2007年07月28日

湖畔の音楽 Great Lake Swimmers 「Ongiara」

gls_boat.jpg


荒涼としているけれど寒々しい風景ではない。薄曇りの空。海かと見紛うほどの大きな水面。遠くを横切る船は音も無くその上をゆっくりと進む。全身で受ける、潮の香りがしない乾いた風が心地良い。

オンギアラという不思議なアルバムタイトルは、このアルバムが当初予定されていた、オンタリオ湖にある島での録音に向かう船の名前から取られたという。結局そこでの録音は一部だけが採用されたのみで、このアルバムの大半は同じオンタリオ州のロンドンという町にあるエオリアン・ホールという何世紀も前に建てられた建物で収録された。

Ongiara CD.jpg Great Lake Swimmers 『Ongiara』

6月24日のyascd010に前作からの曲を収録したグレイト・レイク・スイマーズの通算3枚目となるアルバム。以前から細やかな音の響きを大切にするグループだったけれど、今作はそういった録音環境のお陰で実に深みのある音が聴ける。6曲目「Put There By The Land」のイントロでアコースティック・ギターの弦を擦る音の残響を聴いただけで、それがどんな空間で録音されたのかが計り知れるようだ。

全曲を手がけるギターとヴォーカルのトニー・デッカーを中心とした3人組。バンジョー、チェロ、オルガン、鉄琴、アップライト・ベース、スティール・ギターというアコースティック楽器の音色が彼のか細いヴォーカルを静かに引き立てている。

この憂いのあるメロディー、淡々と歌われるか細いヴォーカル、冒頭に書いた風景を思わせる静かな音の雰囲気、誰かに似ていると思ったら、1970年前後のニール・ヤング。もっとピンポイントで言うと、『After The Gold Rush』での彼を髣髴とさせる。カナダという土地はこういう音楽を生み出す土壌があるんだろうか。

たまたま7月8日の「LPと算数」のコメント欄でLPとCDの音の差という話になっているけれど、これは僕は是非アナログで聴いてみたいと思う音だ。もちろんCDでもきちんとした音が聴けるんだけどね。実は僕はこのCDを他の何枚かと一緒にアマゾンUKから買ったので、オリジナルのカナダ盤やアメリカ盤なら前2作と同様にデジパックだったのに、普通のジュエルケースに入ったEU盤が届いてしまった。そういう諸般の事情もあり、トリミングされたCDのジャケとは違う見開きジャケだというLPも通販で注文してしまった。

Ongiara LP.jpg 

一緒に注文したのがこの、500枚限定だという手書きナンバリング入りの6曲入り12インチEP『Hands In Dirty Ground』。ジャケットに3種類の色のバリエーションがあるらしいから、あと2枚買っとこうかな。別にそんな何枚も持ってたいほどいいジャケってわけじゃないんだけど、限定モノに弱い僕。

Hands In Dirty Ground.jpg

7月14日の「異論な意見」のコメント欄では、クロムさんとの間で「日本の音楽雑誌で無視され続けるアーティスト」の話で盛り上がっているんだけど、この人たちも僕から見ればそんなグループの一つ。2003年のファーストアルバムから一貫してこの独特の雰囲気を持った音作りを続け、こんなに滋味のある素晴らしいアルバムを出したというのに、僕がざっと調べた限りでは日本盤発売の予定はなし。最近あまり買ってないから断言はできないけど、過去数年間に日本の音楽雑誌で彼らのことを読んだ覚えもない。なんとももったいない話だね。



<8月12日追記>

Hands In Dirty Ground.JPGコメント欄で「もしかすると入手できないかも」と書いた『Hands In Dirty Ground』が、何の前触れもなく送られてきた。よかった〜。3種類の色のバリエーションがあるらしいと書いたが、僕のはこの写真のとおり、ちょっと茶色がかったグレー。なんだ彼らのイメージにぴったりの渋い色で嬉しい。手作り感満載の、30cm X 60cmの紙を二つに折り曲げただけのしょぼい簡素なジャケットがマニア心をくすぐる。500枚限定のうち、僕の受け取った手書きシリアルナンバーは362番。別に番号順に出荷してるわけじゃないんだろうけど、まさかまだ138枚も残ってるのか?とちょっと疑惑。

早速聴いてみた感想を少しだけ書くね。A面1曲目は、yascd010にも収録した「Song For The Angels」の“Miracle Version”。冒頭からギターのフィードバックノイズが響き渡る、彼らにしては異色のアレンジ。だけど、これがまた格好いい。何がミラクルなんだろう?って思ってたら、この曲が収録されたのが、オンタリオのロンドンにあるHouse Of Miracleという場所だったというだけの話。なんだ。

このEPのタイトルにもなっている2曲目「Hands In Dirty Ground」は、セカンドアルバム『Bodies And Minds』のアウトテイク。ボツにはしたけど発表したかった、というのが理解できる佳曲。

A面3曲目「I Saw You In The Wild」がセカンドアルバム、B面3曲目「This Is Not Like Home」がファーストアルバムにそれぞれ収録されていた曲の、ライヴヴァージョン。「I Saw You In The Wild」の方はドイツで収録されてるな。そういえば、このアルバムに封入されている紙(ブックレットなんて代物じゃない)には、あちこちの地図がコラージュされてるけど、よく見たらここに収録された6曲が録音された場所の地図みたい。うん、ドイツ語らしきのもあるね。

B面1曲目「To Leave It Behind」も、『Bodies And Minds』のアウトテイク。Band Versionとなっているように、こちらの方がオリジナルテイクよりもやや派手(といっても、彼らレベルの「派手」だからね)。

僕にとって一番の聴きモノだったのが、B面2曲目「Innocent W.Y.D.」。このタイトルじゃ咄嗟にわからなかったけど、これはトム・ウェイツの「Innocent When You Dream」のカバー。こないだ別記事で書いたジェイソン・ムラーズのライヴが収録されたシカゴのシューバスでのライヴ録音。残念ながら僕はトム・ウェイツの「Franks Wild Years」もベスト盤の「Beautiful Maladies」も持ってなくて、これまではエルヴィス・コステロがカバーしたバージョンでしかこの曲を聴いたことがなかったんだけど、これが珠玉の出来。トム・ウェイツって、特に最近の曲は本人がダミ声でメチャクチャな歌い方をするからカムフラージュされてしまってるけど、他人がカバーすると、本当に綺麗なメロディーの曲を書くんだってことがよくわかるね。これもその好例。

ちなみにコメント欄でのカブ子さんの質問。このジャケには一体いくつの楽器が隠れているか。正解は5つですね。この最初の記事に載せた白いジャケで確認できるのがほぼ全てです。筒状のもの(丸太のようです)にはちゃんと鍵盤がついてますよ。

いや、これは買って正解だったね。Lunaさんに乗せられたわけじゃないけど、あと2色も買おうかな。どうしよう、ピンクとか全然似合わない色のが送られてきたら。


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