2007年10月20日

11月を過ぎたら Jeb Loy Nichols 「Now Then」 & 「Days Are Mighty」

明日からちょっと長めの出張に出かけることになっていて、その間は、いただいたコメントへの返事ぐらいはできると思うけど、新しい記事を上げることができるかどうかはわからないので、今日のうちに駆け込みでもう一つ書いてしまおう。今日のお題は、2月25日の記事「真夏の午後と冬の夜に」で取り上げた、ジェブ・ロイ・ニコルズ。

まずは、05年にイギリスで発売されて、上記のyascdにもそこから3曲収録した『Now Then』が、新装ジャケ&ボートラ追加で翌年アメリカで発売されたのを、最近比較的安く手に入れることができたので、それについて。

Now Then U.S. Version.jpg Jeb Loy Nichols 『Now Then』

ボーナストラック2曲収録との触れ込みだけど、オリジナルのUK盤にも、裏ジャケットには記載されていないものの、そのうちの1曲は収録済み(yascdにも入れた「Sweet, Tough And Terrible」)なので、実質ボートラは1曲のみ。

「真夏の午後と冬の夜に」では、曲の出来があまりよくないなんてちょっとネガティブな書き方をしてしまったけれど、この人の他のCDに違わず、聴き込めば聴き込むほどそのよさがわかってくる類のアルバムだった。よって、そのコメントは却下。見る目がないね(笑)

プロデューサーは、ラムチョップ(Lambchop)準メンバー券プロデューサーのマーク・ネヴァース(Mark Nevers)。そのツテで、トニー・クロウ(Tony Crow)やポール・バーチ(Paul Burch)など、ラムチョップのメンバーが数名参加。ジェニファー・カー(Jennifer Carr)やウェイン・ニューネス(Wayne Nunes)、それにジェブの奥さんロレイン・モーリー(Loraine Morley)など、以前のアルバムからずっと参加しているメンバーもいるし、有名どころではダン・ペン(Dan Penn)がボーカルで、デニス・ボーヴェル(Dennil Bovell)がコーラスとミキシングで参加している。どういう訳かべーシストが3人もクレジットされている。

以前の記事でも、彼の音楽を表現するのに、レゲエ+カントリー+ソウルのごった煮みたいなものって言ったんだけど、このアルバムでは実際に、今書いたような“オルタナ”カントリー組とレゲエ組のミュージシャンを、トラディショナル・カントリーの聖地ナッシュヴィルに集結させている。

その結果、例えば1曲目「Sometimes Shooting Stars」の、奥行きがありながら、スカスカしているようなこもっているような不思議な音の空間作りは、さすが“プロデュースト・バイ・マーク・ネヴァース、ミクスト・バイ・デニス・ボーヴェル”印だなあと思う。

曲によってはストリングスが多用され(実際に弦楽器を使っているのでなく、ストリング・マシンを使用している)、ちょっとしたノーザン・ソウルっぽい雰囲気。また別の曲では、ホーン・セクションも参加(こちらは本物の楽器)。そういう曲は、Cafe Del MarとかHotel Costesとか、なんとかラウンジとかイビザなんとかってコンピ盤に収録されていてもおかしくないような、ちょっとお洒落な感じ。

ピアノとオルガンだけの伴奏で崇高に歌われる「Painted My Dream House Blue」や、ホーンの音が心地良い「Morning Love」が僕のお気に入り。ブックレットに交換書簡が載っていて、このアルバムのちょっとしたテーマになっていると思しき「Ever Feel Like Leaving」(ダン・ペンとのデュエット)もいいね。このアメリカ盤のみに収録の「Love Me Too」も、彼にしてはちょっと珍しく歌い上げる感じのバラッドでいい感じ。これは買い足してよかったよ。

双子さっき新装ジャケって書いたけど、実は上に載せたこの新しいデザイン(例によってジェブ自身の手による版画)は、この左側に載せたUKオリジナル盤の裏ジャケに使われていたもの。逆に、このUK盤の表ジャケの版画は、アメリカ盤では裏ジャケに使われている。僕はこのオリジナルの方が好きなんだけど、どうして変えたのかな。もしかして、ちょっとシャム双生児を連想させなくもないこのデザインに、どこかからクレームでもついたのかも。他にも、UK盤の方がちょっと厚手の紙を使ったブックレットで、版画の発色もいいんだけど、そんなのにこだわる人はいないだろうから、今から買うなら、上にリンクした安くて収録曲の多いアメリカ盤だろうね。さっき「買い足し」って書いたけど、もちろん「買い替え」の間違いじゃない。僕はジャケ違いのこのUK盤を売ってしまうようなことはしないよ。



Days Are Mighty.jpg Jeb Loy Nichols 『Days Are Mighty』

そして、今年になって発売されたのが、この『Days Are Mighty』。いろんな意味で前作と正反対の性格を持つアルバムだ。前作のようなプチ豪華なゲストは姿を消し、昔からの気心のしれた5人のメンバーだけで、彼の自宅のあるウェールズで録音されている。プロデュースもジェブ自身を含むバンドメンバーの4人。プロデューサーとしてはクレジットに含まれていないロレインはジャケットやブックレットの写真を多数撮っているので、音作りからビジュアル面まで、全てこの5人の手作りということになる。そういえば、ジャケットは94年のフェロウ・トラヴェラーズのライヴアルバム以来となる、ジェブのポートレイトだ(顔は見えないけど)。もちろんブックレットにはお馴染みのジェブの版画が使われているよ。

ホーンやストリングスを多用し、ゲストヴォーカリストも数名参加して、結構派手な音作りだった前作と比べると、とてもパーソナルな音になっている。必要最小限の楽器。奇をてらわないミックス。それだけに曲の良さが際立つ。

ブックレットに歌詞が載っていなくて、彼のサイトを含めてネット上のどこにも歌詞が探せないので、ちょっとこもった歌い方をする彼がなんて歌っているのか完全に聴き取るのはちょっと大変なんだけど、ウェールズの田舎で食物や燃料まで殆ど自給自足の生活をしているという今の彼の心情を綴ったような曲が多いようだ。

実は僕はこのアルバムが出たのをアマゾンUKで見た途端に注文してしまったんだけど、後で調べてみたら、限定の2枚組ヴァージョンというものがあることに気づいた。彼がアルバム作成前に自宅で26曲録音したデモヴァージョンのうち、10曲を収録したものだ。どちらもUK盤で結構値が張ったんだけど、しょうがないので買い替え。ジャケ違いの『Now Then』と違ってこちらは1枚ヴァージョンに特有のものはないから、最初に買った方は、知り合いのジェブ・ロイ応援団・東京支部長に売りつけることにした。

2枚目の10曲のうち8曲が本編の『Days Are Mighty』に収録されたもの。さっきも書いたように、この『Days Are Mighty』自体が最小限の楽器で簡素に録音されたアルバムだから、ジェブがアコースティック・ギターのみで録音したこのデモCDも、最終ヴァージョンとそんなに驚くほど違うという訳じゃない。でも、ずっと後ろに聞こえる鳥のさえずりが、彼の住むウェールズの田舎の様子を描き出す。別に録音しようと意図したわけではないであろうそんな鳥のさえずりが、思わぬ効果を生んでいるよ。

本編では、ウッドベースとヴィブラートのかかったギター、フェンダー・ローズとハーモニカの音がしみじみと心地良い「After November」が、今のところ一番好きな曲かな。

 11月を過ぎたら
 新しい年が扉をノックしはじめるよ


「真夏の午後と冬の夜に」の記事では、彼の音楽はじっとりと暑い真夏の昼下がりにも、凍てつくような冬の夜の暖炉際にも似合うと書いたんだけど、この曲のイメージのせいか、今回のアルバムは秋から冬にかけての季節がぴったりな気がする。日本ではちょうどこれからの季節だね。



先に触れた、『Now Then』のテーマと思しき「Ever Feel Like Leaving」に関する交換書簡の中で、ジェブは自分が生まれ故郷のワイオミングからミズーリ、テキサス、ニューヨーク、ロンドン、そして現在のウェールズへと住まいを移してきたことについて触れている。自分はずっと何かを後にしてきた、というわけだ。

そして僕も、11月を過ぎたら、新しい生活が扉をノックすることになったようだ。これまで世界のいろんな土地を後にしてきたが、いよいよこのオークランドをも後にして、日本に帰ることが決まった。15年ぶりの日本、一体どんな生活が待っているんだろう。


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