2008年08月16日

未来の隠れた名盤 - Gary Louris

Vagabonds.jpg Gary Louris 『Vagabonds』

発表後ずいぶん経ってから、隠れた名盤みたいな扱いでひっそりと話題になったり再発されたりする類のアルバムがある。僕は洋楽を聴き始めたのが70年代の終盤だったので、実際にそれらが発表されたときにどれくらい売れたのかはよく知らないけれど、ボビー・チャールズ(Bobby Charles)の71年盤やアーニー・グレアム(Ernie Graham)唯一のアルバム、ランバート&ナティカム(Lambert & Nuttycombe)の『At Home』などは、発表後何年も経ってから突然に、あるいは何十年もかけて徐々に評価を高めていったようなアルバムなんだろうと思う。

元ジェイホークス(The Jayhawks)のヴォーカリスト兼ギタリスト、ギャリー・ルーリス(Gary Louris)のソロ・アルバムを聴いて、なんとなくこれも、そうやってきっと西暦2030年頃に、“08年発表の隠れた名盤”なんて感じで扱われそうなアルバムに思えてきた。

あ、例によってうちのブログのどうでもいい決まりごとに基づいて、ギャリー・ルーリスなんて書いてるけど、普通はこの人の名前はゲイリー・ルーリスと表記されるね。でもGaryって、ギャリー、もしくはゲアリーって書いた方が本来の発音に近いと思うから。コメント欄ではご自由な表記でどうぞ。

ギャリー自身を含む参加メンバー5人の楽器編成は、ギター、ベース、ドラムス、キーボードという標準的な4人とペダル・スティールだというところから、ジェイホークスを知らない人でも、ある程度このアルバムがどういう傾向の音なのか想像がつくだろうか。ちなみに、ベーシストはバンジョーとオルガンも演奏しているし。

一般的にはオルタナ・カントリーなんて呼ばれることの多かったジェイホークスよりも(実際僕にはどこがオルタナティヴなのかどこがカントリーなのか今いちよくわからないんだけど)、もっとシンガー・ソングライター然とした、落ち着いた佇まいのアルバム。僕にとってなによりも嬉しいのは、ジェイホークス以来まったく変わることのない、ちょっと高めでちょっとハスキーな彼の声。

マーク・オルソン(初期)、ティム・オリーガン(後期)といった、共に優れたソングライター達と一緒に曲を書いていたジェイホークス時代の名曲群に比べると、若干単調さは否めないものの、ここには(一部で)惜しまれながら解散してしまったジェイホークス・その後といっても過言ではないような佳曲が収められている。

派手なギター・ソロや、きらびやかなフレーズがあるわけではないが、滋味のあるいい曲を、淡々と演奏しているだけのアルバム。さきほどの残り4名のバンド・メンバーは僕の知らない人ばかりだけれど、ジェイホークス譲りの分厚いコーラスを受け持つのは、このアルバムのプロデューサーでもあるクリス・ロビンソン(ブラック・クロウズ)、元バングルス(というか、僕のブログではマシュー・スウィートとのプロジェクトのアルバムが06年ベスト20に選ばれた人と言った方が通りがいいかも)のスザンナ・ホフス、なんでまだこのブログに取り上げられていないんだかよくわからないライロ・カイリーのジェニー・ルイス、そしてこちらは06年12月の記事で取り上げ済みのジョナサン・ライスなど、多彩なメンバー。

こうしてブログに取り上げるのはすっかり遅くなってしまったけれど、発売後既に半年が経つこのアルバム、とても売れているとは思えないが(ちなみに日本のアマゾンでは今日現在ランキング12万位台、アメリカだと1万2千位台)、さっき書いたように、そのうち誰かにぽつぽつと語り継がれていって、すっかり忘れ去られた頃に再評価されることを期待するよ。というぐらい、埋もれてしまうには惜しい出来映えのアルバム。このブログが、果たして数十年後の再評価の一端を担えるかどうか。


というところで、前回に引き続いて、最新アルバムをダシに過去の名盤を紹介するコーナー。ジェイホークスといったって、きっと一般的にはほとんど無名に近いと思うし、僕のブログでも過去一回か二回名前が出てきただけだと思うから、このブログを定期的に読んでくださっている方のほとんどには何がなにやら状態だろう。

確かこのブログで最初に彼らのことに触れたのが、yascd002。そう、そこにも書いたね、僕曰く、“アメリカ音楽の良心”。有象無象のバンドと一緒くたにされてオルタナ・カントリーなんて呼ばれ方をされていたけど、奇をてらわないベーシックなロックを、(きっとそれがカントリー呼ばわりされることになった原因である)バンジョーやペダル・スティールなどのアーシーな音を織り交ぜ、ふくよかなハーモニーに乗せて演奏する、素晴らしいバンドだった。そして、なによりも彼らの書く曲は一級品だった。

Rayny Day Music.jpg The Jayhawks 『Rainy Day Music』

きっと彼らのファンには、マーク・オルソン在席時の初期のアルバムの方が受けがいいんだろうけど、僕にとっての一枚はこれ。結果的に彼らのラスト・アルバムとなった03年の『Rainy Day Music』。ギャリーとマシュー・スウィートとの共作「Stumbling Through The Dark」をオープニングとエンディングに配し、これでもかというような名曲が次から次へと収められている。なんといっても、アルバム2曲目「Tailspin」は、僕の“今世紀に入って最も格好よかった曲の殿堂”に最初に収められた曲だから。

この時期既に正規メンバー3人になっていたジェイホークスと共にアルバムに参加していたのは、僕がプロデューサーとして大評価しているイーサン・ジョンズ(レイ・ラモンターニュのアルバムの記事参照)、前述のマシュー・スウィート、クリス・スティルス(スティーヴン・スティルスの息子)、ジェイコブ・ディラン(ボブ・ディランの息子)、そして、元イーグルス(という呼ばれ方は既に彼にとっては不本意だろうけど)バーニー・レドン等々、錚々たるメンバー。

シンプルなジャケもいいし、これはアメリカ音楽好きなら持っていて決して損はしないアルバム。あ、ちなみに僕が持っているのは、デモやライヴ録音など6曲を収めたボーナスディスク付きの2枚組限定盤。と、いつものようにとりあえず自慢してからこの記事を終えよう。


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