2008年05月11日

哀感を湛えた四月 - Sun Kil Moon

4月。新入学、新学期、お花見、ゴールデンウィーク、等々。日本人にとっては、ある意味一年でいちばん明るい気持ちになれる月だろう。アメリカ人にはどうなんだろう。年度の区切りは関係なくても、やっぱり春というのは(地域によるだろうけど)寒くて長い冬を越した、希望の季節なんじゃないのかな。

April.jpg Sun Kil Moon 『April』

なのに、『April』と名付けられた、サン・キル・ムーン(Sun Kil Moon)久々のこのアルバムは、このジャケットからも連想できるように、そんな明るい雰囲気とはかけ離れた内容の、とても落ち着いた、しっとりと深みのある、そして時には執拗な、聴きごたえのある傑作長編になった。

全11曲73分に、さらに4曲のヴァージョン違いが入ったボーナスディスク付きの2枚組。10分前後の曲がいくつも入っているおかげで、流して聴いていると果てしなく曲が続いているように感じる。

基本的には、マーク・コズレック(Mark Kozelek)のギターの弾き語りが中心。朴訥とした歌は、ニール・ヤングを源流とする数多のアメリカのSSWを連想させる(ニール・ヤング自身はアメリカ人ではないけれど、グレイト・レイク・スイマーズなんかも含めた、北米大陸の、という意味でのアメリカね)。長尺の曲での、聴き手の神経を麻痺させるような、輪廻のように延々と続く歪んだギターも、ニール・ヤング譲りと言えるかも。

僕にとっては、いつも熱心に動向を追っかけているという人ではない。でも、彼が92年に最初に始めたレッド・ハウス・ペインターズ(Red House Painters)の時代から、その素晴らしくノスタルジックなアートワークのせいもあり、常に気にかけていた。僕が今持っているレッド・ハウス・ペインターズの編集アルバム『Retrospective』とこの最新アルバム『April』を続けて聴いてみても、彼の作る音楽には一貫した雰囲気が漂っているのがわかる。そう、レッド・ハウス・ペインターズから彼のソロを経由してサン・キル・ムーンに至る、彼の一連のアルバム・ジャケットに漂うあの独特の雰囲気のように。

Retrospective.jpg Red House Painters 『Retrospective』

彼自身とても滋味のあるメランコリックないい曲を書くソングライターなんだけど、他人の曲をカバーする才能にも長けているようで、しかも、カバー曲をアルバムに収録するだけじゃなく、やるときはアルバム全部あるアーティストのカバー、なんてことが多い。僕が持っている、サン・キル・ムーンとしての前作『Tiny Cities』は全曲モデスト・マウスのカバー。だけど、モデスト・マウスとは似ても似つかない、完全に換骨奪胎したマーク・コズレックの音になってしまっている。僕は未聴なんだけど、全曲AC/DCのカバーなんてアルバムもあるらしい。

Tiny Cities.jpg Sun Kil Moon 『Tiny Cities』

そんな彼が、サン・キル・ムーン名義でなくソロとして初来日し、東京で二日間コンサートを開く。来週の火曜日と水曜日だ。本当に残念なことに、僕は両日ともちょっと抜けられない仕事があって、行かれないんだけど。

こちらで音を聴いてみて、もし気に入ったら、近場の人は是非観に行ってみてはいかがだろうか。14日の吉祥寺の方はもう売切れてしまっているようだけど、13日の渋谷は今これを書いている時点ではまだ少数チケットが残っているようだから。

悔しいなあと、あれこれ調べていたら、どうやら明日(というか、もう今日だね)、渋谷と新宿のタワーレコードで、インストア・ライヴとサイン会が開催されるようだ。これも残念ながらサイン会の参加券はもう予定枚数終了とのことなんだけど、せめてインストア・ライヴだけは観に行ってみようかな。昨日からずっと降り続いている雨は、天気予報によるとこれからどんどんひどくなるという話で、ちょっと億劫なんだけど。

4月の話題はちゃんとその月のうちに書ければよかったんだけど、どうもなかなかまとまった時間が取れなかった。なんとかぎりぎりで彼のライヴ前に記事を上げることができたから、せめて偶然これを読んで彼のことを知った人がライヴに行って楽しめればいいのにな。


posted by . at 02:10| Comment(13) | TrackBack(1) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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