2008年12月15日

非搾取 - Sigur Ros

今日みたいな冷たい雨の降る冬の朝はオークランドを思い出す。湿った冷たい空気が懐かしい気持ちにさせてくれる。こんな朝はどこへも出かけずに、しばらく前に買ったままにしてあったこれを開封して観ることにしよう。静かに降りつづける雨の音を聞きながら、部屋の温度は上げないままにして。たくさん着込んで、あとは羊のクッションを抱き枕がわりに。

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Sigur Ros 『Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust Deluxe Edition』

シガー・ロスの最新作『Með Suð I Eyrum Við Spilum Endalaust』のデラックス・エディション。そのアルバムと1枚のDVDが、200ページに及ぶ豪華な写真集に付属しているというもの。おまけとして、「Gobbledigook」のPVを撮影したときの16ミリフィルムの切れ端が付いている。12コマのそのフィルムを光に透かして見ると、焚き火の傍で体に白い粉みたいなのを塗りあってはしゃぐシーンかな。

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昨日の記事の趣旨にあわせて言えば、6月に出たオリジナルアルバムから数ヶ月遅れで発売されたこのバージョン、10月の来日公演までに曲を覚えようとオリジナル版を買った僕にとってはまたしても同じCDを二度買わされる羽目になってしまったんだけど、昨日のケースとは違ってこちらは、6月だか7月ぐらいの段階で既にこのバージョンが出るということはアナウンスされていたから、納得済みというか自業自得というか、まあとにかく、憤りを感じることはない。

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写真集はこんな感じ。7月22日の記事に書いた7枚組LPに付属していた写真集も素敵だったけど、こちらもまた同じ雰囲気を持った、今回のアルバム制作に伴って訪れた、世界中のいろんな場所で撮られた写真がふんだんに使われている。スタジオでのほんの一瞬の表情やアイスランドの町並みなんかの写真をこうやって何枚も見ていると、自分でも写真を撮りたくなってくる。ボーナスが出たら買おうかどうしようか迷っていたレンズ、やっぱり注文しようかな。

シュリンクラップの上に貼ってある小さなステッカー以外には、オリジナルアルバムのジャケット画像(裸で走る四人組)はこのバージョンには使われていない。写真集の裏表紙の内側に収められたCDとDVDはこんなペーパースリーブに入っている。

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左がCD、右がDVD。盤面も同じデザインで、さすがにここまで違うと、いかに内容が同じでも、オリジナル版とは別物だね。僕が買ったオリジナルは日本盤なので「Heima」がボートラとして入っているし、そちらを手放してしまうわけにはいかない。

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DVDの内容に触れよう。三つのパートに分かれていて、最初が「Við Spilum Endalaust」という、今回のアルバムの35分間のドキュメンタリーというか、イメージビデオと言ったほうがしっくりくるかな。二つ目が「Ára bátur at Abbey Road」のタイトル通り、アルバム7曲目「Ára bátur」がアビーロードスタジオで録音される様子を撮った17分間のビデオ。最後が「Gobbledigook」のPV。

http://jp.youtube.com/watch?v=puC0UeWLjM8

“未成年には不適切なため”YouTubeの画像埋め込みができなくなっているこの「Gobbledigook」、最初に観たときは誰でもびっくりするよね。ところで、最近気づいたんだけど、YouTubeの高画質表示って結構綺麗だね。ビデオによっては高画質表示ができるものとできないものがあるみたいだけど。


「Við Spilum Endalaust」はフィルム撮りの粒子の粗さを逆に活かした、とてもアーティスティックな画像のビデオ(アントン・コービンの写真を知っている人はあれを思い出してもらえばいい)。時折り古い映画のようにノイズが入ったり、ネガポジ反転したりするのも味わい深いね。

素材は、アメリカのロングアイランドで撮られた上記のPVの撮影シーンや、メキシコでのツアー風景、アイスランドでの豪雨のシーン(これは別のDVD『Heima』にも入ってなかったっけ?)など。アイスランドの野外コンサートで、彼らのステージにビョークが飛び入りしたこの曲の一場面も別カットで映っている。



この曲もそうだけど、この「Við Spilum Endalaust」ビデオ、『Með Suð I Eyrum Við Spilum Endalaust』収録曲のライヴバージョンや、EP『Ba Ba Ti Ki Di Do』からの曲なんかが聴けて、ちょっと得した気分。ライヴ録音でもスタジオ版とあまり変わらなくて、ほんとにこの人たち演奏力あるんだなあと、あらためて感心することしきり。


実は新作中では僕にとってちょっと印象の薄かった「Ára bátur」、だだっ広いアビー・ロード・スタジオで、フルオーケストラと少年合唱団と一緒にライヴ録音されたこの二つ目のビデオを観て、いかに素晴らしい曲だったかと今さら気づかされた次第。

キャータンの弾くグランドピアノの音の美しいこと。少年合唱団の子供達の可愛らしいこと。指揮者やオーケストラのメンバーの眼差しを見ていると、荘厳な気持ちにさせられる。録音が始まってからいそいそとマイクスタンドの位置を調整しているヨンシーはなんだか微笑ましいけど。




限定発売のDVDや豪華な仕様の写真集など、この人たちもちょっと深入りしてしまうとかなり散財の対象になってしまうことに気づくのにそんなに長い時間は必要なかった。今でもかろうじて入手可能な、結構な種類のレアなアイテムが存在するからね。彼らのオフィシャルサイトに載っているTシャツなんかも、彼ららしい素敵なセンスのいいデザインのものが多いしね(最近追加された“黒板”デザインのシャツ、ほしいなあ。でも5000円もするのか…)。

でも、どういう訳か、この人たちには昨日書いたみたいな“搾取された”という気持ちにさせられないんだよね。今回のこのずっしりと重い写真集も、ざらっとした手触りのクロス装丁の表紙にエンボスされたタイトルをなでているだけで、いい買い物をしたという気持ちが湧き出てきてしまう。あれこれ買うたびに何千円もかかってしまうけど、金融危機に苦しむアイスランド経済を救う一端でも担えればいいかと思うことにしよう。

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ほら、こんな無駄に派手な4本のしおりとか、限定生産番号とか(僕のは5634番)、こういうマニア心をくすぐる造りがすごく愛おしい。スリーブもそれを収納する裏表紙の内側のポケットも全て紙でぴったり作られているので、何度も出し入れしているうちに破れてくるのが怖いから、普段聴き用にはオリジナル版を使うことになると思うけれど、ときどきこれも引っ張り出してきてこの綺麗な写真を眺めたりDVDを観たりしよう。次は春の花が咲き始める頃がいいかな。晴れた日に窓を開けてね。
posted by . at 00:16| Comment(5) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする