2008年08月23日

エコ月間レビュー - Josh Ritter

CD買い過ぎの何が悪いって、金がかかるとか家の中のスペースがCDに占領されていくとかいった物理的な弊害はさておき、最悪なのは、せっかく買ったCDをちゃんと聴く時間がないということ。一体自分は何のためにCDを買ってるのかという、シンプル且つ根本的な質問にたどり着くには、それほど出来のいい脳ミソは必要なかった(そこにたどり着くのに相当の時間がかかったことはさて置き)。

年間400枚だとか600枚だとか買っているCDのうち、第一印象がイマイチだったり、一緒に入手したものがとんでもなくよかったりしたために、つい1〜2回聴いただけでラックにしまいこんでしまったようなものも沢山ある。なんとももったいない話だけど。

新しいCDを次々に買う前に、そういうCDをちゃんと聴き直してみよう。ちょっとしばらく、よほどのことがなければ、新しいものを買うのは控えよう。聴き直した結果、どうしても気に入らなければ手放そう。当たり前のことばかり書いてるようだけど、こうして僕のエコ月間が始まった。いつまで続くかわからないけど、とりあえず今月に入って買ったCDは今のところまだ2枚。まだ一週間あるから最後までどう転ぶかわからないけど、ひと月に5枚も買わなかったのなんて、記録によると、2003年の3月以来、約5年半ぶりのことだ。

というわけで、最近自分のCDラックから掘り出してきて、やたらと気に入って聴き続けているのが、これ。

The Historical Conquests.jpg 『The Historical Conquests Of Josh Ritter』

最初に2006年11月17日の記事で取り上げ、その後2006年度の個人的ベストアルバムの第八位に選出した、このジョシュ・リターの前作『The Animal Years』を聴かれた方はどれぐらいいるだろうか。

まあ、その年610枚買ったCD類の中で第八位に選ぶぐらいだから、僕がそのアルバムをどれぐらい気に入っていたかは想像に難くないと思うが、そのアルバムに続く彼の5枚目となるフルアルバムが発売されたのは、去年の後半のこと。僕がそれを入手したのは、去年の10月、今となっては懐かしいリアル・グルーヴィーにて。

僕にしては珍しく新譜でこれを入手した理由は、当然その前作をそれだけ気に入っていたからこの新作にも充分期待していたということと、それが初回限定2枚組だったからということ(マサさん、読んでますか?)。

ところが、僕が前作を気に入っていた理由のひとつが、アイアン&ワインの『The Shepherd's Dog』の記事にも書いたとおり、その両方のアルバムのプロデューサーであったブライアン・デック(Brian Deck)による、硬質ながらも繊細な音作りにあったのだが、別のプロデューサーの手になる今回のアルバムの音が、去年の10月の僕にはちょっと散漫でとっ散らかったように聴こえてしまった。

よくよく聴き直してみると、このアルバムがとっ散らかったように聴こえるのは、アルバムの大部分を通低音のように流れている、ピアノやパーカッションやヴァイオリンによる様々な装飾音のせい。それらはほんの小さなボリュームで曲中や曲間のあちこちにちりばめられているのだが、曲のリズムと無関係に鳴り出すそれらの音が、ときには効果的に、ときには意表をついて流れ出すのが、今となってはとても面白い。

ストイックなブライアンの音作りとはかなり違うが、このある意味刺激的なプロデュースをしたのは、前作『The Animal Years』でも“ピアノ、オルガン、シンセサイザー、効果音”を担当していたSam Kassirer(発音がわからない)。

AMラジオから流れてきたかのようにリミッターがかかった狭い音域のまま、初期のスプリングスティーンばりに弾丸のごとく言葉を紡ぎだす一曲目「To The Dogs Or Whoever」を皮切りに、次から次に出てくる曲の全てが粒より。ありとあらゆるソングライターの名前を列挙して褒め称えた前作に収められていた曲よりも、全体的には今回の方が上出来かもしれない。とんでもなく綺麗なメロディーというわけでもないんだけど、一つ一つ特徴のある曲が、きちんと前後の曲とメリハリをつけられて並んでいるので、全然飽きずに聴いていられる。

さっきも書いたように、ほんのささやかな通低音を伴って、まるでメドレーのように繋がっているそれらの曲が、7曲目の美しいインストゥルメンタルの小品「Edge Of The World」で、まるで森の中をあちこちから流れてきた湧き水が小さな泉に注ぎ込むように集約される。おそらくここが、LPでいうとA面のラスト。

LPならB面の頭にあたる「Wait For Love」という幻想的な曲は、このアルバムのラスト「Wait For Love (You Know You Will)」でシングアウトっぽくリプライズされるという構成になっているのだが、それ以外にも、ラスト一曲前「Empty Hearts」に“And we sing to the dogs or whoever”と、アルバム一曲目の題名がこっそり歌い込まれていたり(一曲目にはその歌詞はない)、あげくは前作でのキーワード「狼」がここにも再登場するなど、ちょっとプログレ者の心をくすぐるような凝った展開が楽しめる。


そんなわけで、さらっと聞き流しただけで済ませていた、こんなに優れたアルバムを再発見することができて、自分内エコ月間もまんざらじゃないと思っている次第。ただ、あまりにこのアルバムを気に入ってしまっているため、ここ数年、フルアルバムの後に必ずそのアルバムに伴うツアーを収めたライヴ・ミニ・アルバムを出している彼の最新作『Live At The 9:30 Club』を買いたくてうずうずしているんだけど、どうしよう…


<8月27日追記>

Josh bunkai.JPG
posted by . at 21:46| Comment(8) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする