2008年11月16日

電子的な人々

YMOが出てきたのが僕が中学生の頃で、その頃聴き始めた洋楽のLPをなけなしの小遣いで月に一枚とか厳選して買っていた時期にあえて彼らのライヴアルバム『公的抑圧』を選んだことからわかるように、テクノポップはその極初期から僕のお気に入りだった(結局、僕が中学のときに買った他の数枚のレコードと同じく、それは友達の誰かに貸したまま未だに返ってきていないんだけど)。

やがてテクノポップからポップという言葉が取れ、それがテクノポップとは似て非なるクラブ指向の音楽を指すようになった頃には、僕の興味はすっかり失われてしまっていた。

そして、僕の意識下ではヒップホップとかハウスとかとほぼ擬似語だった(つまりその言葉を見ただけで自分の選択肢の外に置いていいという自動選別が脳内で行われていた)テクノと区別して、必ずしもダンスフロアを意識しない電子音楽がエレクトロニカと呼ばれていると気づいたのが数年前。

それってテクノポップってこと?と思うんだけど、どうやら僕にはいまいちよくわからない難しい定義があるようで、「テクノポップ+ダンス=テクノ」で「テクノ−ダンス=エレクトロニカ」でも「テクノポップ=エレクトロニカ」という三段論法が成り立つわけではないらしい。きっとそんな単純な算数じゃなくて、微分とか積分とか使っているんだろう。

たまに評論を読んだりジャケに惹かれたりしてそういうエレクトロニカのCDを買うことがあるけど、でも自分はもうその手の音楽にはすっかり門外漢という意識も植え付けられてしまっているんで、あまりのめり込んで聴くというわけでもない。

最近また何枚かそういうCDを入手して気持ちがエレクトロニカモードになっているんで、せっかくなのでまとめて取り上げてみよう。どうせ一枚につきそんなに沢山書けるほどの知識も薀蓄もないから、ちょうどいいや。きっとその手の音楽に詳しい人が読んだら、いつもの記事にも増してデタラメばかり書いてあるということに気づくはず。


England Fallen Over.jpg Epic45 『England Fallen Over』

最初は、この印象的なジャケに惹かれて買ってみたこのアルバム。エピック45はイギリスのグループで、05年に発売されてすぐ廃盤になったものに、4曲のボートラを入れて今年再発されたものらしい。

タイトルトラックをはじめとした何曲かの印象を一言で表すと、“レトロ・フューチャー”。70年代に想像していた21世紀、みたいな感じ。なんでそう思えるのかはよくわからないけど。僕が物心つくかつかないかぐらいのときに見た大阪万博のなんとか館でBGMとして流れていたような曲、とか言っても誰にもわからないとは思うけど。

これ、けなしてるんじゃないってのはわかるよね?“過去から見た未来”を現在から俯瞰して見るのって、すごく魅力的なんだけどな。70年代のレトロなデザインの北欧の家具とかが魅力的なように。

まるっきりアンビエントといった風情の曲もあって、それはそれで興味深いんだけど、やっぱりこの手の音楽って、きちんとビートを刻んでいるものの方が気持ちいいと思う(と、ダンスフロア向けのテクノを拒絶した身であえて言ってみる)。


Far Away Trains Passing By.jpg Ulrich Schnauss 『Far Away Trains Passing By』

次はこれ。ウルリッヒ・シュナウスの2枚組。ドイツで01年に出て話題になっていたデビューアルバムが、05年にボーナスディスクを付けてアメリカで発売になったもの(を、さらにその2年後に僕がニュージーランドで買ったというわけ)。確かこれもジャケ買いしたんだと思ったけどな。その当時は名前も知らない人だったし。その頃ブログでドイツ音楽の話をしていたクロムさんに影響を受けたのかも。ドイツという部分だけで(笑)

浮遊感あふれる心地良い曲が次々に繰り出されるのがヤミツキになる。ただ、そういう気分でないときには、2枚組はちょっと多すぎかなとも思ってしまうんだけどね。今日取り上げる他のアーティストが、生音と電子音を組み合わせていることが多いのに比べて、この人のはほぼ全てが電子音だけで構成されている。エレクトロ・シューゲイザーなんて形容されていることもあるようだけど、確かにそういう感じの曲もあるね。


Lust.jpg Rei Harakami 『Lust』

イギリス、ドイツときたんで、次は日本人にしよう。レイ・ハラカミの、この後に出た未発表曲集を除けば今のところ最新作の、05年のアルバム。

この人のことは、評判の高かったこれの前作『Red Curb』で初めて知った。すごくいい曲がある一方で僕にはちょっと退屈な曲もあったんで、そのすぐ後に出た『レッドカーブの思い出』も含めて他のアルバムに手を出すまでには至っていなかったんだけど、数ヶ月前に近所の中古屋で見かけたこれを久し振りに買ってみた。

一音一音がすごく柔らかい。使っている楽器は電子機器ばかりなのに、出てくる音はとても人間味のある暖かいもの。上に載せたジャケはデジパックになっているんだけど、拡げてみると裏ジャケはこの表ジャケを裏焼きしたもの(実はどちらが裏焼きかわからないんだけど)が、背の部分を基点にちょうど線対称になってつながっている。なにげない、いかにも昭和的な風景が実はよく見ると全てコンピューターを使って合成されて作られたものだったという、不思議なパラドックスみたいなジャケットそのままの音楽。

細野晴臣の「終わりの季節」をカバーしていて、その曲でのみボソボソとしたボーカルが聴ける(それがなかなかいいアクセントになっている)。帯の文句に曰く『世界遺産に決定。文句無し。矢野顕子(談)』だそうで(笑)、まあ僕はそこまでは思わないものの、かなり気に入ったアルバムではある。


The Electricity In Your House Wants To Sing.jpg Uphill City.jpg
I Am Robot And Proud 『The Electricity In Your House Wants To Sing』
I Am Robot And Proud 『Uphill City』

最後は、最近の僕の一番のお気に入り。カナダ在住の中国人、ショウハン・リームによるユニット、アイ・アム・ロボット・アンド・プラウド。ちなみに彼の両親はカナダに移住した中華系インドネシア人だそうで、どうでもいいけど今日の記事にはこれで七つの国名が出てきたね。

ペンギンジャケのアルバム冒頭、ちょっと現代音楽っぽいピアノの音が電子音に取って代わられるところが快感。そういう、ピアノや弦を使った生音と電子音との融合が実に気持ちいいね。

かつてYMOがそうだったように、少し中華風というか、オリエンタルなメロディの曲がいくつかある。特に今年出た最新作である『Uphill City』でそれは顕著。いくらルーツが中国人だからといって、そういうメロディが身体に染み付いているとも思えないので、これは(かつてYMOがそうだったように)あえて自分の出自をアピールすることによって、他との差別化を計ろうとしているんだろうね。ただでさえ演奏者の顔の見えない類いの音楽だから。

とはいえ、この人の作る電子音楽は、非常に人間味のある音作りという点でかなり個性的ではある(レイ・ハラカミとはまたちょっと違った感じなんだけど、うまく言い表せないな)。ちょうど、今日載せたいくつかのジャケのイメージがその差異をうまく表していると思うんだけど、シリアスになり過ぎない、人懐っこい感じが他の多くの電子音楽と一線を画している。「僕はロボットだけど、それを誇りに思っている」というユニット名も、それを端的に表しているよね。

ちょっと調べてみたら、ほんの一ヶ月前に、日本でライヴがあったことに気づいた。しかも、僕がよく行くあちこちのブログで話題になっていて、僕も音を聴いて気に入っていたラディカル・フェイスと合同で!ちょっとこれはとんでもないものを見逃したな。ここ最近のがっかり大賞に決定だよ。

Grace Days.jpg I Am Robot And Proud 『Grace Days』

気を取り直して、昨日土曜日だというのに出勤させられた腹いせに帰路立ち寄った中古屋で、ペンギンの前作にあたるサード・アルバムを買ってきた。この小さいジャケ写じゃわからないかもしれないけど、セピア色の風景写真に塗り絵みたいに着色したジャケが、さっきレイ・ハラカミのところに書いたみたいに、人工合成された自然、みたいな感じでいいね(しかもハラカミよりもっとオモチャっぽくて)。まだ一回しか聴いてないけど、中身もいいね、これ。
posted by . at 12:01| Comment(7) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする