2008年09月21日

骨太ライヴ - Bob Mould

今年の頭に入手して以来、もう半年もの間、何度も記事にしようとしては他の話題に先を越され続けている、ボブ・モウルドの『District Line』というアルバムがある。この週末こそそれについて書こうかなと思ったんだけど、今日は珍しく2時間ほどぽかんと時間が空いたので、これも数ヶ月前に買ったものの、時間がなくて封さえ開けていなかったこのDVDを観ることにした。

Circle Of Friends.jpg Bob Mould 『Circle Of Friends』

05年10月、ワシントンDCにある9:30クラブでのライヴを丸ごと収録したもの。冒頭に10分ほどのメンバーのインタビューがあって、あまりよく知らないメンバーそれぞれの人柄なんかがちょっと窺える。この部分は別チャプターになってるから、飛ばそうと思えばすぐコンサートのチャプターから観ることもできる。こういうインタビューとかって、普通は特別メニューとして収録されていることが多いけど、そういうのはなかなか億劫でわざわざ観ることが少ないんだよね。その点これはいい作り方だと思うよ。

さて内容。黒基調のステージに、メンバー4人が思い思いの黒いシャツ。ボブのメタリックブルーのストラトキャスター、ジェイソン・ナーダシー(Jason Narducy)のメタリックレッドのプレジション・ベース、リチャード・モレル(Richard Morel)の真っ赤なキーボード、それぞれの色がよく映える。ヴィジュアルにはこだわるボブらしい、シンプルだけどくっきりとした印象が目に残るいいステージ。

綺麗なライティングのステージをシンプルに撮るだけで、こんなに優れたライヴ・ヴィデオになるという見本のような作品。こないだガチャガチャした演出のELPのヴィデオを観たばかりなので、特にそう思える。白基調のステージをシンプルに撮っただけのトーキング・ヘッズの『Stop Making Sense』は、ライヴ・ヴィデオの名作として有名だけど、この作品はそれに匹敵すると僕は思う。性急過ぎないシーンの切り替えも絶妙で、トータル2時間弱の何の変哲もない演奏シーンを観ていても全然飽きない。

スキンヘッドに無精髭がすっかり定着したボブ。僕は彼の動く姿を観るのはこれが初めてなんだけど、こんな大男だとは思わなかった。その彼がぶっとい腕でもってザクザクと骨太な音でかき鳴らされる轟音ギター。彼の曲を大いに特徴付けている、爆音の中に埋もれた煌くようなメロディーを奏でるキーボード。ブリブリと小気味よく鳴るベースに、これはよほど音のいい会場に違いないというのが聴いて取れる、滅茶苦茶タイトなドラム。この、ライヴCDにしても惜しくないと思える格好いい音をプロデュースしているのは、最新作『District Line』でもボブをサポートしているドラムスのブレンダン・キャンティー(Brendan Canty)。あ、彼はフガジのドラマーだったんだね。

05年のライヴだから、当然その年に出た『Body Of Song』からの曲が中心なんだけど、出だしからいきなりシュガー(Sugar)時代の名作『Copper Blue』のオープニング三曲「The Act We Act」、「A Good Idea」、「Changes」三連発。これは、しびれるね。

「Changes」が終わったときに「ハロー、サンキュー」と言った後は、約1時間のライヴ本編が終わるときにもう一回「サンキュー」と言うまで、一切MCなし。ほとんど全ての曲をメドレーのように演奏している。すごい体力だね。前の曲の終わりのフィードバックノイズがまだ鳴り響いているうちにドカドカドカドカと斬りこんでくるドラムの格好いいこと。タム、フロアタム、スネア、バスドラそれぞれ1個ずつ、それにシンバル類だけという極めてシンプルなドラムキットなのに、とにかく手数が多くて乗れる。このドラマーいいねえ。あとでフガジのCDも聴き直してみよう。

途中にハスカー・ドゥ(Husker Du)時代の曲もふんだんに挟み、本編ラストはまた『Copper Blue』からの「If I Can't Change Your Mind」。同じく『Copper Blue』からの「Helpless」で始まった二度のアンコールは、ハスカー・ドゥの「Makes No Sense At All」などの後、またしても『Copper Blue』からの「Man On The Moon」で締め。よほどあのアルバムが好きなんだね。もともとハスカー・ドゥはかじる程度にしか聴いていなかった僕がボブ・モウルドのことを再認識するきっかけとなったアルバムだから、僕も大好きなんだけどね。

途中何曲かスローな曲が入るが、基本的にはハイスピードの曲が立て続けに繰り出される。テレビ画面を観ているだけのこちらも膝頭を両手でバシバシ叩きながら乗りまくっているのに、何故か観客席はちょっとおとなしめ。もちろん皆揺れてるんだけど、普通この演奏を目の前で観たら大モッシュ大会だろうに。と思っていたら、途中ちらっと、陶酔しきった表情の、ハスカー・ドゥ世代と思しき女性が映る。そうか、皆かれこれ四半世紀も彼のことを聴いてきているんだね。それじゃモッシュは無理か。

それでふと思ったんだけど、80年代からのハスカー・ドゥのファン、90年代からのシュガーのファン以外に、シュガー解散後もコンスタントにアルバムを出し続けている彼のことを追いかけているファンはいるんだろうか。この人って、今はどういう位置づけなんだろうね。

僕にとっては、(実力派の)7番打者って感じ。4番打者の大砲ブルース・スプリングスティーンとか、3番打者のチャンスメーカー、グレン・ティルブルックとかみたいにいつも僕の脳内で目立っているわけじゃないけど、期待していない下位打線なのに忘れた頃にシブいヒットで繋いでくれるというね(現実世界では残念ながらヒット曲はないけれど)。名脇役好きの僕にとっては、その位置は結構重要かも。今日みたいに、ちょっとしたきっかけで一回聴いてしまうと、何枚も続けて彼のアルバムを聴いてしまう羽目になる。今このPCの両脇に彼の18枚のCDが山のように積み上げられていて、さっきから順番にプレイヤーに乗っているよ。そういう、中毒症状を引き起こさせられる人。

ニルヴァーナとも違う、ジーザス&メリーチェインとも違う、徹底した、でも暑苦しくない轟音と、ベトベトにならない甘さのメロディーの融合。ズブロッカをストレートでやるときに鼻にクンと来る甘い香りを思わせる。体内に摂り込んだときに腹にズシンと来るところもね。あと、誰も指摘してないと思うけど、この人の声質って、ポール・ウェラー激似だと思う。

先述の本編ラスト「If I Can't Change Your Mind」演奏中に降ってくる銀色の紙吹雪が、このシンプルなステージにあって唯一と言っていいほどの演出。上にも載せたDVDジャケのシーンがそれなんだけど、まるで雪の中で演奏しているような、一種幻想的なシーン。骨太な演奏に相まった、きりりと男前な出来のこのヴィデオを象徴している。

これは繰り返しの視聴に耐えるヴィデオだと思う。観ていると、この人のコンサートに無性に行きたくなってくるよ。日本盤は出ていないけど、僕の買ったUS盤も、リージョン0のNTSC。普通の日本のDVDプレイヤーで観られるはず。

ありそうで出ていない、ハスカー・ドゥからシュガーを経てソロに至る彼のキャリアを総括するようなベスト盤を、yascdみたいな形で作ってみようかなと思っていたこともあったけど、この“ボブ・モウルド総集編”みたいなライヴ・ヴィデオは、その役割を果たしているかも。これ読んでボブ・モウルドって聴いてみたいなと思ってくれるような奇特な人がいるなら、このDVDはかなりお薦め。2000円ちょっとで買えるみたいだし。

Copper Blue.jpg聴いてはみたいけどDVDはちょっとなあ、と思う人は、さっきから何度も名前を出している彼の92年のシュガー名義のアルバム『Copper Blue』から入ってみるのもいいかもしれない。基本的に過去の名盤みたいなのは紹介しないことにしている僕のブログだけど、そんなどうでもいいルールなんて放っておいていいぐらい格好いいアルバムだよ。リンクしたアマゾンでもそんなに高くはないけど、○ックオフとかの適当な中古屋で探せば、うまくいけば相当こなれた値段で見つかると思う。僕も何度かリアル・グルーヴィーの捨て値コーナーで見かけて、そのたびに(もう持ってるのに)手を伸ばしそうになったものだ。

何度も書くけど、こんなに上出来なヴィデオを観てたら、ほんとにこの場に居合わせたくなるよ。一時は難聴のためにもうコンサートはやらないなんて噂も出ていた彼だけど、まだライヴ活動は続けてるみたいだね。よかった。生で観たいなあ。日本に来てくれないかなあ。
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2008年09月17日

追悼 リック・ライト

ピンク・フロイド創設メンバーのうち、二人目が亡くなってしまった。

Richard Wright.jpg


最初期のシド・バレット、シドが離脱してからのロジャー・ウォーターズ、ロジャーが脱退してからのデイヴィッド・ギルモア。良きにつけ悪しきにつけ、ピンク・フロイドには常に強いエゴを持ったリーダーが存在し、それぞれがリーダーシップを執っていた時期には、それぞれの個性が強く出た音楽を創っていた。

では、創設メンバーのうち、残る二人は、単なる“The Other Two”だったのか? うーん、ニック・メイスンは確かにその程度の位置づけだったかもしれない。実は彼こそが、ピンク・フロイドというグループの最初期から最終期まで続けて在籍した唯一のメンバーなのだが、申し訳ないが正直言って僕はそれが彼が他所に行ってもそんなにつぶしがきかなかったからではないかと思っている。

残る一人、キーボーディストのリチャード・ライト(Richard Wright)が、今日の記事の主人公。創設メンバーでありながら、アルバム『The Wall』直後、時期的にはロジャー・ウォーターズよりも先に、グループを脱退した。その後、ロジャー脱退後にゲストという形で参加し、やがて正式メンバーとして再加入。まあ、80年代以降のピンク・フロイドの人事面でのゴタゴタについては、書ききれないほどのゴシップが存在するから、こんな経歴はどうでもいいのかもしれないけど。

僕にとって彼が印象深いのは、キーボーディストとしての腕前もさることながら、(彼らがビート・ポップ・バンドであった)初期に残したいくつかの名曲。セカンド・アルバム『A Sauserful Of Secrets』収録の「Remember A Day」、シングル盤「Apples And Oranges」のB面になる「Paintbox」。どちらも、彼以外には作りえない、独特の物悲しいメロディーと不思議な雰囲気を持った佳曲だ。初期のコンピレーション・アルバム『Relics』には、その2曲が続けて収録されている。

Relics.JPG Pink Floyd 『Relics』

ロジャー・ウォーターズを含めたピンク・フロイドの再結成なんてものにはもはやいささかの期待も持っていないけれど、もうこれでいよいよ再結成はなくなったんだなと思うと、やっぱりちょっと寂しい気持ちになるね。

それにしても、このグループのメンバー、どういうわけかハンサムな順に亡くなっていくね。次は誰だろう。というか、もうハンサムと呼べるメンバーは誰一人残っていないよ。残りのメンバーは永久に生き続けるのかな。
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2008年09月15日

黒猫ジャケに夢中 - Akeboshi

Akeboshi.jpg Akeboshi 『Akeboshi』

ガツンときた。

知ってる人には何を今さらなのかもしれないけど、映画「ぐるりのこと」の主題歌を歌っている人がいいよと友達に教えられ、中古屋で見つけたこの3年前のアルバムを聴いて、まずオープニングのピアノの音に打たれた。

ティン・ホイッスルとフィドルの物悲しげな音色が、否応なくケルト・ミュージックを想起させる。ブラシとリムショットを効果的に使った、乾いたドラムの音。柔らかなアコースティック・サウンドと朴訥とした声に、ほんの少しだけ隠し味のように使われたプログラミング。5/8なんていう、複雑なのに気持ちいいリズム。不思議と懐かしい気持ちにさせられるメロディー。

僕がそれを最初に聴いたときの状況も多分に影響していたのかもしれない。先月、短い休暇を取って、高速バスに乗って旅に出たときのことだった。見渡す限りの緑と、ゆっくりと沈む夕陽をぼーっと見ながらこれを聴いていたら、悲しいわけでも感動したわけでもないのに、涙が出そうになった。

なんていうんだろう。子供の頃から胸の奥の方に持っていた敏感な気持ちのかたまりみたいな部分に、大人になるにつれて少しずつ蓄積してしまっていた澱を、栗の渋皮をむくみたいに丁寧に取り除いてもらっているような気持ちにされたんだ。

子供といえば、この1曲目「Wind」は、アニメ番組「NARUTO」のエンディングテーマに使われたんだってね。6年も前の話なのか。その頃マレーシアに住んでいた僕は、近所の日本人の子供達がその番組のことを話していたのは知ってたけど、一緒にビデオを見せてもらっておくんだったな。それにしても、こんな素敵な曲を毎週テレビで聴いて育つ今の子供がうらやましくなるよ。

インディーズ時代に出した3枚のEPからの曲と当時の新曲を再編集した13曲。13曲目の後に収録されたシークレットトラックが、もろにケルト風味のインストゥルメンタル。これがまた、しっとりと滲みる。


Roundabout.jpg Akeboshi 『Roundabout』

あまりに気に入ってしまったので、件の映画の主題歌が入った新しいアルバムもすぐ欲しくなった。6月に発売された初回限定のDVD付がまだなくならないうちに。

よく似たジャケのこちらは、これまでに出たシングルとアルバムからの曲に、上に書いたアルバムからの数曲のライヴ録音を併せて収録した編集アルバム。付属のDVDには、5曲のPVと、去年出たアルバム『Meet Along The Way』作成時のドキュメンタリー・フィルムが収録されている。

これもいいね。メジャー初となったシングル「Rusty Lance」もまた7/8という小気味のいいリズムの曲だし、他の曲とは明らかに世界が違う歌詞の「Yellow Moon」は、井上揚水との共作だった。淡々とした物語が進んでいくような「Perua」もいい(これが映画の主題歌)。

ドキュメンタリー・フィルム「Meet Along The Way」は、北イングランドとアイルランドを旅しながら、途中のパブとかで出合った地元のミュージシャンたちにその場で録音に参加してもらっていく様子を綴ったもの。長すぎない編集が観ていて飽きないし、素晴らしい景色と田舎町の様子が存分に楽しめる。こんなの観てしまったら、そのアルバムも手に入れないわけにはいかないよ。エコ月間は何処へ?(最近こんな終わり方ばっかり)。
posted by . at 17:14| Comment(12) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月13日

鉄壁PowerPop - Matthew Sweet

Sunshine Lies.jpg Matthew Sweet 『Sunshine Lies』

およそアーティストとかクリエイターとか呼ばれる人たちにとって、ワンパターンとかマンネリとかいう言葉は、疫病のように遠ざけておきたいものだろう。夢のようなメロディーを次から次へと紡ぎだしていたトッド・ラングレンが、「僕のインスピレーションが逃げて行ってしまう」と自虐的に(でもそれは綺麗なメロディーに乗せて)歌い、そしてやがてかつてのような曲が書けなくなってしまったことを思うにつけ、あの人はどんな気持ちであの曲を書いたんだろうと、ファンとしてはどうしようもなく切ない気持ちになってしまったものだ。

その一方で、ワンパターンであることが負の要素になっていないアーティストがいることもまた事実。しばらく前のニルス・ロフグレンの記事とそのコメント欄に書いたように(別にニルスがそうだというのでなく)、定型パターンみたいな曲を作り続けることが何ら問題になっていないある種のアーティストたちがいる。

その記事に出てきたニール・ヤングや、コメント欄で名前を挙げたサザンオールスターズとか、あとはスピッツなんかもそうだろう。別に吉本新喜劇みたいに、彼らの書く似た曲が伝統芸能的に受け入れられているというわけではない。単に、どうやってもこんな風に書けてしまうというその人たちのクセみたいなものが、彼らのファンの心の琴線みたいなところに、半自動的に触れるようになっているんだろう。

マシュー・スウィートの、このソロ名義としては4年ぶりとなるニュー・アルバム『Sunshine Lies』に針を落とした瞬間、僕の頭に浮かんだ考えはそういうものだった。何年ぶりであろうと、間にソーンズ(The Thorns)やスザンナ・ホフス(Suzanna Hoffs)とのデュエット・アルバムを何枚挟んでいようと、この人の作りだす曲は、何も変わらない。そして、アルバム最初の一音にスイッチを入れられた僕の心の琴線は、最終曲がフェードアウトするまで、わくわくと震え続けたままでいる。

なにしろ、アルバム冒頭の曲からして「Time Machine」という、93年のアルバム『Altered Beast』収録の「Time Capsule」を髣髴とさせるタイトルだし。のたうち回る大蛇みたいに絡み合う二本の野太いギターとタイトなドラム、胸の奥をキリキリと締め付けるようなスティール・ギターに、マシュー本人のあの声による多重録音コーラス。鉄壁のパワーポップ。いつものマシュー・スウィートのアルバムだ。

バックを支えているのも、もう20年も前から彼とつかず離れず行動を共にしているいつもの面々。元テレヴィジョンのギタリスト、リチャード・ロイド(Richard Lloyd)。元リチャード・ヘル&ヴォイドイズのギタリスト、アイヴァン・ジュリアン(Ivan Julian)。ヴェルヴェット・クラッシュのドラマー、リック・メンク(Rick Menck)。名スティール・ギタリスト、グレッグ・リーズ(Greg Leisz)。そして前作からスウィート・ファミリーに加わった、スザンナ・ホフスがアルバムのタイトル曲でマシューとデュエットしている。

さっき“針を落とした”って書いたところで気づいたと思うけど、僕が買ったのはアナログ盤。CDに収録されている13曲がA面〜C面に、そしてアナログ盤のみのボーナス・トラック4曲がD面に収められている。最近流行のMP3ダウンロード用のクーポンでなく、13曲入りのCDがジャケット内に封入されているというお得版。

これは嬉しいよね。ボートラがレコード・プレイヤーでしか聴けないという欠点はあるものの、オリジナルCDが付いてくるってのは、やっぱりダウンロード音源とは違った実感がある。綺麗なマクロ写真のジャケにはアルバムタイトルと曲名以外の文字はほとんどなく、レコードが収められた内袋に全曲の歌詞とクレジットが載っている。見開きジャケの内側の、30cm x 60cmのトンボの顔のクローズアップは、見る人によってはちょっと不気味かも。

こんな豪華な仕様があるのに、わざわざCDだけのヴァージョンを買う人がいるのか?上にリンクを張ったアマゾンだとこのアナログ盤(LP+CD)はCDだけのヴァージョンよりも1000円も高いけど、他のサイトに行けば、ほんの数百円の差だよ。なので、アナログ盤を聴ける環境にある人(及びマサさん)には、アナログ盤を入手することをお薦めする。

昔から何も変わらない彼のアルバムだけど、ひとつ変わったことがある。99年の名作『In Reverse』の裏ジャケでちらっと上半分だけ素顔を見せて以来、アルバムジャケットの表にも裏にも彼のポートレイトが載ることがなくなってしまったことだ。マシューのことを知っている人なら想像はつくだろうけど、彼の風貌の変化がその理由だろう。なにしろ、86年のソロ・デビューアルバム『Inside』でのこの好青年が、
Inside.jpg

06年の前作『Under The Covers Vol.1』でのスザンナと一緒のプロモ写真ではこうだからね…
Sweet Hoffs.jpg

書く曲が変わらないとかよりも、これだけ太っても声が全然変わらないってのが、ある意味凄いと思う。
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2008年09月08日

Faust live in Tokyo

ファウストが11年ぶりに日本に来るというので、それは観ておかなければと思って急いでチケットを押さえたのに、なんだか信じられないような大きな数字の整理番号。いくつかのルートで売り出されてるチケットは、それぞれ割り当て番号というのがあるんだね。どこで買わなければいけないかを知っておくのも重要、ということを覚えた日本のコンサート事情。

僕とドイツ音楽の最初の邂逅。ホルガー・シューカイ「Persian Love」 in スネークマンショー。時期的にそれは即座にジャー・ウォブル from パブリック・イメージ・リミテッドとくっついたり。それよりも少し前に、プログレッシヴ・ロック界隈をいびつに進んでいった挙句、出てくる名前のドイツ人濃度が徐々に高まっていったり。ひねくれポップ職人としてのデイヴ・スチュアート⇒所謂カンタベリー・ミュージック⇒スラップ・ハッピー⇒ファウスト。とか。

そういう、(結構な量のレコードやCDは持ってはいるものの)決して硬派のジャーマン・ロック・ファンというわけではない僕のブログだということをわかったうえで読んでもらえれば(と、ワード検索でこの記事のタイトルが引っ掛かった人に向けての前置きを少々)。

リキッドルームがまだ新宿にあった97年の初来日の模様をあちこちのサイトで読んだ。ステージ上でガラス板を叩き割って破片が客席まで飛び散っただとか、ハンマーでテレビを叩き壊したとか、バルサン状の煙が焚かれて目も開けられず呼吸困難に陥り、そのまま終演、とか。

なので、大きな数字の整理番号でもいいか。と、僕にしては腰の引けた客席(席はないけど)のほぼ中央に落ち着き、開場から開演までの1時間、同じ音がループで延々かかっているとしか思えないアンビエント風の音楽を聞きながら待つ。ステージ上、ドラムキットの周りには鉄パイプで組んだ囲いとそこにぶらさげられた鉄板2枚。コンクリートミキサー。右側にはなにやら白い壁。

1曲目、一瞬「It's A Rainy Day, Sunshine Girl」なのかな?と思った延々と続く反復系のインスト曲。それが終わったときに、ベース&ヴォーカルのジャン=エルヴェ・プロン(Jean-Herv Peron)が「今のは新曲」と紹介。その時点で今日は曲目を憶えるのを諦める。

会場入り口に貼ってあった「本日のコンサート冒頭は録音され、ステージ上でメンバーが即興で描いたジャケットを添えて、150枚限定のCD-Rとして終演後に販売されます」とのお知らせのとおり、続く2曲目で、唯一の女性メンバー、ジェラルディン・スウェイン(Geraldine Swayne)が右側の白い壁に絵を描き始める。BGMとして残りのメンバーが奏でるのは、ぼよーんうよーん、どたどたどた、といった超アブストラクトな曲。まあ、こちらはその場で絵がどんどん完成していくのを観ているから、別に退屈はしないけどね。

完成した絵(白いCDジャケが150枚分)を業務用みたいな馬鹿でかいドライヤーで乾かしながら下げると、その下にもまた白っぽい壁が。あれは木かな?発泡スチロールかな?

ドラムのザッピ・ディアマイアー(Zappi Diermaier)がサンダー(丸いヤスリのついた機械ね)でドラムキットの上にぶらさがってる鉄板から火花をバチバチ飛ばしたり。僕のすぐ近くにいた二人組の男の子がしきりに「すげー! すげー! こいつらやべーよ!」とかうるさい。いや別に鉄板から火花出すぐらいでそんなやべくないから。

今度はプロンがチェーンソーを持ち出してきて、木だか発泡スチロールだかでできた白い壁に切り込みを入れ始める。どうやら「混沌」と書きたかったみたいだけど、いきなり「混」の字の右側の縦棒を下まで切り込んだもんだから、なんだかよくわからない字に。でも、暗いステージの上、ニセ混沌から漏れ出てくる光の筋がとてもきれい。

冒頭の曲みたいな反復系のズンズン乗れる曲と、「あれは一体何をやっているんだろう」的なシアトリカルな曲が順不同に演奏され、うーん、ちょっとこれはツライなと思い始めた矢先、日本語を話す外国人客が「みんなもっと盛り上がろうよ!7000円も払ってるんだから!」と煽りはじめる。最初は笑いながら聞いてたんだけど、曲が終わるたびにそいつが大声でしゃべってるもんだから、たいがいうんざりしてきたところに、プロンが「ちょっと黙れ」と。

で、そいつを黙らせて始めた曲が、セカンドアルバム『So Far』からの「I've Got My Car And My TV」。おぉ、やっと認識できる曲がでてきたぞ。このあたりから客席も徐々に盛り上がり始める。別に7000円の元を取ろうと思ってのことじゃないだろうけど。セカンドからは「Mamie Is Blue」も演ったね。本編ラストだったかな?その前ぐらいだったかな。

一旦引っ込んで、アンコールでまず出てきたのはプロンとザッピの二人。アコースティック曲を一曲演奏したところで、他のメンバーも登場。最後は楽しい「Krautrock」。ここでようやくコンクリートミキサーを使う。ビールの缶をいくつか投げ込んで、ほんとはもっとガラガラと音を立てたかったんだろうけど、あいにく会場で販売されていたビールはプラスチックのコップ入り。観客からはちっとも空き缶が集まらず、投げ入れられたのはメンバーがステージで飲んでいた数個のみ。…ミキサーが回る音しか聴こえないよ。

プロンを筆頭に、終始メンバーがなごやかな表情だったのが印象的だった。ガラスの破片だのバルサンだのと身構えていたことを、終わった頃にはすっかり忘れていたよ。中盤まで「ちょっとこれはどうなのかな。やっぱりこの人たちレコードの方がいいかも」なんて思っていたこともすっかり忘れて。強いて言えば、僕の目前に入れ替わり立ち代り来て気持ちよさそうに踊っていたお兄ちゃん達が、よりによってどいつもこいつも臭かったのがちょっとキツかった。7000円も払ったのに(笑)

さて終演後、階上のCD-R売り場に並ぶ長蛇の列。「世界中でここでしか販売していない超レアCD!」とかいって煽られてはいるものの、あの抽象画の1/150の部分をもらってもなあ、とちょっと引き気味の気分で並んでいたものの、レジ前まで来たら当然のごとく財布から3000円を出して購入。僕のは48番。大きな絵のどこの部分だかよくわからないけど。

cd-r front.GIF cd-r back.GIF

そしてここでも終始ニコニコとなごやかなメンバー全員にサインをもらった。そのうえザッピからは、頼んでもいないのに(笑)マジックの試し書きみたいなサインも追加でもらった。

Zappi.gif

家に帰って、コンサート冒頭ってどの曲まで入ってるんだろうとわくわくしながらそのCD-Rをプレイヤーに入れてみた。14分で5トラック?だって1曲目だけでも10分近く演ってたのに?と思いながら聴いてみたら、トラック分けなど完全に無視で、2曲目の「ぼよーんうよーん、どたどたどた」だけが14分間…

まあでも、よくある(どこか別の会場で撮った)写真しか載ってないようなペラペラのコンサートプログラムに何千円も払うことに比べたら、まがりなりにもその日の音が入ってるんだし、サインももらったし、今日の記念品だと思えばいいか。


“記念品”というキーワードで連想するのも気が引けるけれど、03年に紙ジャケCDで復刻された、彼らの最初の2枚のアルバムは、まさにそのフォーマットで持っていることに価値がある、超優れモノだった。どちらも相当風変わりな風体でリリースされたオリジナルLPを、素材も含めてミニチュアサイズで忠実に再現。こういうことができるのが、日本のレコード会社のすごいところ。

今回のライヴではここからは一曲も演らなかった、ファーストアルバム(の、LPとCDの親子写真)がこれ。無色透明ビニール製のジャケットに直接印刷された握り拳(Faust)のレントゲン写真と、同じく無色透明レコード盤。CD盤だけは残念ながら透明というわけにはいかないけど(音出なくなるからね)、それ以外はそっくり同じ。となりに並んでるのに遠近感を感じる、持っていること自体が嬉しくなる仕様のアルバム。

Faust L & S.JPG

ジャケットの外側も内側も、CD盤も全部真っ黒(CDの盤面には黒地にトーン違いの黒字でタイトルが印刷されている)、オリジナルのLPにも付いていた曲ごとのイメージ画が一枚一枚付属しているセカンドアルバムも、紙ジャケCDは持ってるけど、こうして並んだファーストアルバムを見ていると、LPも欲しくなってしまうよね(エコ月間は何処へ?)。
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2008年09月06日

待望! - Glenn Tilbrook / Squeeze

またおととしの話になるけど、この記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事でさんざん僕が騒いでいたことを憶えている人もいるだろう。その年僕のブログで最も多くの回数取り上げられることになり、彼の一連のコンサートが僕にとって06年の最大の音楽的なイベントとなった、あのグレン・ティルブルックがまた日本にやってくることになった。

日程と公演地は、

  1月10日(土)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月11日(日)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月12日(祝)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月13日(火)横浜 Thumbs Up
  1月15日(木)名古屋 TOKUZO
  1月16日(金)京都 Irish Pub Gnome
  1月17日(土)大阪 Shangri - La

前回は東京だけでの5回公演だったが、今回はなんと横浜、名古屋、京都、大阪も含めた全7回公演。falsoさんも今度は行けるだろうか。

詳細はこちら。今日の午前0時に発売開始になったばかりだから、今ならまだわりと早めの整理番号がゲットできるかも。僕も既に複数日分予約したから、これを読んで行くことにした人とは、どこかの会場で会えるかもね。

彼のライヴがどんなに楽しくて、毎日違う内容だからファンなら何回でも通う価値のあるものだというのは、去年のライヴ評に書いたとおり。

今年の初頭だかに出るという話だった新しいソロアルバムはいまだに完成していないようだから、マテリアル的には2年前から大きな変化はないかもしれないけど、彼自身にはこの2年間に大きな変化があったはず。おそらくソロアルバムのリリースが遅れていることもこれが原因だと思われる、去年7月のスクイーズの再結成だ。

もともと彼がここ数年ずっとソロで演っている理由も、長年のチームメイトだったクリス・ディフォード(Chris Difford)との関係がちょっとぎくしゃくしたからだったということらしいけど、一昨年の東京公演の際にはその場でクリスに電話をするなど、「なんだ、仲いいんじゃない」と思わせてくれる展開もあった。それが、その一年後には、ほぼ10年ぶりとなる再結成につながった。

再結成とはいえ、彼ら二人以外には重要メンバーは戻ってきていないんだけど、まあとにかく僕たちファンにとっては、グレンとクリスが一緒に何かを始めてくれたということが一番の大きなニュース。話によると、新しいスタジオ盤も作り始めていて、来年のリリースになるらしい(グレンのソロは一体いつになるんだろう)。

当初その再結成は、スクイーズの旧譜の再発を記念しての、UKとアメリカだけでの単発の企画だったと思ったんだけど、スクイーズのホームページを見ると、今月になってもまだツアーが続いているね。これを年内ぐらいまで続けてから解散し、1月にはソロで来日、ということなんだろうか。そういうことなら、いっそクリスにも一緒に来日してほしかったとつい欲が出てしまうんだけど…



数年前からのスクイーズの旧譜再発プロジェクトは、6月8日の記事で取り上げた名盤『Argybargy』期のライヴ録音とか、発掘音源が次から次へと出てくるという嬉しい展開になっている。そんな発掘音源がまた最近ひとつ発売されたので、早速入手した。エコ月間だけど、買わないといけないものは買う。

The Complete BBC Sessions.jpg Squeeze 『The Complete BBC Sessions』

メジャー・デビュー前の77年8月から、『Some Fantastic Place』発表後の94年まで、17年間、計8回にわたるBBCでのスタジオ・ライヴ録音の集大成だ。2枚組で全29曲というかなりのボリューム(「Pulling Mussels (From The Shell)」と「Labelled With Love」がメドレーで一曲としてカウントされているので、実際には30曲ある)。

前半には、ファーストアルバム以前のEPからの曲や、当時の未発表曲も何曲か入っており、きっと当時の彼らのコンサートはこんな曲をこんな順番で演奏してたんだろうな、と思わせてくれる。

中盤(89年)は、アコースティック・ギターだけでグレンとクリスが歌う『Frank』期からと過去の名曲。おととしのグレンの東京公演と同じスタイルだけど、やっぱりクリスの声が入ると、長年のファンとしてはちょっと感傷的になるね。

後半(2枚目)は短いスパン(92年〜94年)に4回の録音だから、結構同じ曲がダブって収録されている。「Some Fantastic Place」と「Third Rail」が2回ずつ、「Tempted」が3回。それぞれアコースティックとバンド形式とか、「Tempted」はオリジナル通りポール・キャラック(Paul Carrack)が歌ってるヴァージョンとグレンが歌ってるのとか、微妙に違うアレンジが楽しめる(そういうのを楽しめる人は、ってことだけどね)。

他には、国営放送で放送禁止用語規制が厳しかったのか、ファーストアルバム1曲目「Sex Master」はサビのところの歌詞を“Evil Master”と変えて歌っているとか、

セカンドアルバムではクリスがリード・ヴォーカルをとっている「The Knack」を、そのアルバムの発売前になるこの78年の録音ではグレンが歌っていて、アルバム収録までの間に一体何があったんだろうと想像させてくれたりとか、

アルバム『Frank』が出た直後のはずの89年10月録音の「Melody Motel」(『Frank』収録曲)を、オリジナルとは全然違う歌メロで歌っていてびっくりしたとか、

さっき書いたヴァージョン違い以外にも、オリジナルを聴き込んでいる人ならより深く掘り下げて楽しめる内容になっているよ。ライナーも、マニアックな情報をきっちり網羅しながらも読みやすい(かつ感情のこもった)文章で好感が持てるしね。欲を言えば、『Argybargy』からの曲が「Pulling Mussels」一曲しか入っていないことか。

彼らがBBCに出演した記録を全部は知らないんだけど、録音時期が78年から82年までぽっかり飛んでいて、全盛期の『Cool For Cats』〜『Argybargy』〜『East Side Story』期にBBCに全く出ていないとも思えないので、“The Complete”というタイトルとは裏腹に、その時期の録音がまた後で出たりするのかな。



全7日間の公演のうち、少しでも行ける可能性のある日のチケットはとりあえず全部押さえた。あとは、その週に出張や大きな会議がぶつかったりしないように、てるてる坊主とかわら人形とか作ってお祈りしておくだけ。

東京での会場、Star Pine's Cafeは、昔スラップ・ハッピーの来日公演で一度だけ行ったことがあるけど、なかなかいいハコだった記憶がある。もう今から楽しみでしょうがないよ。また前回みたいにリクエスト箱が用意されるのかな。前回一度も演奏しなかった曲とか、昔のアルバムで忘れ去られている曲とか、シングルB面曲とか、家にあるCDやレコードを全部おさらいして、リクエストしたい曲を今からリストアップしておこう。こんな楽しい気持ちがこれから4ヶ月も続くのか。うれしいな。
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