2009年12月25日

狂い咲き - Jeb Loy Nichols

Strange Faith And Practice.jpg Only Time Will Tell.jpg
Jeb Loy Nichols 『Strange Faith And Practice』
Ian Gomm & Jeb Loy Nichols 『Only Time Will Tell』

1997年 『Lover's Knot』
2000年 『Just What Time It Is』
2002年 『Easy Now』
2005年 『Now Then』
2007年 『Days Are Mighty』
2009年 『Parish Bar』

最初のソロアルバム以降、計ったように2〜3年のブランクを置いて新作を発表してきた人だった。ジェブ・ロイ・ニコルズ。僕が彼のことを知ったのは、00年のセカンドだったから、それからソロ以前のフェロウ・トラヴェラーズ時代の作品も含めて少しずつコツコツと彼のCDを集めるには、そのくらいがちょうどいいブランクとも言えた。

『Parish Bar』が出たのは、今年の2月だったか。3月には軽めの記事にしてるね。うん、あれも期待を裏切らないいいアルバムだった。いつもの版画とはちょっと違った趣のエキゾチックなジャケもよかったし。

最早そんなに活発にライヴ活動とかもしているような人ではないから、「アルバムからのシングルカットはどの曲」とか「ツアーには出るのかな」とか考える必要がないというか、また忘れた頃に次のアルバムが出るのを忘れながら待ってればいいやと思っていたら。

なんと今年に入って2枚目のアルバムの発表。そして更に3枚目。この時期に来てこの狂い咲き。一体この人に何が起こったのか。

まずは上の写真、左側のソロ名義作『Strange Faith And Practice』から。ノスタルジア77というジャズ・バンド(なのかな? 僕は知らないグループだけど、ところによってはエレクトロニクス系のグループとも書いてある)のファンだったというジェブが、そのバンドからリアーン・ヴォスルー(Riaan Vosloo)と、べネディク・ラムディン(Benedic Lamdin)という二人のメンバーを起用して作ったジャズ(?)アルバム。

最近はいつも自分でアルバムをプロデュースしていたジェブだが、今作のプロデュースはその二人に任せ、本人は歌と演奏に専念。リアーンの方はアレンジャー、べーシストとしてもクレジットされ、ベネディクはエンジニアとして名前が載っている(楽器は演奏していない模様)。それ以外の参加者は、ジェブのいつものバックバンド。更に、ジャズアルバムらしく、サックス奏者が二名、トランペット、チェロ、ヴァイオリン二名、ヴィオラ奏者の名前もクレジットされている。

ここ数作、ちょっとユルいというか、かなりリラックスしたアルバムが続いていたけれど、今回はその布陣のお陰か、結構作り込んだ作品に仕上がっている。冒頭「Sometime Somewhere Somebody」から続く数曲などは、『Lover's Knot』での暗く湿った雰囲気を髣髴とさせる。

といっても、別に暗いアルバムというわけではない。LPで言うとおそらくB面の頭にあたるであろう7曲目に「Interlude One」というインスト曲が入っていて、その次のアルバム表題曲からかなりジャズテイストが強くなる。10曲目には「Interlude Two」というのもあり、ちゃんと展開を考えてかちっと作ってあるなという感じ。

相変わらずちょっと鼻にかかった声でべたっと歌う人なので歌詞は聴き取り難いんだけど、12曲目「Home Wasn't Built In A Day」とか、洒落た言葉遊びだなあと思う。

プロダクションだけでなく、一つひとつの曲のクオリティも高い今作だけど、美しいピアノに乗せて歌われる終曲「Next Time」が白眉かな。ちょうどクリスマスだからというわけじゃないけど、今みたいな冬の夜にしっくりくるいい曲。


発売は若干遅れたけど、ジェブのサイトでの紹介のされ方なんかを見ると、おそらく先に録音されていたのは、上の写真右側のアルバム。ジャケットに大きく名前が載っているように、なんとイアン・ゴムとの共作だ。

一体どういう経緯でこの二人が?と思うけれど、なんでも昔からブリンズリー・シュウォーツのファンだったというジェブが、ウェールズにある自宅のすぐ近所にイアンが住んでいることを知り、自己紹介をしに行ったというのがきっかけらしい。それから毎週会うようになり、お互いの趣味である古いソウルのレコードを聴いたり、一緒に演奏するようになったとのこと。その延長がこのアルバムというわけだ。

ボビー・ウォマックやカーティス・メイフィールドのソウル・クラシックや、イアン、ジェブそれぞれの新曲、二人の共作、それに、ブリンズリー・シュウォーツのファンにはちょっと嬉しい「Hooked On Love」の再演もある(『Please Don't Ever Change』は僕が最初に買った彼らのLPだ。リイシューの日本盤だったけど)。

二人でソウルのカバーアルバムを作ろうなんて気張らずに、おそらく上に書いたような毎週のセッションの合間に録り貯めたようなアルバムなんだろうな。そういう、いい意味で力の抜けたユルい作品。あ、でも、二人の共作「Snakes And Ladders」とか、曲のクオリティはこちらも高いよ。

パブロックのファンには、イアン・ゴム以外にももう一つサプライズが。シンプルな作りの紙ジャケを開いて中のクレジットを読んでびっくり。ギターとアコーディオンで参加しているのは、なんと元エニー・トラブルのクライヴ・グレグソン(「なんと」なんて驚き、誰が同意してくれるのか)。当然ジェブもイアンもギター弾いてるから、アルバム中どのギターの音がクライヴなのか今いちよくわからないんだけど、なんかこの3人が一緒にセッションをしてるところを想像するだけで、楽しくなってくるよ。

ジェブのサイトに「アメリカ人とイギリス人がソウルとカントリーを歌い、それをウェールズで録音し、ナッシュビルでミックスして、日本で発売した」と書いてあるように、当初このアルバムは日本のみでの発売だったらしい。一体どういう経緯でそんなことに?と思うけど、今はイアンのサイトとかでも一応入手可能らしい。

どういう経緯か知らないけど、快挙だよね、MSI。おそらく二人とも、日本でもイギリスでもそんなに大人気というわけじゃないだろうに、今の時代ダウンロード・オンリーとかじゃなく、こういう愛情一杯のジャケ(さっきの『Strange〜』はプラケース入りだったことをジェブ自身がブックレットで悔やんでいたけど、こちらは紙ジャケ)に包んで届けてくれるなんて。歌詞も丁寧な解説もついてるし。定価2835円は決して安い値段ではないけれど、こういうのはちゃんとお金を払って買おう。


いつも2〜3年ごとにアルバムが出るから、忘れていても大丈夫だったんだけど、いきなりこんなペースで出されると、次はどう来るのか全く読めないよね。このまま量産体制に入るのか、もしくは先々の分を前倒しで作ってしまったから、あと10年ぐらい音沙汰無くなるのか。まあ、どっちにしてもこの人らしいけどね。
posted by . at 01:22| Comment(6) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする