2008年11月01日

宇治金時 - Low Season Combo

Low Season Combo.jpg Colourful Invasion.jpg
『Low Season Combo』      『Colourful Invasion』

去年のいつだったかな。最初に出会ったのは、僕がNZから出張で来ていた東京のとある中古CD屋でのこと。ロウ(Low)のCDを探していたら、見覚えのないCDが同じ棚に並んでいたんだった。そっけない木目調のジャケの中央に書かれたイタリック体のロゴがロウのCD風に見えなくもなかったけれど、そのときはすぐに違うバンドだと気づき、また棚に戻してしまった。

その出張で結局何枚のCDを買って帰ったのかは忘れてしまったけど、たった一枚の、買わなかった、しかもほんの一瞬手に取っただけのそのCDのことがなんだかいつまでもやけに気になってしまっていた。ジャケ買いしたくなるような類いのデザインでもないのにね。

それから数ヵ月後、今度は別の中古CD屋で、同じアルバムの帯付きに出会った。帯には『スウェディッシュ・ピアノポップの大本命』との煽り文句。ああ、そういうバンドだったのか。ちょっとそうは思わせないこの渋いえび茶色のジャケが損をしているところがあるかもね。数ヶ月間頭の片隅に引っ掛かっていたこともあり、間違っても嫌いなタイプではないだろうと、音も聴かずに購入。

“嫌いなタイプではない”どころじゃなかった。いわゆるスウェーディッシュ・ポップとか呼ばれるバンドにはきっとこういう人たちが無数にいて、どれもこれも似たような音を出しているんだろうとたかをくくっていたんだけど(そして僕が聴いてきたそれら多くのバンドは、別に嫌いではないけどのめり込むほどでもないという中庸的な評価で一括りにされてしまっているんだけど)、でもこのバンドはそうじゃないというのは、一回聴いたらわかる。

ライナーによると、新人とはいえ結構なキャリアを持った人たちらしく、道理で曲がしっかり書けているよ。オープンコードで気持ちよくかき鳴らされるギター。適所適所に隠し味的に配されたピアノ。北欧のバンドらしいちょっと翳りのあるメロディー。それに、この人たちって、スタッカートを効果的に使った、ちょっとした間の取り方とかがすごく上手い。一瞬ふっと音を抜いてじらしたところに、畳み掛けるように次の音を入れてくるところとかね。

アルバムの中核を成している6曲目「City Without A Skyline」が白眉。これやあといくつかの曲は、絶好調時のティーンエイジ・ファンクラブに匹敵する、なんて言ったら褒めすぎだろうか。3曲目「Crows And Ravens Grouped In Clusters」のイントロのピアノのメロディーが、80年代MTV世代には懐かしいピーボ・ブライソン&ロバータ・フラックの「Tonight, I Celebrate My Love For You」そっくりなのはご愛嬌ということにしておいてあげよう。



全14曲のうち、13・14曲目が日本盤向けのボーナストラックということだが、どうやらこのアルバム、日本先行発売、というよりは、日本でしか発売されていないようだ。じゃあ、ボートラなしの12曲版というのは存在するんだろうか。もしかしたら本国スウェーデンでは出ているのかもしれないけど、ちょっとそこまで調べる術もなく。でもこれはきっと、さっきの「City Without A Skyline」が(レコードだと重要な位置を占める)B面の1曲目なんだよ、ということを言いたいんだろうね。

こんなにいいアルバムが、去年買ったガイドブック『北欧POP MAP スウェーデン編』に何故載っていなかったんだろうと、改めてページを繰ってみたら、あ、あった。この地味なジャケ、白黒のページに載るとますます存在感ないんだもん。伊藤英嗣さんによる解説「是非じっくり聴いてほしい、実に感動的な作品だ」。うん、まったくそのとおりだよね。


そうして07年2月の発売からかなり遅れてファーストアルバムを入手した僕の前に、異常に短いスパンで彼らのセカンドアルバムが現れた。今年7月発売の、『Colourful Invasion』だ。くすんだ緑色の天井と壁紙が印象的な、ヨーロッパの何処かの廃屋の一部屋を写したようなこのジャケは、もし僕がこの人たちのことを知らなかったとしてもジャケ買いしてしまいそうないい雰囲気。ちなみに封入されている各ページに1曲ずつの歌詞が掲載されたブックレットには、うち捨てられて廃墟と化した遊園地の写真が載っていて、それもまたなんともいえない趣がある。

今度はボートラなしの全10曲、トータルでわずか37分弱のコンパクトなアルバム。「初回限定デジパック仕様・日本超先行発売」って書いてあるけど、果たして海外盤は出るんだろうか。

なんて心配が杞憂に思えるほど、前作にも増してポップな作品になっている。というか、ちょっとこれはポップすぎるんじゃないかって思ってしまう。オープニングのアルバムタイトル曲で使われているのは、前作でいい味を出していたピアノでなく、ウニョウニョいうキーボードだ(ピアノは他の曲ではちゃんと復活してるので一安心)。



でもこれもよくできたアルバムだね。前のアルバムが10数年かけて作り貯めてきた曲の集大成だとしたら、今回はその後わずか一年ちょっとで作った曲ばかりで構成されているはずなのに、相変わらず粒揃い。しかも、前のアルバムが平均点60〜70点ぐらいの生徒の中にたまに飛びぬけて95点とか100点の凄い奴もいるといった感じだったのに比べて、今回のはどいつもこいつも90点の秀才揃いってところか。それって、並大抵じゃないよね。

日本盤だけど帯はなくて、シュリンクラップに小さなステッカーが貼ってあるだけ。あと、日本語の解説と歌詞対訳は、裏ジャケに書いてあるURLにアクセスしてダウンロードしなければいけないなど、経費を削った仕様。まあ、日本語の解説なんていつも手元に置いておきたいものでもなくて、一度ネットで読めば充分だから、これはこれで気の効いたやり方かも。でも、アクセスしてみたら、解説は読めたけど、歌詞対訳のページが表示されないよ。どうしたんだろう。

地元ではどれぐらい人気のあるバンドなんだろう。10年以上もこうやって続けてきているんだから、有名でないとしても、きっとそこそこ中堅どころなんだろうね。解散せずに続けてほしいものだ。せっかくこうしてコツコツと日本盤も出ているんだから、来日してくれないかなあ。演奏上手いし、ライヴがよさそうなバンドだよね。ああ、ちょっと何か言ってるビデオ見つけたよ。これはファーストアルバムが日本で出た頃のものだけど、ちょっと聞いてあげて。




posted by . at 22:24| Comment(8) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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