2008年10月05日

yascd011 Go Easy, Step Lightly,

自画自賛を許してもらえるならば、去年の6月に作ったyascd010は自分でも中々の出来だったと思うし、コメント欄では「最高傑作」なんて有難いお言葉も頂戴した。あれ以降も何度か「次のyascdを」というコメントも頂いたのだが、知らず知らずのうちに前のよりもいいのを作ろうと自分の中でハードルが高くなっていたのかもしれない。

まあ、実際には、NZからの帰任にまつわるゴタゴタと、東京での新しい仕事と出張に追われて、ゆっくり選曲したりする余裕がなかったというのが実情なんだけどね。

思い起こせば、これまでのyascdって、どこかのコメント欄で話題が盛り上がったとか、コメンターさんにリクエストされたとか、誰かに聴かせることを念頭に置いて作ることが多かったんだよね。きっとそれも、モチベーションでありながら同時にプレッシャーになっていたのかも。

ちょっとそういう(半ば自己満足的な)モチベーション&プレッシャーから少し離れて、純粋に自分の楽しみのためだけのミックスCDでも作ってみようかなという気持ちになった。リハビリ的に。なので、今回のは、少なくとも普段コメントをくださるコメンターの方々のどなたの嗜好にも刺さらないだろうなと思っている。


さて本題。僕がちょっとしたクラッシュ(The Clash)のファンだというのはこのブログでも折に触れて書いてきた。そして、ちょっとマメなクラッシュのファンなら誰でも共通してやったことがあると思われるのが、ミック・ジョーンズ(Mick Jones)がリード・ヴォーカルをとる曲を集めたミックステープ作りだろう。

一般的にはパンクロックバンドとして知られるクラッシュだけど、思いのほか多数存在するミックのヴォーカル曲だけをピックアップしてみると、実は全然パンクっぽくなんてない。クラッシュがパンクでなくなったと言われる時期よりもずっと前から、はっきりとそれはわかる。

思想的にも音楽的にももっとパンク寄りだった(少なくとも当時の)ジョー・ストラマーに対して、単純に「ロックンロールが好き/格好いいギターが弾きたい」といった気持ちだけが見えていた人だった。そしてその気持ちは、後に彼がクラッシュを追い出される頃には、「ヒップホップってかっこいい/その時代で最先端の音楽を演りたい」という風に変化していった。

彼は全盛期のクラッシュの殆どの曲を作曲した(そして、ジョー・ストラマーがそれに詞をつけた)。パンクと呼ばれようがロックンロールと呼ばれようが、それらは最高に格好いい曲だった。スクイーズのクリス・ディフォードとグレン・ティルブルックが僕らの時代のレノン=マッカートニーだとしたら、ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズのコンビは、僕らの時代のジャガー=リチャーズだ。ただ、本当に残念なことに、ミックってえらく音痴なんだよね。なんであんな音程の不安定な人があんなに素晴らしい曲を書けるのかが、僕は昔から不思議でしょうがない。


前置きが長くなった。今度こそ本題に入ろう。ここに集めた20曲は、77年のクラッシュのファーストアルバムから、去年出た彼の現在のバンド、カーボン/シリコン(Carbon/Silicon)のアルバムまでの30年の歴史を、ほぼ年代順に並べたもの。年代順なんで簡単なんだけど、金曜の晩思いついて次の朝に作ったわりにはまともなミックスができた(と、またもや自画自賛)。


The Clash.jpg The Clash 『The Clash』
1.Protex Blue
2.Hate & War


記念すべきクラッシュのファーストアルバムから、でもあまり目立たない2曲を。「Protex Blue」なんて、アメリカ盤からは落とされてるぐらいだからね。まあ、当時イギリスでメジャーだったプロテックス社のコンドームの歌なんて、過激なパンクバンドのアルバムには不要と思ったのかも知れないけど。一方、“ラブ&ピース”の逆である「Hate & War」は、いかにもなパンクのスローガン。こういう曲を聴くとよくわかるけど、ミックとジョーの声って、砂糖と塩ぐらいテイストが違うのに、混ぜ合わせると化学反応を起こしたのかというほどいい味になるよね。


Pearl Harbour '79.jpg The Clash 『Pearl Harbour '79』
3.Gates Of The West
4.Jail Guitar Doors


これは僕にはとても思い出深いアルバム。最初にクラッシュを聴いたのがこのLPだった。これは、上のファーストアルバムのアメリカ盤(イギリス盤の曲目を大幅に変え、当時シングルでしか出ていなかった曲を大量に盛り込んだもの)に、ジャケット全体を覆う帯(?)を付けた日本盤。そのおまけについていたシングル盤「Gates Of The West / Groovy Times」が、僕の音楽人生を変えた。今でも僕にとってはクラッシュの全部の曲の中でも一番目と二番目に好きな曲だ。どっちが一番でどっちが二番かは迷うけど。

「Jail Guitar Doors」は、ファーストアルバムの後に出たシングル「Clash City Rockers」のB面曲。そのA面曲と一緒にこのアメリカ盤(と日本盤)に収められた。ここではミックが歌っているが、元々はジョーの曲で、彼がクラッシュに入る前に在籍していた101'ersの唯一のアルバムがCD化されたときにライヴ録音が収録されたというのは最早とりたててトリビアな話でもないだろう。


Super Black Market Clash.jpg The Clash 『Super Black Market Clash』
5.The Prisoner

一方こちらは「Clash City Rockers」の次に出たシングル「(White Man) In Hammersmith Palais」のB面曲。アメリカ盤ファーストには入らなかったので、後にアメリカでのレア曲ばかりを集めた『Black Market Clash』という10インチ盤に収められることになった。その10インチ盤のままの曲順のCDも存在するが、やがて拡大版のこの『Super Black Market Clash』に取って代わられた。僕はオリジナル版の地味な色合いが好きなんだけど、なにしろ茶色基調のそのジャケだとこのブログに載せるとカメレオンほど目立たないのでこっちを。


Give'em Enough Rope.jpg The Clash 『Give'em Enough Rope』
6.Stay Free

さっき、マメなクラッシュ・ファンはミック・ジョーンズがリード・ヴォーカルをとった曲を集めたミックステープを作るって書いたけど、(僕も含めて)そいつらは全員例外なく、この曲を何度も聴きたいがためにそんなことをしているはず。おそらく、ミック・ジョーンズが作った最高の一曲。実話を基にしたと言われる、彼の子供の頃からの友達との友情を描いた、歌詞も曲もちょっとじわっとくるような、僕らの時代のアンセム。


London Calling..jpg The Clash 『London Calling』
7.Lost In The Supermarket
8.Train In Vain
9.I'm Not Down


2年前のこの記事で「レガシー・エディション」というのを取り上げた、一般的にはファーストと並んでクラッシュの最高傑作と称される『London Calling』から3曲続けて。当時、クラッシュはパンクじゃなくなったとか裏切り者だとか一部で酷評されていたアルバムだったけど、彼ら自身がパンクというたがを外すことが出来たからこそ、これだけ幅の広い名曲を続けざまに生み出すことができたんだと思う。


Sandinista!.jpg The Clash 『Sandinista!』
10.Somebody Got Murdered

80年の3枚組LP『Sandinista!』には、ミックが当時の彼女、エレン・フォリーとデュエットしている「Hitsville U.K.」というシングル曲があるんだけど、ちっともヒットしなかったその曲(僕はそれほど嫌いではないんだけど)でなく、こちらを入れよう。6面、2時間半に及ぶごった煮のようなアルバム(僕は世間で酷評されるほど嫌いではないんだけど)においては、わりと典型的なクラッシュらしい曲といえる。

82年の『Combat Rock』には、「Should I Stay Or Should I Go』という、確かクラッシュの全シングルの中でも1〜2を争うほど売れたミックの曲があるんだけど、僕はその曲をクズだと思っているので、ここには入れない。クラッシュ時代はここまで。


Spirit Of St. Louis.jpg Ellen Foley 『Spirit Of St. Louis』
11.Torchlight

上に書いた、ミックの当時のガールフレンド、エレン・フォリーの81年のアルバム。クラッシュの4人とキーボードのミッキー・ギャラガー、ベースのノーマン・ワット=ロイ、ヴァイオリンのタイモン・ドッグという、『Sandinista!』期の拡大クラッシュ組が全員参加して、アルバム中半分が“ストラマー=ジョーンズ”作の曲で、おまけに「Produced by my boyfriend」などと歯の浮くようなクレジットが載っていた。

つき合って間もない彼女の名前でタトゥーを入れるような行為だね。それらのクレジットに釣られて否応無くこのアルバムを買わされるこっちの身にもなってほしいよ。


This Is Big Audio Dynamite.jpg B.A.D. 『This Is Big Audio Dynamite』
12.The Bottom Line (Def Jam Remix)
13.E=MC2 (Extended Remix)


クラッシュ脱退後の85年に出た、ミックの新グループ、ビッグ・オーディオ・ダイナマイト(Big Audio Dynamite、以下B.A.D.)のデビューアルバム。『Sandinista!』までの変遷を知っていたファンなら、同時期に出た抜け殻クラッシュの『Cut The Crap』よりも、クラッシュの次のアルバムはこうなったはずと思えるような出来だった。どちらのアルバムも、先の例で言うなら、塩だけとか砂糖だけで味付けしたようなコーラスラインにがっかりさせられたものだけど(特に歌が下手なミックの方)。

僕はこのアルバムをLPでしか持っていないので、CD-Rにまとめるために、リミックスアルバム『The Lost Treasure』からこの2曲を代わりに。どちらも元は『This Is B.A.D.』からの代表曲。


No.10, Upping St..jpg B.A.D. 『No.10, Upping St.』
14.V.Thirteen
15.Sightsee M.C!
16.Beyond The Pale


B.A.D.のファーストを優れたアルバムだと認めてはいながら、でもやっぱりクラッシュの幻影を追い続けていた未練がましいファンにとって、このセカンドアルバムにジョー・ストラマーが参加したというのは狂喜乱舞の出来事だった。世間的にはファーストよりも弱いと言われているこのアルバムから、ジョーが参加したこの3曲のどれも落としたくなかったんで、こういう選曲に。


The Globe.jpg B.A.D.II 『The Globe』
17.Rush

あらゆる種類の音楽を聴くけれど、ヒップホップだけはちょっと、と思っている僕にとっては、80年代後半以降のミックの趣味はことごとく合わなさ過ぎた。コンスタントに出ていたアルバムは殆ど買わなくなったし、ずっと後になってから、安くなっていた(しかも限定でライヴ盤との2枚組だった)これを買ってみたんだけど、やっぱりあんまり好きにはなれなかったな。この時期、B.A.D.はミック以外のメンバー総入れ替えで、B.A.D.IIと改名。


Higher Power.jpg Big Audio 『Higher Power』
18.Looking For A Song

ミックがやや歌モノに回帰したと何かで読んだこのアルバムは、94年に出た当時に買ってみた。アルバム全体は何度も通して聴きたい感じではなかったけど、シングルカットされたこの曲は好き。この当時、またもグループ名をBig Audioに改名。先の『The Globe』のところにリンクを貼った、B.A.D.の代表作が5枚セットになって廉価で今年再発されたものには、このアルバムは選ばれていないね。ミック・ジョーンズの音楽が一番低い評価を受けていた時期のアルバム。もう再発されることもないんじゃないかな(と、それだけの理由で中古屋には売れない僕)。


Good Morning Britain.jpg Aztec Camera and Mick Jones 『Good Morning Britain』
19.Good Morning Britain (Live)

ちょっと数年遡って、90年に突然アズテック・キャメラ&ミック・ジョーンズ名義で発表されたこのシングルから。表題曲は今ではアズテック・キャメラ(Aztec Camera)のベスト盤に収録されて気軽に聴けるようになったけど、カップリングされていたこのライヴヴァージョンはちょっとレアかも。

アズテック・キャメラといえば、名曲「Walk Out To Winter」での「ストラマーのポスターが壁から落ちて、もうそこには何も残っていない」という歌詞でしかクラッシュとの繋がりを想像できなかったので(そしてその歌詞から、もしかしたらロディー・フレイムはクラッシュに対してネガティヴな印象を持っているのかもとも思っていたので)、このコラボ自体、それから「僕の友達を紹介するよ。ミック・ジョーンズ」というロディーのMCは、両方のファンである僕にとってはとても嬉しいものだった。


The Last Post.jpg Carbon/Silicon 『The Last Post』
20.The News

そして、尻すぼみ的なビッグ・オーディオの解散から10年弱、ミックはクラッシュ結成前に在籍していたロンドンSSの盟友、トニー・ジェイムス(Tony James)と共に、カーボン/シリコンを結成。自分達のサイトで何枚ものデジタルアルバムを発表した後、昨年ようやくCDとして発売されたのがこのアルバム。このグループ、元クラッシュ〜B.A.D.のミック、元ジェネレーションX〜ジグ・ジグ・スパトニックのトニー、元B.A.D.のべーシスト、レオ・ウィリアムズ、元リーフのドラマー、ドミニク・グリーンスミスという、かなり地味ながらちょっとしたパンク〜ニューウェーヴのスーパーバンドだ。

僕としては、ミックがまたギター満載のロックに戻ってきてくれたのがなによりも嬉しい。すっかり頭は寂しくなってしまったけど、ギターを構えて歌う姿はクラッシュ時代から何も変わっちゃいない。この、単音のフレーズとリフのタイミングのズレが妙に心地良い曲も、いかにもミック作といった感じ。




久し振りのこの企画、このブログとしても久々の超長文になってしまったね。もう誰も読んでいないかもしれないけど(あるいは、冒頭とここしか読んでいない人もいるだろうけど)、ちゃんとリハビリとして機能するかな。


posted by . at 13:41| Comment(13) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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