2009年12月25日

狂い咲き - Jeb Loy Nichols

Strange Faith And Practice.jpg Only Time Will Tell.jpg
Jeb Loy Nichols 『Strange Faith And Practice』
Ian Gomm & Jeb Loy Nichols 『Only Time Will Tell』

1997年 『Lover's Knot』
2000年 『Just What Time It Is』
2002年 『Easy Now』
2005年 『Now Then』
2007年 『Days Are Mighty』
2009年 『Parish Bar』

最初のソロアルバム以降、計ったように2〜3年のブランクを置いて新作を発表してきた人だった。ジェブ・ロイ・ニコルズ。僕が彼のことを知ったのは、00年のセカンドだったから、それからソロ以前のフェロウ・トラヴェラーズ時代の作品も含めて少しずつコツコツと彼のCDを集めるには、そのくらいがちょうどいいブランクとも言えた。

『Parish Bar』が出たのは、今年の2月だったか。3月には軽めの記事にしてるね。うん、あれも期待を裏切らないいいアルバムだった。いつもの版画とはちょっと違った趣のエキゾチックなジャケもよかったし。

最早そんなに活発にライヴ活動とかもしているような人ではないから、「アルバムからのシングルカットはどの曲」とか「ツアーには出るのかな」とか考える必要がないというか、また忘れた頃に次のアルバムが出るのを忘れながら待ってればいいやと思っていたら。

なんと今年に入って2枚目のアルバムの発表。そして更に3枚目。この時期に来てこの狂い咲き。一体この人に何が起こったのか。

まずは上の写真、左側のソロ名義作『Strange Faith And Practice』から。ノスタルジア77というジャズ・バンド(なのかな? 僕は知らないグループだけど、ところによってはエレクトロニクス系のグループとも書いてある)のファンだったというジェブが、そのバンドからリアーン・ヴォスルー(Riaan Vosloo)と、べネディク・ラムディン(Benedic Lamdin)という二人のメンバーを起用して作ったジャズ(?)アルバム。

最近はいつも自分でアルバムをプロデュースしていたジェブだが、今作のプロデュースはその二人に任せ、本人は歌と演奏に専念。リアーンの方はアレンジャー、べーシストとしてもクレジットされ、ベネディクはエンジニアとして名前が載っている(楽器は演奏していない模様)。それ以外の参加者は、ジェブのいつものバックバンド。更に、ジャズアルバムらしく、サックス奏者が二名、トランペット、チェロ、ヴァイオリン二名、ヴィオラ奏者の名前もクレジットされている。

ここ数作、ちょっとユルいというか、かなりリラックスしたアルバムが続いていたけれど、今回はその布陣のお陰か、結構作り込んだ作品に仕上がっている。冒頭「Sometime Somewhere Somebody」から続く数曲などは、『Lover's Knot』での暗く湿った雰囲気を髣髴とさせる。

といっても、別に暗いアルバムというわけではない。LPで言うとおそらくB面の頭にあたるであろう7曲目に「Interlude One」というインスト曲が入っていて、その次のアルバム表題曲からかなりジャズテイストが強くなる。10曲目には「Interlude Two」というのもあり、ちゃんと展開を考えてかちっと作ってあるなという感じ。

相変わらずちょっと鼻にかかった声でべたっと歌う人なので歌詞は聴き取り難いんだけど、12曲目「Home Wasn't Built In A Day」とか、洒落た言葉遊びだなあと思う。

プロダクションだけでなく、一つひとつの曲のクオリティも高い今作だけど、美しいピアノに乗せて歌われる終曲「Next Time」が白眉かな。ちょうどクリスマスだからというわけじゃないけど、今みたいな冬の夜にしっくりくるいい曲。


発売は若干遅れたけど、ジェブのサイトでの紹介のされ方なんかを見ると、おそらく先に録音されていたのは、上の写真右側のアルバム。ジャケットに大きく名前が載っているように、なんとイアン・ゴムとの共作だ。

一体どういう経緯でこの二人が?と思うけれど、なんでも昔からブリンズリー・シュウォーツのファンだったというジェブが、ウェールズにある自宅のすぐ近所にイアンが住んでいることを知り、自己紹介をしに行ったというのがきっかけらしい。それから毎週会うようになり、お互いの趣味である古いソウルのレコードを聴いたり、一緒に演奏するようになったとのこと。その延長がこのアルバムというわけだ。

ボビー・ウォマックやカーティス・メイフィールドのソウル・クラシックや、イアン、ジェブそれぞれの新曲、二人の共作、それに、ブリンズリー・シュウォーツのファンにはちょっと嬉しい「Hooked On Love」の再演もある(『Please Don't Ever Change』は僕が最初に買った彼らのLPだ。リイシューの日本盤だったけど)。

二人でソウルのカバーアルバムを作ろうなんて気張らずに、おそらく上に書いたような毎週のセッションの合間に録り貯めたようなアルバムなんだろうな。そういう、いい意味で力の抜けたユルい作品。あ、でも、二人の共作「Snakes And Ladders」とか、曲のクオリティはこちらも高いよ。

パブロックのファンには、イアン・ゴム以外にももう一つサプライズが。シンプルな作りの紙ジャケを開いて中のクレジットを読んでびっくり。ギターとアコーディオンで参加しているのは、なんと元エニー・トラブルのクライヴ・グレグソン(「なんと」なんて驚き、誰が同意してくれるのか)。当然ジェブもイアンもギター弾いてるから、アルバム中どのギターの音がクライヴなのか今いちよくわからないんだけど、なんかこの3人が一緒にセッションをしてるところを想像するだけで、楽しくなってくるよ。

ジェブのサイトに「アメリカ人とイギリス人がソウルとカントリーを歌い、それをウェールズで録音し、ナッシュビルでミックスして、日本で発売した」と書いてあるように、当初このアルバムは日本のみでの発売だったらしい。一体どういう経緯でそんなことに?と思うけど、今はイアンのサイトとかでも一応入手可能らしい。

どういう経緯か知らないけど、快挙だよね、MSI。おそらく二人とも、日本でもイギリスでもそんなに大人気というわけじゃないだろうに、今の時代ダウンロード・オンリーとかじゃなく、こういう愛情一杯のジャケ(さっきの『Strange〜』はプラケース入りだったことをジェブ自身がブックレットで悔やんでいたけど、こちらは紙ジャケ)に包んで届けてくれるなんて。歌詞も丁寧な解説もついてるし。定価2835円は決して安い値段ではないけれど、こういうのはちゃんとお金を払って買おう。


いつも2〜3年ごとにアルバムが出るから、忘れていても大丈夫だったんだけど、いきなりこんなペースで出されると、次はどう来るのか全く読めないよね。このまま量産体制に入るのか、もしくは先々の分を前倒しで作ってしまったから、あと10年ぐらい音沙汰無くなるのか。まあ、どっちにしてもこの人らしいけどね。
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2009年12月21日

→Pia-no-jaC← instore live in Tokyo

昨日の記事に“今年最後のライヴ”と書いたばかりだけど、某ブログで散々喧伝されまくっているこのイベントがあるのを思い出して、小春日和の新宿に出かけてきた。晴れ渡った空に、身の引き締まる冷たい空気が気持ちいいね、こういう日は。

※タワーレコード新宿店で11月18日(水)発売DVD『First Movies』または12月16日(水)発売New Album『EAT A CLASSIC 2』をご購入のお客様に先着でサイン会参加券をお渡し致します(入荷日からイベント当日終演まで)。
※サイン会参加券には限りがあり、無くなり次第、終了となります。


ライヴ開始が5時で、新宿に着いたのがもう4時前だったから、半分駄目元で訊いてみたら、まだまだ参加券は残ってるとのこと。なんだ、そんなに人気ないのかな。それならと、『Eat A Classic 2』をまず買って参加券をもらい、一階上の洋楽フロアで時間を潰す。

4時ちょっと過ぎにイベントスペースに行ってみたら、もう始まってるよ! 既に相当数の観客が集まっているところに慌てて参加。ステージから2-3メートルの距離かな。ほぼ中央のいい場所が取れたけど。ほとんど女の子だね。すごい人気。

PJ Rehearsal.jpg


そしたらそれはリハーサルだったとのことで、軽く観客をいじりながら数曲演奏したところで一旦退場。でも、そのリハーサルの凄い音を聴いて、人がどんどん集まってくる。最初、前から3-4列目ぐらいまでは座って観てたのが、場所がないので立てと言われる。リハーサルを撮った上の写真ではまだ僕が居た位置からステージが見えていたが、全員が立った時点でもう無理。後ろのスクリーンすら上半分しか見えない。

そのまま開演まで小一時間。たっぷり暖房の利いたフロアで小春日和モードの僕は既に汗だく。身動き一つできないし。やたらと動くと周囲の女の子たちに満員電車の痴漢扱いされかねないし。

やっと出てきた。おそろいの白いつなぎ。ピアノの方がPで、カホンの方がJ。カホンのCじゃないんだね。1曲目は第九だ。クラシック音痴の僕でもこれは知ってるよ。クリスマスだしね。

某ブログ経由でいろいろPVを見たり、中古で手に入れたファーストアルバムを聴いてはいたから、どういう演奏をする人たちなのかは知っていたけど、いや、こいつは凄いね。一切ミストーンのない、もの凄いピアノの早弾き。カホンって、生で聴くとあんな硬質な音が鳴るんだ。

2曲目も知ってるよ。運動会の曲。途中でマイナーに転調して、悲しげな顔で笑わせるピアノのHAYATO。そこにお葬式みたいにトライアングルでチーンと入れるHIRO。ははは、おもしろい。

HAYATOがスツールの上に立って、双眼鏡を覗くような素振りで観客席を見回し、携帯をいじってる客を見つけて怒るフリとか、曲間や曲中にネタ満載。おもしろいね。

最初の3曲がクラシックのカバー(全部知ってる曲なのに題名わからないや。ちゃんと勉強しよう)で、次がファースト収録の「うさぎDASH」。HIROが「うさぎー!!」って叫んだら、観客みんなで「ダーッシュ!」と何度もコール&レスポンス。うわー、みんなちゃんと覚えて来てるんだね。

全5曲、30分のライヴのはずだったのが、アンコール含めて40分強。最後の方は、ジャーン、ジャーンって一旦終わってHIROが退場しようとしたところにHAYATOがまたジャーンって弾くからまた慌てて戻ってくるとか、ひよりさんがコメント欄に書いてたように、HIROの担当楽器紹介で笑わせたり(ペットボトルはなかったけど、パフがおもしろかった)。

思えば、ここは去年の5月にマーク・コズレックを観た場所。あのときはBGMを消してくれないとか文句書いたけど、今日の音量なら例えBGMが鳴ってても関係なかった(実際、同じフロアの遠くの方では鳴ってたみたい)。それにしても、この観客数にこの場所はないだろう。渋谷タワーの地下でやれよ(と思っていたら、来月の渋谷タワーレコードでのインストアは、これもマーク・コズレックのときと同じ5階のイベントスペースだって。知らないよ、どれだけ人が溢れても)。

ライヴ終了後、サイン会へ。7階の階段のところから並び始めた2列縦隊は、あっという間に9階近くまで伸びた。100人以上いるんじゃないか。一体何枚参加券配ったんだろう。

PJ Sign.jpg


並び始めたときに8階辺りだった僕には、30分弱でようやく順番が廻ってきた。一人ひとりにちゃんと話しかけ、握手もする律儀な二人。いいね。

「めっちゃよかったよ」
「あ、大阪から来はったんですか。和むなあ」
「うん、また観に行くから、今度は違うネタやってや」

なんて、軽くおしゃべりをしながら、サインをもらってきたよ。

Autographed Eat A Classic 2.JPG

今、帰ってきて2順目聴いてるところ。全部通して聴いても30分弱なのがいいね。つい何度も繰り返して聴いてしまうよ。今日の1曲目の「第九」はてっきりこれに入ってるのかと思ったら、違ったね。あ、運動会の曲があった。「ウィリアム・テル序曲」っていうのか。

いいもの観に行けてよかったな。タダだったし。ひよりさん、教えてくれてありがとう。来月の下北沢にも行こうかな。タダだし。でもこの人たち、これからどんどんこんな規模じゃ観れなくなるだろうね。

Eat A Classic 2.jpg →Pia-no-jaC← 『Eat A Classic 2』



余談:タワーレコードと、来月なくなってしまうHMV新宿サウスの両方に足を運んだんだけど、なんだか差が歴然だったね。僕はどっちかというと実はHMV派だったんだけど、品揃えといい、プロモーションといい、値付けといい、試聴機に入ってるサンプルといい、手書きPOPといい、あれはどんどんタワーに客が流れるのがわかるね。立地だけの差じゃないよ。FLAGSの上だって、決して行きやすいわけじゃないからね。HMV好きだっただけに、本当に残念。さよなら。



<12月23日追記>

こんなのも買ってしまった。

Eat A Classic 2 Ltd.JPG
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2009年12月20日

Yo La Tengo live in Tokyo

今年最後のライヴ。12月17日、品川ステラボールでのヨ・ラ・テンゴに行って来た。

僕は初めて行くホールだけど、会社から歩いて10分程度というのが嬉しい。今回は自分のお疲れモードを予測してゆっくり座って観ようと2階の指定席を押さえたので、6時半まで仕事してても7時の開演に充分間に合うし。

実は、僕はこの人たちのことは、アルバムもほとんど持っていなければ、曲名もろくに憶えていない。なので、セットリストはおろか、なんていう曲を演奏したかすらうろ覚え。いつもに増してトンチンカンな内容になるのは許してほしい。その代わり短めにするからさ。

元々03年の『Summer Sun』というアルバムを一枚だけ持ってて、まあ特に好きでも嫌いでもないバンドの一つだったんだけど、今年出た『Popular Songs』のジャケと評判に惹かれて買ってみたらこれがよくて、ちょうどほぼ同時に来日が発表されたもんだから、曲もろくに知らないくせに急いでチケットを押さえたというのが経緯。

Popular Songs.jpg Yo La Tengo 『Popular Songs』

いいジャケだよね。内ジャケに書いてある解説によると、このカセットは、削った骨、体内の全ての骨を粉状にしたもの、1945年に最初の原爆実験が行われた際に周囲の砂が熱で変質して生成されたトリニタイトという物質、ネジ、サビ、活字、で作られており、はみ出したテープには、軍隊のマーチングドラム、銃器の発射音、戦場での兵士の声、などが実際に録音されている、という凝りまくったものらしい。ちなみに裏ジャケやブックレット内にも同じように凝ったオブジェの写真と解説あり。

全12曲という編成は最近のCDでは珍しくもないが、10曲目・11曲目・12曲目がそれぞれ9分37秒、11分22秒、15分51秒だというのが笑える。ぼわーっとした11曲目でいい加減痺れてきた後の最終曲「And The Glitter Is Gone」の格好いいこと。16分弱が全然長く感じないよ。


ライヴのことを書こう。2階席から見下ろすと、手頃な大きさの会場は超満員というほどでもないけど、かなりびっしりとした客の入り。ステージ奥のドラムキットの前に小さなドラムキット、左手にギターやベースやキーボード、右側にもギターという不思議な楽器編成。

Stellar Ball.JPG

こんな感じ。ライヴ開始後は写真撮ってないから、関係者の皆さん許してくださいね。ステージ上の人物はチューニングするローディー。左側の人はギルって呼ばれてたっけ。

ほぼ定時にバラバラと出てきた3人。カーリーヘアのひょろっとしたチビと、もの凄いデブの巨漢と、女の子(っていう歳じゃないけど、比較してそんな風に見えた)。すごいアンバランスな見た目。

いきなりギターの轟音で始まったのが、「All The Glitter Is Gone」。うわぁ、いきなり15分コースか。アイラ(カーリーヘア)が体を折り曲げたりくねらせたり、アンプにギターを近づけたり振りかざしたり、もうとにかく全身を使ってギターから爆音ノイズを絞り出しているという感じ。見ていて決して格好いい動きではないんだけど、出てくる音は凄いよ。ニール・ヤングの『Arc』を実際にライヴで演ったらこんな風にやるんじゃないかってぐらい。聴いてて神経が麻痺するぐらい格好いいんだけど、軽めに眠りに落ちたりもする。

一転してジョージア(ドラムの女の子)が歌う軽やかな曲へ。続いて(曲順が合ってるかどうか定かではないけど)ジェイムズ(デブ)が歌う「Stockholm Syndrome」。えっ、このニール・ヤングみたいな声でニール・ヤングみたいな歌を歌ってたのは(つい最近同じような文章を書いた気がする)、このデブだったのか。ライヴ前に曲を覚えようとして買った3枚組ベスト盤の中でも結構好きな曲。

ステージにいろんな楽器が置いてあったとおり、曲ごとに3人の楽器編成がころころ変わる。基本はアイラがギター、ジェイムズがベース、ジョージアがドラムなんだけど、ジョージアとジェイムズが二人でドラムを叩いてアイラがキーボードとか、ジェイムズがキーボードでアイラがギターとか、ギター二人にドラム一人とか。

それでいながら、曲と曲のつなぎが相当格好いい。いくつかの曲はメドレーというか、前の曲の最後の音が鳴り終わらないうちに次の曲に入っていったりするんだけど、そういうときのジョージアのスネアの一音とか、ぞくっとするぐらい、いいね。

前日にゆらゆら帝国と共演したことを話して、「次のは日本の曲」とか言って始めたのは、ゆら帝の曲だったんだろうか。あと、アンコールでクリスマスだからと、「Rock'n'Roll Santa」(確か)っていうのも演ってたね。

本編だけでたっぷり1時間半は演ったと思う。数日前のディラン・モンドグリーンが時間的には随分あっさりしたものだったから、もうそれだけで結構お腹一杯気味だったんだけど、日本公演最終日だし、当然アンコールあり。しかも2回。

「You Can Have It All」は楽しかったな。アイラとジェイムズがお揃いのかわいい振り付けでゆらゆらくるくると踊り、その横でジョージアがカラオケ(?)に乗せて歌う。ローディーの二人も途中で出てきて踊りに参加するも、恥ずかしくなったのかすぐに引っ込む。

結局、2度目のアンコールが終わって客電が点いたのは、開始から2時間を越えた9時過ぎ。堪能したよ。こんなにいいとは予想してなかった。途中長尺の曲(最初のだけでなく、10分越えが何曲もあった)の途中で一瞬催眠状態に陥ったことも含めて、とても気持ちのいいライヴだった。

帰りに買おうかなと思っていた『Popular Songs』デザインのTシャツが終演後にはもう売り切れてしまっていたのが残念。開始前に買う時間あったのに、僕としたことが。

何も買わずに帰ろうとしていたら、物販のところにデブとカーリーヘアがにこにこしながら出てきた。あー、サイン会あるんだろうな。でもいいや。ライヴ前よりずっと好きなバンドになったから、これからちょっとずつ遡ってアルバム買って曲を覚えて、次の来日のときにサインもらおう。
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2009年12月15日

Dylan Mondegreen live in Tokyo

“リハーサルへようこそ”

ジョン・レノンじゃないけど、良くも悪くも、そんなライヴだった。2009年12月13日。渋谷のTokyo Family Restaurantという名の、ちっともファミレスっぽくないおしゃれなカフェのイベントスペースで催された、ディラン・モンドグリーンの初来日公演。

Guitar.JPG


50名限定ライヴというのが、昨年の鎌倉でのタマス・ウェルズのライヴを思い出させる。当初予定されていた、ディランの奥様マリーによるピアノが、彼女の腱鞘炎というアクシデントのために急遽取りやめになってスペースに余裕ができたためか、予想以上にゆったりとした空間で観ることができた。

開始時刻を少し過ぎて会場入りしたディラン。背が高いね。190はあるんじゃないかな。ソファに横たえてあったピックガードのない素朴な作りのアコースティックギターを抱え、おもむろにチューニングを始めたあと、ファーストアルバム『While I Walk You Home』(うちのブログ界隈限定の俗称「おかんの気持ち」)収録の「Faint Sound Of Surf」を歌い始めた。意外な選曲。

あ、曲名書いちゃったね。セットリストは大体わかるんだけど、まだこれから他の都市での公演が残ってるから、そのうち追記するよ。この先もいくつか曲名出すと思うから、ネタバレが嫌な人は来週読んでね。

まだアルバム2枚しか出てないから、当然その2枚からの曲を次々に演奏。それぞれの曲間に結構な時間を割いてカポをつけたりチューニングしてたりしたのが印象的だった。「ギターはこれ1本しか持って来ていないから、違ったチューニングの曲を演るのは大変なんだ」なんて言ってたね。

「オスロから16時間のフライトで着いたばかり。2時間しか寝られなかったよ」との言葉通り、練習不足の感は否めなかった。歌詞はところどころ忘れるし、オープニングから数曲はいまいち声も出ていなかった箇所も。

それ故の、冒頭に書いた僕の感想。“良くも悪くも”と書いたのは、そういうちょっと残念な部分もあったものの、それが逆にアットホームな雰囲気作りに図らずも貢献していたようにも思えたから。

というのも、彼の体調も万全でなかったかもしれないけど、僕たち観客も最初はかなり固かったからね。「何かリクエストの曲はある?」と訊かれて、誰も咄嗟に曲名が出てこない。

僕のすぐ左から「That Mortal Kiss!」とリクエストが入る。あ、それ僕の一番好きな曲だ。でもディランよく聞こえなかったようで、「何?」って顔してたから、僕が同じ曲名を言った。そしたら、「ごめん、それはちゃんと練習してきていないんだ」だって。うーん、かみ合わないね。

しばらく後にまた「君達の一番好きなディラン・モンドグリーンの曲は何?」って訊くから、「それさっき言ったけど歌えなかったじゃないか」とは思ったけど口に出さず。えーと、セカンドの(LPで言うと)B面1曲目は何てタイトルだっけ… こういう時に全然名前が出てこないんだよね。まったく、歳取るとろくなことないよ。

9曲目を歌い終えたとき、時間にして開始から30分ちょっと、「次が最後の曲だよ」だって。ちょっと、それは早すぎるよ。よっぽど疲れてるんだね。最後は予想通りの「Girl In Grass」だった。さっき誰かがこれをリクエストしてたら、一体最後は何で締めるつもりだったんだろう。

Dylan M.JPG


演奏を終えて、一旦出口に向かったけど、どこにも行かず、何も飲まず、レジのところでくるっときびすを返して戻ってきた。あれ?ははは、一応本編とアンコールを分けたんだね。

1〜2曲演って終わりかなと思っていたら、意外にもどんどん続けて歌う。観客のムードももうこの頃にはすっかりほぐれてきたようだ。さっきリクエストして断られたファーストの「That Mortal Kiss」に似た雰囲気だと思っているセカンドの「Deer In Headlights」を演ってくれたのは嬉しかった。

と思っていたら、なんと次は「“That Mortal Kiss”、うまくできないかもしれないけど、演ってみるよ」だって。嬉しい。「最初の歌詞は何だっけ?」と訊かれたけど、また出てこないよ。えーと、RememberとDecemberで韻を踏んでるのは憶えてるんだけど… まったく、歳取るとろくな(略)

「思い出した」と言って歌い始める。あのジョニー・マーばりの流麗なアルペジオは聴かれなかったけど、でもいいよ。いい曲。途中で歌詞ぽっかり忘れたのもご愛嬌。

最後の曲の前に、「手拍子で参加してくれないか。こうやるんだ」と、セカンドアルバムの表題曲のリズムを叩く。その曲でほんわかと暖かい気分になったところで終了。

ドアを開けて出て行ったディランが、外でスタッフと何か話してるのが見える。あ、戻ってきた。まさか、もう一回アンコール?

と思ったら、「もう今日は歌えないけど、もしCDとかにサインしてほしい人がいれば、僕はこのあたりにうろうろしてるから」だって。スタッフもそれに付け加えて、「彼は長いフライトの後で疲れているので、なるべく早めにお願いします」。わかってるよ、グレンのときで経験済み。

とは言うものの、結構な長蛇の列の一人ひとりと随分話し込むディラン。ほんとに疲れてるだろうに、そういうところが優しいね。

僕の順番だ。早めに解放してあげようとは思うものの、やっぱりちょっと話してしまう。「あなたの名前は何て発音するの?」「ボルゲ・シルネース(ルのところはかなり強い巻き舌っぽかった)」。「“That Mortal Kiss”をリクエストしてくれてありがとう。次の公演までにはちゃんと練習しておくよ」「残念。そこまでは追っかけられないよ」。等々。

Autographed TWSO.JPG


サインだけじゃなくてあれこれ書いてくれるのが嬉しいね。ちゃんと日付と場所まで。もちろん、僕のだけじゃなく、みんなに沢山メッセージを書いてたよ。僕はファーストもセカンドもジャケ好きなので、このトレイ裏に書いてもらったけど、ジャケに書いてもらってた人はもうほとんど文字だらけみたいになってたな。


ここまで書いたのを読み返してみたら、なんだか不満げなことも書いているようだけど、そんなことはなかったんだよ。50人限定ならではの親密な雰囲気も含めて、かなり満足度の高いライヴだった。

なかでも、本編終盤で演った「(Come With Me To) Albuquerque」が、実は「That Mortal Kiss」も「Girl In Grass」も差し置いて、僕にとっては本日のベストだった。セカンドアルバムの冒頭を飾る、プリファブ・スプラウトが大好きだというのが溢れるほど滲み出ている歌詞と曲調。

この名曲で幕を開け、「Bantamweight Boxer」、「A Skin Too Few」、「We Cannot Falter」(さっき思い出せなかったB面1曲目)、「Deer In Headlights」など、最初に聴いた当時はあんなに素晴らしいと思ったファーストアルバムを遥かに越える曲がいくつも収められたこのセカンド、来月に書く予定の09年個人的ベストアルバム記事に登場する可能性大だろう。

The World Spins On.jpg
Dylan Mondegreen
『The World Spins On』

終演後は、グレンのライヴで知り合ったあの人たちや、タマスのライヴで知り合ったあの人たちと一緒に打ち上げへ。どうも最近ライヴ後のこういう飲み会が病みつきになるね。いつもならサインもらった後も物品売り場でダラダラしたりするんだけど、もうさっさと次に行きたくて困る。皆さんどうもありがとう。慌しかったけど、楽しかったね。また近いうちに会いましょう。


Setlist 13 Dec 2009 @ Tokyo Family Restaurant 2F Playroom

1. Faint Sound Of Surf
2. Wishing Well
3. Something To Dream On
4. I'll Be Your Eyes
5. Bantamweight Boxer
6. A Skin Too Few
7. Love Has Overtaken Us
8. (Come With Me To) Albuquerque
9. Broken French
10. Girl In Grass

Encore
1. Where You Are Is Where It's At
2. While I Walk You Home
3. Deer In Headlights
4. That Mortal Kiss
5. The World Spins On
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2009年12月13日

yascd014 オーロラの夜

オーロラを見に行きたい。いつの頃からか、ずっとそう思い続けている。星座とか星占いとかにはちっとも詳しくないんだけど(何座が何月かなんて、いまだに三分の一も憶えてやしない)、惑星とか宇宙の話になると、子供のときからいつも食い入るように興味を示していた。オーロラの話だってそう。太陽風が惑星の磁場と反応して夜空にあんな綺麗なものができるだなんて、実際に見たことはなくても、想像するだけでわくわくする。

NZに住んでいた頃に行こうと思えば見に行けなくもなかった。季節を選んでずっと南の方とかに行けばね。でも機会がなくて。日本に帰ってきてからも、冬の旅行の計画を立てるときにまず頭に浮かぶのが、北欧やカナダでオーロラを見ること。でも、日本からそういうところにそういう時期に行こうとすると、結構な金額になるんだね。とりあえず、もうちょっと先の楽しみにしておこう。あと何年かでなくなってしまうようなものでもないし。

yascd012のコメント欄で、その当時僕が一枚も持っていなかったフィンランドのCDを探してきて、派生バージョンのyascd012.1なんてのを作ろうかという話題になったのが、今日のお話のきっかけ。最初は見つけてきたフィンランドものをいくつか入れて、まさに前回の派生バージョンみたいな選曲をし始めたんだけど、作っているうちに、なんだかそういうのも面白くないなと思い始めた。

そうだ、オーロラを見に行ってるような気分になるミックスってのはどうだろう。氷点下何十度という凍てつく空気の中、真っ暗な空に満天の星と輝くオーロラ。そんな雰囲気を持った曲を集めてみよう。というのが今回のyascd。番号も派生じゃなくて014にしよう。さて、そんなのうまくできるかな。


Englaborn.jpg
1.ヨハン・ヨハンセン (Johann Johannsson) 
Joi & Karen
『Englaborn』

エスキモーみたいな防寒具にしっかりと身を包み、暖かい小屋から氷と暗闇の世界に一歩を踏み出す瞬間。温度も音も光もない世界。寒いと感じること以外、自分の五感が全て閉ざされてしまう。雪と氷を踏みしめて自分の脚で歩いていること以外は、宇宙飛行士が船外に出る瞬間を疑似体験しているような感覚。

このブログ界隈限定で“アイスランドの野比のび太”の異名を持つヨハン・ヨハンセンの02年のソロアルバムから。012には彼の“マシーン・ロックンロール・ユニット”、アパラット・オルガン・カルテットを入れたけど、実はこっちがこの人の得意分野。このアルバム自体は演劇用に作られたものらしい。

この小さな写真じゃ単なる青地に白文字にしか見えないかもしれないけど、変形デジパック内部の美しい写真も含めて、とても繊細な音を的確に表したジャケットもいい。


Toxic Girl.jpg
2.キングス・オヴ・コンヴィニエンス (Kings Of Convenience)
Once Around The Block
『Toxic Girl』

麻痺していた感覚が徐々に少しずつ戻ってくる。耳鳴りだと思っていた音が、実は遠くから聴こえているひっそりとした音楽だということに気づく。

キングス・オヴ・コンヴィニエンスが歌うバッドリー・ドローン・ボーイ。その二者を知っている人なら、何の説明も要らないだろう。デーモン・ゴフがどんなに素敵な曲を書くかというのを、このノルウェイの二人組が証明している。デーモン本人のバージョンが悪いわけではないけれど、これは別格。

普段シングル盤まで追っかけているグループではないんだけど、01年の『Quiet Is The New Loud』からカットされたこのシングル(アルバムとは違うバージョン2曲と、このBDBのカバー、それに「Toxic Girl」のPV入り)は、単なるコレクション目的なんかじゃなく、買ってよかったと本当に思えるCD。


Tomorrow We'll Wonder.jpg
3.セプテンバー・マレヴォランス (September Malevolence)
Exxon Valdez
『Tomorrow We'll Wonder Where This Generation Gets Priorities From』

暗闇の森の中を歩くにつれ、次第に視界が開けてくる。とはいえ、周囲の漆黒に変化はない。頭上に広がる星の数が徐々に増えているので、自分が森を抜けつつあることがわかる。

スウェーデンのポストロック・バンド。僕が買ったのは日本盤だけど、経歴が書かれた帯以外に詳しい情報は載っていない(2000円以下で日本盤をリリースするために余計なライナーや対訳を省略したことは評価したい)。

ポストロックと一括りにされるグループって、クラシックまがいのものから、実験音楽的なもの、ほとんどハードロックすれすれのものまで、聴いてみないとどんな内容かわからないものが多いんだけど、ジャケと帯の解説に惹かれて買ったこれは、緩急使い分けたスケールの大きな演奏をするいいバンドだった。同じスウェーデンのエスキュウ・ディヴァインを彷彿とさせるね。


The Lake Acts Like An Ocean.jpg
4.トマス・デンヴァー・ジョンソン (Thomas Denver Jonsson)
Posession
『The Lake Acts Like An Ocean』

ここからしばらく、SSWものが続く。そうだな、オーロラがなかなか出てこないので、一旦小屋に戻って小休止。北欧の歌い手たちが紡ぐ歌を聴きながら暖を取る、という設定にしようか。

一見アメリカ人かと思うような名前のこの人、苗字のジョンソンのSが二つ並んでいるところで北欧系だとわかるね。友達が作ってくれたミックスCDに入っていたスウェーデンのSSWなんだけど、僕はそのことはすっかり忘れていて、ある時とあるCD屋でちょっと安かったこのアルバムのジャケに惹かれて買ってみたら、聴いたことのある曲が入っていたというわけ。それがこの曲。悲しげな男女デュエット。


Snow On Moss On Stone.jpg
5.ドラウジー (Drowsy)
When It'll Be Snowing
『Snow On Moss On Stone』

012のコメント欄で指摘されて以来、CD屋に行くたびにフィンランドものを探すようになってしまった。これもその一枚。ドラウジー(日本盤の表記はドロージーになってるけど、フィンランド語発音ではどうなんだろう)ことマウリ・ハイネケンという名のSSW。

ちょっと不思議なメロディー展開が、なんだかシド・バレットぽいなと思っていたら、ライナーでも彼をはじめ、ニック・ドレイクやロバート・ワイアットらが引き合いに出されていた。ちょっとそこまで持ち上げるのはどうかとは思うけど、アイスランド組とはまた一味違ったこの不思議風味音楽は面白いよ。


Behind The Music.jpg
6.サウンドトラック・オヴ・アワ・ライヴス (The Soundtrack Of Our Lives)
In Your Veins
『Behind The Music』

こちらはSSWではなく、6人組のスウェーデンのバンド。メンバーのデスマスクが印象的なこの01年のアルバム全体はもっとハードというか、ちょっとサイケデリックっぽかったりもするんだけど、ここでは場の雰囲気を壊さないように、このしっとりした曲を入れよう。

もうとっくにいなくなったバンドだと思ってたら、今年新譜が出てたんだね。このファーストを始め、いつも独特の雰囲気がいい味出してるジャケットが気に入ってたんだけど、今回のはなんか中年向けスポーツクラブの宣伝みたいなジャケット。違和感ありまくり。


I'm Coming Home.jpg
7.セイント・トマス (St. Thomas)
Cornerman
『I'm Coming Home』

ノルウェーのSSW、セイント・トマスことトマス・ハンセン。この人のことも確かさっき書いた友達に教えてもらったんだっけな。ニール・ヤングそっくりの声で、ニール・ヤングが作ったような曲を歌う。別にニセモノとか言うつもりはないよ。僕は彼のアルバムを2枚だけ持ってるけど、実力のある人だと思う。

この02年のアルバムはファーストなのかな(と思って調べてみたら、これ以前に2枚出てるんだ)。CDトレイのところに「セイント・トマスはオスロ生まれの25歳。自分の音楽を褒められると暖かい気持ちになる。彼のことをよろしく」なんて書いてある。でも、確か彼しばらく前に若くして亡くなってしまったんだよね。


Every Streetcar's Got A Name.jpg
8.マイクル・モラー (Michael Moller)
Don't Ever Fuck Her Again
『Every Streetcar's Got A Name』

最初は08年2月のこの記事で取り上げ、012にも収録したモア・カプリス(Moi Caprice)のリード・ヴォーカリストのソロ・アルバム。別に解散したわけじゃなく、バンドとは違った雰囲気のを作ってみたくなったんだろうね。と思えるほど、もの凄く濃厚な(性的な)内容のアルバム。アルバム内では「Don't Ever Kiss Him Again」という曲と対になっているこの曲の歌詞も結構えぐい(大体、こんなタイトル書いてこの記事ちゃんとアップできるのか?また変なコメント来そう)。

アフィリエイトしようとしたら、アマゾンでは扱ってないね。僕はこれをアップル・クランブルで買ったはずなんだけど、そこにももう在庫はないみたい。なので、カナダのポプシクルのサイトを張っておこう。

歌い手の憤りを表現したかのような、終始遠くで鳴り響くフィードバック音が、ここまでしばらく続いた歌ものコーナーの終わりが近いことを示唆している。さて、再び防寒着を身に纏い、厳寒の中に歩を進めよう。


Hintergarten.jpg
9.ハヌー (Hannu)
Pop
『Hintergarten』

最初に凍てつく空気の中を静かに歩き始めたのとは明らかに様相が変わってきた。暗い森の中を木霊するざらっとした不協和音。冷ややかな打楽器と終始不気味に響き渡る低音。周囲に電磁波を感じる。風景が歪む。

これもフィンランドもの探しで見つけた一枚。名前も知らなかったし、ちょっと値は張ったんだけど、500枚限定という文字に釣られて入手。フィールドレコーディングとエレクトロニカの融合というのかな。このジャケットの雰囲気そのままの、凍りつくような独特のサウンドが結構気に入ってしまった。

これもアマゾンにもアップルさんにもないね。ポプシクルにもなければ、北欧専門店ICELANDiaにもないや。うろうろ探していて偶然見つけた京都のCD屋さんのサイトに載ってたので、上にリンクしておいた。この店、面白そう。後でいろいろ見てみよう。


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10.クリヤキン (Kuryakin)
Take My Hand
『Still Here』

歪んだ風景の中から聴こえて来る、不自然なまでに人工的なサウンド。砂糖漬けのレトロ・フューチャー。夢を見ているような、何処かに誘われていくような心地良さ。と思うと、あたかも夢を見ていた瞬間に叩き起こされるかのごとく、突然ブツンと音が途切れる。

シェルフライフからの、各々300枚限定のCDEPと7インチアナログのセット、いわゆる1000シリーズのうちの一枚。これはCDの方に入ってる曲かな。まだ確かこのEP(と、そこからのシングル)しか出していない、スウェーデンのバンド。この新しいのか古いのかよくわからない奇妙な感じは、悪くない。アルバム出ないかな。

こんなのは当然アマゾンにはないけど、アップルさんにはまだ置いてあるね。このシリーズ、ものによっては300枚なんてあっという間になくなるみたいなのに。僕も2種ほど買おうと思って買い損ねたのがあるよ。


On Your Side.jpg
11.マグネット (Magnet)
Where Happiness Lives
『On Your Side』

次に聴こえて来たのは、もっと暖かい音だ。さっき何度か聴いたSSWの残党のように聴こえる。ただ、またしても木霊のように鳴り響くテルミンの音が、先ほどの明るい雰囲気とは何処か違った情景を醸し出している。

ノルウェーのSSW、マグネットことエヴァン・ヨハンセン。この03年のアルバムがデビュー作のはず。ボブ・ディランのカバー(「Lay Lady Lay」)も含めて、ここで聴けるような浮遊感のある歌を聴かせてくれる。ぱっと見は単なる風景写真に見えるけど、妙に凝った作りのジャケもわりと好き。


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12.シゼル・アンドレセン (Sidsel Endresen)
Blessed Instant
『Undertow』

ぴんと張り詰めた空気が続く。次に聴こえてきたこの女声は、まるで呪術を唱えているようにも聞こえる。歌がフェードアウトするにつれ、自分が属するのとは違う世界に足を踏み入れるときが来たようだ。

僕は全然知らなかったんだけど、調べてみたら結構なキャリアを持つこの人のこのアルバム、僕はノルウェー・ジャズのブッゲ・ウェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)やニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvaer)の名前に釣られて買ってみた。あまり好きなタイプの女性ボーカルではないけど、この硬質な音には何故かよく合うね。


Alone In The Bright Lights Of A Shattered Life.jpg
13.ライブラリー・テープス (Library Tapes)
Cold Leaves For The Violent Ground
『Alone In The Bright Lights Of A Shattered Life』life

雪の平原に一気に視界が広がる。先ほどからの厳しい風はおさまる気配を見せず、体温がどんどん奪われていくけれど、満天に輝く星空に、ついにオーロラが見えはじめた。

儚いまでに美しいピアノと、荒涼とした風景を思わせるノイズ。スウェーデンのデイヴィッド・ウェングレンのソロ・ユニットであるこのライブラリー・テープスは、去年と今年連続で来日しているほど、ここ日本でも人気のようだ。こういう音がそこまでのポピュラリティーを得るということが信じられないけど。どちらの来日公演も行きたかったんだけど、残念ながら都合が合わず断念。今度来てくれたら行こうかな。


Skaizerkite.jpg
14.モント・マルディエ (Montt Mardie)
Dungeons And Dragons
『Skaizerkite』

ここで一杯、暖かい珈琲を頂くことにしよう。芯まで冷えきった体に染み渡る、人間の住む世界の温度と香り。空一面に、たくさんの星が流れていくのが見える。

つい先月のこの記事で紹介したばかりのこのアルバムから。詳しい解説はそちらを読んでもらえればいいけど、この曲は、うきうきするようなアップテンポの曲がずらりと並んだそのアルバムにいくつか入っているしっとりとしたバラッドのひとつ。僕の書き方が下手だったのか、結局あの記事はカブ子さんにコメントを頂いたのみであまり人気がなかったんだけど、このアルバムはお薦めなのでいろんな人に聴いてほしいな。


Finally We Are No One.jpg
15.ムーム (Mum)
The Land Between Solar Systems
『Finally We Are No One』

先ほどのライブラリー・テープスが地上から見たオーロラだとしたら、今度は重力の呪縛を離れ、オーロラの中に体を委ねてみよう。せっかくのバーチャルツアーだからね。ゆったりとしたリズムと夢のようなメロディ。天使の声が聴こえる。オーロラの中にいるので、時折り混じる電磁波のノイズさえもが心地良い。

電子音とアコースティック楽器の融合。アイスランドの同胞シガー・ロスやアミーナに通じる、ミニマルでありながら壮大な音作りをするこのグループ。今年も新作を出すなど精力的な活動をしているが、ボーカルのクリスティンがいたこの当時(このアルバムは02年)の作品はまた格別。12分間の夢心地を存分に味わってほしい。


She Came Home For Christmas.jpg
16.ミュウ (Mew)
She Came Home For Christmas (Acoustic Version)
『She Came Home For Christmas』

充分に堪能したことだし、そろそろ帰途につくことにしよう。どこからともなくクリスマスを歌う優しい歌声が聞こえてきた。そうか、もうそんな時期になるんだな。

来日を間近に控えたミュウのファーストアルバム『Frengers』収録曲だけど、ここにはその壮大なバージョンでなく、シングル盤に収録のアコースティック・バージョンを入れてみよう。インドネシアで買ってきた新作はまだ聴いてないけど、それ聴いたら来日公演に行きたくなってしまうかな。


Black Refuge.jpg
17.ジュニップ (Junip)
Black Refuge
『Black Refuge』

やっと戻ってきたこの小屋で、ささやかな祝杯。パーティーというほど派手なものではないが、そろそろ終わりが見えてきたこの旅を祝う会を開こう。大仰な面子はいないけれど、演奏を買って出てくれた二組のグループに任せるとしよう。

音が割れているのかと思うほどのざらっとした演奏に乗る、聴き慣れたクールな声。僕のブログを読んでくださっている人には、敢えてこのシンガーの名前を伏せておいて、誰が歌っているのかを当ててみてほしいぐらいだ。

でも、ブログでそんなことをしてもしょうがないから、答えを書こう。このジュニップは、デビュー当時のホセ・ゴンザレスが並行してやっていたバンド。ざらっとしたドラムを叩いているのは、ホセのあの印象的なジャケットのイラストを描いているエリアス・アラヤ(Elias Araya - 発音がこれで正しいのかどうか、いまだにわからない。英語読みならイライアスだろうけど)。

結局この5曲入りEPしか残さなかったバンドだけど、ホセのファンであれば必聴の内容。5曲目はなんと、ブルース・スプリングスティーンの「The Ghost Of Tom Joad」のカバー。もちろん、ホセが歌ういろんなカバー・バージョン同様、完全に彼の色に染め上げられている。


Aboa Sleeping.jpg
18.バーニング・ハーツ (Burning Hearts)
I Lost My Colour Vision
『Aboa Sleeping』

これもフィンランドもの探しの旅で出会ったバンド。フラットな女声ボーカルとコーラス、それにシンセを使った、ヘタクソ一歩手前みたいなバンドサウンドが、80年代初期にバラバラと出てきた沢山のニューウェーブ・グループの名前を思い起こさせる。きっと、そういうのを聴いて育ってきた人たちなんだろうね。親近感を持ってしまうよ。


Tranquil Isolation.jpg
19.ニコライ・ドゥンガー (Nicolai Dunger)
Going Home For Christmas
『Tranquil Isolation』

楽しかった小さなパーティーも終わり、すっかり夜も明けてしまったようだ。宴の後の床に転がっているワインのボトルを踏まないように、まだ酔いが頭に残ったままの誰かが部屋の片隅に置いてあるピアノに近づき、淡々としたメロディーを弾きはじめた。クリスマスには家に帰ろう。そう言っているようだ。では僕も、ざくざくと雪を踏みしめて、自分の属する世界に帰ろう。

まだNZにいた頃に知り合った、さっきとは別の友達に教えてもらったこの人。その頃の僕はまだ北欧ものといえばスウェーディッシュ・ポップぐらいしか頭にイメージがなかったので、こういう人がいるんだというのはすごく新鮮だった(教えてもらったのはこの曲ではなかったけど)。

02年のこのアルバムには、ボニー・プリンス・ビリーことウィル・オールダムが参加している。この人がそういう方面との繋がりを持った人だというのは、たまたま店で安く入手したこのアルバムを聴くまでは知らなかったけど。


またしても、とてつもなく長い記事になってしまった。僕が自分で作ってみたこの流れのミックスCDを聴きながらでなければ、こんなのちゃんと最後まで読んでくれる人はまずいないだろう。自己満足の極致。ストーリー重視で作ったわけじゃないのに、この記事にするにあたって無理矢理ストーリーにはめ込んだものだから、話の辻褄をあわせるのに苦労したし。

もともとyascd012「北欧編」の流れを汲んでスタートしたこのミックス、いくつかの曲は010「癒し系」に入っていてもおかしくないし、009「ピアノ三昧」に入れてもいいようなのもある。最後の方にはタイトルにクリスマスと付く曲が二つも入ってるから005「クリスマス」とも関連しているようだし、更に言えば、一部の読者の方からずっと催促されている辺境系みたいな曲も何曲か入っているから、これは取り様によっては色んなyascdのいいとこ取りと言える内容かもしれない。まあ、必ずしも誰にでも耳心地のいい曲ばかりじゃないから、いいとこ取りと言えるかどうかはわからないけれど。

とにかくこれが、今年の僕からのちょっと早いクリスマスプレゼント。三年前のとは違って、聴いてみたらきっと寒い冬の夜を実感できることだろう。メリー・クリスマス。
posted by . at 12:46| Comment(11) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月08日

愛情の国の安CD

かれこれ10年以上も前、20世紀の話になるけど、以前インドネシアに住んでいたことがあってね。前回の記事でNZに郷愁を感じるなんて書いた舌の根も乾かぬうちにだけど、やっぱり自分が初めて住んだ外国ということで、インドネシアという国には何か特別なものを感じてしまうよ。

今回の出張、実はあれからまだずっと日本を離れっぱなしで、週末からこの月曜にかけて、実に10年振りにインドネシアに来ている。

出張だからもちろん仕事がメインなんだけど、懐かしい友達と会ったり、会社の裏手の屋台でローカルめしを食べたり、以前とは全然変わってしまった街並みを車窓からぼーっと眺めてみたり、ずいぶん楽しい時間を過ごしてるよ。

楽しい時間といえばもちろん、CD屋巡り。巡りというほど沢山の店を廻る時間があったわけじゃないけど、日曜の夜に友達と食事に行く前にかつての行きつけのCD屋で待ち合わせ。ジャカルタでは一番充実した品揃えの2階建てのその店の1階がいまだにカセットテープのコーナーなことにちょっと驚きつつ。

今回の収穫。

Duta Suara.jpg

全部で何枚?12枚か。このうち2枚はその友達が買って僕にくれたものなんだけど、それ以外の10枚で、なんと総額68万ルピア。日本円にして6500円弱。一枚あたり650円。

真ん中にあるノラ・ジョーンズだけは輸入盤なんで17万ルピア(1600円)と、日本で買う普通の輸入盤並みの値段だったので、その他の現地プレス盤がどれだけ安いかはわかるだろう。

出たばかりの新譜3枚、前から買おうと思って買いそびれてたやつ2枚、インドネシアものの定番(?)2枚、インドネシア人の友達のお勧め2枚、音も名前も知らない完璧ジャケ買い3枚。出発前に最後に残ったルピア札を使いきろうと思って、1000円で3枚も買えるところが嬉しい。

先週シンガポールで安いと思って買い込んだものが、その七掛けぐらいになって出ててショックを受けたりも。ここの方が安いって知ってるのに、なんでシンガポールであんなに買ってしまったんだろう(答え:CD屋に行ったら後先考えずに買ってしまうからです)。

この値段でオリジナル盤が買えるのは、世界でも珍しいんじゃないだろうか。もちろん、ジャカルタ市内でも行くところに行けば、コピー盤がこの何分の一かの値段で売ってるんだけど、僕はコピー盤は買わないことにしているんで。

このブログを読んでるような人でインドネシアに行く機会があるなら、是非地元のCD屋を覗いてみればいいよ。いわゆる洋楽ものも安いし(すごく安いのは現地プレスができるぐらいのメジャーなアルバムばかりだけど)、現地のバンドのはもっと安い。ガムランとかクロンチョンとかの伝統音楽のもあるし、音楽文化の層の厚い国だと実感すると思うよ。


この10年間ほとんど使っていなかったインドネシア語が、こっちの人と話し始めた途端にスラスラと出てきて、仕事の話すらほとんどインドネシア語でできたことに自分でもびっくり。

そんな感じで友達とも楽しい時間を沢山過ごし、今はもうジャカルタには住んでいない友達とも電話でたっぷり話したりして、ちょっとセンチメンタルな気分になってるところ。ここの人って、ほんとに情が厚いというか、いい意味ですごくウェットなんだよね。

インドネシア語で「ありがとう」という意味の「Terima Kasih」を言葉通りに直訳すると、「私はあなたの愛情を受け取りました」という意味になるというのは、この国の人たちの人柄をよく表していると思う。愛情を受け渡しながら暮らしているといえばいいか。


そんな楽しい3日間を終えて、今晩(もう昨日と言った方がいいのかな)ドバイに向けて出発する。

…はずだったのに、なんとドバイ行きのフライトが5時間遅れ。このまま空港で夜明かしかよ。明日の会議の時間がフレキシブルで助かったよ。こんなところもインドネシアならではだね。やれやれ。

それにしても、ベンチもろくにないこの空港で、朝まで何も食わずにいるのかと途方に暮れ、空港ラウンジでエコノミークラスのくせに駄目もとで適当なカードを見せてなんとか頼み込んだら、「朝まで大変でしょうから、中で寝ててください」と入れてくれた。こんなところもインドネシアならではだよ。大好き、この国。
posted by . at 03:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする