2007年10月20日

11月を過ぎたら Jeb Loy Nichols 「Now Then」 & 「Days Are Mighty」

明日からちょっと長めの出張に出かけることになっていて、その間は、いただいたコメントへの返事ぐらいはできると思うけど、新しい記事を上げることができるかどうかはわからないので、今日のうちに駆け込みでもう一つ書いてしまおう。今日のお題は、2月25日の記事「真夏の午後と冬の夜に」で取り上げた、ジェブ・ロイ・ニコルズ。

まずは、05年にイギリスで発売されて、上記のyascdにもそこから3曲収録した『Now Then』が、新装ジャケ&ボートラ追加で翌年アメリカで発売されたのを、最近比較的安く手に入れることができたので、それについて。

Now Then U.S. Version.jpg Jeb Loy Nichols 『Now Then』

ボーナストラック2曲収録との触れ込みだけど、オリジナルのUK盤にも、裏ジャケットには記載されていないものの、そのうちの1曲は収録済み(yascdにも入れた「Sweet, Tough And Terrible」)なので、実質ボートラは1曲のみ。

「真夏の午後と冬の夜に」では、曲の出来があまりよくないなんてちょっとネガティブな書き方をしてしまったけれど、この人の他のCDに違わず、聴き込めば聴き込むほどそのよさがわかってくる類のアルバムだった。よって、そのコメントは却下。見る目がないね(笑)

プロデューサーは、ラムチョップ(Lambchop)準メンバー券プロデューサーのマーク・ネヴァース(Mark Nevers)。そのツテで、トニー・クロウ(Tony Crow)やポール・バーチ(Paul Burch)など、ラムチョップのメンバーが数名参加。ジェニファー・カー(Jennifer Carr)やウェイン・ニューネス(Wayne Nunes)、それにジェブの奥さんロレイン・モーリー(Loraine Morley)など、以前のアルバムからずっと参加しているメンバーもいるし、有名どころではダン・ペン(Dan Penn)がボーカルで、デニス・ボーヴェル(Dennil Bovell)がコーラスとミキシングで参加している。どういう訳かべーシストが3人もクレジットされている。

以前の記事でも、彼の音楽を表現するのに、レゲエ+カントリー+ソウルのごった煮みたいなものって言ったんだけど、このアルバムでは実際に、今書いたような“オルタナ”カントリー組とレゲエ組のミュージシャンを、トラディショナル・カントリーの聖地ナッシュヴィルに集結させている。

その結果、例えば1曲目「Sometimes Shooting Stars」の、奥行きがありながら、スカスカしているようなこもっているような不思議な音の空間作りは、さすが“プロデュースト・バイ・マーク・ネヴァース、ミクスト・バイ・デニス・ボーヴェル”印だなあと思う。

曲によってはストリングスが多用され(実際に弦楽器を使っているのでなく、ストリング・マシンを使用している)、ちょっとしたノーザン・ソウルっぽい雰囲気。また別の曲では、ホーン・セクションも参加(こちらは本物の楽器)。そういう曲は、Cafe Del MarとかHotel Costesとか、なんとかラウンジとかイビザなんとかってコンピ盤に収録されていてもおかしくないような、ちょっとお洒落な感じ。

ピアノとオルガンだけの伴奏で崇高に歌われる「Painted My Dream House Blue」や、ホーンの音が心地良い「Morning Love」が僕のお気に入り。ブックレットに交換書簡が載っていて、このアルバムのちょっとしたテーマになっていると思しき「Ever Feel Like Leaving」(ダン・ペンとのデュエット)もいいね。このアメリカ盤のみに収録の「Love Me Too」も、彼にしてはちょっと珍しく歌い上げる感じのバラッドでいい感じ。これは買い足してよかったよ。

双子さっき新装ジャケって書いたけど、実は上に載せたこの新しいデザイン(例によってジェブ自身の手による版画)は、この左側に載せたUKオリジナル盤の裏ジャケに使われていたもの。逆に、このUK盤の表ジャケの版画は、アメリカ盤では裏ジャケに使われている。僕はこのオリジナルの方が好きなんだけど、どうして変えたのかな。もしかして、ちょっとシャム双生児を連想させなくもないこのデザインに、どこかからクレームでもついたのかも。他にも、UK盤の方がちょっと厚手の紙を使ったブックレットで、版画の発色もいいんだけど、そんなのにこだわる人はいないだろうから、今から買うなら、上にリンクした安くて収録曲の多いアメリカ盤だろうね。さっき「買い足し」って書いたけど、もちろん「買い替え」の間違いじゃない。僕はジャケ違いのこのUK盤を売ってしまうようなことはしないよ。



Days Are Mighty.jpg Jeb Loy Nichols 『Days Are Mighty』

そして、今年になって発売されたのが、この『Days Are Mighty』。いろんな意味で前作と正反対の性格を持つアルバムだ。前作のようなプチ豪華なゲストは姿を消し、昔からの気心のしれた5人のメンバーだけで、彼の自宅のあるウェールズで録音されている。プロデュースもジェブ自身を含むバンドメンバーの4人。プロデューサーとしてはクレジットに含まれていないロレインはジャケットやブックレットの写真を多数撮っているので、音作りからビジュアル面まで、全てこの5人の手作りということになる。そういえば、ジャケットは94年のフェロウ・トラヴェラーズのライヴアルバム以来となる、ジェブのポートレイトだ(顔は見えないけど)。もちろんブックレットにはお馴染みのジェブの版画が使われているよ。

ホーンやストリングスを多用し、ゲストヴォーカリストも数名参加して、結構派手な音作りだった前作と比べると、とてもパーソナルな音になっている。必要最小限の楽器。奇をてらわないミックス。それだけに曲の良さが際立つ。

ブックレットに歌詞が載っていなくて、彼のサイトを含めてネット上のどこにも歌詞が探せないので、ちょっとこもった歌い方をする彼がなんて歌っているのか完全に聴き取るのはちょっと大変なんだけど、ウェールズの田舎で食物や燃料まで殆ど自給自足の生活をしているという今の彼の心情を綴ったような曲が多いようだ。

実は僕はこのアルバムが出たのをアマゾンUKで見た途端に注文してしまったんだけど、後で調べてみたら、限定の2枚組ヴァージョンというものがあることに気づいた。彼がアルバム作成前に自宅で26曲録音したデモヴァージョンのうち、10曲を収録したものだ。どちらもUK盤で結構値が張ったんだけど、しょうがないので買い替え。ジャケ違いの『Now Then』と違ってこちらは1枚ヴァージョンに特有のものはないから、最初に買った方は、知り合いのジェブ・ロイ応援団・東京支部長に売りつけることにした。

2枚目の10曲のうち8曲が本編の『Days Are Mighty』に収録されたもの。さっきも書いたように、この『Days Are Mighty』自体が最小限の楽器で簡素に録音されたアルバムだから、ジェブがアコースティック・ギターのみで録音したこのデモCDも、最終ヴァージョンとそんなに驚くほど違うという訳じゃない。でも、ずっと後ろに聞こえる鳥のさえずりが、彼の住むウェールズの田舎の様子を描き出す。別に録音しようと意図したわけではないであろうそんな鳥のさえずりが、思わぬ効果を生んでいるよ。

本編では、ウッドベースとヴィブラートのかかったギター、フェンダー・ローズとハーモニカの音がしみじみと心地良い「After November」が、今のところ一番好きな曲かな。

 11月を過ぎたら
 新しい年が扉をノックしはじめるよ


「真夏の午後と冬の夜に」の記事では、彼の音楽はじっとりと暑い真夏の昼下がりにも、凍てつくような冬の夜の暖炉際にも似合うと書いたんだけど、この曲のイメージのせいか、今回のアルバムは秋から冬にかけての季節がぴったりな気がする。日本ではちょうどこれからの季節だね。



先に触れた、『Now Then』のテーマと思しき「Ever Feel Like Leaving」に関する交換書簡の中で、ジェブは自分が生まれ故郷のワイオミングからミズーリ、テキサス、ニューヨーク、ロンドン、そして現在のウェールズへと住まいを移してきたことについて触れている。自分はずっと何かを後にしてきた、というわけだ。

そして僕も、11月を過ぎたら、新しい生活が扉をノックすることになったようだ。これまで世界のいろんな土地を後にしてきたが、いよいよこのオークランドをも後にして、日本に帰ることが決まった。15年ぶりの日本、一体どんな生活が待っているんだろう。


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2007年10月15日

58歳の力作 Bruce Springsteen 「Magic」

ブルース・スプリングスティーンの新作『Magic』について書くにあたって、もうすでにあちこちで語り尽くされているであろうこんなメジャーなアルバムだから、あっさりと感想だけを書くのもつまらないと思い、どういうふうな話の展開にしようかなとずっと考えていたんだけど、たとえば


the rising ltd edition.jpg devils & dust.jpg magic.jpg

初期のマネージャー兼プロデューサー、マイク・アペルと75年にゴタゴタを起こしてからは、一貫してジョン・ランドウと自分でプロデュースを続けてきた彼が、初めて外部の売れっ子プロデューサー、ブレンダン・オブライエンにプロデュースを任せた02年の『The Rising』から今作までのオリジナル・アルバム3作について、それ以前からの音作りの変遷について書くとか、あるいは


the essential bs.jpg weshallovercome.jpg born to run box.jpg
Hammersmith Odeon.jpg american land edition.jpg live in dublin.jpg

03年に(当時は「またか」と思わせつつ)発表された『The Essential』という3枚組ベスト・アルバムを皮切りに、彼自身のルーツ、そして、ピート・シーガーというアーティストの楽曲を通してアメリカ音楽のルーツを掘り下げてきた、もの凄く制作欲旺盛なこの5年間の彼の音楽活動を背景にした、この新作の意義みたいなことを書くとか。


でも、残念ながら、構想段階で力尽きてしまった。こんなの、一週間やそこらで構成を考えてちゃんとしたものを書くなんて到底無理というもの。アイデア自体は面白いと思うから、そのうち機会があれば書いてみたい話ではあるんだけどね。というわけで、今回はあっさりと『Magic』の感想だけを書くことにした。


magic.jpg Bruce Springsteen 『Magic』

オリジナル・アルバムとしては05年の『Devils & Dust』以来2年半ぶりだけど、この6月にダブリンでのライヴ・アルバムが出たばかりなので、それから数えるとわずか4ヶ月ぶりのニュー・アルバム。アメリカはビルボードでの初登場第一位を始めとして、カナダ、イギリス、アイルランド、ノルウェー、イタリア、スペインでチャートのトップを記録。いまやチャートというものにどれだけ権威があるのかよくわからないけど、それにしても、相変わらず人気は衰えていない。

アルバムからのリード・シングルは、9月30日の記事「オークランドCDショップガイド」のコメント欄(10月9日の僕のコメント)にPVのリンクを貼った「Radio Nowhere」。これがアルバム1曲目でもある。久々に彼の格好いい曲を聴いた気がする。このメロディーと曲展開、『The River』セッションで録音されたもののお蔵入りになり、ブートレグで散々話題になった挙句に88年のシングル「One Step Up」にカップリング収録された名曲「Roulette」を少しスローにした感じ。そりゃ格好いいはずだよ。

ただ、この曲は、僕が彼の作る最近の曲(特に今作)に共通して抱いている不満も併せ持っている。初期、特に最初の3枚のアルバムで、あれほど溢れ出るような言葉を詰め込んでいた歌詞が、最近ではすっかり影を潜めてしまい、やたらと同じ言葉のリフレインが多くなってしまっているのがとても物足りない。この曲でいうと、

 これはどこでもない局のラジオ
 誰かそっち側で生きてるのか?
 俺はちゃんとしたリズムを聴きたいよ


という歌詞が執拗なまでに繰り返される。歌詞にしても曲作りにしても、なんでもかんでも初期の曲と比べるべきじゃないのはよくわかってるんだけど、ことこういう曲に関しては、ストーリーテラーとしての彼の魅力はかなり乏しいね、残念ながら。

2曲目「You'll Be Comin' Down」は、サビのところでつい「I'm goin down to lucky town〜♪」と歌ってしまいそうになるほど、展開が92年の「Lucky Town」に似ている曲。そういやあれもアルバム2曲目だったな。

3曲目「Livin' In The Future」は、なんとなく『Born In The U.S.A.』に入っててもおかしくないような感じの曲。「Glory Days」っぽいのかな。

いかんね、どうも過去の○○に似ているって話ばかりをしてしまう。確かに、78年の『Darkness On The Edge Of Town』あたりで彼の作曲に定型みたいなものができてからは、どちらかというとワンパターンな曲作りをする人ではあるんだけどね。

4曲目「Your Own Worst Enemy」は僕には今回一番おもしろくない曲。このノべーッとした歌い方がどうも嫌。ごめんね、パス。

ちょっとかすれたハーモニカの音に導かれて始まる5曲目「Gypsy Rider」あたりからが好きかな。この曲の間奏と後奏では、久々にブルース自身が弾くテレキャスターの硬質な音のソロが聴けるし。

恐らくアナログではA面の最後にあたる、次の「Girls In Their Summer Clothes」は、またしてもノべーッとした歌い方のミディアム・テンポの曲なんだけど、これは許せる。というか、これ結構いい曲。ちょっとスペクター風というか、ブライアン・ウィルソン風というか。最近の彼のアルバムで僕が辟易している厚ぼったいシンセサイザーの音とコーラスも、ここではわりと有効に使われている。

続いて、多分LPのB面1曲目「I'll Work For Your Love」。ああ、もうこのイントロのピアノ、たまらないよ。ロイ・ビタンのピアノが好きだという話は5月11日の「ピアノ三昧」記事を始めとしてあちこちに書いてる気がするけど、この、曲全体を通じて彼のピアノが鳴り響き、要所でクラレンス・クレモンズのサックスが出てくるお決まりの展開が最高。ある意味今回のアルバムの僕にとってのベスト・トラック。曲自体はあんまり大したことないんだけどね(なんだそりゃ)。

8曲目がアルバムのタイトル曲「Magic」。なんてことないアコースティック曲かもしれないけど、これがこの位置に入っていることで、アルバムがぐっと引き締まっているよ。目立たないようにそっと添えられているスージー・タイレルのヴァイオリンもいい。

動⇒静ときて、次は刹那的な動の感じがこれまたたまらない「Last To Die」。ここまで結構、半分けなし気味に書いてきたかもしれないけど、これはいい曲だと思う。やっぱりこっちが僕のベスト・トラックかな。うーん、そのうちどっちかに決めるね。それにしても、アナログだとB面3曲目にあたる地味な位置にこんな曲を入れるなんて、彼のアルバムには今まであまりなかったパターンかも(またしても、極初期を除くよ。「Rosalita」なんて曲がB面の真ん中に収録されてたんだもんね)。

まだまだ続く。10曲目「Long Walk Home」は、きっとコンサートの終盤とかアンコールの最後で演ったら盛り上がるだろうなという感じの曲。しばらく前でいうと「Land Of Hope And Dreams」的な位置づけ。と思って、彼のサイトで公開されているコンサートの演奏曲目を見てみたら(現在進行中のツアーの曲目が、コンサート終了直後に彼の手書きのセットリストと一緒にあっという間にアップされている)、この曲はコンサート本編ラスト手前、「Badlands」の前に必ず演奏されているね。ああ、わかるわかる。なんで最後が「Badlands」なんだ、というのは置いといて(いや、好きな曲なんだけどね。でもトリを務められる柄じゃないでしょ)。

話が飛ぶね。裏ジャケに書いてある曲目表ではアルバムの締めくくり、「Devil's Arcade」は、ここ数年彼が自分の曲のテーマにしてきている、「本当の価値からはるか遠く離れたところをうろついている」自分の祖国アメリカについて歌った曲。そういえば、今回はこの手のテーマの曲が少ないね。

これはこれでアルバムをきりっと締めるいいクローザーなんだけど、実はこの後、13秒のブランクを置いて、隠しトラック「Terry's Song」が入っている。これは、このアルバムのブックレットの最後のページに載ってるように、去る7月に亡くなった、ブルースの長年の友人でありパートナーでもあったテリー・マゴヴァンに捧げた歌。心のこもった、しみじみとしたいい曲。

どうやら、この曲は最初は収録される予定じゃなかったらしく(テリーも死ぬ予定じゃなかっただろうからね)、最後の最後で追加収録されることになったから、このアルバムのごく最初のプレス分にはこの曲が収録されていないらしい。初回ミスプレスってなんだか希少価値で持ってると嬉しいもんだけど、後に出たやつよりも1曲少ないってのは微妙だね。実は僕も、出始めの頃に買ったニルヴァーナの『Nevermind』(きっと初回盤)に、その頃流行りだしたシークレット・トラックのはしりだった「Endless, Nameless」が入ってなくて、がっかりしたものだ。

ほとんど全曲解説(横道逸れ気味)になってしまったね。こうして改めて書いてみると、やっぱり僕は後半が好きだな。もし僕がこのアルバムをアナログで買っていたら、きっとB面ばかり繰り返して聴いていたことだろう。

プロデューサーがブレンダン・オブライエンに替わってから、90年代のブルースのアルバムで聴かれたような厚ぼったい音は若干なりを潜めた感がある。それでも、まだまだぼてっとした音に不満があるんだけどね。なにしろギターが3人もいる上に、ブルースの奥さんまでもがアコギ弾いてるから音が厚くてしょうがない。コーラスも人数多すぎるし。ダニー・フィデリーシはあのかっこいいオルガンに専念して、シンセサイザーは封印してもらいたい。あと、今回どういうわけかニルズ・ロフグレンのギターソロがほとんど入ってないよ。僕がこの世で二番目に好きなギタリストだから、一応彼のギターが鳴ってるのは聴き取れるけど。それもかなり不満。


さっき、今行われているEストリート・バンドとのツアーの曲目がサイトにアップされているって書いたけど、その話も少しだけ書こうかな。実は同じサイトで、毎日一曲ずつ(長い曲の場合は部分的に)収録されたビデオも観られる。それを観てると、メンバーみんな年取ったな、太ったな、って思ってしまう。しょうがないんだけどね、こっちだって年取ってるんだから。

ライヴのオープニングは「Radio Nowhere」、それに続くのは日替わりで「No Surrender」だったり「The Ties That Bind」だったり、もうそれを読むだけで失神しそうな選曲。新旧いろんな曲を挟んで、本編の最後はさっき書いたとおり。アンコールの1曲目「Girls In Their Summer Clothes」に続いて、なんと、セカンド・アルバムのアウトテイク「Thundercrack」なんてのを演ってる。あとはお決まりの「Born To Run」や「Dancing In The Dark」を演って、最後は「American Land」で締め。「Thunder Road」は演ってないんだね。昨日(14日)のカナダでのライヴでは、アンコールにアーケイド・ファイアが飛び入りしたらしい。それは観てみたかったな。

太っても年とっても皆それぞれに年季の入ったいい演奏をしているんだけど、やっぱりクラレンス・クレモンズだけはかなりきつそう。以前麒麟さんが多重人格ブログに書いてらしたけど、管楽器って体力勝負らしいからね。特に彼のように、細かなテクニックよりも、肺活量と勢いでぶわーっと吹くタイプのプレイヤーは、年と共に技術が衰えてくるのも致し方ないだろう。だってもう彼65歳だよ。58歳のブルースより7つも上。ギターとかピアノならどんなに年を取っても練習次第で上達するんだろうけどね。噂されているように、きっと今回のツアーがEストリート・バンドとの最後の共演になるんだろう。寂しいけど、彼抜きのEストリート・バンドなんて最早考えられないし。

長くなってきたね。もしかしたらもうルナさん以外には誰も読んでないかも。ルナさんこれ読んで『Magic』買う気になったかな?それとも、やっぱりやめとこうと思われただろうか。初期のアルバムにはもちろんかなわないけど、58歳で現役のスプリングスティーンが作り得る、かなり高水準のアルバムだと思うけどな。ところで、この記事を書くために「Roulette」や「Thundercrack」を聴きなおそうと、4枚組ボックス『Tracks』をかけたら、もうそっちに引き込まれてしまって。ああ、やっぱりあの頃のスプリングスティーンは違うよ。

というわけで、『Magic』も悪くないけど、やっぱりこっちを先に聴くべきかな、とも思う。ここまで長々と書いてきた今回の記事の趣旨と全然一貫性ない結論だけど(笑)。一応アフィリエイト貼っておくね。お、中古だと2913円から?その値段なら問答無用でしょう。4枚のうち後半2枚はわりとどうでもいいんだけど、前半の2枚だけで2913円以上の価値あるからね。

Tracks.jpg Bruce Springsteen 『Tracks』
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2007年10月09日

彼女は虹

Bunnies.jpg

一昨年こちらで放映されたソニーのブラビアのテレビCMがきっかけでホセ・ゴンザレスが一躍有名になったという話を去年7月21日の記事に書いたんだけど、そのシリーズCMの第三弾が完成したようだ。

去年放映されていた第二弾は僕はあんまり好きじゃなかったんだけど、今回のはいいね。最初のカラーボールのヴァージョンに通じる雰囲気があるよ。

http://bravia.sony.eu/bravia.html

↑このソニーヨーロッパのサイトに行った方が、YouTubeにアップされてるものよりも綺麗な画質で見られるよ。できたらこっちで観てほしいな。最初ローディングに多少時間がかかるんだけど、その間に色にまつわる薀蓄があれこれ出てくるんで、それを読んでるだけでも結構楽しい。17世紀以前にはにんじんは紫だった、とかね。

ホーム画面が開いたら、中央右側のWatch our Play-Doh AdってのをクリックすればOK。デフォルトは高画質モードになってるから、あまりブチブチ切れるようなら、画面中央右側のLow-Resっていうのをクリックすればいい。それか、1分半のCMなんで、まず余裕を持って2分ぐらいかけて全部バッファしてから(そのまま再生していれば大丈夫)もう一度最初から観ればスムーズに観られるよ。

どうしてもこれで見られない場合は、こちらをどうぞ。




今回の音楽は、(当時の)ホセ・ゴンザレスのような無名アーティストじゃなく、ローリング・ストーンズ。1967年のシングル「She's A Rainbow」。イントロのニッキー・ホプキンスのピアノが実に印象的。僕は『Their Satanic Majesties Request』は持っていないので、この曲が入った自分で持ってるこのCD/SACDを載せておこう。

The London Years.jpg The Rolling Stones 「Singles Collection: The London Years」

一応アフィリエイトのリンク貼ったけど、これって7000円もするの?確か僕は4000円ぐらいで買ったはずだよ。まあ、この曲を聴くためだけにこんな3枚組を買う必要はないけどね。でも、現在の“世界最強の老舗ロックバンド”じゃなくて、まだ若くて黒くてピチピチしていた頃のストーンズに4時間近くにわたってたっぷり浸るのもいいよ。

なんだか趣旨がよくわからない記事になってしまったかな。このCM、また日本では流れないのかな。去年の記事のコメント欄でnekoちゃんも言ってたけど、日本でも受けそうな感じなんだけどね。
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2007年10月07日

円熟期 Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

ここのところ手に入れたアルバムにいいのが多すぎて、週一回のペースだととても年末までに気に入ったのを全部紹介しきれない。ちょっとこの週末はがんばってもう一記事書こう。こんなペースが続くかどうかはわからないけど。

Traffic And Weather.jpg Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

以前からコンスタントにポップな好アルバムを作り続けているファウンテンズ・オヴ・ウェインの通算4作目(シングルB面曲集は除く)。今年4月のリリースだから、こんなメジャーなアーティストのアルバムを今さら取り上げることにちょっとした抵抗はあるんだけどね。

ひねたギターの単音で入ってくる一曲目「Someone To Love」から、パワーポップ炸裂。ストレートなギターロックあり、沁みるバラッドあり、とろけるようなカントリー調あり、ひねくれポップあり、端正なワルツあり。全14曲、捨て曲一切なし(なんだか昨日も同じような書き方したな)。

ビーチ・ボーイズの「Little Honda」に対抗してか、二曲目「'92 Subaru」は、15年落ちのおんぼろスバルをバリバリにチューンアップして乗り回す男の歌(世界初、スバルのことを歌った曲?・笑)。

 田舎のレズのカップルから車を買うた
 グリーンピースのステッカーとニューハンプシャーのプレートは外して
 友達はみんな失敗やて言うけど
 まあ見ててみ
 新品のショックアブソーバーとアンチロックブレーキ付けて
 ワンタッチ・イグニッションもあったら便利やな
 完成したらまるで新車やで
 ライムグリーンのプラズマTVも入れて
 皮シートはフェイクには見えへんやろう
 グローブボックスにちょっとだけアルコール入れとこかな
 ムーンルーフ開けたらシート倒して星が見えるで
 そうそう、GPSもあるから今どこにおるかもばっちりや
 アラームは複雑すぎて、どないして入るかもわからんぐらいや
 ベイビー、そこ動くなよ、今行くからな
 この92年後期型の水色のスバルでな


てな感じ。なんだかちょっとしたユーモアが可笑しい。曲はもちろんとびきり格好いいんだけどね。ジャケットにコラージュされた車を見るとどうもこれはレガシーみたいだけど、この曲をこの界隈のスバル乗りの彼女に聴いてもらいたいね。

その曲もだし、アメリカ東海岸の主要ハイウェイを曲名にした「I-95」やアルバムタイトル曲「Traffic And Weather」もそうだけど、今までも今回もやたらと車に関係する曲が多い人たち。今作には更に飛行機関係の曲「Michael And Heather At The Baggage Claim」や「Seatbacks And Traytables」なんてのも入ってるな。

アルバム中、僕が一番好きな五曲目「Fire In The Canyon」は、綺麗なハーモニーに寄り添うオルガンが、軽快なピアノとペダル・スティール(またしても!)に乗って流れるカントリー調の曲。ああ、これもアメリカ西部のキャニオンを車でドライブする曲だね。よもやこのグループをオルタナ・カントリー・バンド扱いする人はいないだろうけど、そのうち僕が(所謂)オルタナ・カントリー名曲集なんてのを作ったら、この曲は確実に入るはず。

普通、アルバム中一番好きな曲が終わってしまうと、多少はがっかりするというか、気が抜けてしまうことがあるんだけど、このアルバムはそうはいかない。六曲目「This Better Be Good」は、これもコーラスが見事なミディアムテンポのパワーポップの見本のような名曲。

「Planet Of Weed」は、“マリファナの惑星”というタイトルに引っ掛けてか、曲の間ずっと調子っぱずれの手拍子や瓶を叩く音なんかが入っている。ザワザワしたパーティーで、後ろの酔っ払いたちが曲に合わせてリズムを取ろうとしてるのになんだかずれてるっていう感じ。笑い声や電話の音なんかも入っていて。バラエティーに富んだ沢山の曲ががちっとまとまってプロデュースされたという印象のこのアルバムを、終盤12曲目のこの曲がちょっとくだけた雰囲気にするのにうまく役立っている。

などなど、本当に全14曲についていちいち説明したいぐらい。よく、「アルバム全曲シングルカットできるような」という言い方をするけど、このアルバムもそれぐらい一曲一曲が粒より。


ジェリーフィッシュ、ELO、ビートルズ、ポウジーズ、カーズ、ジェイホークス、ユートピア、ジャム、ラトルズ、チープ・トリック、ブラー、サザンオールスターズ、… どの曲が誰に似ているというのは難しいけど、僕はこのアルバムを聴いていると、こういったアーティストの名前が次々に頭に浮かんでくる。パクリっていうんじゃないよ、こういった広範囲なパワーポップバンドの様々な要素をあわせ持った、とても優れたアルバムだ。これまでの彼らの作品の中でも、収録曲の完成度という意味で言えば、今作がダントツかもしれない。

ポウジーズといえば、このバンドのドラマー、ブライアン・ヤング(Brian Young)は、『Amazing Disgrace』〜『Success』期のポウジーズのメンバーだったんだ。ゲスト・ミュージシャンの項には元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハ(James Iha)の名前もあるな。まあ、そっちは僕にとってはわりとどうでもいいんだけどね。

今この瞬間の勢いだけでいえば、ポウジーズの名作曲チーム、ジョン・オウア(Jon Auer)&ケン・ストリングフェロウ(Ken Stringfellow)よりも、ここんちの二人、クリス・コリングウッド(Chris Collingwood)&アダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)の方が優れた曲を書いているかもしれない。このアルバムはプロデュースもアダムが自分でやってるし。まさに今が円熟期かも。もう10年も続いてるベテランだけど、これからもまだまだ楽しみなグループだ。

というわけで、今年度パワーポップ系では今のところ随一のアルバム。日本盤は最後にボートラが一曲多く入ってるらしいけど、このしっとりと終わるアルバムの後にどんな蛇足が入っているのか聴いてみたい気もする。
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2007年10月06日

最新の古典 Iron And Wine 「The Shepherd's Dog」

しばらく前から記事にしようと構想を練っていた何枚かのアルバムを全部すっ飛ばして、先週買ったばかりのこれについて書くことにした。アイアン&ワインの新作『The Shepherd's Dog』。

The Shepherd's Dog.jpg Iron And Wine 「The Shepherd's Dog」

アイアン&ワイン、これって、シンガー・ソングライターであるサム・ビーム(Sam Beam)の芸名といえばいいのかな。一人なのにバンド名みたいなのを付ける人。バッドリー・ドローン・ボーイことデーモン・ゴフ、と同じパターン。02年にデビューアルバムを発表してから、途中で何枚かのEPや共作アルバムも出しているけど、単独名義のフルアルバムとしてはこれが3枚目のはず。

僕は彼のアルバムは04年のセカンド『Our Endless Numbered Days』しか持っていなかったので、それとの比較しかできないんだけど、控えめなバンド演奏を伴った素朴なフォーク・アルバムといった趣だったそのアルバムに比べると、明らかに次のステップに進んだ感がある。いろんな意味で冒険をしているが、そのことごとくが功を奏しているように僕には思える。

以前に比べて印象的なメロディーの曲が多くなり、バラエティーに富んだ一曲一曲がきちんと独り立ちしている。なのに、ほとんどの曲のエンディングの音がほんの短いインタールードを経由して次の曲のイントロにつながっているので、アルバムを通しての統一感というものもきちんと出ている。ざっと読んだだけでは一体何のことについて歌っているのかよくわからない歌詞がほとんどなんだけど、いろんな曲のあちこちに共通した単語が出てくるところも、その統一感に一役買っているのかも。

「White Tooth Man」や「House By The Sea」のエキゾチックなメロディーにからむシタールやアコーディオンの音もたまらないし、アルバムのタイトル曲ともいえる「Wolves (Song Of The Shepherd's Dog)」の中間や後半部分がダブ処理されているのがすごく心地良い。

「Resurrenction Fern」のような、オーソドックスでありながら心にじんわりと沁みるメロディーの曲が、ギター(バンジョー?)とペダル・スティールで丁寧に紡がれるのを聴くと、僕はもう身動きもできないぐらいだ。僕は正統派のカントリー・ミュージックは別に好きでも嫌いでもないんだけど、それをルーツとした所謂オルタナ・カントリー(これもやたら幅広い曖昧な括りではあるんだけど)にこれだけ惹かれてしまうのは、きっとこのペダル・スティールの音に弱いからなんだと思う。

終盤、ニューオーリンズスタイルのよく転がるピアノが気持ちいい「The Devil Never Sleeps」に続いて、“ジャパニーズ・カー”と連呼されるサビの部分がやけに耳に付く「Peace Beneath The City」のちょっと不気味な曲調と不思議な音(オバケの出てくるときの音みたい)でこのアルバムを終えても悪くなかったと思う。が、その不気味な雰囲気を洗い流すような、とても綺麗な三拍子「Flightless Bird, American Mouth」でとどめを刺される。

最終曲を聴いているうちに、また最初の曲からからもう一回聴きたいという気持ちになり、実際に何度もそうしてしまうようなアルバムに出会ったのは、一体いつ以来のことだろう。このアルバムを買ってから今日でちょうど一週間だけど、もう何回聴いたかわからない。全12曲50分、退屈と思える瞬間が一瞬たりとも訪れない。最新版の古典的名作の誕生だ。


このオーソドックスでありながらも小技を効かせた絶妙なプロデュースをしているのは、ブライアン・デック(Brian Deck)。04年のアルバムも彼の手になるものだったけど、他に僕の持っているアルバムで彼のプロデュース作はあったかなと探してみたら、去年11月17日の記事で取り上げて、去年の僕のベスト・アルバム第八位に入れたジョシュ・リターの『The Animal Years』とか、以前クロムさんの記事を読んで興味を持って買ってみた、「足がつったら大声で知らせよう」でお馴染み(笑)カリフォーン(Califone)の『Roots & Crowns』がそうだった。

そういえばそのジョシュ・リターの記事でも、僕はしきりにその凝った音作りについて書いてるね。ブライアン自身、今挙げた全てのアルバムでドラムやパーカッションを演奏してるみたいだし(そういえば、今回のアルバムではパーカッションや手拍子が効果的に使われているな)。今まであまり注意を払ってなかったけど、ちょっとこのプロデューサーには注目してみよう。

アルバム・クレジットに演奏者の名前は載っているんだけど、誰がどんな楽器を演奏しているのかは書いていない。今ブライアンがドラムやパーカッションを演奏していると書いたのは、他のアルバムの表記を見ての憶測。

他にも何名かのゲスト・プレイヤーが参加していて、まずさっきのカリフォーンからジム・ベッカー(Jim Becker)。きっとブライアンが連れてきたのかな。彼はカリフォーンのアルバムの表記ではヴァイオリン、バンジョー、ベース、ループ、エレクトロニクス、パーカッション、シロフォン、ケイジャン・アコーディオン、マンドリン、カリンバとなっている、もの凄いマルチ・プレイヤーだ。

アイアン&ワインの前作はキャレキシコ(Calexico)との共作アルバムだったんだけど、きっとその時からの付き合いで、ジョーイ・バーンズ(ギター?)も参加。他には、ラムチョップ(Lambchop)のペダル・スティール奏者、ポール・ニーハウス(Paul Niehaus)の名前も。

僕が買ったのは、前回のCDショップガイドの記事にちらっと書いたけど、アナログ盤。例によって、アルバム全曲のMP3音源が無料ダウンロードできるとのステッカーに釣られてのこと。残念ながら重量盤じゃないんだけど、それなりに音はいいし、それにこのアルバムのA面B面各6曲ずつの流れがよくわかったのも思わぬ収穫。

ちょっとした問題があって、実は僕がMP3音源をダウンロードしたときに「このフォルダは無効であるか、または壊れています」と表示が出て、聴けなかったんだ。そこで発売元のサブポップのウェブマスターにその旨をメールしたら、なんとほぼ折り返しで回答。再ダウンロードできることになって、無事解決。最近、海外からの通販でこういう問題がいろいろあってメールでやりとりすることも多いんだけど、こんなに素早く的確に解決してもらったことはなかったかも。メールの文面も杓子定規じゃなくて親近感が持てるものだったし。かなり好感度アップなできごと。

サム自身が描いたこのちょっと狂犬病っぽい黄色い目の犬のジャケに戸惑う人もいるかもしれないけど(裏ジャケはこれに輪をかけて不気味)、これは僕の来年初頭のベストアルバム記事でかなり後ろの方に出てくる(=高順位)可能性が高いアルバムだ。今また1曲目に戻って聴き始めたよ。
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