2009年08月27日

季節はずれの白と黄のボーダー - 新垣結衣

Hug.jpg 新垣結衣 『hug』

yas:やだよ、だってうちのブログのカラーじゃないもの。

やす:まあそう言わんと。ええやん、たまにはこういうのも。

yas:そんなに気に入ってるなら、君が書けばいいじゃないか。

やす:なんでやねんな。俺は年に一回の記念対談以外は、翻訳のときにしか現れへんて相場が決まってるんや。

yas:いいじゃない、別に。君もたまに出たいって言ってたことだし。それに翻訳の機会なんて当分ないよ、きっと。じゃあそういうことで決まりね。今日はまかせたよ。じゃあね!

やす:あ、おい!ちょっと待たんか!

…あ〜あ、行ってしまいよった。どないすんねんな… ほんまにあいつはイキリでしゃーないな。なにを照れとんねんな、まったく。

えーと、そういうわけで、今日は俺が書くことになってしもたんで、よろしゅう。いつものあいつみたいに訳わからんことだらだら書いたりせんとすぐ終わるから、安心してや。大阪弁で読みにくいのは許したって。

今日のCDは、上に写真載ってるからわかると思うけど、新垣結衣ちゃん。ガッキーや。かわいいよな、このジャケ。いや、そんなに引くなって。

実はな、俺普段テレビドラマとかあんまり観ることないんやけど、たまたま観てたやつにこの子が出てて、ちょっと興味もってYouTubeとかで検索して聴いてみたんよ。そしたらえらいはまってしもてな。

最初はアイドルもんや思て適当に聞き流しとったんやけどな、まず思ったより曲がええねん。俺、日本の職業作曲家とかプロデューサーってあんまり知らんねんけど、流行りモンや思てええ加減に作らんと、しっかりした曲書いて真っ当なアレンジして、ええアルバムにしようっちゅうスタッフの気概が見えるんよ。

まあ、なんやかんや言うても、こんだけ気に入ってる一番の理由は、やっぱりこの声に尽きるね。どっからこんなかわいい声出すねんっちゅーぐらいで。いや、そら口からに決まってるんやけどな。そういう話やのうて。

これ、一つのアルバムでいろんなバージョン出ててな、最近のJポップとかみんなそうなんやろけど。DVD付きの限定盤やらジャケット違いやら。どれ買うか結構迷うんよ。結局、俺の買うた上のジャケのやつは、「初回限定盤(2CD+ブックレットB)」とかいう名前で、Naked Voice VersionちゅうボーナスCDが付いてんねん。

表に貼ってあるステッカーには「全13曲のアカペラver.」って書いてあるんやけど、普通これはアカペラとは言わんやろ。合唱ちゃうし。演奏なしの、ピンのボーカルトラックだけや。

ただ可愛いだけのアイドルやったら、ちょっとここまでできへんやろ。勇気いるよな。俺もこれはさすがにないやろとか思いながら聴いてみたんやけど、これが結構いけるんよ。まあ、さすがにそんなめちゃくちゃ歌唱力あるっちゅうわけやないから、高音不安定やなとか思う箇所もあるけど、そこがまた味があるっちゅうかね。これもまたこの声のお陰やね。

最初にちょっとこの子に一目置きたいなと思ったのは、この声を持ってながら、さっき書いたテレビドラマでは、口きかれへん人の役やってたんよね。自分の持ってる武器をあえて使わんと、それ以外で勝負するみたいなね。将棋で言うたら飛車落ちやね。別に将棋で言わんでもええんやけど。

あ、そうそう。それで思い出したんやけどな。いや将棋の話やのうて。さっきも書いたけど、このアルバムいろんなバージョンが出てて、ジャケットも何種類かあるんやけど、そのうちの一つは本人が書いた熊のぬいぐるみのイラストやねん。


2年前に出たデビューアルバムも同じような感じで、本人のポートレイトのジャケと、自筆のイラストのジャケがあったんやけどな、イラストの方がこれや。


そら.jpg 新垣結衣 『そら』

CD出す前にもう女優として売れてたからできたんやろけど、デビュー作のジャケがこれ!トカゲ!表ジャケに自分の名前すら書いてへんで。見た目かてこんだけ可愛いんやから、本人のお洒落なポートレイトのバリエーションだけで数種類出すこともできたやろうに。いや、ほんま勇気あるよ、この子。そういうとこも気に入ったで。

そやから、これも買うてきた。中古やけどな。さすがにこのジャケは人気ないんか、結構安値で買えたよ。内容もよかったけど、どっちかいうと新しい方がええな。ちゅうことは、ちゃんと成長してるんやね。いや、これは今から次のアルバムが楽しみや。

ほなそういうわけで、今日はこのへんで。だらだら書けへん言うたわりにはえらい引っ張ってしもて、悪かったな。次は年明けのベストアルバム記事に登場して、このアルバムがちゃんとベスト10に入ってるかどうか確認しに来るわ。ほな、また。

posted by . at 12:15| Comment(9) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月23日

覚醒 - Mani Neumeier & Peter Hollinger

Meet The Demons Of Bali.jpg
Mani Neumeier & Peter Hollinger 『Meet The Demons Of Bali』

ガムランは結構好きで、昔インドネシアに住んでたこともあって、その頃買ったCDも何枚か持っている。何枚持ってても、どれも同じような感じであんまり曲の区別もつかないんだけど、どれを聴いても気持ちいいのは同じ。

アルファ波が沢山出るのかな。そういう仕組みとかはあまりよくわからないけど、音だけを聴くとガンガンキンキンコンコンとあんなに賑やかなのに、なぜか落ち着く。きっと世界中で一番うるさいヒーリング・ミュージックだろうね。


今日取り上げるこのアルバム、数年前に雑誌か何かで見て、ずっと聴いてみたいなと思っていたんだ。初回1000枚限定プレスということだったので最初は焦りはしたものの、その気になって探せばそれほど入手困難というほどでもなかった。でも、今までどうもそこまでその気にならなかったというか、とにかくまだ買ってなかった。

先週久し振りに中古屋巡りをしたときに、最近全然チェックしていなかったプログレ系の棚にふと目を止めて、そういえばあれあるかなと思った瞬間、目の前にこれがあった。しかも、そこそこくだけた値段で。

と、その程度の運命の出会い、というか、ゆるーい執念で入手したこのアルバム。聴いてみたいと思った僕の最初の直感が間違っていなかったと思える内容だった。

グル・グルのアルバムは一枚だけ持っている。それほど多くもない僕のジャーマン・ロックのコレクションの中でも、お世辞にも一番好きと言える一枚ではない。だから僕は、(グル・グルの中心人物である)マニ・ノイマイヤーというドラマーにそれほど思い入れがあるというわけではない。

でも、先述したとおり、このアルバムのことを知ったときには、かなり興味をそそられた。マニとペーター・ホリンガーという二人のドラマーが、バリでガムラン楽団とセッションしたというもの。

ガムランと一言で括っても実はいろんな種類があって、僕の生半可な知識でもジャワとバリのガムランは違うという程度は知ってるし、バリのガムランの中でも、このアルバムに参加しているスアール・アグンという楽団が演奏するのは、竹でできたジェゴグという楽器のみ。スアール・アグン団長スゥエントラ師の奥さんが日本人だということで、かなり詳しい情報が日本語でウェブサイトに載っているので、興味のある人はそちらをどうぞ。

CDをプレイヤーにかけてみると、耳慣れたジェゴグの音がまず聴こえて来る。金属製ガムランの音も決して耳障りというわけではないが、竹の音だけが幾重にも重なり合って響くこのオーガニックな感触はまた格別。普段でもガムランの演奏って一つの曲の中でもスローペースになったりピッチが上がって高揚したりするんだけど、この1曲目はいきなりハイペースだな、と思っていたところに、マニとペーターのドラムがなだれ込んでくる。

うわぁ、これはすごい。十何人ものジェゴグ奏者が織り成す密度の濃い音に加えて、やたらと手数の多いドラムの音。凄い高揚感。鳴っている楽器はほぼ全て打楽器なのに、超高音から重低音まで様々な音色が交じり合って、とても複雑なメロディーを作り出している。

冒頭にガムランがヒーリング・ミュージックと書いたけど、ことこのアルバムに関しては、ヒーリング度、ゼロ。呪術的な反復メロディーと心地良い一定のリズムが、耳から全身に繋がっている神経を常に刺戟し続ける。

煙草は全く吸わず、もちろん覚醒剤なんてやったこともなく、依存性薬物の摂取は主に高濃度のアルコールに頼っている僕にとっては、この音楽の覚醒効果と中毒性はかなりのものだ。夜中にこれを大音量で聴きながら酒を飲むという機会も環境も最近の僕には残念ながらないけれど、さぞかしトリップできるだろうな。

もともとは97年に発表された作品で、その当時はあまり話題にならなかったのが、リマスターされてこの形で再発されたのが、ちょうど十年後の07年。97年版に1曲ボーナストラックが追加されているが、それは楽器を使わずに全員で手拍子でリズムを合わせているような、どちらかというと練習風景の記録のようなもの。これはまあ、あってもなくてもよかったかな。

1000枚限定の紙ジャケ仕様なんだけど、実はジャケットの黄色い文字とランダの周囲の黄色い縁取りが、透明プラスチックのシートに印刷されている。こんな感じ。

DSC00371.JPG DSC00370.JPG


アマゾンの商品紹介を見てみると、「特製紙ジャケット+幸せで楽しい人生を送れる(かもしれない?)黄色いオーラ・フィルム付き。 ※購入された方の幸福を保証するものではありません」だって。あはは。


例によって、知ってる人には言わずもがな、知らない人にはちんぷんかんぷんな、毒にも薬にもならないような解説を長々と書いてきたわけだけど、このアルバムを、ガムラン側からでなくジャーマン・ロック側から興味を持って聴いてみようと思う人に向けたとてもわかりやすい表現がライナーに載っていたので、勝手に引用させてもらおう。曰く、「人力ゼロ・セット」。

Zero Set.png
Moebius - Plank - Neumeier 『Zero Set』

上に、グル・グルにもマニ・ノイマイヤーにもそれほど思い入れがないと書いた僕にとっても、自分のジャーマン・ロック・コレクションの中でも最も重要なアルバムの一枚。ジャーマン・ロックなんて書いたけど、ロックではないね。テクノとかエレクトロニカと言えばいいのかな。

一応このブログでは過去の名盤的なアルバムについてはあまり書かないことにしているし、説明するとまた延々と語りだしてしまいそうなので、今日のところはこの超有名盤については書かないけど、『Meet The Demons Of Bali』が「人力ゼロ・セット」だということで、上に延々と書いた説明のうち、人力で行われていた演奏(ドラム以外)を機械に置き換えたものがこの『Zero Set』だと、思いっきり乱暴に言ってしまおう。

この“近未来的な光の地下道を逃げるように走っている、半透明の黒人女性”という、ほとんど意味不明ながらこれほどアルバムの内容を的確に表しているものも少ないと思える秀逸なジャケットに惹かれる人は、一度聴いてみればいい。


さてと、外は相変わらず蒸し暑いようだけど、ちょっとこの2枚をヘッドフォンで大音量で聴きながら、選挙の期日前投票にでも行ってくるとするか。トリップしてヘンなのに投票しないようにしないとね。
posted by . at 12:29| Comment(7) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月16日

鳥肌 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

Under The Covers Vol. 2.jpg
『Under The Covers Vol. 2』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

Under The Covers.jpg
『Under The Covers Vol. 1』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

ドタタドタタ、ドドン。乱れ打ち風のドラムスに被さる、聴き覚えのあるギターリフ。失敗。一瞬の間を置いて、再スタート。

後世に残るパワーポップの名曲を書きたければ、こんなリフを作ればいい。いつ聴いてもそう思えるソリッドなあのイントロ。“Ma-ma, Yeah!”オリジナルのエリック・カルメンと同じキーで叫ぶスージー。流れるようなAメロを歌い始めるのは、シド。そのメロディが五線譜上を駆け上がり、さあコーラスに入るぞというその瞬間、歌詞でいうと“Baby, please”のちょうど真ん中で絡まるように分け入ってくるスージーのボーカル。

こんな描写をしても、曲を知らない人には何のことだかわからないだろうけど、これはこのアルバムの2曲目。ラズベリーズの「Go All The Way」のカバー・バージョンだ。僕はそのコーラスまで聴いた瞬間、特に悲しいわけでも感動したわけでもないのに、自分の目に涙が浮かぶのを感じて、ちょっとショックを受けた。え?何これ。土曜の朝だよ。別に酒を飲んで気持ちが昂ぶっていたというわけでもない(僕がそのとき飲んでいたのはコーヒーだ)。両腕にはびっしりと鳥肌が立っている。


このブログを昔から読んでくださっている方なら、上に載せた二枚の写真のうち、下側のは見た覚えがあるかも。そう、おととしの1月(もうそんなになるのか…)にその前年のベスト20アルバムを特集した記事に登場している、シドことマシュー・スウィートと、スージーことスザンナ・ホフスの二人による、60年代ポップスのカバー・アルバム。

そのアルバムのブックレットの最後に「See you next time! XO」と記されていたように、それから3年後の今年(こんなに待たされることになるとは思ってもみなかったけど)、見ての通り、オレンジと黄緑と薄茶という、一層夏らしさを増した色合いのジャケに包まれた第二集が発売された。

実は、1月のときもそうだったように、今回もやはり“ティルブルック・シンドローム”に罹ってしまっていて、先月末からこちら、CD屋にも行かなければ、新譜をチェックするためにオンラインショップのサイトを見ることすらしていなかった。なんだかスクイーズ/グレン以外の音楽を聴く気分になれなくてね。

このアルバムも、グレンのライヴのしばらく前に、いつも巡回しているLA MOSCAさんのブログを見てリリースされていることを知り、早く買わなくちゃなんて思ってたのに、ようやく入手したのが昨日という次第。

アルバムとしては素晴らしかった『Vol. 1』だけど、60年代という時代背景のため、僕が元々知っていた曲はアルバム中約半数程度だった。それに比べて今回の『Vol. 2』は70年代特集。大半の曲は知っている。それどころか、さすがマシュー、やっぱりこの人のやることに間違いはないね、と思える、ツボを突いた選曲。

おととしの記事に「斬新さのかけらもないようなアルバム」なんて書いてしまっているけど、きっと僕がマシューのファンでなければ、こんな後ろ向きの企画、と切り捨ててしまっていたかもしれない。だって、よくあるよね、もう曲が書けなくなってしまったアーティストが、過去の他人の名曲を再現、なんて。そしてその大半は、過去の他人の名曲をそのまま聴いていた方がいくらかマシというような出来でしかない。

ところが、冒頭に書いたような始末だ。お馴染みのマシュー・スウィート・バンド(この記事あたりで紹介済み)による、ワイルドながらタイトな、小気味のいい演奏。そしてデビューから何年経とうと何十キロ太ろうと全く不変な、マシューのあの声。それらが一緒になって編み出す魔法のような音楽を前にすれば、もうそれがどんな陳腐な企画であろうと僕は抗えない。

他にも、エリック・クラプトンとデュエイン・オールマンのツイン・リードを再現した(さすがに彼らほど達者ではないものの)、マシューとグレッグ・リーズのギターの絡みが嬉しい、デレク&ザ・ドミノズの「Bell Bottom Blues」(『Layla And Other Assorted Love Songs』からならもうどの曲を選んでくれてもOKだというのに、よりによってこいつをピックアップするそのセンスがたまらない)。

ジョン・レノンの「Gimme Some Truth」も嬉しい。マシューの声質を活かすなら、この選曲は大当たりだと思う。スザンナによるイントロの「アー」ってコーラスも、このざらっとした曲にほどよい甘さを加えているし、かと思えば、曲がフェードアウトしていくところでの彼女のハスキーなシャウトもいいよね。そしてまたこの曲でも、グレッグのスライドが実に魅力的にきまっている。

『Vol. 1』にニール・ヤングの曲だけが2回(どうしてもどちらも落せなかったからという理由で)出てきたように、この『Vol. 2』にはトッド・ラングレンが2曲収められている。そういうところも僕的にはかなりツボ。ちょうど前回が『Everybody Knows This Is Nowhere』からメロウなタイトル曲とハードな「Cinnamon Girl」の2曲が選ばれていたように、今回は『Something/Anything?』からの代表的バラッド「Hello It's Me」と元祖パワーポップみたいな「Couldn't I Just Tell You」が収録されている。

そして、「Willin'」! リトル・フィートの数ある名曲の中で、おそらく僕が一番好きなのがこれ。ライ・クーダー、ローウェル・ジョージという名だたるスライド・ギタリストが奏でてきたあの旋律をなぞるのはもちろん、グレッグのペダル・スティール。滲みるね。

順不同ながら、もうこのまま全曲について書いてしまってもいいぐらいだけど、夜も更けてきたのであと1曲だけ。おそらく今回のソングリストの中で一番異色なのが、イエスの「I've Seen All Good People」だろう。ゲスト・ギタリストはなんとスティーヴ・ハウご自身。でも、(かつてyascd002に入れた)「Thunderstorm」みたいな9分半もある組曲を作ったりとか、この人ってきっとプログレも好きなんだろうなとは思ってたよ。彼自身が書いたライナーによると、イエスのレコードを聴いてベースの練習をしたとか。クリス・スクワイアだよ。あんなの真似できないよ。すごいね。

ああ、それに、きっとこの人はイエスのファンだったんだろうなと僕が最初に思ったのが、97年の『Blue Sky On Mars』。このタイトルと名前のロゴ、わざわざロジャー・ディーンに描いてもらったんだよね。

Blue Sky On Mars.jpg 『Blue Sky On Mars』 Matthew Sweet

せっかくリンクしたのに、廃盤なの?これ。地味だけどいいアルバムなのにね、もったいない。まあ、中古で150円とかで売ってるから、これからマシューのアルバム集めたいという人は、5枚目か6枚目あたりはこれにすればいい。

マシューの前作『Sunshine Lies』を取り上げた記事のコメント欄で僕が悔しがっていたように、『Vol. 1』はマイナーなレコード会社からボートラ入りの日本盤が出たんだよね(まだ買ってないや。廃盤になる前になんとかしないと)。実はこの『Vol. 2』も9月16日に日本盤が出るということで、もしかしたらまたそれもボートラ入りで、悔しい思いをすることになるのかもしれないけど、そのボートラの選曲次第では、もう一枚買っても構わない。それより、日本盤を待ってる間こんなに素敵なアルバムを1ヶ月も聴けないなんて方が僕には問題だから、ちっとも悔しくなんてないよ。

そして嬉しいことに、今回のブックレットの最後のページにも、「SEE YOU NEXT TIME! XO」の一文が。次は80年代編だね。すっごく楽しみ。たとえまた3年待たないといけないとしてもね。
posted by . at 01:37| Comment(10) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月02日

Glenn Tilbrook live in Tokyo July 2009

今年4度目のスターパインズ。今年6度目のグレンのライヴ。まさかこんなに短いインターバルでまた観られることになるなんて。またしてもライヴからちょっと日にちが経ってしまって記憶が曖昧になりがちだけど、多分ありったけの記憶を総動員した長い記事になってしまうと思うので、読むつもりの人は覚悟して。

SPC Stage.JPG

前週のベン・フォールズに続いて、この日も東京は小雨。会場に着いた頃には止んでたんだけど、整理番号順に並び始めた頃にまたポツポツと来はじめた。幸い、若い整理番号だったお陰で、傘をさすまでもなく入場。まずは席を確保して、もうすっかりグレンのライヴではお馴染みになった客席の面々としばしの間ご歓談。

ふとステージを見ると、いつもの2本のアコースティック・ギターの他に、グランドピアノ、フェンダーのストラトとジャズベース、そしてドラムセットが、所狭しと置いてある。そうか、フジロックで一緒に演ったメンバーが来るんだ。ということは、もちろんスティーヴ・ナイーヴも! こいつは急にわくわくしてきたぞ。というか、それぐらいあらかじめ予想してろよって感じだけど、ちょっと最近バタバタしてて、そこまで頭回らなかったんだよ。くそー、スティーヴのCD持ってきてサインもらうんだった。

定刻どおりにステージに現れたグレン。いつものピンストライプのスーツに、今日はフラッファーズのTシャツでなく、カーキ色っぽいシャツ。スカーフはなし。夏だしね。

7月19日の記事に「今回は一回しかないからやっぱり選曲は総花的なものになってしまうのかな」なんて書いたのは、いつもその場で頭に浮かんだ曲を即興で演っているかのように新旧織り交ぜた選曲が楽しみのひとつであるグレンのライヴが、もしかしたら今回は一回だけだから、きっと『Singles 45's And Under』に入っているようなヒットパレードだけに終始してしまうんじゃないかと危惧していたから。

そんなのは1曲目で杞憂とわかった。12弦ギターによる印象的なイントロで即座にそれとわかる「By The Light Of The Cash Machine」。1月の7日間でも初日の1回しか演らなかったこの隠れた名曲がオープニング。そうそう、こういうのを聴きたかったんだよ。

こちらも隠れた名曲ながら、1月のときは後半戦のレギュラーだった「The Elephant Ride」に続く短いコメント。「1月に来たときにビデオを撮ったんだけど、まだ編集を終えていないんだ。きっと素晴らしいものになるから待ってて。そのときのことを覚えていたらコーラスをお願い」だって。あのときあの場にいた誰もがずっと気にしているんだけど、恐れ多くて誰も訊けなかったあのビデオ問題。きっとグレンも気にかかってたんだね。

6弦に持ち替えて、続く「Take Me, I'm Yours」では、ギターを弾きながらドラムキットに座り、突然ドラムを叩きながら歌い始めた。おお、結構上手いんだね。ワンコーラスほど歌ってまたギターに戻る。ミュージックプラントさんのブログによると、このフルセットの楽器がバンドのために用意されたのではなく、自分一人で演奏するためだとわざと客にがっかりさせるために、あえて第一部で一人で全部の楽器を演奏したらしいけど、あの−、誰もそんな風に思ってませんから(笑)。かわいいよね、この人。

お馴染みピーター・グリーンの「Oh Well」に続いては、これもまた個人的には待望の「Hostage」。そして、「Melody Motel」。更に、「今のは『Frank』に入ってる曲。次の曲はその次のアルバムから」と前置きして「Letting Go」。この辺の“非Singles 45's And Under”的な選曲が今回は抜群。「初めて生で聴いた!」なんてほどレアなのはないけど、「あれ聴きたかったんだ」ってのが沢山。特に1月のライヴでは『Frank』から1曲も演らなかったので、ちょっとカントリーっぽくアレンジが変わった「Melody Motel」は嬉しかった。

「次は古いのを」と言いながら、「Up The Junction」。新譜からの「Product」を挟んで「Tempted」と、今度はまさに“Singles 45's And Under”的選曲。もちろんどちらも嫌いな曲なんかじゃないから大歓迎。「Up The Junction」って、一緒に歌ってて気持ちいいんだよね。

ピアノに座り、「これはクリスと僕が1974年に書いた曲」と紹介して歌い始めたのは、僕には初めての曲。いつもその前置きだと「Who's That?」を演るんだけど、あまり聴き覚えのないメロディーだったから、もしかしたら「Introvert」かなとも思ったけど、そうでもない。多分「Where Did Your Love Go」というリフレインがそのままタイトルなのかな。これだけは初めて聴いたよ。

ピアノを離れて、今度はエレキギター。この人がストラトキャスターを持ってる姿って、あんまり見たことないかも。結構低い位置で弾くんだね。アコギでの演奏は何度も観た「Voodoo Chile」を、このスタイルで初めて観た。やっぱり、めちゃくちゃ上手いよね、この人のギター。

そのまま続けて、「エレキギターを持つと、こういうのを演りたくなるんだよね」とか言いながら弾きだしたのが、1月の京都の第二部オープニングだった「Sea Cruise」。できたらそのまま自分の曲、それもギターソロのかっこいい「Another Nail」とかも演ってほしかったけど、エレキはとりあえずその2曲のみ。がっかりさせるためにちょっと演奏しただけだもんね(笑)

第一部はあと4曲。“非Singles 45's And Under”的なのとそうじゃないのとをそれぞれ2曲ずつ演って、いつものように休憩タイム。この頃にはもう、カーキ色のシャツが汗で真っ黒に見えたほどだった。


第二部は全員で出てくるのかなと思いきや、またもグレン一人で登場。カラフルなシャツに着替えてきたね。2曲を演奏した後、「友達を紹介するよ」と、スティーヴ・ナイーヴを呼び出す。見かけ的には、アトラクションズの頃の彼しか記憶にないので、ステージに出てきた髭面のがっしりしたオッサンが一瞬誰だかわからず。あの頃は、ノンスタイルの左側みたいな体型だったのに。

グレンと二人で「Nostalgia」という曲(*1)をスティーヴのボーカルで演奏した後、ギターとドラムの二人を呼び出す。若いねー。グレンやスティーヴから見たら、息子と言ってもいいぐらいの歳じゃない?そこでもう1曲スティーヴのボーカルで「Pandemonium」。打楽器っぽいピアノがなんとなくジョン・ケイル風の曲。

 *1)この日演奏されたスティーヴ・ナイーヴ・バンドの曲はおそらくまだどれもオフィシャルに発売されておらず、早口の曲紹介や、曲のリフレインの歌詞から適当にあたりをつけ、タイコウチさんに教えてもらったスティーヴの過去のライヴのセットリストのそれらしき曲名を当てはめていっただけなので、もしかしたらタイトル間違えてる可能性大。

もっとグレンの曲聴きたいなーと思っていたところに、「Still」。ちょっとスティーヴには申し訳ないけど、やっぱり曲のクオリティが全然違うよね。いや、僕だってアトラクションズの『Mad About The Wrong Boy』のスティーヴ作の曲はいいと思ってるよ。「Arms Race」とかね。ただ、グレンの曲が別格なだけ。

Mad About The Wrong Boy.jpg The Attractions 『Mad About The Wrong Boy』

ちょっと文字ばっかりになってきたから写真でも貼ろうかと思ったら、これもう廃盤なんだね。しかもアマゾンのマーケットプレイスじゃ結構な値段で取引されてるし。レコード会社もコステロのCDばかりあんなに何度も何度も再発するぐらいなら、こういうのも一緒に出せばいいのにね。コステロの再発盤が何枚ぐらい売れてるのか知らないけど、10人に1人ぐらいはこれも買うだろうに。

ライヴの話に戻ろう。「Still」の後でグレンがベースを持ち、ドラムの坊やが立って歌い始めたのが(おそらく)「When We Were」という曲。続けてスティーヴが歌う「Burn The Past」。もっとグレンの曲が聴きたいなーと(略)

そしたら今度はギターの坊やがベースに回り、グレンがエレキを持って、今年の1月以降もう何十回も聴いたあのフレーズを弾きだした。「Best Of Times」! 聴き慣れたスティーヴン・ラージのアコーディオンでなく、スティーヴ・ナイーヴの生ピアノ・ソロで聴く「Best Of Times」。こういうのを至福というんだ。

余韻に浸る間もなく、またグレンがベースでドラム坊やがボーカルの「You Don't Know Anything」。次はグレンがギターで「Untouchable」。続いてまたグレンがベースに持ち替えて「Goodbye Girl」。こうして書いてるのを読んでて面倒臭いなと思う人がいるだろうけど、実際そんな感じで、せっかくの「Best Of Times」とか「Untouchable」とかの名演の流れが、楽器交換やらドラム坊やのボーカルとかでどうもブツブツと途切れてしまうのがちょっと残念。

まあ、「Goodbye Girl」のちょっとゆったりしたアレンジ(『Five Live』のときみたいな感じ)とスティーヴのピアノは格別に合ってたし、この日結局バンドで演ることになったいきさつを綴ったミュージックプラントさんのブログを読んだら、そんなのちっとも残念ともなんとも思わなくなったのも事実なんだけどね。ほんとに、いつも周りの人のことを気遣うグレンの優しい性格がひしひしと伝わってくる記事だよ。

スティーヴがボーカルをとる「Life Preserver」(グレンはベースのまま)を終え、そのままスティーヴが曲紹介。「次の曲は、僕たちの友達のニック・ロウの曲で…」。やった! 前の日フジに行った友達に聞いていたけど、やっぱりこの曲がラストだ。「(What's So Funny 'bout) Peace, Love & Understanding」。グレンのボーカルで、スティーヴ・ナイーヴのピアノで、ニック・ロウのこの名曲が聴けるなんて! 僕の座っていた位置のせいか、それともグレンのボーカルマイクのボリュームがちょっとオフ気味だったのか、いまいち歌がよく聴こえなかったんだけど、とにかくこの最高の瞬間をもって、本編終了。


アンコールはまずグレン一人で「Another Nail In My Heart」。6弦のアコギでミストーンもなくきっちりと(というか、この素晴らしい演奏を余裕の表情で観ているこっちも、贅沢になったもんだよなーと思ってしまった。06年に最初に観たときの感動を忘れないようにしないと)。

続いて、またバンドメンバーが全員出てきて、グレンがベースで音を出しながら他のメンバーに「こういうコードの曲だよ」みたいなことを言ってそのまま始まった曲。あれ何だったんだろう。「Johnny B Goode風」とでも呼べばいいのか。でも歌詞違うし。終演後その辺の人たちに片っ端から訊いてみたけど、誰もわからず。

その「Johnny B Goode風」で再度退場。アンコールの拍手の中、客電も点きはじめて、もうこれで終わりかと思ったところでグレンがまた登場。「Black Coffee In Bed」を歌い始めた。

曲の途中でステージを降り、客席の間を縫って後ろの方に歩き始めるグレン。今回は“Unamplified”じゃないんで、そろそろシールド目一杯だよと思ったところで立ち止まり、突然「Happy Birthday」を歌いだした。なんと、1月の大阪公演で僕の隣に座ってたMさんじゃないか。ちゃんと名前も歌ってもらってたよ。彼女が物心ついてからこれまでの誕生日がどんなだったかをもちろん僕は知る由もないけれど、きっと今年の誕生日に勝った年はそんなになかっただろうね。おめでとう、Mさん。

歌いながらステージに戻り、また「Happy Birthday」の一節を入れ、「No milk & sugar♪」と「Black Coffee」に戻してから、最後はピアノをポロンと弾いて、ベースの弦にちょっと触れ、ドラムをドタドタドタと叩いて、濃密な2時間のライヴは終了。結局、演ってほしいと思っていた曲も随分演ってくれたし、『Singles 45's And Under』に入ってる曲もほとんど(*2)演ってくれたよ。楽しかったー。

 *2)曲目がそれぞれ違うアメリカ盤とイギリス盤の両方の収録曲を足しても、そのベスト盤に入ってる曲でこの日演奏しなかったのは、「Annie Get Your Gun」、「Labelled With Love」、「If I Didn't Love You」、そして、「Cool For Cats」(笑)のみ。


終演後は恒例のサイン会。ただ、1月もツアーの最後の方はそうだったんだけど、会場にいたファンのほぼ全員が並んでるんじゃないかと思うほどの長蛇の列で、(Mさんを冷やかしたりしながら)終演後の余韻に浸っていた僕らにようやく順番が回ってくる頃には、グレンもかなりお疲れモード。それでも一人ひとりにニコニコと笑いかけ、たどたどしい英語で何かを語りかけてくるファンの話を真剣に聞き、ほぼ全員と何度も写真に納まるこの人は本当に素晴らしいなと、いつもながら思った。

僕が並んだのはほとんど列の最後の方で、あんまり話しかけるのも悪いと思って、あの1974年の曲も、最後の「Johnny B Goode風」も、タイトル訊こうと思ってたのにすっかり忘れてた。

でもサインはちゃっかり2回もらったよ。この日聴けた、隠れた名曲三羽烏(?)の「By The Light Of The Cash Machine」、「Hostage」、「The Elephant Ride」、それから「Untouchable」も入ったこのEP。400枚のうち、サイン入りは一層珍しいだろうとちょっと自慢。

Autographed Aussie P.jpg

そして、やっぱり今年のライヴは今年のCDにサインが欲しいと思って、無理言ってもう一枚これにも。何も催促してないのに、名前だけじゃなくて何か一言添えてくれるところが嬉しいよね。

Autographed Still.jpg

それから、時間的にはちょっと前後するけど、グレンのサインの列に並んでるときに、帰ろうとしていたスティーヴにもサインをもらった。車が出るから急いでるんだと言いながら、集まってくるファン一人ひとりに丁寧にサインをするこの人が、あのアトラクションズのエキセントリックなキーボーディストと同一人物だとはやはり思えず。

Steve Nieve's Autograph.gif

この写真はちょっと加工してあるけど、実際のサインはチケットの裏にしてもらった。やっぱりスティーヴのCD、何か持ってくればよかった。『Costello & Nieve』の箱をきちんと折りたたんで持って来ていたタイコウチさんの用意周到さには負けました。


濃密な2時間の後は、これもまた恒例の二次会へ。それでグレンのライヴの楽しさがかき消されるわけじゃないけど、ライヴ自体に負けず劣らず楽しいひとときだったよ。みなさん、どうもありがとう。また近いうちにね。


Setlist

1. By The Light Of The Cash Machine
2. The Elephant Ride
3. Through The Net
4. Take Me, I'm Yours
5. Ow Well - Fleetwood Mac's cover
6. Hostage
7. Melody Motel
8. Letting Go
9. Up The Junction
10. Product
11. Tempted
12. Where Did Your Love Go (?)
13. Voodoo Chile - Jimi Hendrix's cover
14. Sea Cruise - Frankie Ford's cover
15. Tough Love
16. Happy Disposition
17. Slap & Tickle
18. Is That Love

19. Someone Else's Bell
20. Pulling Mussels (From The Shell)
21. Nostalgia - Steve Nieve
22. Pandemonium - Steve Nieve
23. Still
24. When We Were - Tall Ulyss
25. Burn The Past - Steve Nieve
26. Best Of Times
27. You Don't Know Anything - Tall Ulyss
28. Untouchable
29. Goodbye Girl
30. Life Preserver - Steve Nieve
31. (What's So Funny 'bout) Peace, Love & Understanding - Nick Lowe's cover

32. Another Nail In My Heart
33. Johnny B. Goode-ish (?)

34. Black Coffee In Bed

27 July 2009 at Star Pines Cafe Tokyo
posted by . at 02:37| Comment(7) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする