」みたいなのを期待してしまうとどうしても見劣りしてしまう曲展開とストーリー。そんなに酷い曲というわけではないんだけど、その曲の凡庸な印象がずっとまとわりついて、このアルバム自体を何度も聴き返すことがなかった。

しばらく前に買ったのに、全然読む時間がなかった五十嵐正さんの「スプリングスティーンの歌うアメリカ」という本を最近読み始めて、ちょっとあのアルバムをもう一回ちゃんと聴き直してみようかなと思ったのがきっかけ。一曲一曲をちゃんと歌詞を見ながら聴き込んで、このアルバムが生前最後の演奏になったダニー・フェデリーシに捧げられたブルースの追悼文を読みながらアルバム本編最終曲「The Last Carnival」を聴いて、とどめにDVDに収録された彼の姿を観たら、もう鼻の辺りがじーんとなって視界がぼやけてきてしまった。

そういう、僕にとっては、見落としていたのを五十嵐さんに拾い上げてもらったようなアルバム。贔屓耳で聴くと、おそらく「最もPOP」と言われる原因となったであろう「Surprise, Surprise」とか、チャーミングな曲もあるし。これみよがしなフレーズはないものの、僕の大好きなニルズ・ロフグレンのギターがあちらこちらで見え隠れしてるし。ブレンダン・オブライエンのプロデュースにしては、最近のぼわーっとした厚手のシンセの音も控えめだし。ああ、また止まらない。次行こう。


<第八位>
Matthew Sweet And Susanna Hoffs 『Under The Covers Vol.2』
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やっと今までにブログで取り上げたアルバムが出てきた。これは8月16日の記事。企画としては安易で後ろ向きなのかもしれないけど、やっぱり聴いてて楽しいよね、これ。選曲がいいのはもちろんだけど、きっと本人達が一番楽しんで演奏してるからなんだろうね。後になって判明した沢山のボートラもよかったし、上の記事にも書いてるけど、80年代の曲をフィーチャーすることになるVol.3が今から楽しみ。今日久しぶりに引っ張り出してきて聴いたら、また2曲目のサビのところで鳥肌立ったよ。やっぱりあの記事のタイトル、あれでよかった。


<第七位>
John Wesley Harding 『Who Was Changed And Who Was Dead』
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5月10日の記事で取り上げたアルバム。彼の久々のポップアルバムとして好意的に受け入れたい気持ち以上に、やはりこの2枚目のライヴアルバムにどうしても惹かれてしまう。今まで何枚かオフィシャル・ブートレグ扱いのライヴ盤が出ている人だけど(そもそも彼のデビュー作はライヴ盤だった)、これだけベスト盤的な選曲が楽しめるものは初めてかも。これ聴くたびに、ライヴ観たいなって思ってしまうよ。誰か5000ドルとNYからの旅費、一緒に集めない?


<第六位>
Montt Mardie 『Skaizerkite』
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11月4日の記事は結局カブ子さんが“読んでる途中”(笑)というコメントを残してくれただけで、いまいち反応が薄かったんだけど、こうして僕の中では立派に昨年度第六位。あの後、確か同時期に出たはずのベストアルバムも入手して、去年僕の中ではちょっとしたこの人ブームが巻き起こったものだった。聞くところによると、彼は今後このMontt Mardieでなく、このアルバムの内ジャケにも署名のあったMonty名義で活動していくとのこと。その名義で早くもリリースされるというアルバムが楽しみ。


<第五位>
Dylan Mondegreen 『The World Spins On』
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北欧系が続くよ。先月のアットホームな来日公演も記憶に新しいディラン・モンドグリーンのセカンドアルバム。その記事に「来月に書く予定の09年個人的ベストアルバム記事に登場する可能性大だろう」なんて書いてるけど、別にライヴを観て盛り上がった勢いでランクインさせたわけじゃない。その記事に名前を挙げたプリファブ・スプラウトや、アズテック・キャメラ、トラッシュキャン・シナトラズなんかの遺伝子をきちんと受け継いだアルバムだよ(関係ないけど、後者2名は皆もうすぐ来日だね。どちらも行けそうにないのが残念だけど)。


<第四位>
Jeb Loy Nichols 『Strange Faith And Practice』
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第四位は、昨年末に取り上げたばかりのこれ。なんだかいつものんびりとアルバムを作っているイメージのあるジェブ・ロイが、どういうわけかいきなり年に3枚も発表したうちの一枚。もしもそれぞれが違った年に出ていたら、皆それぞれに僕のその年のベストアルバムに選ばれたかもしれないぐらいの出来映えなのに、さすがに一年に何枚も同じ人の作品を入選させるのもちょっと気が引けるので、3枚の中でも一番プロフェッショナルな顔をしたこれ(ジャケ写の話じゃないよ)を入れよう。


<第三位>
The Swell Season 『Strict Joy』
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いまだこのブログに名前すら出てきたことのないこの人たちが、いきなりの第三位。去年の暮れに入手し、本当はジェブ・ロイの次に去年最後の記事にしようと思ってたのに、時間がなくてつい放ったらかしにしているアルバム。CDだけのヴァージョンも出てるけど、僕が買ったのはそれにライヴCDとDVDが付属した特別版。書こうとしていた記事の卵みたいなのがまだ頭の中に残ってるから、これについても山ほど書くことはあるけど、ここまで上位に入れるぐらいのアルバムだから、やっぱりちゃんと別記事にしようかな。というわけで、今日は内容には一切触れてないけど、いいよ、これ。今何かCD買おうかなと思ってる人はこれにしてみたら。CDだけの安いヴァージョンでいいから。


<第二位>
100s 『世界のフラワーロード』
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何を歌っているのかさっぱり聞き取れないのに。どう贔屓目に言ってもいわゆる「いい声」なんかじゃないのに。10年前はそれなりにかわいい渋谷系っぽかった見かけが、最近では引きこもりのニートみたいになってきたのに(苦笑)。それでも、中村一義のうたはいつだって僕にとってはそのとき一番手放したくない大切なものになってしまう。97年の『金字塔』からずっとそう。この最新作も、付属のDVDも、丁寧な作りの写真集も、去年僕が手に入れた大事な宝物だ。

日本人のアルバムは滅多に取り上げない僕のブログだけど、このアルバムについて書いた記事のコメント欄には「僕の中では一時の『Pandemonium Ensues』みたいな位置付けになってしまっています」なんて書いたね。それがどういう意味だったのかは、この堂々とした順位が表している。


<第一位>
Glenn Tilbrook And The Fluffers 『Pandemonium Ensues』
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というわけで、ちょうど一年前の明日、09年1月10日にライヴ会場で初めて手にして以来、残り355日(+今年9日間)に買った全てのアルバムの追撃をかわして、このアルバムが堂々の第一位。まあ、このブログをずっと読んでくださっている方には特に驚くべきことでも何でもないだろうけど。このアルバムについてはこの記事に書いたけど、それ以外にも去年はこの人とこのアルバムのことばかりを書いていた気がする。なにしろ年初の追っかけとこのアルバムによる中毒にはじまって、7月には奇跡の再来日と、去年は本当にずっとグレン祭りが続いていたようなものだからね。

噂によるとどうやら今年も来日が予定されているようで、今から期待で胸がわくわくする。最近買った99枚を消化したり、この記事のための選考会のために候補のアルバムばかりを繰り返して聴いていたせいで、しばらくこのアルバムは聴いていなかったけど(これは選考会に参加させる必要なんてなかったからね)、この一位を記念して久しぶりにCDプレイヤーに入れてみた。「Best Of Times」の最初のフレーズが聴こえた途端、ありとあらゆる感情が一気に蘇えってきて、息が詰まりそうになった。どうやらこいつはこれからずっと、僕にそういう影響を及ぼすアルバムになりそうだ。


という10枚。いや、11枚か。なんだかやけに薄い色合いのジャケが多いね、こうして並べてみると。赤いのが一枚もないや。選考会でティンテッド・ウィンドウズを落としたからね。来週のライヴを観た後なら、もしかしたら入選してたかもしれないけど…なんて考えてたらまたきりがないから、もう去年のはこれで決まり。
posted by . at 23:04| Comment(10) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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