2008年12月27日

年賀状 - Mark Kozelek

The Finally LP.jpg Mark Kozelek 『The Finally LP』

マーク・コズレックからもう新譜が届いた。今年の4月に『April』なんて重厚なアルバムを出したばかりなのに。ただ、今回のアルバムは、いろんなトリビュート・アルバムでカバーした他人の曲や、未発表だった自分の曲を集めたものなので、純粋な意味での新譜というわけではない。

1曲目「Piano Song」とラストの「Gaping Mouth」が自作曲。前者が題名どおりピアノを、後者がアコースティックギターを使った、どちらもとても美しいインストゥルメンタル曲。その他の8曲が他人の曲のカバー。

8曲中、僕がオリジナルを持っているのは、ロウ(Low)の「Lazy」とハスカー・ドゥ(Husker Du)の「Celebrated Summer」。前者は陰鬱なロウのオリジナルに比べてちょっと明るい感じに仕上げてある程度だけど、後者のオリジナルとのギャップはやっぱり凄いね。

気前のいいことに、マーク・コズレックのマイスペースではこのアルバム全曲が聴けるから、その7曲目を、このまだ髪の毛があった時代のボブ・モウルドが歌うハスカー・ドゥのライヴと聴き比べてみるのも面白いかも。



9曲目の「If You Want Blood」はAC/DCのカバーだから、きっと同じように原曲は凄くハードなんだろうね。6曲目の「Bedtime Lullaby」は、Yo Gabba Gabba!というアメリカの子供番組の曲だって。ほんとにもう、曲調もメロディーも全然違うのに、誰のどんな曲を演っても、全部マーク・コズレック色に染め上げるね。凄い才能。

『The Finally LP』というタイトルだけど、今のところLPはまだ出ていなくて、この簡素な作りのデジパックのCDだけみたい。それにしてもこの、表面には題名も名前も書いていない牛のジャケ、誰が見てもアレを連想するよね。

The Finally LP.jpg Atom Heart Mother.jpg ←アレ

さて、明日からしばらく旅行に出かけるので、戴いたコメントに返事ぐらいはできると思うけど、記事を書くのはちょっと難しいと思う。まあ、この一週間で、僕にしては一ヶ月分ぐらいに相当する量の記事を書いたので、冬眠中の蓄えにはなるだろう。

実生活ではほとんど年賀状を書くことがなくなってしまった僕だけど、こちらではこのおあつらえ向きに今年の干支の動物が沢山載っているジャケ二枚で、年賀状に代えさせてもらおう。

思えば、5月12日に書いたマーク・コズレックのインストア・ライヴの記事をきっかけに、それまで上がったり下がったりだったこのブログへの来訪者数がぐっと上がったんだった(それは10月26日のシガー・ロスのライヴレポートで更に急上昇することになるんだけど)。僕にとっては縁起のいいアーティスト。眉間のシワがあんまり縁起よさ気ではないけれど。

それらの記事以来ここに来てくださっている方々、そしてもちろん、以前からずっと読んでくださっている方々も、今年はお世話になりました。楽しい年末年始をすごしてくださいね。ではまた来年。


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2008年12月26日

唯一無二 - Jeff Hanson

Madam Owl.jpg Jeff Hanson 『Madam Owl』

特異な声は要らない。一昨日の記事にそう書いたばかりだけど。では、素敵なメロディーの、心に染み入るドラマチックな曲を歌うのが、唯一無二の特異な声だとしたらどうだろう。

ジェフ・ハンソン。彼の歌を初めて聴く人は、それを歌っているのが男性だということをにわかには信じられないかもしれない。透き通るような、少女のような歌声。

これだけ素晴らしい曲を書いて、しかもファーストアルバムではピアノ以外の全ての楽器を自分で演奏していたほどの優れたマルチプレイヤーが、この声だけで評価を受けてしまうことは避けたいとは思うんだけれど。

僕はこの歌声しか知らないから、彼の地声が一体どんな風なのかはわからないけれど、写真を見たところごく普通のアメリカ人青年である彼がいきなりこの声で歌いだすのを聴いた人はさぞかし引いたことだろう、なんて余計な心配をしてしまうほどのインパクトはある。

感動的な03年のデビューアルバム『Son』、05年の自らの名前を冠したセカンド(散々NZの中古屋で見かけたこれを何故か僕は未聴)に続く三枚目『Madam Owl』。発売元が一貫してキル・ロック・スターズなのも、彼がことあるごとに故エリオット・スミスと比較される一因なのかも。

確かに、エリオット・スミスを好きな人はきっと彼のことも気に入るとは思うけど、同時に、彼を単なるエリオット・スミス・フォロワーの一人みたいな座に彼を置いておくのはあまりにも勿体無いことだとも思う。それほどの、オリジナリティー。

マルチプレイヤーである彼があえて沢山のゲストを呼んでの、豪華な音作り。クレジットに載っている楽器を読み上げてみると、ギター、ベース、ドラムス、バンジョー、ラップスティール、ピアノ、キーボード、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、トランペット、フリューゲルホーン、テナーサックス、トロンボーン、アコーディオン、ソウ(横山ホットブラザースか)。

弾き語りの曲はあくまでもシンプルに。弦や管を加えた曲は、控えめながらもじわじわとドラマチックに盛り上げる。それでいて、あくまでも主人公はこの声。いいプロダクションだね。プロデューサーは、ジェフ本人と、ロバート・バートルソン(Robert Bartleson)という人。この人のことはよく知らない。

マイスペースに載っている4曲が果たして彼を代表する4曲かどうかはともかくとして、興味のある人は聴いてみてほしい。そして、少しでもひっかかるところがあれば、是非このアルバムを手にしみてほしい。決してキワモノじゃない、優れたSSWのアルバム。

地味なジャケの裏側は更にこんなに地味
Madam Owl Back.jpg

虫嫌いな人、ごめん。こないだうちにスキャナー買ったんで、つい嬉しくて何かスキャンしてみたくなっただけ。
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2008年12月25日

心機一転 - Paul Heaton

The Cross Eyed Rambler.jpg Paul Heaton 『The Cross Eyed Rambler』

再生ボタンを押すと聞こえてくる古いレコードの音。パチパチと入るノイズ。1分ほどの歌が終わろうというところで針が飛んで同じフレーズが繰り返されてしまう。

そこに切り込んでくる、まるで桑田圭祐がわざとグループサウンズっぽく書いた曲を演奏するサザンオールスターズみたいなギター。とてもキャッチーで、ぐいぐい引き込まれるオープニングだ。

続く、シングルカット曲でもある「Mermaids And Slaves」のイントロのハーモニカは、20日の記事でやたらと名前を出したハウスマーティンズ時代を思い起こさせる。ウキウキするような明るい調子で歌いだされる最初の歌詞は「酒飲んで運転しようぜ、ベイビー」だ。ははは、さすがポール・ヒートン。そういう毒は全く衰えてないね。CDケースに貼ってあるステッカーにはもちろんトレードマークのようにペアレンタル・アドヴァイザリーの印刷。

06年8月5日に記事にした『Superbi』の後、メンバー間の“音楽性の相似”(注1)を理由に突然の解散を発表したビューティフル・サウスのリーダー兼ボーカリスト(注2)、ポール・ヒートンの2枚目となるソロ・アルバム(注3)。

注1:普通は“音楽性の相違”という言い方をするね。10年に亘って同じバンドで似たような音楽を作ってきて、マンネリに陥ってしまったと感じていたことをこう表現するところが、いかにもポールらしい。

注2:ビューティフル・サウス時代はギャラをメンバー全員平等に分配していたというほどの社会主義者であるポールは、自分が“リーダー”と呼ばれることには抵抗があるのかもしれないけど、10年の歴史を通して常にバンドの顔でスポークスマンだった彼のことをこう呼ぶことに文句のある人は彼以外にはあまりいないだろう。

注3:ビューティフル・サウス在籍中の01年に、ビスケット・ボーイ(またの名をクラッカーマン)というよくわからない名義で最初のソロ・アルバム『Fat Chance』を発表している。決して悪い内容ではなかったけれど、ほとんど売れなかったようだ。

Fat Chance.jpg Biscuit Boy (a.k.a. Crackerman) 『Fat Chance』

↑この意味不明のジャケが問題だったのかも(最近はポールの写真を使った別ジャケで、名義もポール・ヒートンに戻して再発されているようだけど)。


ニューアルバムに話を戻そう。アルバムのタイトル『The Cross Eyed Rambler』というのは、1703年から続いている実在のパブの名前らしい。その由来について、ブックレットの最初のページにびっしりと解説がある(まだ全部読んでないんだけど)。こういうタイトルのつけ方もまた、アル中のポールらしいね。ついでに、ブックレットの最後のページのクレジットで、メンバー名の次に、何よりも先に書いてあるのが、このアルバムをレコーディングしていた間どこのパブで飲んでいたかというリスト(笑)

冒頭の古いレコード風の曲(実はポールが歌っていた)も含めて、全12曲。アップテンポな曲は歌謡曲っぽいキャッチーなメロディーで。6曲目「The Ring From Your Hand」と12曲目「Everything Is Everything」の二つのワルツは、これでもかというほどしんみりと。うん、いい曲が多いね、今回は。

毒を含んだ歌詞は自分で書き、いつも作曲は相棒に任せているポールが今回タッグを組んでいるのは、スティーヴ・トラフォード(Steve Trafford)というギタリスト。調べてみたら、05年頃フォールに在籍していたことがあるようだ。

ビューティフル・サウス時代の作曲者、デイヴィッド・ロザレイ(David Rotheray)も、もちろんいい曲を書いていたんだけど(だからあのバンドはあれだけヒットしたんだけど)、ビューティフル・サウスが解散したと聞いたときに僕が最初に思ったのは、ハウスマーティンズのほとんど全ての曲を書いていたスタン・カリモア(Stan Cullimore)とまた復縁してくれないかなってことだった。もう音楽業界から身を引いたらしい彼にそんなことを望むのは無理だとわかってはいたけど。

でも、このスティーヴ君も悪くない。いい曲を書ける新しい相棒と、心機一転、いいスタートを切れたと思うよ。これからも今回のメンバーと一緒にやっていくのかな。たしかハウスマーティンズ時代もビューティフル・サウス時代も一度も来日したことのない彼だけど、一度はライヴを観てみたいな。

ペアレンタル・アドヴァイザリーの印と一緒にCDケースのステッカーに書いてあるのは、このCDをパソコンのCDドライブに入れて、あるサイトにアクセスすると、ボーナス・マテリアルをゲットできるということ。早速やってみたら、アルバム中3曲の別バージョンをストリーミングで聴け、そのうち1曲はダウンロード可能。ポールの写真もダウンロード可能。と、最近はあまりパソコンでストリーミングで音楽を聴くことの少ない僕にとってはいまいち有難味の薄いボーナスだった。

上にアフィリエイトのリンクを貼ったときに気づいたけど、このアルバム、2曲のボートラ入りのデジパック版も存在するんだね。しかもその2曲はシングル「Mermaid And Slaves」のカップリング曲とは違うようだから、そのシングル盤を買えば片付く問題でもないし。とほほ、また買い直しか…でもたった2曲のためになぁと思ったら、何この値段。3733円?それはないだろう。アマゾンUKだと13.98ポンドだよ。そっちで買おうっと(やっぱり買うのか)。


それではみなさん、よいクリスマスを。
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2008年12月24日

シンプル - Joshua Radin

Simple Times.jpg Joshua Radin 『Simple Times』


飛びぬけて特異な声も、音響派みたいな不思議な音作りも、7分にもわたる込み入った曲展開も、要らない。この素敵なメロディーと心に滲みいる歌さえあればいい。初めて聴いた瞬間にそう思わせてくれるシンガーソングライターに、久し振りに出会った気がする。

僕のブログのコメント欄では海外通販で不運な目に遭ってばかりいるエピソードでで有名な(笑)マサさんのブログrootless treeにしばらく前に取り上げられていたのを読んで、マイスペースで試聴するや否や通販でオーダーしてしまった、ジョシュア・ラディンのアルバム『Simple Times』。いつも彼のブログでは、僕がお薦めしたアーティストについて過剰なまでに感謝して頂いているので、今日の記事はそのお返しのつもりで書こう。

とは言うものの、実はこの話には別のルーツもある。昨日の記事に、他人が作ったコンピレーションはあまり好きじゃない僕だけど、中には気に入って何度も繰り返して聴くものだってあると書いたよね。あれは今年の初頭だったか、普段から仲良くさせてもらっている音楽マニアの友達O君に作ってもらった一枚のコンピレーションがあって、それは見事に僕の心の琴線に触れまくる内容だったんだけれど、中でも特に気に入った曲の一つが、名前も聞いたことのないアーティストが歌うスミスの「Girlfriend In A Coma」だった。

そう、そのとき既に僕はジョシュア・ラディンの歌声に出会ってたんだ。その曲が収められた『First Between 3rd & 4th』のモノクロのジャケも、それまでNZで何度も見た覚えがあったんだけど、どんな魔が刺したのか、そのときは手に入れようとまでは思わなかった(お陰で、久し振りにeBayやGemm界隈をうろつくハメになってしまってるんだけど)。

デジパックのCDジャケの内側にずらっと並んだミュージシャンのクレジットの数ほどには多彩な音には聞こえない。そこに書いてあるチェロもブラスもパーカッションもメロトロンも、実に控えめに彼の歌を支えているだけだ。あくまでも、彼の歌声とギター、それに、3曲で彼とデュエットしている3人の女性ヴォーカル。ただそれだけ。

クレジットの中でも、僕でも知っている名前は、マシュー・スウィートのアルバムでお馴染みの名スティール・ギタリスト、グレッグ・リーズ(「You Got Growin' Up To Do」での綺麗なハーモニクスの音は彼だろうね)と、ノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」の作者(と紹介されることにきっと本人はうんざりだろうけど)ジェシ・ハリスぐらいかな。他の人たちも、調べてみたら、ベックやトム・マクレーやティンダースティックスやレイチェル・ヤマガタなどのアルバムに参加しているつわもの揃い。

ドラムスのジョーイ・ワロンカーって、名前からもしやと思ったら、やっぱりかの名プロデューサー、レニー・ワロンカーの息子なんだね。ギターも弾いてるプロデューサーのロブ・シュナップは、有名どころではフー・ファイターズからエリオット・スミスまで手掛けているベテランだった。なんだかマイナーなSSWなのかと思っていたら、そんな意外と豪華なプロダクションだったのがちょっとびっくり。



そんなに凄い歌詞を歌っているわけじゃない。あちこちに素敵なフレーズが散りばめられてはいるけれど、基本的には、甘いラブソングとしょっぱい失恋の歌が11曲詰まった、わずか33分にすぎないアルバムだ。このビデオも、なんだか喉の奥がじわっと熱くなってしまうようなノスタルジーがたまらない。

ブックレットに沢山載っているポラロイド写真に写っているのは、きっとジョシュアの娘さんだろう。大きく育つにつれて彼そっくりになってくるのがわかるね。そんな愛くるしい写真も含めて、持っていることが愛おしくなる、こんなアルバムのことを教えてくれたマサさんとO君に感謝。たとえ島流しの刑にあったとしても、このアルバムとCDプレイヤーがあればいいやと思っているぐらいに気に入ってると言えば、今の僕の気持ちが伝わるだろうか。


<1月4日追記>
Joshua's daughter.jpg
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2008年12月23日

さらに電子的な人々

年の瀬も押し迫ってきて、今年のベストアルバムの選定とかそろそろ始めないとな、なんて考えてたら、気に入ってたのにブログに取り上げず仕舞だったものを沢山思い出してしまった。年内にあといくつ書けるかわからないけど、ちょっと短めの記事でいくつかそういうのをピックアップしてみることにしよう。

Songs Of Seven Colors.jpg 『Songs Of Seven Colors』

11月16日の記事「電子的な人々」でエレクトロニカづいていることを書いた頃、おあつらえ向きにこんなアルバムが出ていたことを知った。エレクトロニカ関連アーティストの曲を集めた、日本編集のコンピレーション・アルバム。

パッケージに貼られたステッカーによると“超豪華なラインナップ”らしいけど、先日の記事に書いたとおり、僕はこのあたりの人たちをほとんど知らないもので、豚に真珠状態ではある。もちろん、あの記事に一番のお気に入りと書いたアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドが二曲も収録されていたことが購入の決め手になったんだけどね。うち一曲は未発表曲とのことだけど、僕はもう一曲も知らなかったし。

実は僕は他人の作ったコンピレーションってあまり好きじゃない場合が多くてね(自分でそういうのを作って大々的にブログにアップしていることは、手の届かないぐらい壁の上の方に据え付けた棚に放り上げておいて)。よほどコンセプトがしっかりしたものや、編集者と自分の音楽的趣味がほぼ完璧に合致したものなどは気に入って何度も繰り返して聴くんだけど。

そんな僕があえて言うけど、これはなかなかいいよ。匿名性の強いタイプの音楽なのが功を奏しているのかもしれないけれど、通して聴いて全然違和感がない。その一方で、それぞれのアーティストの特性みたいなものを探しながら聴き比べるという楽しみもある。

気に入ったアーティストのほとんどが、名前だけでは日本人なのか外国人なのか、グループなのか個人なのか、男性なのか女性なのか、さっぱりわからないんだけど、マイスペースとかでそういうのを調べて詳しくなっていくのもまた一興。音は気に入ったのにマイスペのデザインが性に合わなかったりとかね。

好きな曲はいくつかあったけど、一つだけ挙げるとすれば、一曲目に入っているNo.9というアーティストかな。調べてみると、タカユキ・ジョーという日本人のソロ・プロジェクトだそうだ。マイスペースで何曲か聴いてみたけど、かなり僕好み。実は、この人のCDを少し前に中古屋でかなり安く見つけたんだけど、そのときはまだこのコンピを聴いてなくて、うっかり放流してしまったんだ。もったいないことしたよ。

こちらが彼のマイスペース。興味のある人は聴いてみて。そこに書いてある“音と植物と共に暮らす”というスローガンには、共鳴する人がこの界隈にもいるかも。“影響を受けた音楽”の欄に、バッハ、モーツァルトから、モンク、コルトレーン、はっぴいえんど、坂本龍一、キャロル・キング、ノラ・ジョーンズ、果てはロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターズとかまで載っているのが、凄いというか節操が無いというか。

おっと、彼のことばかり書いていてもしょうがないね。短くするんだった。とにかく、エレクトロニカってちょっと聴いてみようかな、なんて人には最適な一枚。値段も1980円とお手頃。なんだけど、この値段設定でひとつ気に入らないことは、“500円につき○ポイント”というポイント制を敷いている某通販ショップでこれを買うと、なんだか妙に損をした気分になるってこと。あと20円払ってもいいから、2000円分のポイントくれよ。
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2008年12月20日

さよならアップルさん

海外に住んでいた頃は、帰省や出張で東京に来るたびによく渋谷に出かけていた。定宿からもそう遠くなかったし、なにしろCD屋やレコード屋の数が他の街とは違ったから。

去年東京に帰ってきてからは、自分の通勤経路ではあるものの途中下車になってしまう渋谷に足を運ぶことがめっきり減ってしまった。乗換駅である新宿でだいたいの用は足せるし、もちろん新宿にだって星の数ほどの(やや誇張中)CD屋やレコード屋があるからね。

新宿にも渋谷にもそれぞれ大きなチェーン店があって、毎週どんどん新入荷する大量の中古盤としょっちゅうやってるセールに釣られて、大抵はそういう店に行ってるんだけど、一方で、そこに行かないと見つけられないようなマニアックなものを扱っているような店を時々覗くのもちょっとした楽しみ。

3月20日の記事の最後にちらっと名前を出した、アップル・クランブル・レコードも、僕にはそういう店のひとつ。渋谷に行く回数自体が減ってしまったから、そんなにちょくちょく顔を出しているわけではないけれど、ちょっと時間に余裕のあるときには、見ているだけでウキウキしてくるような壁面のディスプレイを眺めたり、奥のセールコーナーを物色したりしている。

そのアップルさんが、明日12月21日をもって、店舗での営業を終了してしまうとのこと。本当に残念な話だ。かつては世界一レコ屋密度の高い街と言われた渋谷からどんどん店が減っていってる話は前に何度か書いたし、実際東京に来るたびに行きつけのチェーン店が閉まってたり縮小してしまっていたなんてことは頻繁にあったけど、こういう店がなくなってしまうというのは、それとはちょっと違うよね。感傷的になってしまうよ。

CD1枚買っただけで、袋の中にお菓子をひとつ入れてくれる気配りや、お店の規模のわりにはかなり充実していたセールコーナーが僕のお気に入りだった。わりと新しめの、それも決して売れていないわけでもないようなCDが500円とか300円とかで紛れ込んだりしていたもんだから、僕はあそこに行ったときには大抵お目当てのCDを正価で1枚買ったあと、そういうセールCDを2-3枚一緒に買ったものだった。

ブー・ヒュワディーンの新譜とジャック・ぺニャーテをそれぞれ500円で買ったのは今年の僕の誕生日だから、あれはタワーでマーク・コズレックを観た帰りか。こないだモア・カプリスの新譜を買いに行ったときに、モアのヴォーカリスト、マイケル・モラーのソロアルバムが300円で出ていたのを見つけたときは、僕がNZから連れてきた偶然の神様はこの店に居座ってたのかと思ったものだ。

閉まってしまう前にともう一度出かけて、名前もよく知らないバンドだったけど、半分はジャケットに惹かれて、半分は店長の松本さんの手になる推薦文に押されて(ハウスマーティンズの名前を出されたら、僕はどうにも抗えないんだよ)、1枚だけ買ってきたのがこれ。

Grown-Ups.jpg The Lodger 『Grown-Ups』

お薦めどおりのいかしたアルバムだった。英国リーズ出身のスリーピース。ギター、ベース、ドラムスの音がそれぞれ粒だっているし、なにより曲がよく書けている。1曲だけ、トロンボーンとトランペットが使われている曲も違和感なくいいアクセントになってるね。ヴォーカルにアクというかクセが無さ過ぎて優しすぎるのがちょっとこの手の一連のバンドから一段抜け出すのに苦労するかな、という感じ。ジャケもクールだけど、ブックレットに使われている写真も格好いいのが多い。

The Lodger BW.jpg

この写真のトリミング違いがブックレットに載っているんだけど、見てのとおり3人組のうち一人は女性。メンバー構成を見てびっくりしたのが、この人がドラムス担当。こういう構成は珍しいんじゃないか。ベースだけ女性とかは多いような気がするけど、他にそんなバンドあったっけ。

僕よりこの手の音楽に詳しくて、僕より何度もアップルさんに入り浸っている様子(笑)のxiaoさんのブログによると、今年出たセカンドアルバムではこの女性が抜けて、別の男性メンバーがドラムスを担当しているようだ。「ちょっとムサい」というxiaoさんのコメントは、この新ドラマーの頭髪の量に起因するものと思われる(笑)

いみじくも、アルバム1曲目「Many Thanks For Your Honest Opinion」のサビの出だしはこんなだった(意訳付き)。

Many thanks you are one in a million
ほんまに、ありがとう かけがえのない店やったよ


店舗での営業は終了だけど、ウェブショップは引き続き営業中とのこと。そのうえ、Apple Crumble Recordとしてレコードレーベルも立ち上げるんだって。CDを手にとって裏ジャケを眺め回したり、セールコーナーから掘り出し物を発掘したりする楽しみはなくなってしまうけど、またちょくちょくサイトを覗いて、松本さんの推薦文に引き寄せられて散財することにしよう(“今後、ハウスマーティンズを引き合いに出した推薦文が増える”に1000アイスランドクローナ!)。
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2008年12月16日

Jose Gonzalez live in Tokyo

「ありがとう。こんばんは。スウェーデンから来たホセ・ゴンザレスです」

これは僕が訳したわけじゃない。彼がステージに登場して最初に話した言葉だ。びっくりするほど流暢な日本語。少なくとも、失礼ながら、彼のちょっとたどたどしい英語と同じぐらいのレベルと言ってもいいんじゃないだろうか。

2006年7月のセイント・ジェームス・シアター2007年8月のホープタウン・アルファに続いて、個人的には3年連続となるホセ・ゴンザレスのライヴ。前2回も真冬だったけど、今晩もひどく凍てつく夜だった。場所は、僕にとっては初めての会場、渋谷のデュオ・ミュージック・エクスチェンジ。どこかと思いきや、前にタマス・ウェルズを観たO-Nestの同じ通りの上の兄弟東のOと同じ建物じゃないか。

そのO-Eastでは同じ時間に日本のアーティストが沢山出るイベントがあったようで、開場前から沢山の若人が群れを成している。それに比べてこちらは、開場時間だというのにかなり人もまばら。僕のチケットの整理番号はもともとかなりよかったんだけど、その数字よりもうんと早く入場することができたぐらいだった。

僕が入場してしばらくは本当にぽつんぽつんといった感じで観客が入ってくる様子で、これはちょっとかなり寂しいライヴになるんじゃないかと思った。なにしろ、もう一年以上も新しいアルバムを出してないからね。

開演時刻を15分ほど過ぎた頃にホセが登場。なんと、その頃にはもう観客席はびっしり超満員。これはこれでまたびっくり。この人って、日本でこんなに人気あるんだ。

この会場、ちょっとレトロ・フューチャーぽい内装で、いいね。横に広くてわりとどこからでも観やすそうだし。二階席もあるのか。あそこに何人か座っているのは関係者かな。ステージの後ろには、彼の最近のCDジャケでおなじみの北欧チックな木のイラスト。茶色バージョン。

DSC00046.JPG


前2回のライヴと最新ライヴアルバムから判断して、十中八九あの曲で始めるだろうなと思っていた曲が、やはり今回もオープニングを飾った。「Deadweight On Velveteen」。まあ、なんというか、ほんとに定型というのが好きな人なんだろうね。ただ今回は、調弦をしながら徐々にその曲のイントロに入るという例のパターンでなく、椅子に座っていきなり弾き始めたのが違うといえば違ったな。

さすがに3回目ともなるとちょっと見る目も冷静になる。へえ、この曲のあの低音弦のビーン、ビーンって音、左手の指であんな風に弾いて出してるんだ。やっぱりこの人、ギターすごい上手いよな。

ところで、定型といえば、去年のライヴ記事に貼った写真をさっき見て気づいたんだけど、この人、今日の服装、去年のオークランドでのライヴのときと全く一緒だよ。ギターも同じところにテープが貼ってあるし、髪型も同じ(彼のプロモーション写真はたいてい大きくふくらんだカーリーヘアのが多いけど、僕が見るときはいつも短く刈り込んでるな)。

「Hints」、「Fold」と、これも去年のライヴやライヴアルバムとほぼ同じ流れで曲が進んだあと、また日本語で「次の曲は、Crossesです」だって。え、もう演るの? てっきりもうちょっとクライマックスに持って行ってからか、アンコールで演るもんだと思ってた。一番好きな彼の曲なんだけど、今日はちょっとさらっと流した感じの演奏だったかな。それとも、こっちの聞く耳が慣れてきてしまってるんだろうか。

続いてはインストゥルメンタルの「Suggestions」。と来れば、その次に来る曲はもうわかってるよ。「Suggestions」が終わったときに観客が拍手して次の音を掻き消してしまわないように、メドレーっぽく弾き始めたのは、お待ちかねの「Heartbeats」。その曲だとわかったときに何人かの観客が歓声を上げたら、照れたようにはにかんでたよ。

その三連続が最初のクライマックス。そこで一旦間をおいて、今度はさすがにアンチョコを取り出して、また日本語で「もう一人のメンバーを紹介します。ユキミ・ナガノ」と。ステージに椅子が二脚置いてあったのを見た時から、絶対この人がサポートで一緒に来てるんだろうなって思ってたよ。すらっとした、かっこいい女性。一昨年同様、カツカツとささやかな音を立てる小さな木製の楽器とコーラスで参加したのは、セカンドアルバムのタイトルトラック「In Our Nature」。

「How Low」では別の小さな楽器に持ち替え、更に続く「Sensing Owls」からは、足元に置いてある、中にマイクを忍ばせたギターケースを、大太鼓用みたいな先の丸いスティックでドンドン、と。へえー、ちゃんとバスドラみたいに聞こえるよ。いいね、あれ。

その編成で2曲続けた後、今度はユキミさんピアニカに持ち替える。英語で「古い曲を演るよ」と言って始めたのは、ライヴで聴くのは僕は初めての「Broken Arrows」。これはちょっと嬉しかったな。曲名を言ったときに誰も反応しなかったけど、僕は小さくパチパチと拍手してみた。

「Crosses」も「Heartbeats」もあんな前半に演ってしまって、一体後半どうするんだろうと思ってたんだけど、お馴染みの「あと二曲」と言ってから弾き始めた次の曲を聴いて、考えを改めさせられてしまった。「Cycling Trivialities」。セカンドアルバムの中でもそこそこ好きな曲ではあったんだけれども、この、ホセの執拗なまでのギターのリフレインと、ユキミさんのギターケースドラムとささやかな木の楽器、二人のハーモニー、あとはおそらくサンプリングによるトランペットの音。それらが織り成す崇高と言えるほどの演奏は、CDに収録されている同じ曲が、実はこの曲の魅力の欠片も伝えていなかったことを証明していたようだ。

コンサート本編は次の「Teardrop」で幕。また日本語で礼を言ってステージを降りていった。そうか、ユキミさんに教わったからあんなに日本語の発音が的確なんだね。

割れるようなアンコールで再登場。「マジ?」とか言って笑わせてたな。「短い曲を」と言って「Abram」、続いて「カイリー・ミノーグの曲だよ」と「Hand On Your Heart」。立ち上がって、日本語で「来てくれてありがとう」と手を振って下がっていった。

よし、次のアンコールはここまで取っておいた「Killing For Love」だろう。調子がよければその後「Love Will Tear Us Apart」も演ってくれるかも。と思いながらアンコールの拍手を続ける。ところが、そこで客電が点ってしまった。ええ!?これだけ?さっきのアンコール含めてもまだ一時間しか経ってないよ。こっちが「マジ?」って言いたいよ、まったく。

最後はちょっと期待が大きすぎたせいでがっかりしてしまったけど、やっぱり彼のライヴは何回観ても外さないね。こんなにシンプルな、単なる歌とギター(とささやかな木の楽器とギターケースドラム)だけなのに、CDで聴くのとは全然違う。太文字にしていいぐらい、全然違う。もちろん新しいアルバムは待ち遠しいけど、それよりもまた来日してほしいな。セットリストなんて前と一緒でも構わないから。

そういえば、今日のライヴで、ステージ際に観客席の方を向けてマイクスタンドが左右に二本ずつ立ってたけど、あれはもしかして録音してたのかな。『Live at Park Ave - 01 March 2008』に続いて、『Live at Duo Music Exchange - 15 December 2008』というCDも出るのかな。期待し過ぎるとまた外されるかな。


セットリスト

1. Deadweight On Velveteen
2. Hints
3. Fold
4. Crosses
5. Suggestions
6. Heartbeats
7. In Our Nature
8. How Low
9. Sensing Owls
10. Down The Line
11. Lovestain
12. Broken Arrows
13. Cycling Trivialities
14. Teardrop

Encore
1. Abram
2. Hand On Your Heart
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2008年12月15日

非搾取 - Sigur Ros

今日みたいな冷たい雨の降る冬の朝はオークランドを思い出す。湿った冷たい空気が懐かしい気持ちにさせてくれる。こんな朝はどこへも出かけずに、しばらく前に買ったままにしてあったこれを開封して観ることにしよう。静かに降りつづける雨の音を聞きながら、部屋の温度は上げないままにして。たくさん着込んで、あとは羊のクッションを抱き枕がわりに。

Deluxe Edition.JPG 
Sigur Ros 『Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust Deluxe Edition』

シガー・ロスの最新作『Með Suð I Eyrum Við Spilum Endalaust』のデラックス・エディション。そのアルバムと1枚のDVDが、200ページに及ぶ豪華な写真集に付属しているというもの。おまけとして、「Gobbledigook」のPVを撮影したときの16ミリフィルムの切れ端が付いている。12コマのそのフィルムを光に透かして見ると、焚き火の傍で体に白い粉みたいなのを塗りあってはしゃぐシーンかな。

PV Film.JPG

昨日の記事の趣旨にあわせて言えば、6月に出たオリジナルアルバムから数ヶ月遅れで発売されたこのバージョン、10月の来日公演までに曲を覚えようとオリジナル版を買った僕にとってはまたしても同じCDを二度買わされる羽目になってしまったんだけど、昨日のケースとは違ってこちらは、6月だか7月ぐらいの段階で既にこのバージョンが出るということはアナウンスされていたから、納得済みというか自業自得というか、まあとにかく、憤りを感じることはない。

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Pages2.JPG

写真集はこんな感じ。7月22日の記事に書いた7枚組LPに付属していた写真集も素敵だったけど、こちらもまた同じ雰囲気を持った、今回のアルバム制作に伴って訪れた、世界中のいろんな場所で撮られた写真がふんだんに使われている。スタジオでのほんの一瞬の表情やアイスランドの町並みなんかの写真をこうやって何枚も見ていると、自分でも写真を撮りたくなってくる。ボーナスが出たら買おうかどうしようか迷っていたレンズ、やっぱり注文しようかな。

シュリンクラップの上に貼ってある小さなステッカー以外には、オリジナルアルバムのジャケット画像(裸で走る四人組)はこのバージョンには使われていない。写真集の裏表紙の内側に収められたCDとDVDはこんなペーパースリーブに入っている。

Discs.JPG

左がCD、右がDVD。盤面も同じデザインで、さすがにここまで違うと、いかに内容が同じでも、オリジナル版とは別物だね。僕が買ったオリジナルは日本盤なので「Heima」がボートラとして入っているし、そちらを手放してしまうわけにはいかない。

Deluxe + Conventional.JPG


DVDの内容に触れよう。三つのパートに分かれていて、最初が「Við Spilum Endalaust」という、今回のアルバムの35分間のドキュメンタリーというか、イメージビデオと言ったほうがしっくりくるかな。二つ目が「Ára bátur at Abbey Road」のタイトル通り、アルバム7曲目「Ára bátur」がアビーロードスタジオで録音される様子を撮った17分間のビデオ。最後が「Gobbledigook」のPV。

http://jp.youtube.com/watch?v=puC0UeWLjM8

“未成年には不適切なため”YouTubeの画像埋め込みができなくなっているこの「Gobbledigook」、最初に観たときは誰でもびっくりするよね。ところで、最近気づいたんだけど、YouTubeの高画質表示って結構綺麗だね。ビデオによっては高画質表示ができるものとできないものがあるみたいだけど。


「Við Spilum Endalaust」はフィルム撮りの粒子の粗さを逆に活かした、とてもアーティスティックな画像のビデオ(アントン・コービンの写真を知っている人はあれを思い出してもらえばいい)。時折り古い映画のようにノイズが入ったり、ネガポジ反転したりするのも味わい深いね。

素材は、アメリカのロングアイランドで撮られた上記のPVの撮影シーンや、メキシコでのツアー風景、アイスランドでの豪雨のシーン(これは別のDVD『Heima』にも入ってなかったっけ?)など。アイスランドの野外コンサートで、彼らのステージにビョークが飛び入りしたこの曲の一場面も別カットで映っている。



この曲もそうだけど、この「Við Spilum Endalaust」ビデオ、『Með Suð I Eyrum Við Spilum Endalaust』収録曲のライヴバージョンや、EP『Ba Ba Ti Ki Di Do』からの曲なんかが聴けて、ちょっと得した気分。ライヴ録音でもスタジオ版とあまり変わらなくて、ほんとにこの人たち演奏力あるんだなあと、あらためて感心することしきり。


実は新作中では僕にとってちょっと印象の薄かった「Ára bátur」、だだっ広いアビー・ロード・スタジオで、フルオーケストラと少年合唱団と一緒にライヴ録音されたこの二つ目のビデオを観て、いかに素晴らしい曲だったかと今さら気づかされた次第。

キャータンの弾くグランドピアノの音の美しいこと。少年合唱団の子供達の可愛らしいこと。指揮者やオーケストラのメンバーの眼差しを見ていると、荘厳な気持ちにさせられる。録音が始まってからいそいそとマイクスタンドの位置を調整しているヨンシーはなんだか微笑ましいけど。




限定発売のDVDや豪華な仕様の写真集など、この人たちもちょっと深入りしてしまうとかなり散財の対象になってしまうことに気づくのにそんなに長い時間は必要なかった。今でもかろうじて入手可能な、結構な種類のレアなアイテムが存在するからね。彼らのオフィシャルサイトに載っているTシャツなんかも、彼ららしい素敵なセンスのいいデザインのものが多いしね(最近追加された“黒板”デザインのシャツ、ほしいなあ。でも5000円もするのか…)。

でも、どういう訳か、この人たちには昨日書いたみたいな“搾取された”という気持ちにさせられないんだよね。今回のこのずっしりと重い写真集も、ざらっとした手触りのクロス装丁の表紙にエンボスされたタイトルをなでているだけで、いい買い物をしたという気持ちが湧き出てきてしまう。あれこれ買うたびに何千円もかかってしまうけど、金融危機に苦しむアイスランド経済を救う一端でも担えればいいかと思うことにしよう。

Bookmarks.JPG

ほら、こんな無駄に派手な4本のしおりとか、限定生産番号とか(僕のは5634番)、こういうマニア心をくすぐる造りがすごく愛おしい。スリーブもそれを収納する裏表紙の内側のポケットも全て紙でぴったり作られているので、何度も出し入れしているうちに破れてくるのが怖いから、普段聴き用にはオリジナル版を使うことになると思うけれど、ときどきこれも引っ張り出してきてこの綺麗な写真を眺めたりDVDを観たりしよう。次は春の花が咲き始める頃がいいかな。晴れた日に窓を開けてね。
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2008年12月14日

搾取 - Jason Mraz

We Sing We Dance We Steal Things Limited Edition.jpg 
Jason Mraz 『We Sing, We Dance, We Steal Things. Limited Edition』

“たいして見所のないようなDVDを付けただけで法外な値段にしたり、アルバムのリリースからわずか数ヵ月後に、そのアルバムにボーナスディスクとかを付けて売り出すようなことをして売り上げを上げようという姑息なレーベルが多い”

11月23日のフリート・フォクセズの記事にこう書いた直後、おあつらえ向きに、うちにこのアルバムが到着した。8月3日の記事で取り上げたジェイソン・ムラーズのニューアルバムにあれやこれやと詰め込んだ3枚組の限定盤。

3枚組のうちディスク1は『We Sing, We Dance, We Steal Things』オリジナルアルバムそのまま。ディスク2は、僕が上記の記事とそのコメント欄に書いた、結構高値で限定数リリースされていた3枚のEP(うち3枚目『We Steal Things』はファンクラブ限定だったそうな。僕がファンクラブに入ったときにはもうそのオファーは終了していたけれど)。そしてディスク3が、ニューヨークのハイライン・ボールルームという会場で収録された1時間半のライヴDVD。

『We Sing, We Dance, We Steal Things』を中古が出回るまで待って安く手に入れた身としては大きな声では言い難いが、そのアルバムよりそれぞれ高い値段を出して『We Sing』、『We Dance』の2枚のEPを買ったときの僕の気持ちを、先の記事から引用してみよう。

“でも、この人のこういう貴重盤、意外と再発も日本盤化もされずに高値で取引されることが多いからね”

見事に裏をかかれたよ。再発されないどころか、そのEPがちょうど店頭から消えた頃を見計らって、こんなにあっさりと新装パッケージでまた出してくるとはね。フルアルバム並みの値段だったあのEPを買い揃えるようなファンは当然こっちも買わずにおれないだろうというのを見越しての、搾取モード炸裂の怒涛のリリース。せめて、自分が『We Steal Things』まで全部揃えていなかったことを不幸中の幸いと思っておくべきなのか…

この手のリリース形態にはいつも本当にうんざりさせられてしまっていて、自分の好きなアーティストがこういうことをするたびに、嬉しさ3割、憤り7割ぐらいの気持ちで渋々買い替えている。そして、同じように「騙されて」リリース直後に買ったであろう人たちが放出した同じオリジナル盤を中古屋で見かけるたびに、悔しい思いをした同士の顔が目に浮かぶ(ほんとは知らない人の顔が目に浮かんだりはしないんだけど)。

例えば、今週出たばかりのフォール・アウト・ボーイの新譜のように、あらかじめ日本盤と本国盤でどういう形態のバージョンが出るのかという情報がわかってさえいれば、それぞれの内容と価格を天秤にかけてどれを買うか決められるし、そして僕のような人間は大抵一番盛り沢山な内容の(一番高い)ものを喜んで買うんだよ。CDの売り上げが落ちていることへの対抗策の一つのつもりなのかもしれないけれど、熱心なファンほど損をするようなこんなやり方は本当にやめてほしい。


さて、ぼやくのはこれぐらいにして、内容について書こう。ディスク1のオリジナルアルバムについては、先の8月3日の記事に書いたとおり。買ってから半年以上経った(そして、その後100枚以上の新しいCDを買った)今でも僕のへヴィーローテーションから外れていない。来月に書くはずの08年ベストアルバム記事にこのへなちょこ顔ジャケが載ることはほぼ間違いないだろう。

ディスク2『The EPs』は全12曲入り。オリジナルアルバムから「Lucky」と「Details In The Fabric」の2曲を除いた全曲のアコースティック・バージョンと、ゴスペル・コレクション・セッションズから「Man Gave Names To All The Animals」、それに「Mudhouse/Gypsy MC」のオランダでのライヴ録音。もともと3枚の4曲入りEPだったからそれぞれのEP内での起伏を考えた曲順になっていたんだけど、それをこうして全部続けて聴くとちょっと散漫な印象。例えば、オリジナルアルバムでは最後のクライマックスにあたる「If It Kills Me」〜「A Beautiful Mess」がいきなり3曲目と4曲目だったりするし。

そういうちょっとした文句を別にすれば(CDなので曲順ぐらい簡単に並べ替えられるし)、このアコースティック・バージョンは相当いいよ。もともとフルアルバム級の値段で買って聴いたときも(まだ言ってる)、4曲ずつしか入ってないけど、これは値段分の価値はあると思ってたからね。なにしろ曲の造りがしっかりしているから、これだけ装飾を取っ払っても(というか、取っ払った方が)きちんと耳と心に響く。「I'm Yours」でも耳をかじったりしないで、ちゃんと耳元で囁いてるし。

おそらく今回の限定盤を買った人が、それまでに持っていたEPを手放し始めるはずなので、後で述べるDVDは要らないという人は、このアコースティック・バージョンを聴くために中古盤屋をチェックした方がいい。ただ、名曲「Love For A Child」が3枚目の『We Steal Things』収録なので、それを聴きたい人は、あまり出回らないだろうと思われるそのEPを探すぐらいなら、この限定盤を買った方が早いかもしれないけどね。

そして、今回の目玉といえるディスク3。僕は『Tonight, Not Again』のライヴDVDを持っているんだけど、諸般の事情でそれはまだ観ていないので、彼のライヴ画像をまとめて観るのはこれが初めて。彼のコンサートがどんなに楽しいものかは、去年の8月3日の記事に書いたライヴアルバムを聴いて想像がついていたけど、それに映像がつくと当然よりよくわかるね。奇をてらったところのない画像は見てて飽きないし。1時間半と決して短いプログラムじゃないけど、普段あんまりDVDを観ることのない僕がもう2回も観てしまったぐらい。

ジェイソンの弾き語りによるしっとりとした「Plane」で始まる。こんな静かなオープニングだなんて、ちょっと意表を突かれた。いいね、この曲。そして、『We Sing〜』のお披露目ライヴらしく、バンド編成で「Make It Mine」に突入。ところどころに古い曲を挟みつつ、新作からほとんどの曲を披露。中盤で演奏するデビュー曲「The Remedy (I Won't Worry)」では、途中でオエイシスの「Wonderwall」の歌詞に変えて歌ったりする(バンドメンバーのちょっとびっくりしたにやけ顔を見ると、あれはジェイソンが急にアドリブで歌ったんだろうね)。

3人のホーンセクションを含んだフルバンド編成。なんだか音が柔らかいなと思っていたら、よく見たら誰もエレキギターを弾いてないんだね。ギターはジェイソン自身が弾くアコースティック(たまにウクレレ)のみ。ギターが出しゃばらないので、サックス、トランペット、トロンボーンとパーカッションの音が全体の要になって、とても味わいのある音に聴こえる。ときどきチョッパーを交えたりするベースも格好いいし。

コンサート終盤、いきなり出てくるアフロヘアーの演歌歌手みたいないでたちの男が歌いだし、ジェイソンはタンバリンを持ってステージを動き回る。「Fall Through Glass」というその持ち歌を歌っているのはブッシュワラ(Bushwalla)という男。ジェイソンとはお互いのコンサートに出演し合う仲らしい。盛り上がる曲ではあるけれど、なんとそれでコンサートは終了。最後を締めるのが他人かよ、と思っていたら、裏ジャケには「Outro」としか載っていないある曲をジェイソン一人で弾き語るアンコールがちゃんと収録されていた。曲名リストだけを見て未収録だと思っていた、実は僕が一番好きな彼のその曲をそんな風に聴いて、ちょっとじわっときてしまった。

このDVDには他に「"Here We Are" A Mraz Documentary」という30分の映像と、「"A Thousand Things" Book Preview」という静止画が収められている。前者は8月3日の記事にも書いた、オリジナルUS盤『We Sing, We Dance, We Steal Things』にエンハンスドCDとして収められていたのと同じもの。後者はジェイソンがポラロイドカメラで撮った写真を何枚か(これは本になって出ていて、アマゾンでジェイソンのCDを買ったことのある僕はこれまで何度もアマゾン君にお薦めされている)。


上に「この人のこういう貴重盤、意外と再発も日本盤化もされずに高値で取引されることが多いからね」と書いたのには訳があった。以前CD屋で見かけたことがあった、彼のメジャーデビュー前のライヴアルバムが、ちょっと見ないうちにあっという間に廃盤になっていて、オークションサイトやアマゾンのマーケットプレイスなんかでたまに見かけてもとんでもない値段がついていることが多かったから。

Live At Java Joe's.jpg Jason Mraz 『Live & Acoustic 2001』

そのアルバムを先日、新品で見つけた。一足早く年末セールを始めていたその店では残念ながらセール対象外商品だったので、決して安くはなかったんだけど、上にアフィリエイトを貼ったアマゾンのマーケットプレイスに出ているような法外な値段ではなかったので、こういうのは見つけたときに買っておかなければと入手。実はiTunesとかだとほんの数ドルでダウンロードできるんだけど、当然僕は安いダウンロードよりも高くてもCD、ということで、こういう機会を待っていたからね。

メジャーレーベルからのデビューアルバム『Waiting For My Rocket To Come』が02年の発売なので、これはそれより1年前に録音されたことになる。上の写真を見てわかるように、表ジャケには彼の名前しか書いてなくて、サイドには『Live & Acoustic 2001』というそっけない文字のみ。通称『Live At Java Joe's』と呼ばれているアルバムだ。調べてみたら、このライヴ盤を含めて、『Waiting〜』以前に彼はインディーズから4枚ものCDを出していたようだが、それらに入っていた曲はほとんど『Waiting〜』に使われることもなく、しかもこのライヴ盤との重複もあまりない。デビュー前からとんでもない数の曲を書いていたんだということがわかるね。

1曲目「Running」は、『Selections For Friends』収録の(『The E Minor EP In F』全収録曲を一気にメドレーで歌った)「Welcome To Schubas」でも最初に歌われていた曲。でも、『The E Minor EP In F』の曲目表を見てもそんなタイトルの曲はないね。「You Make Me High (Spinning)」というのが改題されたのかな(というか、このEPの方が後に出たはずなので、「Running」がこのタイトルに改題されたというのが正しいんだろうね)。

99年に出たという最初のEP『A Jason Mraz Demonstration』に収められていた「Little You & I」に続いて「この曲はさっきのやつの続き」と歌いだされるのが、後にメジャーデビューアルバムの冒頭を飾ることになる「You & I Both」。この曲、この時期からこんなスローな感じで演奏されてたんだね。

「Dream Life Of Randy McNally」という曲の合間に(プレスリーの)「Viva Las Vegas」の一節を挟み、さらにはこの当時まだ世に出ていなかったはずの「The Remedy (I Won't Worry)」の一部もメドレーで歌っている。後半、「At Last」という曲には(マッドネスの)「Our House」を挟み、観客にコーラスさせたり、「次はスペイン語で!」とか言ってアドリブで楽しんでいる。ラストはこれもメジャーデビュー作に収録されることになる「Sleep All Day」で締め。その後スタジオ録音の「Hey Love」というのが(ボートラとして?)入っている。


というわけで、なにかと散財させられることの多いジェイソン君だけど、内容の質の高さは昔も今も折り紙つき。きちんと作りこまれたスタジオ盤も、それを骨組みだけにしたようなアコースティック録音も、ライヴ録音もライヴ映像も、どれもみんな楽しめる。あと僕が自分で体験してないのは生で観ることだけだな、と思っていたら、来年2月に再来日決定ときた。つい数ヶ月前に来たばかりなのにね。

さっそくプレオーダーに登録してみた。明日になれば当落がわかるけど、まあ、プレオーダーに落ちたところでまだチケットを取る方法なんていくらでもあるし、大丈夫だろう。CCレモンホールって、渋谷公会堂のことか。昔誰かのコンサートで行ったことがあるはずだけど、どんなところかよく憶えてないな。指定席のライヴって久し振りだな。目の前にアフロヘアーが座らなければいいな。
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2008年12月07日

これです - James Blood Ulmer

夏ごろのエコ月間の反動なのかなんなのか、先月末からとんでもない数のCDを買い続けてしまっている。もちろんその中にはすごくいいものも沢山あって、この週末はそんな中の一枚を取り上げようと思っていたんだけど、ちょっと前にpiouhgdさんのブログで見かけた名前が妙に気になって、つい懐かしいLPを引っ張り出して聴いてしまってるもんだから、今日はそのことを書くことにしよう。piouhgdさん、僕がコメント欄に書いたのはこれです。

そこで取り上げられていたのは、デイヴィッド・マレイ(David Murray)というジャズのサックス奏者。お察しのとおり僕はジャズについては造詣もなにもあったもんじゃなくて、この人のことも、昔よく聴いていたあるアーティストのアルバムで客演していたから知っていただけなんだけどね。

Are You Glad + Free Lancing.JPG

イギリスのインディーズとして当時ギザギザにとんがっていたラフ・トレードが、初めてレーベル単体として日本に紹介されたのが81年のこと。3月1日に第一回新譜として発売されたのが、

ポップ・グループ 『For How Much Longer Do We Torelate Mass Murder?』 RTL-1
キャバレー・ヴォルテール 『The Voice Of America』 RTL-2
ヤング・マーブル・ジャイアンツ 『Colossal Youth』 RTL-3
ペル・ウブ 『The Art Of Walking』 RTL-4
オムニバス 『Clear Cut』 RTL-5


この5タイトル。記録によると、僕はRTL-1を発売月に買ったようだ。RTL-5については、かつてスクリッティ・ポリッティの記事に書いたとおり。それも同じ月に買っているね。今と違ってひと月にそう何枚もレコードを買えなかった学生時代、この81年3月に僕が買ったのは、この2枚に加えて、元ワイアーのコリン・ニューマンの『A-Z』と、テレビジョン・パーソナリティーズのファースト。我ながら、なんてヒネた中学生だったことかと思う。

ラフ・トレード・ジャパンの話に戻って、翌4月1日には

フォール 『Grotesque』 RTL-6
ペル・ウブ 『390°Of Simulated Stereo』 RTL-7


の2枚が出て、更にその翌月の5月1日に出たのが、

ジェームス・ブラッド・ウルマー 『Are You Glad To Be In America?』 RTL-8

だった。今日はこの人の話。今挙げたグループのことを知らない人にはどうにもわけのわからない話かもしれないけれど、80年代初期に現れて(そして多くはすぐに消えていった)数々のアヴァンギャルドなパンク/ニュー・ウェーヴのバンドに混じって紹介されたこのアルバム。上の写真の右側の、バッタを指に乗せた黒人の子供のジャケに何故かやけに惹かれて買ってみたんだったっけ。“BLOOD”の文字がエンボス加工になっていたのが嬉しかったな。


ブチブチと打楽器のように高速で弾かれるベースと機関銃のようなドラムスにまず圧倒された。いったいどこに拍の頭があるのかよくわからないままどんどんテンポが速くなっていく変拍子のリズム。全員一緒のペースで速くなってるってことは、誰かがヘタクソで走り出したりしてるんじゃなくて、そういう曲ってことなんだろう。そして、やたら手数の多い、硬質な音色のギター。

それまでサックスというと、ブルース・スプリングスティーンのアルバムで聴いていたクラレンス・クレモンズの伸びのある気持ちいい音ぐらいしか知らなかったから、ここで狂ったように吹き鳴らされている音はかなりのインパクトだったはず。「はず」というのは、そもそもその当時、こんな風にギターがこうで、サックスがこうで、なんて聴き方してなかったからね。とにかくそんな音のカタマリをガツンと投げつけられたような気がした。

フリー・ジャズと呼ばれる類いの音楽だけど、当時の僕にとっては、ものすごく刺激的な“ロック”だった。そう、彼の二枚あとのアルバムタイトル『Black Rock』が示していたように。

ジェームス・ブラッド・ウルマー(James Blood Ulmer):ギター
アミン・アリ(Amin Ali):ベース
ロナルド・シャノン・ジャクソン(Ronald Shannon Jackson):ドラムス
G.カルヴィン・ウェストン(G. Calvin Weston):ドラムス
デイヴィッド・マレイ(David Murray):テナーサックス
オリヴァー・レイク(Oliver Lake):アルトサックス
オル・ダラ(Olu Daru):トランペット
ウィリアム・パターソン(William Patterson):リズムギター

というのがこのアルバムの演奏メンバー。ジャズファンの人には有名なメンバーもいるのかも知れないけれど、僕にとっては、このリストの最初の5人の名前は特に忘れられないものとなった。それにしても、この17年後に初のリーダーアルバムを僕が買うことになるオル・ダラ(Olu Dara)の名前がこんなところにあったなんて、今回クレジットを見直すまで気づいていなかったよ(裏ジャケの表記はOlu Daruって間違えてるけどね)。

アルバム・プロデュースは、ウルマー自身と、ジャズ系のアルバムを手掛けている(と今調べた)ロジャー・トリリング(Roger Trilling)に加え、なんとレッド・クレイヨラのメイヨ・トンプソン(Mayo Thompson)。当時のラフ・トレード人脈ということを考えるとそんなに違和感のない人選なのかもしれないけれど、なんだか不思議な感じ。道理で、この次のアルバムとかと比べると、音の感触が違う気がする。ちなみに僕が妙に惹かれたバッタと子供の写真は、内藤忠行というジャズ・ミュージシャンの写真を撮る人のものだった。

何があったのかは知らないけれど、ラフ・トレードをこのアルバム一枚で離れ、同じ年の暮れにCBSから発表されたのが、上の写真では左側にある『Free Lancing』。クールなバッタジャケと比べてこの暑苦しい写真!もちろん、前作の中身がどんなに熱いものかを知っていた僕は、このジャケだけで「買い」だったけどね。

前作と甲乙つけがたい、凄まじい演奏。プロデューサー名簿からメイヨ・トンプソンが抜けたせいか、どちらかというと今作の方がストレートにフリージャズっぽい(のかな?そもそもフリージャズについてそんなに詳しくわかってるわけでもないので)。曲によってメンバーが入れ替わっているが、基本的にはウルマー、アリ、ウェストンの3ピース。マレイは3曲に参加。さっき書き忘れたけど、前作でもこのアルバムでも、数曲でウルマーがその野太い声で結構ソウルフルに歌っている。

自分ではそうと気づかないまま、ここが僕のジャズへの入り口になった。そして、『Free Lancing』の裏ジャケで謝辞が捧げられているオーネット・コールマンとかの方向に恐る恐る進んでいくことになる。でもあんまり深入りするに至らず、結局今でもジャズと聞くと自分は門外漢だと思ってしまう。そして、今でもこの辺の人たちのことは、ジャズというよりは、ロックの端っこの方だと思って聴いている。

この次にまたCBSから出た『Black Rock』(これは僕はLPでは持っていない)を含めて、この時期のウルマーはメチャクチャ格好よかったな。残念ながらCBSからのタイトルは全て廃盤になってしまっているけど(中古盤が凄い値段で取引されてるみたい)、その後あちこちのレコード会社からいろんなジャケットに変更されて再発された『Are You Glad To Be In America?』は今でも流通しているみたいだね。興味のある人は聴いてみればいい。安くはないけど、その価値はあると思う。僕もCDで買い直そうかな。凄い高値の廃盤になる前に。

AYGTBIA.jpg James Blood Ulmer 『Are You Glad To Be In America?』


<12月13日追記>

Are You Glad To Be In America DIW.jpg 届いてみたらこんなだった。
posted by . at 03:24| Comment(6) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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