2008年10月26日

Sigur Ros live in Tokyo

今日は(とはいってももう日付が変わってしまったが)、シガー・ロスのコンサートに行って来た。会場は、同じ東京都区内とはいえ、僕の家からは地の果てほど遠い、新木場のスタジオ・コースト。

Coast.jpg


東京の本公演だった翌日の国際フォーラムはあっという間にソールドアウト。僕はこの追加公演のチケットを運よく先行発売で買えたんだけど、これがまた気が遠くなるような整理番号。先行発売って別に若い整理番号が割り当てられるってわけじゃないんだね。まあ、この追加公演もすぐに売り切れたようだから、チケットを手に入れられただけでもよかったと思っておこう。

上の写真にあるように、5時開場、6時開演だったんだけど、二千人規模の客を整理番号順に入れていくのに、そんな短時間で間に合うんだろうか。入り口のところで持ち物検査だの500円の飲み物券だの、時間かかることやってるし(僕のすぐ前の客は万札なんか出すからお釣りもらうのにやたら時間かかってたし)。気の遠くなる僕の番号で入場できたのは既に5時半過ぎ。それでも僕の後ろにまだ何百人もいたはずだから、6時15分頃に始まったライヴは、きっと最後の客が入場した直後ぐらいだったんじゃないかな。

飲み物券を買わされたはいいけど、何百人も並んでいるようなバーで飲み物を待ってるような暇はない。アリーナは既にほぼ満員。二階席もびっしり。それでも、左奥の方から回り込んで、なんとかステージから10メートルあたりの場所を確保。前の方に背の高いのが何人かいて、視界良好というわけではないけど、あの番号でこの位置なら満足。スピーカーの真ん前なので、後でまた耳が遠くなるのは覚悟の上で。

かなり雰囲気の変わった今回のアルバム『Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust』(長いので以下は当ブログのポリシーに反するけど邦題の『残響』でいくよ)の曲をどう使うのかな、というのが興味の的だった。多分オープニングから数曲は『残響』のアップテンポな曲を並べて、後半で過去の曲を演るのかな、とか。

予想に反して、オープニングはセカンドアルバム『Ágætis Byrjun』からの「Svefn-G-Englar」。定番中の定番曲。確かにスピーカー正面だから音は大きいんだけど、耳が痛くなるほどではない。この位置で音が割れずにこれだけクリアに聴こえるなんて、いいホールだね、ここは。

ステージは、僕のすぐ前にキーボードのキャータン、中央にギターとボーカルのヨンシー、その右にベースのゲオルグ、一番向こう、ステージ右端にドラムスのオリーという順番。メンバー全員が客席からよく見えるようにとの配慮だろうか、ドラムが後ろじゃないのが珍しいね。まあ、斜め前の人の頭が邪魔で、僕の位置からはそっち側はほとんど見えなかったんだけどね。

ヨンシーの声が辛そう。終始咳をしていて、得意のファルセットもかすれがちだったから、日本に来て風邪でもひいたんだろうか。途中、「今日は僕の声がひどいから、次の曲は皆で一緒に歌ってくれる?」とか言うから、客も「イエー」とか言って答えてたけど、そんなアイスランド語とかホープランド語なんて歌えるかよ、と思ってたら、なんだかハミングだけの曲だった。あれ何て曲だっけな。この記事の最後にセットリストを載せるけど、実はそれはコンサートが終わってから会場の外でスタッフがリストを見せてたのを写真に撮ってきたからわかっただけで、正直言うと僕は彼らの曲名をほとんど覚えていない。一応、今日の何曲目で演ったのはどのアルバムの何曲目、とかわかる範囲で記憶してきたけどね。

かなり髪の毛の伸びたヨンシー、飾りの付いた黒い服の袖にはヒラヒラした紐みたいなのがついてた(昔リッチー・ブラックモアがああいうのを着てたよな)。キャータンとゲオルグはスーツみたいな服。ゲオルグはそのうえシルクハット。髭男爵かよ。更に上を行くのがオリー。なんか王様みたいな青いキラキラしたとんがり帽子。なにこの統一感のない衣装。

しかしこのとんがり帽子君、ものすごいドラムを叩くね。さすが、13歳のときに先生にジョン・ボーナムとジンジャー・ベイカーとミッチ・ミッチェルを聴かせたら気に入られなかったので高名な音楽学校をドロップアウトしたという逸話を持つだけはある。帰りの電車で、持っていったウォークマンで今日演奏した曲(のCDバージョン)を聴いてみたんだけど、とにかくドラムの迫力が全然違う。ライヴ録音の『Hvarf』でさえ、今日聴いたあの音の1/10も伝えてくれていないと思う。

バイオリンの弓を使ってヨンシーが弾くギターの轟音、サンプリングの不思議な雑音、ブンブンうなるゲオルグのベースと、集中豪雨みたいなオリーのドラム。そのカオスの中から忽然と立ち現れるピアノの音の美しいことといったら。それを聴いて背筋がぞくっとする瞬間が何度あったことか。

どの曲だか忘れたけど、ヨンシーがキャータンの隣に座って、同じキーボードを連弾するシーンがあった。僕の位置からは二人の背中しか見えなかったんだけど、仲良く肩を並べて弾くその姿が、ちょっとだけ歳を喰い過ぎた二人の天使みたいだったよ。ステージ上で交わすアイスランド語も、なんだか天使が話してるような言葉だったし。

フォースアルバム『Takk...』からの曲が続いた6曲目・7曲目あたりでは、ヨンシーがギターからベースに持ち替え、ゲオルグとのツインベース編成に。これがまたかっこいい。ステージ衣装はメチャクチャだけど、絵になる人たちだね。

ライティングとステージ背景もとても素晴らしかった。背景のスクリーンには、ステージを撮影した映像を加工したものや、幾何学的なイメージ、レトロなモノクロのアイスランドの風景や子供達の映像などが次々に映し出されていた。曲によってはスクリーンの代わりに、透けた幕の向こうに人間が入れるほどの大きなボールがいくつも吊るされていて、それにいろいろなライトを当てて見せていたときもあった。暗いバックに浮かび上がるそれらは、まるで星のようにも見えた。

9曲目で演奏した僕の好きな「Sæglópur」では、ステージに雪のような真っ白な紙吹雪。そして、確か本編最後の「Gobbledigook」のときだったと思うけど、ステージ脇のスモークマシンから客席に向けて、ものすごい量のカラフルな紙吹雪が舞った。夢みたいな風景だったよ。

そう、またしても僕の予想と反して、最後を締めくくったのは『残響』のオープニング曲だった。「また僕達のことを助けてくれないか、今度は手拍子で」とのMCで始まった祝祭感あふれるこの曲で、一時間ちょっとのコンサートに幕が下りた。ヨンシーの声があの調子だったから、もしかしたらアンコールはないかなと思ったけど、すぐに出てきてくれて、最後の一曲、サードアルバム『( )』の8曲目(「Popplagið」という仮題がついている)を延々と演奏。

終演後に見たセットリストには、アンコールの1曲目として「All Alright」が載ってたんだけど、それは演らなかったね(あと本編での「Hafssól 」も)。多分ヨンシーの体調のせいだろうから、残念とは思わないよ。だって、「Popplagið」が終わっても鳴り止まないアンコールの拍手に答えて、もう歌えないのに出てきた四人がステージ上で深々とお辞儀をするのを見たら、もうあれで充分と思えたし。

本当にいいコンサートだった。彼らのアルバムは全部持ってるし、DVDだって見たけど、生で観るのは全然違うね。どんなアーティストでも大抵ライヴで観るほうがいいけれど、これはそんなレベルの話じゃなかった。今晩、国際フォーラムに行けるチケットを持ってる人は、自分がどんなに幸運なのかを確かめてくればいい。

終演後、新木場駅までの道すがら、近くを歩いていたカップルが「国際フォーラムで座って観てたらきっと寝てたねー」とか言ってたけど、頼むからそういう奴らはここに来ないでくれ。その分僕の整理番号が二つほど早まったかもしれないのに。

早くまた次のライヴが観たい、来日したら必ず観に行きたい。シンガーの声があの調子でさえあれだけ良かったんだからね。本調子のときはどんなに凄いんだろう。僕には、そう思えるライヴだった。そして、シガー・ロスは今日から、僕にとってそういう位置付けのアーティストになった。

ところで、今回のコンサートのプロモーターが他のコンサートを案内していた開演前の場内アナウンスで知ったんだけど、“僕にとってそういう位置付けのアーティスト”の一人、オークランドで二年連続でこの記事この記事にした彼が日本に来るんだって! 平日の公演なんだけど、自分の予定も調べないうちに、終演後にその場でチケット買ってしまったよ。だってもう自分のチケットに大きな整理番号なんて見たくないからね。もし12月15日の夕方以降に何か会議が入ったら、僕はその日は腹痛で早退です(笑)


セットリスト

1. Svefn-G-Englar
2. Glósóli
3. Ný Batterí
4. Fljótavík
5. Við Spilum Endalaust
6. Hoppípolla
7. Með Blóðnasir
8. Inní Mér Syngur Vitleysingur
9. Sæglópur
10. Festival
11. Gobbledigook

[Encore]
1. Popplagið

28 October 2008 at Studio Coast


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2008年10月13日

遺産 - UB40

The Lost Tapes.jpg UB40 『The Lost Tapes』

無意味に長すぎる文章でお馴染みの僕のブログで、たまに短い記事を書いてみたら「短すぎる」とのコメントを頂いてしまったので、ご好評にお応えして、更に短い記事を書いてみるよ。某通販サイトではもう半年以上前から“近日発売”扱いされていたのに、延期に次ぐ延期の末、ようやく先月になって発売され、他のCDと一緒にオーダーしていたのがつい今朝になって届いたこのアルバム。

UB40のデビュー時期の、ロンドンでのライヴを収録したもの。80年の3月7日というから、その年の9月に出たファーストアルバム『Signing Off』よりも半年前ということになる。1曲目が終わったときの「僕達のことを知らない人達へ、僕達はUB40というバンドです」というMCが初々しい。

ライナーノーツによると、UB40をメジャー・デビューさせたデイヴィッド・ヴァー(David Virr)という人が、26年間自宅に眠っていたテープを発掘し、そのテープがリストアされてデジタル・リマスターされ、このCDになったとのこと。デイヴィッド自身は残念ながら、このCDを手にすることなく、一昨年のボクシング・デイに亡くなってしまったらしい。そう、このCDは、おそらく今や世界で最も有名なレゲエ・バンドになったUB40の、ある意味生みの親に捧げられた、彼自身による遺産のようなアルバムだ。

『Signing Off』でもオープニングを飾っている「Tyler」の、あのヒョーーーーンというフィードバック風の音でこのライヴも幕を開ける。だが、いざ演奏に入ると、どんよりしたロンドンの曇り空を連想させたあの物憂げなオリジナルとはうって変わった緊迫感のある性急なアレンジ。このヴァージョンも凄いが、元々はこうだったはずの曲をあえてあの弛緩したアレンジに変えたうえで、デビューアルバムのオープニングに据えた彼らのセンスも凄いと思う。

まだこの時点ではオリジナル曲が少なかったせいか、全9曲のうち3曲がカヴァー。それも、単にレゲエの曲をカヴァーするのでなく、ビリー・ホリデイの「Strange Fruit」、ランディ・ニューマンの「I Think Its' Going To Rain Today」、ガーシュインの「Summertime」という、ある意味王道、ある意味(80年代のUKアンダーグラウンドという舞台を考えると)奇をてらった選曲。最初の2曲はそのまま『Signing Off』にも収録されることになる。

さっきも書いたけど、きっと一般的には今や世界で一番ポピュラーなレゲエ・バンドに成長した彼らだけど、80年代前半にまさか彼らがこんな風になってしまうとは想像もつかなかった。ここで初期の彼らがどんな風だったかを延々語ってもいいんだけど、そうすると冒頭の宣言に反してしまうので、一言だけ言っておこう。

上にリンクしたアマゾンのページを見て。この発掘ライヴアルバムとあわせて買うことをアマゾン君が薦めているのが、こちらも最近発掘されたばかりのクラッシュのライヴアルバム。そう、少なくとも80年代初期におけるUB40は、奏でている音楽自体はレゲエだったかもしれないが、れっきとしたパンクだった。

だからこそ当時パンクを聴いていた僕が何の躊躇もなくあのアルバムに没頭できたんだけど、未熟なガキだった僕には、当時好きだったクラスの女の子に自分のお気に入りのレゲエのLPをプレゼントしたのに、どうして全然喜んでもらえなかったのかは理解できなかった。UB40やリントン・クゥエシ・ジョンソンなんかの、精神的にはパンクと同等のレゲエから逆行して、お洒落でリゾートなレゲエにたどり着くには、僕にはあと数年必要だったというわけだ。

閑話休題。今回のこのライヴアルバム、自分の死期を悟ってこのテープを世に出したデイヴィッド・ヴァーだけでなく、今やメンバーは同じでも中身は全く別のバンドになってしまったUB40の、かつての偉業を記録した遺産のようなアルバムだ。嬉しいことに、発売元のEMIはこれを廉価レーベルであるEMIゴールドから出すことにしてくれたらしい。リンクしたアマゾンだと1200円弱で買えるし、きっと然るべき場所でその気になればもっと安く手に入るかもしれない。

初期のUB40のファンなんて、最早この世にどれだけいるのか知らないけど、今でも『Signing Off』が彼らの最高傑作だと思っている人には是非聴いてみてほしい作品。もし僕が(結局そんなに短くもならなかったこの記事で)何を言っているのかいまいちよくわからない人は、とりあえずこれを聴いてみればいい。お洒落でもリゾートでもないレゲエの最高峰の一枚だ。

Signing Off.jpg UB40 『Signing Off』
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2008年10月12日

せっかちな大物 - The Futureheads

This Is Not The World.jpg The Futureheads 『This Is Not The World』

先週の記事がやたら長かったので、今日はちょっと簡潔にしてみよう(とか言いながらどうせいつも守れないんだけどね)。フューチャーヘッズの3枚目。UKのこの手のグループが、鳴り物入りでデビューしたはいいものの、やがてどんどん勢いがなくなっていって、2枚目でコケて次を出せずに消滅、なんてパターンが多いのに反して、04年以降きっちり2年毎にアルバムを発表している。

前作『News And Tributes』は、このブログで取り上げようと思いながらも結局構想がまとまらずそのまま流してしまい、06年の僕のベスト20アルバム選出企画であったyascd006にひっそりと入れただけだった。

日本盤のボーナストラックだったあの曲「Help Us Out」は結構好きだったんだけど、ああやってあの流れで他のグループの曲と並べて聴くとどうも印象が薄くなってしまう。やっぱりこの人たちの曲は、アルバム通してダーッと続けて聴くのに向いてるんだということに気づいた。別に、他のグループの曲に負けるという意味じゃなくてね。“流れ”というのが重要。

その記事には、「ソリッドなギターとうねるベースに性急なボーカル」と書いたね。70年代末期以降のUKバンドの伝統。そのボーカルのせいか、かき鳴らされるギターのせいか、スピード感溢れる曲のせいか、どの曲を聴いてもほんとにせかせかしている。なにをそんなに慌ててんの、ちょっと落ち着け、と言いたくなる。いや、落ち着かれてしまうと魅力半減なんだけど。

今回のアルバムでもそのペースは変わらず、いつもに増してつんのめるように前へ前へと進む感じ。しかも、プロデューサーが代わったせいか、音のボトムが太くなって、非常に安定感が増した。こう、どっしりと落ち着いた大物が、なんだかやけにせかせかしているという相反する印象が面白い。

今作のプロデューサーは、ユース(Youth)。そういえば、ファーストアルバムの半分は元ギャング・オブ・フォー(Gang Of Four)のアンディ・ギル(Andy Gill)のプロデュースだったことを思い出すと、これまでずっとギャング・オブ・フォー(+XTC)みたいだったこのバンドの音が、今回ユースのお陰で、彼のキリング・ジョーク(Killing Joke)のエッセンスを足したような感じになっていると思えば納得がいく。ギャング・オブ・フォー+キリング・ジョーク級のバンドだなんて、80年代初頭のニュー・ウェーヴが一番熱かった時代に連れて行っても充分トップクラスだよ。

今回僕が買ったのは日本盤。ライヴ2曲を含む3曲のボートラが入っている。ライナーノーツにいきなり「たかだか1枚のアルバムの商業的失敗からの帰還」なんて書かれていて、僕が06年のベスト20に選出したあのアルバムは世間的には失敗作と受け止められていたのかと初めて知った次第。まあ、別にヒットチャートに上ったから成功というわけではないんだけどね。いずれにせよ、この新作『This Is Not The World』が、その商業的失敗作だったという前作はもちろん、一般的に評価の高いファーストアルバムよりも、音的にも楽曲的にも上だというのが、僕の評価だ。

マイスペースを見ると、05年のライヴを収録したオフィシャル・ブートレグが出ているようだ。とりあえずそれは買うとして(エコ月間?あれは8月の話です)、興味のある人はそこで聴ける5曲をとりあえずダーッと続けて聴いてみて。今日時点では、今作から冒頭の2曲(何故か1曲目と2曲目が逆順で)、ファーストから2曲(ケイト・ブッシュのカヴァー「Hounds Of Love」と、そのアルバムで僕が一番好きな「Decent Days And Nights」)、セカンドから1曲という、プチ・ベストアルバム風の選曲になってるよ。

さて、これぐらいにしとくかな。約束どおり短い記事になったね。え、あまり短くない?まあ、先週のよりは、ということで。
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2008年10月05日

yascd011 Go Easy, Step Lightly,

自画自賛を許してもらえるならば、去年の6月に作ったyascd010は自分でも中々の出来だったと思うし、コメント欄では「最高傑作」なんて有難いお言葉も頂戴した。あれ以降も何度か「次のyascdを」というコメントも頂いたのだが、知らず知らずのうちに前のよりもいいのを作ろうと自分の中でハードルが高くなっていたのかもしれない。

まあ、実際には、NZからの帰任にまつわるゴタゴタと、東京での新しい仕事と出張に追われて、ゆっくり選曲したりする余裕がなかったというのが実情なんだけどね。

思い起こせば、これまでのyascdって、どこかのコメント欄で話題が盛り上がったとか、コメンターさんにリクエストされたとか、誰かに聴かせることを念頭に置いて作ることが多かったんだよね。きっとそれも、モチベーションでありながら同時にプレッシャーになっていたのかも。

ちょっとそういう(半ば自己満足的な)モチベーション&プレッシャーから少し離れて、純粋に自分の楽しみのためだけのミックスCDでも作ってみようかなという気持ちになった。リハビリ的に。なので、今回のは、少なくとも普段コメントをくださるコメンターの方々のどなたの嗜好にも刺さらないだろうなと思っている。


さて本題。僕がちょっとしたクラッシュ(The Clash)のファンだというのはこのブログでも折に触れて書いてきた。そして、ちょっとマメなクラッシュのファンなら誰でも共通してやったことがあると思われるのが、ミック・ジョーンズ(Mick Jones)がリード・ヴォーカルをとる曲を集めたミックステープ作りだろう。

一般的にはパンクロックバンドとして知られるクラッシュだけど、思いのほか多数存在するミックのヴォーカル曲だけをピックアップしてみると、実は全然パンクっぽくなんてない。クラッシュがパンクでなくなったと言われる時期よりもずっと前から、はっきりとそれはわかる。

思想的にも音楽的にももっとパンク寄りだった(少なくとも当時の)ジョー・ストラマーに対して、単純に「ロックンロールが好き/格好いいギターが弾きたい」といった気持ちだけが見えていた人だった。そしてその気持ちは、後に彼がクラッシュを追い出される頃には、「ヒップホップってかっこいい/その時代で最先端の音楽を演りたい」という風に変化していった。

彼は全盛期のクラッシュの殆どの曲を作曲した(そして、ジョー・ストラマーがそれに詞をつけた)。パンクと呼ばれようがロックンロールと呼ばれようが、それらは最高に格好いい曲だった。スクイーズのクリス・ディフォードとグレン・ティルブルックが僕らの時代のレノン=マッカートニーだとしたら、ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズのコンビは、僕らの時代のジャガー=リチャーズだ。ただ、本当に残念なことに、ミックってえらく音痴なんだよね。なんであんな音程の不安定な人があんなに素晴らしい曲を書けるのかが、僕は昔から不思議でしょうがない。


前置きが長くなった。今度こそ本題に入ろう。ここに集めた20曲は、77年のクラッシュのファーストアルバムから、去年出た彼の現在のバンド、カーボン/シリコン(Carbon/Silicon)のアルバムまでの30年の歴史を、ほぼ年代順に並べたもの。年代順なんで簡単なんだけど、金曜の晩思いついて次の朝に作ったわりにはまともなミックスができた(と、またもや自画自賛)。


The Clash.jpg The Clash 『The Clash』
1.Protex Blue
2.Hate & War


記念すべきクラッシュのファーストアルバムから、でもあまり目立たない2曲を。「Protex Blue」なんて、アメリカ盤からは落とされてるぐらいだからね。まあ、当時イギリスでメジャーだったプロテックス社のコンドームの歌なんて、過激なパンクバンドのアルバムには不要と思ったのかも知れないけど。一方、“ラブ&ピース”の逆である「Hate & War」は、いかにもなパンクのスローガン。こういう曲を聴くとよくわかるけど、ミックとジョーの声って、砂糖と塩ぐらいテイストが違うのに、混ぜ合わせると化学反応を起こしたのかというほどいい味になるよね。


Pearl Harbour '79.jpg The Clash 『Pearl Harbour '79』
3.Gates Of The West
4.Jail Guitar Doors


これは僕にはとても思い出深いアルバム。最初にクラッシュを聴いたのがこのLPだった。これは、上のファーストアルバムのアメリカ盤(イギリス盤の曲目を大幅に変え、当時シングルでしか出ていなかった曲を大量に盛り込んだもの)に、ジャケット全体を覆う帯(?)を付けた日本盤。そのおまけについていたシングル盤「Gates Of The West / Groovy Times」が、僕の音楽人生を変えた。今でも僕にとってはクラッシュの全部の曲の中でも一番目と二番目に好きな曲だ。どっちが一番でどっちが二番かは迷うけど。

「Jail Guitar Doors」は、ファーストアルバムの後に出たシングル「Clash City Rockers」のB面曲。そのA面曲と一緒にこのアメリカ盤(と日本盤)に収められた。ここではミックが歌っているが、元々はジョーの曲で、彼がクラッシュに入る前に在籍していた101'ersの唯一のアルバムがCD化されたときにライヴ録音が収録されたというのは最早とりたててトリビアな話でもないだろう。


Super Black Market Clash.jpg The Clash 『Super Black Market Clash』
5.The Prisoner

一方こちらは「Clash City Rockers」の次に出たシングル「(White Man) In Hammersmith Palais」のB面曲。アメリカ盤ファーストには入らなかったので、後にアメリカでのレア曲ばかりを集めた『Black Market Clash』という10インチ盤に収められることになった。その10インチ盤のままの曲順のCDも存在するが、やがて拡大版のこの『Super Black Market Clash』に取って代わられた。僕はオリジナル版の地味な色合いが好きなんだけど、なにしろ茶色基調のそのジャケだとこのブログに載せるとカメレオンほど目立たないのでこっちを。


Give'em Enough Rope.jpg The Clash 『Give'em Enough Rope』
6.Stay Free

さっき、マメなクラッシュ・ファンはミック・ジョーンズがリード・ヴォーカルをとった曲を集めたミックステープを作るって書いたけど、(僕も含めて)そいつらは全員例外なく、この曲を何度も聴きたいがためにそんなことをしているはず。おそらく、ミック・ジョーンズが作った最高の一曲。実話を基にしたと言われる、彼の子供の頃からの友達との友情を描いた、歌詞も曲もちょっとじわっとくるような、僕らの時代のアンセム。


London Calling..jpg The Clash 『London Calling』
7.Lost In The Supermarket
8.Train In Vain
9.I'm Not Down


2年前のこの記事で「レガシー・エディション」というのを取り上げた、一般的にはファーストと並んでクラッシュの最高傑作と称される『London Calling』から3曲続けて。当時、クラッシュはパンクじゃなくなったとか裏切り者だとか一部で酷評されていたアルバムだったけど、彼ら自身がパンクというたがを外すことが出来たからこそ、これだけ幅の広い名曲を続けざまに生み出すことができたんだと思う。


Sandinista!.jpg The Clash 『Sandinista!』
10.Somebody Got Murdered

80年の3枚組LP『Sandinista!』には、ミックが当時の彼女、エレン・フォリーとデュエットしている「Hitsville U.K.」というシングル曲があるんだけど、ちっともヒットしなかったその曲(僕はそれほど嫌いではないんだけど)でなく、こちらを入れよう。6面、2時間半に及ぶごった煮のようなアルバム(僕は世間で酷評されるほど嫌いではないんだけど)においては、わりと典型的なクラッシュらしい曲といえる。

82年の『Combat Rock』には、「Should I Stay Or Should I Go』という、確かクラッシュの全シングルの中でも1〜2を争うほど売れたミックの曲があるんだけど、僕はその曲をクズだと思っているので、ここには入れない。クラッシュ時代はここまで。


Spirit Of St. Louis.jpg Ellen Foley 『Spirit Of St. Louis』
11.Torchlight

上に書いた、ミックの当時のガールフレンド、エレン・フォリーの81年のアルバム。クラッシュの4人とキーボードのミッキー・ギャラガー、ベースのノーマン・ワット=ロイ、ヴァイオリンのタイモン・ドッグという、『Sandinista!』期の拡大クラッシュ組が全員参加して、アルバム中半分が“ストラマー=ジョーンズ”作の曲で、おまけに「Produced by my boyfriend」などと歯の浮くようなクレジットが載っていた。

つき合って間もない彼女の名前でタトゥーを入れるような行為だね。それらのクレジットに釣られて否応無くこのアルバムを買わされるこっちの身にもなってほしいよ。


This Is Big Audio Dynamite.jpg B.A.D. 『This Is Big Audio Dynamite』
12.The Bottom Line (Def Jam Remix)
13.E=MC2 (Extended Remix)


クラッシュ脱退後の85年に出た、ミックの新グループ、ビッグ・オーディオ・ダイナマイト(Big Audio Dynamite、以下B.A.D.)のデビューアルバム。『Sandinista!』までの変遷を知っていたファンなら、同時期に出た抜け殻クラッシュの『Cut The Crap』よりも、クラッシュの次のアルバムはこうなったはずと思えるような出来だった。どちらのアルバムも、先の例で言うなら、塩だけとか砂糖だけで味付けしたようなコーラスラインにがっかりさせられたものだけど(特に歌が下手なミックの方)。

僕はこのアルバムをLPでしか持っていないので、CD-Rにまとめるために、リミックスアルバム『The Lost Treasure』からこの2曲を代わりに。どちらも元は『This Is B.A.D.』からの代表曲。


No.10, Upping St..jpg B.A.D. 『No.10, Upping St.』
14.V.Thirteen
15.Sightsee M.C!
16.Beyond The Pale


B.A.D.のファーストを優れたアルバムだと認めてはいながら、でもやっぱりクラッシュの幻影を追い続けていた未練がましいファンにとって、このセカンドアルバムにジョー・ストラマーが参加したというのは狂喜乱舞の出来事だった。世間的にはファーストよりも弱いと言われているこのアルバムから、ジョーが参加したこの3曲のどれも落としたくなかったんで、こういう選曲に。


The Globe.jpg B.A.D.II 『The Globe』
17.Rush

あらゆる種類の音楽を聴くけれど、ヒップホップだけはちょっと、と思っている僕にとっては、80年代後半以降のミックの趣味はことごとく合わなさ過ぎた。コンスタントに出ていたアルバムは殆ど買わなくなったし、ずっと後になってから、安くなっていた(しかも限定でライヴ盤との2枚組だった)これを買ってみたんだけど、やっぱりあんまり好きにはなれなかったな。この時期、B.A.D.はミック以外のメンバー総入れ替えで、B.A.D.IIと改名。


Higher Power.jpg Big Audio 『Higher Power』
18.Looking For A Song

ミックがやや歌モノに回帰したと何かで読んだこのアルバムは、94年に出た当時に買ってみた。アルバム全体は何度も通して聴きたい感じではなかったけど、シングルカットされたこの曲は好き。この当時、またもグループ名をBig Audioに改名。先の『The Globe』のところにリンクを貼った、B.A.D.の代表作が5枚セットになって廉価で今年再発されたものには、このアルバムは選ばれていないね。ミック・ジョーンズの音楽が一番低い評価を受けていた時期のアルバム。もう再発されることもないんじゃないかな(と、それだけの理由で中古屋には売れない僕)。


Good Morning Britain.jpg Aztec Camera and Mick Jones 『Good Morning Britain』
19.Good Morning Britain (Live)

ちょっと数年遡って、90年に突然アズテック・キャメラ&ミック・ジョーンズ名義で発表されたこのシングルから。表題曲は今ではアズテック・キャメラ(Aztec Camera)のベスト盤に収録されて気軽に聴けるようになったけど、カップリングされていたこのライヴヴァージョンはちょっとレアかも。

アズテック・キャメラといえば、名曲「Walk Out To Winter」での「ストラマーのポスターが壁から落ちて、もうそこには何も残っていない」という歌詞でしかクラッシュとの繋がりを想像できなかったので(そしてその歌詞から、もしかしたらロディー・フレイムはクラッシュに対してネガティヴな印象を持っているのかもとも思っていたので)、このコラボ自体、それから「僕の友達を紹介するよ。ミック・ジョーンズ」というロディーのMCは、両方のファンである僕にとってはとても嬉しいものだった。


The Last Post.jpg Carbon/Silicon 『The Last Post』
20.The News

そして、尻すぼみ的なビッグ・オーディオの解散から10年弱、ミックはクラッシュ結成前に在籍していたロンドンSSの盟友、トニー・ジェイムス(Tony James)と共に、カーボン/シリコンを結成。自分達のサイトで何枚ものデジタルアルバムを発表した後、昨年ようやくCDとして発売されたのがこのアルバム。このグループ、元クラッシュ〜B.A.D.のミック、元ジェネレーションX〜ジグ・ジグ・スパトニックのトニー、元B.A.D.のべーシスト、レオ・ウィリアムズ、元リーフのドラマー、ドミニク・グリーンスミスという、かなり地味ながらちょっとしたパンク〜ニューウェーヴのスーパーバンドだ。

僕としては、ミックがまたギター満載のロックに戻ってきてくれたのがなによりも嬉しい。すっかり頭は寂しくなってしまったけど、ギターを構えて歌う姿はクラッシュ時代から何も変わっちゃいない。この、単音のフレーズとリフのタイミングのズレが妙に心地良い曲も、いかにもミック作といった感じ。




久し振りのこの企画、このブログとしても久々の超長文になってしまったね。もう誰も読んでいないかもしれないけど(あるいは、冒頭とここしか読んでいない人もいるだろうけど)、ちゃんとリハビリとして機能するかな。
posted by . at 13:41| Comment(13) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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