2009年02月25日

Jason Mraz live in Tokyo

JM leaflet.jpg

抽選外れたら困ると思って二日間の東京公演両方とも先行予約に申し込んだら、二日とも当たるし。そしたら案の定、初日の月曜は開演時刻まで会議を入れられてしまってどうしたものかと思ってたら、直前になって前座が起用されて30分遅く始まることがわかり、余裕持って駆けつけられた。おまけにあろうことか会議が早めに終わったから前座まで観られたし。

というわけで行ってきましたジェイソン・ムラーズ東京公演@渋谷C.C.レモンホール。ほんとに会場にでっかいレモンが貼り付けてあるんだね。昔はこんな子じゃなかったのに。

まずは初日、2月23日分のメモ書き。前座のことはいいね。長くなってしまうし、文句ばかり書いてファンの人の気分を害してもアレだし。

久々に着座の会場で大きなステージ。僕の席は8列目のやや右より。悪くないね。ステージ構成はいつもDVDで観てるとおり。前列左にベース、右にパーカッション。後列左から、ドラムス、ホーンの人たちのお立ち台、キーボード。

オープニングはボーッとしたキーボードの低音に導かれて、予想通りの「Make It Mine」。最近のライヴDVDと同様に、バンドにエレキギターが入ってないので、音がすごくふくよかで柔らかに聴こえる。目立つ音が、サックス、トランペット、トロンボーン、あとはコンガを中心としたパーカッション。よく考えたら、そんな楽器編成のバンド、最近あまりいないよね。

続いては、早くも「The Remedy」。もう演るんだ、こんな序盤で。この曲って、あの超早口で延々引っ張った後のサビのところのシングアウトが快感なんだけど、最近はフェイク入れて音を下げて歌っちゃってるのがちょっと残念。二番のサビのところで「一緒に歌って!」とか言われたけど、例によって僕はあんなに高い声が出るわけもなく、ジェイソンと同じ下のラインを歌う。中間でオエイシスの「Wonderwall」の歌詞をアドリブで入れるところも、『We Sing, We Dance, We Steal Things』の限定盤に付いていたDVDと同じパターン。

続く3曲目、なんと「You And I Both」。ちょっと個人的にはこの3曲立て続けは狂喜乱舞モノ。半分涙目。もうここで帰ってもいいかと思うぐらい。帰らないけど。これもメドレーで「Sleeping To Dream」につなぎ、最後はまた「You And I Both」に戻って終了。こういう展開もいいねー。

ウクレレに持ち替えての「If It Kills Me」から(結局この日頻繁にギターを持ち替えたジェイソンだけど、ウクレレを使ったのはこの曲だけ)、しばらくスローバラッドが続く。選曲そのものには文句はないんだけど、ちょっとスローなのが続きすぎるかなという感じ。オープニングで立ち上がった観客が、座るわけでもなく踊るわけでもなく所在なさげにゆらゆらと何曲分も。

どの曲のときだったかな、歌い終わって「メルシーボクー」とフランス語で挨拶。それがウケると「ダンケシェーン」「ムーチャスグラシャス」「カムサハムニダ」とどんどん続けて、最後に「サンキューべりマッチ」「アリガトウゴザイマス」で大歓声。

曲の始めのカウントでも「イチ、ニ、サン、シ」とか言ったり、別に難しい日本語使うわけでもないんだけど、ちょっとしたカタコト日本語の発音とかアクセントがすごく自然。やっぱり耳いいんだろうね。

「The Dynamo Of Volition」を始める前に、「ハイ・ファイブではこうやって手を交互に挙げて、ロウ・ドウのときは手は下。背中にまわして後ろの人に叩いてもらってもいいよ。後ろの人はちゃんと責任果たすように。それからまたハイ・テンのときは両手で上」とか説明。曲中でもアドリブでいろんなコーラスをコール&レスポンスして、楽しい。「ニホン、ダイスキー」とかも言ってたね。いつ終わるかと思うぐらい延々と演って、本編終了。

Jason Eco.jpg

アンコールの拍手が続く中、スタッフがステージにマイクを2本追加。会場入り口で配ってたチラシに書いてあったとおり、前座のキマグレンが参加して、「I'm Yours」。上のチラシの文字が読める人はわかると思うけど、この曲は今日から期間限定配信されてるらしい。チラシに書いてあるアドレス(http://wmg.jp/eco)に行ってもまだこの曲のことは書いてないけど、QRコードから入ればもうダウンロードできるのかな。あとでやってみよう。

「I'm Yours」も相当長く演ってたけど、その次はもう文字通りノンストップ。「No Stopping Us」を延々と、メンバー紹介を挟み、その間にいつもお馴染みのポラロイドで一人ひとりの写真を撮っては観客席に投げ込む。こっち方面には全然来なかったな。その曲がやっと終わったと思ったら、間髪入れず「Butterfly」。これも長かったよ。アンコール3曲で30分近く演ったんじゃないかな。

あまりにも最初の方に僕の好きな曲を固めすぎてたとか、中盤バラッドばかりで曲順もうちょっとひねればよかったかもとか、ほんの些細な注文はつけられなくはないけど、内容は最高。さすがにいいライヴするよね。

ただ一つだけ、ジェイソンには全く何の罪もないんだけど、僕の隣にいた客の息が、なんというか、タバコとかコーヒーとかその他ありとあらゆるものが入り混じった、強いて言えば、オタマジャクシが腐ったような匂いだったのがちょっと。。指定席はこういうのがあるとつらいよね。


二日目。

同じ日にチケットを申し込んだのに、初日と違って今度はえらく後ろで端の席。おまけに入り口ドアのすぐ近くだから、コンサート中もかなり頻繁に人が出入りして、そのたびに明かりやら冷気が入り込んできてちょっと興ざめ。

そういう席だったこともあり、二日間も通うのはちょっとトゥーマッチかなとも思っていたから、開演前はわりと冷静に構えていた。この時点での一番の関心事は、果たして昨日とセットリストを変えてくるかどうかということ。この人のことだから、全く一緒ということはないだろうけど、さて、昨日聴けなかった曲をどれだけ演ってくれるかな。

メンバーが出てきて、またキーボードのボーッとした低音が奏でられ、まあ流石に最初は「Make It Mine」だろうなと思っていたら、いきなりの超早口。「The Dynamo Of Volition」だ! 一曲目から飛ばしてくれるね。ほら、ハイ・ファイブとかちゃんと説明しないから、僕の位置から見てても、半分ぐらいのお客さんしかちゃんと手挙げてなかったよ。

二曲目「Only Human」、三曲目「Life Is Wonderful」と、昨日も演った曲が続くけど、曲順が全然違うよ。序盤からスローバラッドが続くところは昨日同様だけどね。

また次もスローな曲…と思ったら、「Love For A Child」! 今日の鳥肌大賞はこれ。昨日は聴けなかったからね。ほんとに名曲。

六曲目のアコギの弾き語りは新曲だったのか、誰かのカバーだったのか、とにかく僕の知らない曲。その後またバンドメンバーが出てきて、ジェイソンも含めて全員白いヘルメットをかぶる。「何が落ちてくるかわからないからね」とか言って。

お、ジェイソンがエレキギター持ったよ。と思ったら、「Geek In The Pink」だ。今日は早口言葉曲が多いね。かっこいい。

メンバーが全員ヘルメット脱いだのに、ジェイソンだけは「これ気に入ってるんだ」とか言って、ヘルメットかぶったままエレキで次の曲に。あれ?なんだか知ってる歌詞なんだけど、なんだっけ… サビに来てやっと思い出した、スティーリー・ダンの「Peg」。わぁ、こんな曲演るんだ。これは聴けて嬉しかった。

アコギに持ち替えて(今日もかなり頻繁にギター取り替えてる。このときは確か、日の丸のステッカーが貼ってあるやつだったかな)、「よく人に“一番好きな自分の曲は何?”って訊かれるんだ。一番好きなのはこれ」と言って始めたのは、「A Beautiful Mess」。今日の鳥肌大賞その2。

どの曲のときだったかな。「アリガトウゴザイマ…シタ」って、今日はちゃんと過去形覚えてきたんだね。

そこから先、本編最後までは、昨日のアンコールどおり。「No Stopping Us」〜「Butterfly」。メンバー紹介&ポラロイド付き。

アンコールに応えて、まずジェイソンが一人で登場。足元にあったセットリストの紙をくしゃくしゃに丸めて「こんなの見ずに演るよ」と。「これは自伝的な曲」と言って歌い始めた曲、確かどこかで聴いたことあると思うんだけど、タイトルが思い出せない。よくこんな早口で息継ぎもろくにせずに歌えるよね。本当に自伝が書いてある本を一冊読み上げてるんじゃないだろうかと思うぐらいに長い曲。あの早口の歌詞が全部わかったら、きっともっと楽しめたのにな。

続いてメンバーも登場。ジェイソンが「次の曲はハワイアン・テイストで。友達を呼んでいるよ。リエ・ハセガワ」と紹介。ウクレレを持って登場したその人は遠くてよく顔が見えなかったけど、長谷川理恵?この人ってミュージシャンなんだっけ。と思ってさっきプロフィール調べてみたら、「趣味:マラソン、サーフィン、ウクレレ」だって。なるほど。

曲はもちろん「I'm Yours」。昨日のWITHキマグレンも悪くはなかったけど、僕としては今日の方がよかったかな。

最後にもう一曲演ってくれるかなと期待したけど、全員ステージの前に出てきて、肩を組んで深々と挨拶。うー、ちょっと残念。最後に弾き語りで「You And I Both」聴きたかったな。

聴きたかったといえば、なんで『MR.A-Z』からの曲がこんなにセットリストから削られてしまったんだろう。あのアルバム、僕の好きな曲たくさん入ってるのに。「Please Don't Tell Her」も「Wordplay」も「Mr. Curiousity」も「Plane」も聴きたかったよ。あとは「Prettiest Friend」も。まあ、贅沢言うときりがないけどね。

なんだかんだ小さな文句言ってるけど、今日の選曲には満足。というか、やっぱり二日間来てよかったよ。一日だけだと「You And I Both」か「Love For A Child」のどちらかが聴けなかったわけだからね。最近CDもあまり買わずに節約モードに入ってるけど、金にものを言わせるときは言わせないとね(笑)

すっかりいい気分で、ウォークマンで『We Sing, We Dance, We Steal Things』を聴きながら、冷たい小雨の中を歩いて代々木八幡駅まで歩いて帰った。昨日試しに歩いてみて、渋谷からのあの通りに結構旨そうな店が沢山あることを発見したので。


セットリスト

2月23日

1. Make It Mine
2. The Remedy (I Won't Worry)
3. You And I Both / Sleeping To Dream
4. If It Kills Me
5. Lucky
6. Life Is Wonderful
7. Only Human
8. A Beautiful Mess
9. Unfold
10. Live High
11. The Dynamo Of Volition

12. I'm Yours
13. No Stopping Us
14. Butterfly


2月24日

1. The Dynamo Of Volition
2. Only Human
3. Life Is Wonderful
4. Love For A Child
5. Live High
6. Ray Of Sunshine
7. Geek In The Pink
8. Peg
9. A Beautiful Mess
10. No Stopping Us
11. Butterfly

12. Gypsy MC
13. I'm Yours

<2月27日追記>
6曲目とアンコール1曲目、曲名判明。
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2009年02月21日

背伸びの音 - Lord Large

The Lord's First XI.jpg Lord Large 『The Lord's First XI』

カーティス・メイフィールドを教えてくれたのは、ポール・ウェラーだった。シングル「Beat Surrender」のカップリング曲としてだったか、『Snap!』の初回盤に付いていたライヴ盤でだったか、それともFMのライヴを録音したのか、どこで最初に聴いたのかはよく覚えてないけど、83年にはもうすっかりソウル色を強めていたジャムが自分達の定番にしていた「Move On Up」という曲で、僕は初めてその名前を聞いたんだと思う。

無人島レコードはどうしても選べない僕の、無人島本ベスト3(やっぱり一枚には絞れてないけど)の一冊であるニック・ホーンビィの『ハイ・フィデリティ』で、主人公のロブが好きなレコードのトップ・ファイブの一番目にマーヴィン・ゲイの「Let's Get It On」を選んでいるのを見て、なんてクールなんだと思った。

中学生の頃から今に至るまで、およそロック/ポップスと呼ばれる音楽ばかりを聴いていた僕にとって、ソウルというのは、少し上の兄貴(*1)が教えてくれる音楽だった。結局そういう音楽を心の底から好きになることはなかったけど、ソウル・ミュージックを聴いているときにはいつだって、ちょっと背伸びをして、大人ぶった気持ちになれる。今の僕はもうとっくにいい大人だということはさておいて。

*1:ポール・ウェラーもニック・ホーンビィも、ちょうど中学生の僕が憧れる大学生の兄貴というぐらいの歳の差。もっとも、僕が中学生の頃にはニックは教員を目指して本当に大学で勉強していたはずだから、その当時の僕には名前すら知る由もなかったけど。

ロード・ラージ、本名スティーヴン・ラージ(*2)のこの06年に出たアルバム。お察しの通り、僕がこれを買ったのは、彼がグレン・ティルブルックのバンドのキーボーディストだということと、このアルバムにグレンがゲスト・ヴォーカリストとして参加しているということが理由だったんだけど、このアルバムは上に名前を挙げたような人たちの音楽を思い起こさせる。ノーザン・ソウル。それから、モッズ。

*2:このブログでは彼のStephenというファースト・ネームをステファンと書いていたけど、実際の発音はスティーヴンだということに気づいた。あとで過去記事も訂正しておこう。

スティーヴンはキーボード・プレイヤーに徹し、グレンを含めた8人のゲスト・ヴォーカリストが次々に登場する。僕はほとんどの人の名前を知らなかったけど、張りのある塩辛声、いぶし銀のようなテナー・ヴォイス、年齢不詳のチャキチャキのハイトーン・ヴォイスが代わる代わる登場して、楽しめる。その中では、アルバム本編最後に位置するグレンの声だけが、あまりに異色。これを買ったソウル・ファンはこの曲をどう思うんだろう。

そのグレンの曲のひとつ前に収められた、ディーン・パリッシュが歌う「Left, Right & Centre」。うわ、まるっきりポール・ウェラーみたい、と思ったら、なんとこれがポールが15歳のときに書いたという未発表曲。15歳って、ジャム結成よりも遥かに前?ジャムの曲よりむしろ、彼がソロになって最近書いた曲と言われたほうがしっくりくるような曲調。

おそらくLPではA面とB面それぞれの冒頭の曲と、日本盤ボートラの最後の2曲がインスト。これがまた、どこのモッズ・バンドかと思ってしまうぐらい、超かっこいい曲ばかり。スティーヴンのオルガンとウーリッツアー・ピアノ、それから、(ユニットとしての)ロード・ラージのもう一人の主役、アンドリュー・J・ジョーンズによるものと思われるストリングス。この3つの音の組み合わせがこのアルバムの要。曲調がソウル風だろうとモッズ風だろうと、それだけは揺るぎない。

これを聴くとはっきりわかるのが、グレンの『Pandemonium Ensues』のあの音作り、これまでの2枚と明らかに違う音の感触は、この人たちが持ち込んだんだということ。たぶん、スティーヴンとアンドリューがいなければ、「Still」はああいうアレンジにはならなかったんじゃないかと思う。

グレンのこれまでのアルバムにも参加していたこの(当時はろくに名前も記憶していなかった)キーボーディスト、正直言って、僕は単なる雇われセッション・ミュージシャンに毛の生えた程度だと思っていた。それらのアルバムでは特に目立ったプレイをしていたわけでもなかったし。

再結成スクイーズのライヴ・アルバム『Five Live』を聴いても、スタジオ盤でのジュールス・ホランドやポール・キャラックら先達のフレーズをそのままなぞっているだけという印象だった。1月31日の記事に書いたように、「Black Coffee In Bed」や「Love's Crashing Waves」の85年のライヴを聴いただけで、明らかにジュールス・ホランドがピアノを弾いているとわかったのとは大違い。

それが、『Pandemonium Ensues』でのあの飛躍ぶり。「Best Of Times」でのアコーディオンの素晴らしさは言うに及ばず、先述の「Still」での弦とオルガンとウーリッツアーの絡み、「Too Close To The Sun」でのモンド風味満載のムーグとエコー(*4)、どれもこれもスティーヴンと、アルバムの共同プロデューサーであるアンドリューの仕業だと思える。

*4:実際には、ムーグを弾いてるのはグレンで、エコー操作はアンドリューだけど、キーボード主体のあの曲にスティーヴンが口出ししてないはずがない、と決め付けておこう。

再結成スクイーズの初期の音源を収めた『Five Live』では、きっとスティーヴンは新参者だということで遠慮していたんだろう。来年出ると言われているスクイーズのニュー・アルバムでは、きっと彼が『Pandemonium』でしたのと同じぐらいの貢献をしてくれるはずだ。スクイーズのファンをニューオーリンズに連れて行ってくれたのがジュールス・ホランドだとしたら、この最新スクイーズのキーボーディストは、僕たちをシカゴやデトロイトに連れて行ってくれるに違いない。

どうも、放っとくとスクイーズの話ばかりになってしまうね。本題のこのアルバム、スクイーズとは全然ジャンルが違うけど、グレンが参加しているかどうかに関わらず、最近の僕のヘビー・ローテーションになっている。マイスペではグレンの曲は聴けないけど、アップされている4曲はどれも格好いいのばかりだから、興味のある人はどうぞ。きっと、ポール・ウェラーが『The Cost Of Loving』の頃に目指していたのは、こういう音だと思う。
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2009年02月14日

言葉の人 - Chris Difford

The Last Temptation Of Chris.jpg Chris Difford 『The Last Temptation Of Chris』

べつにウケ狙いでグレンのサイン会に持って行くためだけにこのアルバムを買ったわけじゃない。もう半年も前から気に入っていたのに、タイミングが合わなかったのか、すっかり紹介する機会も逸してしまっていたんだけど、グレン中毒からのリハビリのために最近またよく聴きはじめたから、今さらだけど思い出したように書いてみよう。

クリス・ディフォードの3枚目になるソロ・アルバム。とはいえ、僕が2006年のベスト20に滑り込ませた前作『South East Side Story』は、主にスクイーズの曲をアコースティックで再録した企画盤だったから、純粋な新曲によるスタジオ作としては、2002年の『I Didn't Get Where I Am』以来、6年振りの2作目ということになる。


ちなみに、上にリンクした記事では、やたらとネガティブな感想ばかり書いてしまった『South East Side Story』だけど、あの後にDVDの方を観て印象ががらりと変わってしまったことは書いておかないとね。

記事に書いたように、CDではグレンのパートをドリー・ジャクソンという女性が歌っていて、クリスとデュエットしているようなミックスになっていたんだけど、DVDの方がクリスのボーカルがずっと前に出てきているので、CDを聴いていたときに感じた“よその人によるスクイーズのゆるーいカバー集”という印象は一掃された。

それに、さすが「言葉の人」だけあって、ステージでのMCが面白い。グレンもよくステージで自虐的なギャグを言うけど、シニカルなジョークを喋らせたら天下一品だね、この人は。アート・ガーファンクルとウサギの話とか、DVD観ながらクスクス笑ってしまった。

CDにはない最後のパート、クリスの息子ライリー・ディフォードのベースを含むバンドが登場して「Cool For Cats」と「Take Me, I'm Yours」を演奏するところは、やっぱりぞくっときてしまう。スクイーズと比べると随分ゆるい演奏には違いないんだけど、テレキャスターを構えたクリスを見ているだけで、何か魔法にかかったような気持ちになってしまうね。


さて、いつまでも前作の話ばかり書いてるとまたとりとめのない長文になってしまうので、さっさと本題に移ろう。まずは、シニカルなジョークといえば、アルバム・タイトル『The Last Temptation Of Chris(クリス最後の誘惑)』が、マーティン・スコセッシの『最後の誘惑(The Last Temptation Of Christ)』のパロディだということ。内容は別に関係ないと思うけどね(映画は未見なので)。

『I Didn't Get Where I Am』でほとんどの曲を共作し、アルバムのプロデュースまでしていた元イット・バイツのフランシス・ダネリーに代わって、今作で重要な位置を占めているのは、ブー・ヒュワディーン。アルバムのプロデュースと全曲でのギターとコーラスを担当し、2曲を除いた全ての曲でクリスの歌詞に曲をつけている。

僕にとっては、CDも2枚ぐらいしか持っていなくて、そんなに熱心に動向を追っているという人ではなかったんだけど、彼の書くやわらかなメロディーが、クリスの声にこんなによく合うことを知って驚いている次第。彼の他のアルバムも欲しくなってきたよ(リハビリ効果)。

普段あまり歌詞を気にして曲を聴くことはないんだけど、この人のはやっぱり読んでみたくなる。ドラマ仕立てのような仔細なプロット、ひねった言い回し、心地良いライムはスクイーズ時代から変わらず、むしろスクイーズのいくつかの曲に見られる、何について歌っているんだかよくわからないような歌詞はなくなっているね。

自分の浪費癖(実話?)を歌った「Come On Down」、バンドでのツアーに明け暮れて子供達の世話をしてあげられなかったことを悔やむ(これも実話?)「Broken Family」、オペラなんかが好きだということで厳格な父親に救世軍に入れられてしまう兄とそれを悲しむ母のことを弟の立場で歌った(これは人に聞いた話らしい)「Battersea Boys」など、わずか3分ずつの曲を聴いているだけで小さな物語のそれぞれの場面をありありと思い起こさせてくれる作詞術はさすが。

スクイーズ時代も、結構暗かったり生々しかったりする歌詞を、グレンのカラフルなメロディーに乗せることで見事なポップソングに仕立て上げていたものだけど、このアルバムに収められているのも、例えばさっきの「Broken Family」なんて、歌詞を無視すれば(別にそんなに陰惨な歌詞というわけじゃないけど)とてもポップなメロディーを持った佳曲だ。

アルバムからのリードシングル(注1)である「Fat As A Fiddle」(注2)も、自分がいかに太って醜くなってしまったかを自覚しているけれど、でも食べるのが好きだからどうしようもない、というジレンマを切々と(笑)歌った曲。「いまや僕にはお母さんみたいにおっぱいがある」「運動始める前に既に息切れ」「毎朝靴下を履くのが苦痛」「僕は木みたいに見える」とかの歌詞が可笑しいやら切ないやら(注3)。

注1:ネット上でもCD屋でもその存在を見たことないけど、本当にシングル盤でリリースされてるのか?
注2:Fit As A Fiddle(ぴんぴんしている)という慣用句をもじった、「バイオリンのように太っている」?
注3:さっきのDVDで息子を紹介するときにも、かつての自分もあれぐらい痩せていたということを言ってたよ。よっぽど気にしてるんだね。


各曲に数行ずつ、クリス自身による解説がついていて、例えば「病院に行った」だの「赤ちゃんが生まれた」だのという歌詞がある「Reverso」が、実は精管切除手術について書かれた曲だということを知る。そういう際どい話題なのに、これもまたアルバム中でもトップクラスのポップな曲。

「俺の人生にいるもう一人の男/彼がどんなふうに思っているかなんてわからない/でも彼がどんなに傷つけるかは知っている」なんていう意味深な歌詞がサビに来る「The Other Man In My Life」、タイトルを見たときから、どうしてもグレンのことを歌ってると思ってしまう。でも、どう深読みしても、どうやらそうじゃないみたい(それらしきキーワードがちらほら込められてるから、もしかすると更に深読みすると、実はそうなのかもしれないけど)。

そう、余計なお世話だとは知りつつも、ファンとしてはどうしても気になってしまうのが、クリスとグレンの関係。グレンが自作の「Neptune」でクリスのことを揶揄していたりとか、なんとかあの二人がよりを戻してくれないかなと思っているこちらとしては、そういう言葉の端々がやたらと目につく。

そういう目でアルバムクレジットの謝辞を見ていると、ちょっとした変化に気づく。グレンのアルバムにももちろんクリスの名前は載っているんだけど、わりとそういうことには無頓着そうなグレンとは違って、「言葉の人」クリスとしては、謝辞リスト内でのグレンの位置とか、ちょっと添える言葉とかにまで気を使ってるんだろうなと思わせるような変化。

例えば、スクイーズ解散直後の『I Didn't Get Where I Am』では、謝辞のほぼ最後に思わせぶりに、「グレンへ、明かりを消してくれてありがとう。マキシンへ、明かりを点けてくれてありがとう」(注4)と、いかにもグレンにスクイーズ解散の原因を追究するような皮肉めいた言葉。

注4:クリスとグレンを引き合わせ、スクイーズ結成に導いたマキシン・ベイカーのことだろう。92年に白血病で逝去。名曲「Some Fantastic Place」が彼女を偲んで作られたのは有名な話。

その4年後、グレンと共作したスクイーズの名曲の数々を再録した『South East Side Story』では、謝辞の一番最後に「グレン・ティルブルックへ、僕の人生にメロディーを与えてくれてありがとう」と、少しは素直にグレンとの関係を見られるようになってきたのかなと思える言葉。

そして、ファン長年の夢をかなえたスクイーズ再結成を経た今作では、一番最後とかの気負った位置じゃない真ん中あたりに「敬服し、愛するグレン・ティルブルックへ」と、これは一切皮肉抜きだなとわかる書き方になっている。来日公演時にクリスの話をするグレンを見ていてもわかったけど、スクイーズ解散10年を経て、ようやくお互いの立ち位置を見つけることができたんだね。ビートルズのファンがとうとう最後まで果たせなかった幸せを感じている気分だよ。

ブーとの共作関係が継続的なものなのかどうかは知らない。グレンでさえあんなにゆっくりしたリリースペースなんだから、クリスの次のアルバムなんて、いつになるのかわかったもんじゃない(次の予定が2010年のスクイーズの再結成アルバムだなんて話は、眉を唾でべとべとにしながら聞いていればいい)。

でも、スクイーズが解散したときに、よもやクリスがこんなに素敵なアルバムを届けてくれることになるなんて、思いもしなかった。脇役(?)好きとしては、虚を突かれた気分だ。これからも引き続き油断してるから、次は突然来日とか決めてくれると嬉しいんだけどな。


<2月21日追記>

痩せていた頃。
Chris as a child.png
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2009年02月08日

Fall Out Boy live in Tokyo

最近になってようやくグレン熱が収まってきたのか、『Pandemonium Ensues』ばかりを繰り返して聴くということはなくなってきた。代わりによく聴いているのが、『Five Live』とか、『The Complete BBC Sessions』とか、

などと、スクイーズのファン以外には意味不明な前フリはこのぐらいにしておいて、さっき行って来たライヴの話でもしよう。07年の3月と10月にオークランドで観て以来、僕はこれで3回目になる、フォール・アウト・ボーイ。会場は、去年の10月にシガー・ロスを観た、新木場のスタジオ・コースト。

Coast_FOB.jpg

そのシガー・ロスのときに引き続き、またしても僕のチケットに印刷されていた整理番号は天文学的な数値だったので、もうはなから前の方は諦め、入場後は二階席へと直行。幸い、まだ座席がちらほら残っていたので、座って待つことができた。よっこらしょ、と。なんだか、いくらグレン熱冷めやらぬうちとはいえ、すっかりご隠居気分だね。4時間立ちっぱなしだった2年前とは大違い。

チケットにもチラシにも書いてなかったから全然知らなかったんだけど、6時の開演時間ちょうどにステージに登場したのは、ヘイ・マンデイ(Hey Monday)というバンド。一所懸命やってるのはわかるけど、まあ僕にはいいや、という感じ。向こうにしても、別にこんなおっさんに受けなくてもいいや、って感じだろうけどね。

ヘイ・マンデイは30分ぴったりで退場。更に30分待たされて、いよいよフォール・アウト・ボーイ登場。パトリックがいつものSGじゃなくて新しいギター(でも色はやっぱりシルバー)を持っていること以外は、前回とほとんど同じ見かけ。帽子のパトリック、フーディーのピート、ジョーのカーリーヘアーはもうかなり膨らんで、ガンズのスラッシュみたい。アンディはもういきなり上半身裸で、全身の刺青がよく見えるよ。

オープニングは「Thnks Fr Th Mmrs」、続いて「Thriller」と、出たばかりの『Folie a Deux』でなく、その前作『Infinity On High』からの曲が続く。またか。07年に観たときも、そのときの新作『Infinity On High』の前作にあたる『From Under The Cork Tree』からの曲ばかりを演っていたよな。まず客がよく知ってるだろうと思われる曲から始めるというポリシーなのかな。新作だってもう出てから2ヶ月も経つんだから、皆ちゃんと覚えてきてるはずなのにね。

1曲だけ聴いたことのない曲を挟み、基本的に『Infinity On High』と『From Under The Cork Tree』からの曲がどんどん続く。どの曲のときだったか、フロント3人のギターが曲に合わせてネオンみたいに点滅するという仕掛けがあった。うーん、ちょっとあれはどうかな。別にそんなことしてウケ狙わなくていいのに。

中盤でようやく新作からのシングルカット「I Don't Care」を演奏。ほら、やっぱりお客さんみんなサビのところは覚えてきてるだろ。それに続けて、マイケル・ジャクソンのカバー「Beat It」。この曲はもう最近欠かさず演ってるね。あ、でも、ギターソロに入るところで終わっちゃった。ちぇ、手抜き。

ほとんどの曲の間でピートがMCを入れるのも以前と変わらず。もっと立て続けにガンガン続けてほしいんだけどな。でも、今日の驚きは、なんとパトリックが喋ったこと。ピートに何か振られて、二言三言返しただけなんだけど、過去二回彼がステージで何か喋るのを聞いたことなかったから、これはびっくりしたよ。それにしても、ステージで喋っただけで驚かれるボーカリストって…

でも、肝心の歌になると、パトリックの独壇場。たまにピートが吼える以外はメンバーによるコーラスは一切なし。クイーンみたいと評判の新作からの派手なコーラス部分も、パトリックが一人でせわしなく歌う。歌うまいし、やっぱり声がいいよね、この人。ただ、オークランドで観た2回ほど音が割れていたというわけではないけど、ちょっと声がくぐもってて聴き取りにくかったのが残念。

「最後の1曲」と言って始めたのは、新作からの「America's Suitehearts」。最後って、始まってからまだ40分ぐらいしか経ってないよ。

その曲で引っ込んで、でも、水すら飲んでないだろうと思うぐらい短い時間でまた登場。「さっきは“最後の3曲”と言おうとしたんだ」とか言って、最後はお決まりの「Dance, Dance」と「Saturday」でシメ。それを含めても、ちょうど1時間で終わってしまったよ。なんて短い。

そういえば、なんとなくピートの調子がよくないようにも見えたな。前に観たときはあれだけクルクル回転したりジャンプしたりしてたのに、今日はジョーだけがステージを走り回ってたし。

遠くから観てたせいか、なんとなく不完全燃焼。まあ、一番の理由は、自分のグレン熱のせいなんだろうけどね。一流の板前がとびっきりの食材を使って五夜に亘って目の前で料理してくれていたところに、しばらく前に注文していたハンバーガーが届いたから、しょうがなくそれも食べているような気分といえばいいか。ハンバーガーが嫌いなわけじゃないんだけど。

そんなことを考えながら今日のライヴを観てたら、パトリック・スタンプのアコースティック・ソロ・ライヴなんてあれば観てみたいなって思った。リードボーカリストなのに自分で歌詞は書かずに曲を書いて、しかもリードギターまで弾くってところがグレンと同じだし。ステージで何も喋らないのが違うけど、まあそこは黙々と演奏してくれてて構わないから、気を使わずに。

アクセス解析の検索単語なんかをたまに見ていると、フォール・アウト・ボーイを探していてこのブログに来てくれている人が結構いるんだよね。なんだか、そんな人にこの煮え切らないライヴ評を読んでもらうのは申し訳ない気がするよ。決して悪いライヴじゃなかったんだよ。超満員で一階席はモッシュ大会だったし。単に書き手の気分とタイミングの問題。

最後にひとつ書いておきたいこと。今回のチケットは7800円もしたんだけど、最近よくあるパターンで、そのチケット代にプラスして、入場時に500円払ってドリンク券を買わないといけないというシステム。こないだのスターパインズとか、せいぜい数百人程度のキャパのハコならまだしも、ここみたいに数千人入るところだと、ドリンク売り場の周りがまるで地面に落としたアメに群がるアリの大群状態。ライヴ前は場所確保が先決だからとてもそんなのに並んでられないし、ライヴ後も同様の状態(しかも、帰ろうとする人の流れもあるから、もう並ぶ以前の問題)。そんなところで何十分も無駄にするのもうんざりだったから、結局せっかく買ったドリンク券を使わずに帰ってきた。チケット代が8300円だと思えばいいんだろうけど、逆に7800円+500円だと言われたばかりに、すごく損した気分。やめてくれよ、こんな大きな会場でこんなシステム。
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