2007年11月10日

80年代英国NW再発二種 - Public Image Ltd. / Prefab Sprout

◇去年から今年にかけて再発されている、80年代イギリスのいわゆる広義のニュー・ウェーヴと呼ばれたアルバムを二枚取り上げよう。「二枚」とはいえ、盤の枚数を数えると合わせて5枚になるんだけどね。

◇どちらもその時代のシーンを代表する超名盤。今さら僕が事細かに解説する必要もないようなものなんだけど。じゃあまずこれから。

Metal Box.jpg Public Image Ltd.「Metal Box」

◇セックス・ピストルズを解散したジョニー・ロットンが、ジョン・ライドンと改名して(というか、本名に戻して)、元クラッシュのキース・レヴィン、当時は無名のジャー・ウォブルと結成したパブリック・イメージ・リミテッドの2作目。

◇オリジナルの形態は、45回転の12インチ盤が3枚、円形の金属の缶に入っているというもの。なので、タイトルも『金属箱』。

◇缶入りというのは多分に奇をてらったところもあっただろうけど、45回転12インチ盤というのにはれっきとした理由があり(7月8日の記事「LPと算数」に書いたとおり)、この特異な音楽のダイナミズムを存分に味わえるようにとの配慮からだった。

◇さっき80年代と書いたけど、実はこのアルバムが発表されたのは1979年の11月。当然こんな形態で大量生産されるわけもなく、イギリス国内向けに5万枚、輸出用に1万枚がプレスされたのみ。

◇その後、翌年になって33回転12インチ盤(要は普通のLP)2枚組の形で『Second Edition』として発売されることになる。

Second Edition.jpg Public Image Ltd.「Second Edition」

◇当時、輸入盤屋で缶入りを見かけたこともあったはずだけれど、なにしろそれだけのレア物。とても中学生や高校生に手が出せる金額じゃなかった。僕は、81年の初頭になって、このキース・レヴィンの歪んだ顔のジャケが印象的な『Second Edition』の方を手に入れた。

◇ちなみに、それが僕の生涯で買った28枚目のLP。それまでウィングスとかイーグルスとかレッド・ゼッペリンとか、真っ当な中学生らしいLPばかり買っていたのに、81年の2月・3月に買ったこれとポップ・グループのセカンドとピンク・フロイドのファーストが、その後の僕の音楽観を大きく軌道修正することになる。けどそれを書くのが今回の趣旨ではないので。

◇話を戻そう。とにかく、当時のニュー・ウェーヴ少年にとっては、この丸い缶は憧れの的だったというわけだ。それが、27年の時を経て昨年再発された。今度は5000枚限定で。

◇今度は僕も大人だからね。大人買いしますよ。NZに輸入されたものは結構な値段だったけど(しかもNZのレコ屋らしく、新品なのに開封済み)、見かけたときに買っておかないと。

◇で、元々持っていた33回転2枚組と、今回手に入れた45回転3枚組を聴き比べてみた。元の33回転盤も決して悪くはなかったんだけど、やっぱり違うね。ベースの音が全然違う。

◇驚いたのが、曲順が違うこと。33回転2枚組の方はこう。

A1 Albatross
A2 Memories

B1 Swanlake
B2 Poptones
B3 Careering

C1 Socialist
C2 Graveyard
C3 The Suit

D1 Bad Baby
D2 No Birds
D3 Chant
D4 Radio 4


◇オリジナルの、45回転3枚組はこの曲順。

A1 Albatross

B1 Memories
B2 Swanlake

C1 Poptones
C2 Careering

D1 No Birds
D2 Graveyard

E1 The Suit
E2 Bad Baby

F1 Socialist
F2 Chant
F3 Radio 4


◇実際には「Socialist」と「No Birds」の場所が入れ替わってるだけなんだけど、それぞれの盤面の区切り箇所の違いで、例えば今までB面の頭だと思っていた「Swanlake」がB面の締めくくりになってたりするのがちょっとした違和感。

◇あと気づいたのが、レコードがほぼぴったりの大きさの缶に入ってるので、出し入れがしにくいこと。丸いマンホールの蓋が穴に落っこちないのと同じ原理で(かな?)、ちょっとでも斜めにするとひっかかって出てこない。かといって裏返しにすると3枚いっぺんに落ちてくる。それだけ苦労して出した盤をかけても、10分で裏返さないといけない。まあ、それだけマニアックなものを買ったということで、嬉しい悩みではあるんだけどね。

◇いかん、また普通の段落並みの量になってきたぞ。箇条書きなのに。

◇というわけで、内容には殆ど触れていないけど、27年経とうがまったく古ぼけることのない音。何年経っても“ニュー”・ウェーヴ。ちょっと変わった音楽がご趣味で、しかもやっぱりレコードで聴くのが好きという方にお勧め(ほとんど名指し状態)。

◇上にリンクを張ったけど、この缶入り再発盤、まだアマゾンジャパンに在庫あるんだね。6735円か。僕が買ったのよりも少し安いよ。少しでも気になる方、今のうちですよ。もしくは、今から27年後の2034年にまた再発されるかもしれないから、そのときにどうぞ。



◇次は、プリファブ・スプラウト85年の名盤『Steve McQueen』。今年になってリマスター&ボーナスディスクで再発されたものだ。

Steve McQueen.jpg Prefab Sprout「Steve McQueen」

◇冒頭いきなりニュー・ウェーヴという括りでまとめてしまったけど、さっきのアルバムとこれとでは、音楽性が180度違うと言ってもいいだろう。80年代前半にイギリスから出てきたグループは、とにかく一緒くたにニュー・ウェーヴと呼ばれていただけのこと。21世紀のアメリカの優良SSWが全員オルタナ・カントリーと呼ばれてるのと同じ。

◇80年代イギリスのアコースティック系ロックミュージックの名盤は何かと訊かれたら、多分誰もがアズテック・カメラの『High Land Hard Rain』と共にこのアルバムの名を挙げるだろう。

◇きっと、同じ質問を「70年代アメリカのアコースティック・ミュージック」と置き換えたら、誰もが『Harvest』と『Sweet Baby James』を挙げるのと同じように(反論がある方もいらっしゃるであろうことは承知しています。聞き流しておいてください)。

◇ユニヴァーサルのデラックス・エディションやソニーのレガシー・エディションのように、オリジナルアルバムのリマスター版+ボーナストラックで2枚組という形に近い形態での再発。

◇あれ?でもこれソニーだよね。レガシー・エディションとは銘打ってないな。代わりに、キッチンウェアレコード(プリファブ・スプラウトが属していたレーベル)25周年記念のロゴが入ってるけど。

◇2枚組で、一枚目はオリジナルアルバムのリマスター。手がけたのは、オリジナル版のプロデューサーでもあったトーマス・ドルビー(Thomas Dolby)。

◇二枚目は、さっき書いたデラックス・エディションやレガシー・エディションによくある当時のB面曲やリミックス集でなく、この企画のためにリーダーのパディ・マカルーン(Paddy McAloon)が新録した、オリジナルアルバムからの8曲分のアコースティック・ヴァージョン。

◇そしてこれが、またよくあるアコギ弾き語りのデモヴァージョンとかでなく、本人のヴォーカル、ギター、それ以外の弦楽器、ハーモニカなどを幾度も多重録音して作られた、手の込んだものになっている。

◇なんでも、オリジナル(こちらもトーマス・ドルビーお得意の多重録音を駆使したもの)よりもこのアコースティック・ヴァージョンを作る方がより時間がかかったとのこと。

◇これが、実にいい。もう何十回・何百回聴いたかわからないようなこれらの曲を、新しいアレンジで、今のパディの声で(まだ若々しいけど)聴かせてくれるんだから。これはもう、01年の『The Gunman And Other Stories』に続く6年ぶりのニューアルバムのようなものだ。

◇「Desire As」の、2分にも亘るギターの多重録音によるイントロ(まるでスティーヴ・ハウかマイク・オールドフィールドのような)には、本当に驚いた。オリジナルのアルバム内では別に好きでも嫌いでもない曲だったけど、この新録ヴァージョンの中では一番の拾い物かも。

◇オリジナル盤。さっきアコースティック系って書いたけど、実はアコースティック楽器の音なんてほとんど聞こえない。でも見事なプロデュースワークで、こんなに瑞々しい自然な音が溢れた音楽になっている。シンセの音ばっかりなのに、今まで全然そんな印象持ってなかったよ。

◇さっきの缶(または歪み顔)は決して万人に薦められるものじゃないけど、こっちは洋楽ポップスを普通に聞く人でこれを嫌いな人が果たしているんだろうかと思ってしまうようなアルバム。ライナーにも書いてあるね。エヴァーグリーン。まさにそう。


◇いつもfalsoさんが、ご自分が若かった頃に聴かれていた音楽ばかりを繰り返して聴いておられることを半ば自虐的に話しておられるけど、僕だってすぐこうして十代や二十代前半に聴いていた音楽に戻っていってしまうよ。

◇最近こうして80年代のアルバムが次々と形を変えて再発されているというのも、まさに僕のようなカモを捕まえるためなんだろうね。わかってても、こうして見事に全部に食いついてるわけだけど。

◇ところで、今日はこないだよりは幾分かは箇条書き風と言えるようになったかな。


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