2007年07月14日

異論な意見

海外に住んでいて不便なことのひとつが、日本の雑誌がオンタイムで手に入らないこと。書店の通販とかを利用すればいいんだろうけど、たかだか数百円の雑誌にプラス数百円の送料(しかも毎月)出すのもちょっと気が引けるし。なので、自分が日本に出張に行ったときや、逆に日本から出張者が来るときなどに、気になるバックナンバーも含めて入手することにしている。

レココレ7月号6月中旬に発売になっていたレコード・コレクターズの7月号をつい先日手に入れ、これで5月号の60年代から3回連続だった「ロック・アルバム・ベスト100」が全部揃った。レココレのこの特集については、sugarmountainさんがご自分のベスト25について語っておられる興味深い連載(?)に発展させられているし、クロムさんもこの7月号が出てすぐの頃に記事で(皮肉を込めて辛辣に)言及されているので、一ヶ月も経った今頃になって僕がそれについて書くのもえらくマヌケな感じだけど、今週末に書こうと思っていた別の記事の構想がうまくまとまらないので、息抜きにこの話をすることにしよう。

選出された80年代の100枚のうち、自分でLPないしCD(あるいは両方)を持っているのが56枚(レンタルで借りてカセットで持っているのを含めると62枚)。カラーページに載ったトップ35に関して言えば、27枚(カセット含めると29枚)を持っている。5月号、6月号の同じ特集に比べても、格段に愛着の持てるリストだった。やっぱり自分は80年代から洋楽を聴きはじめたんだと実感。

こういう企画って、それぞれの雑誌のカラーが出ているのが面白いんだし、いろんな人がそれぞれ違った趣味の観点から選んだアルバムが合致しないのは当たり前だから、選ばれた100枚(3号合計で300枚)についてあれこれ言うのも筋違いだと思うんだけど、洋楽雑誌というもの自体にどんどん勢いがなくなってきている中ではまだかなりの影響力を持っていると思われるこの雑誌が「創刊25週年企画! ○○年代ロック・アルバム・ベスト100」と題して発表するからには、もう少し「なるほど、流石レココレ」と言われるようなものになってもよかったのにな。

この7月号の読者からのお便りのコーナーでも、6月号で1位に選ばれたアルバムや選出方法自体に対する疑問の声が上がっているが、選出方法についてはもう少し考えた方がよかったんじゃないかなと僕も思う。せいぜい数十人とかが読んでるだけの僕のブログで「去年のベスト10アルバム発表!」とかやってるのとは違うんだから。まあ、そういう声を掲載するということは、雑誌側でもそういう問題をちゃんと認識しているということなので、それは充分評価に値すると思うんだけどね。

例えば、「80年代を代表するブルース・スプリングスティーンのアルバム」は、彼の創作意欲がピークに達していた「The River」でも全世界的なメガヒットになった「Born In The U.S.A.」でもなく、彼が言葉に重きを置いたシンガーソングライターに回帰し、アコースティックギターの弾き語りをカセットレコーダーで録音した「Nebraska」なのだろうか?

先の読者の声でも指摘されていたけど、毎月80位台ぐらいのアルバムって、誰か一人の評論家が1位ないし高得点をつけたという理由でその位置にランクインしていると思われる。そう思って「選定者アンケート」の方のページを見てみると、萩原健太さんがこの「Nebraska」を1位に選んでいるね。きっと彼以外にこのアルバムを選んだ人はいなかったんだろう。でも、60〜70年代ポップス/ロック愛好家の彼がそのページに自ら書いているように、彼は明らかに80年代の音楽を好んで聴いてはいないのに、その彼がやむなく(?)選んだアルバムがこうして選出され、その同じアーティストが残した(一般的にはより評価の高い)別のアルバムが100位以内に顔を出してもいないことに、他の評者や編集者の誰も疑問を抱かないのが不思議。

他にも80年代を代表するという意味では、70年代にはまだデビューしてなくて、90年代には消えてしまったようなアーティストも沢山いて、そんな中でも、当時評論家の評価もそれなりに高かったし、ヒットもしたアルバムがいくつもあると思うんだけど。例えば、ヒット曲「Come On Eileen」だけでなく全体を覆うケルト風味がいかしたディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの『Too-Rye-Ay』や、ティアーズ・フォー・フィアーズの初期の2枚のアルバムを落選させてまでも、レココレという雑誌は本当にディスチャージの『Why』と『Hear Nothing, See Nothing, Say Nothing』を2枚ともを自分の雑誌が選ぶベスト100に入れるべきだと考えたのだろうか。

いや、ディスチャージのその2枚、僕も両方持ってるけど、確かにハードコア・パンクの名盤だと思うよ。別にその2枚に文句をつけたいわけじゃない。でも、この雑誌のカラーということを差し引いても(特に普段からハードコアをプッシュしている雑誌でもないけど)、もうちょっとバランス感覚を持ってやった方がよかったんじゃないかなあ。

なんだか文句ばかりになってしまって、きっとクロムさんあたりからは「そんなに音楽雑誌や音楽評論家に期待する方が間違ってる」なんて言われそうだけど、僕が今でも毎月買い続けている唯一の雑誌として(ミュージック・マガジンは今年に入ってついに四半世紀に及ぶ連続購読を停止)、もう少し読み応えのあるものにしてほしいと思うから。


さて、これだけでも充分長い記事だけど、せっかくだからレココレのランキングからは落とされた80年代の名盤のことにでも少しだけ触れようかな。去年2枚組のデラックス・エディションとして再発されたばかりなのを、先週750円相当という超安価で入手できたので、その自慢がてら。

Songs From The Big Chair  Deluxe Edition.jpg Tears For Fears 『Songs From The Big Chair』

ファースト・アルバムでも既に確立していた、当時はまだ新鮮だった生音とシンセの音の組み合わせもさることながら、やっぱり曲自体の良さと(特にLPではB面に当たる部分の)構成の見事さが光る。どうしても「Shout」、「Everybody Wants To Rule The World」というヒット曲ばかりが目立つが、これは是非じっくり通して聴いてほしいアルバム。

今回の2枚組デラックス・エディションの1枚目には、オリジナルアルバム全部とシングルB面曲が入っているんだけど、びっくりするのは、どちらかというとポップなアルバム曲に比べて、シングルB面曲のアヴァンギャルドなこと。ロバート・ワイアットの「Sea Song」なんてマニアックな曲を取り上げてるし。テープの回転数をいじったと思しき「Broken Revisited」なんて、夜一人で聴くと恐いよ。僕は当時シングルまで追っかけるほど彼らのファンというわけじゃなかったんだけど、ヒットチャートで知った「Shout」とかのシングルを買ってB面の「The Big Chair」なんてとんでもない曲を聴いた人たちの呆気に取られた顔が目に浮かぶよ。僕はこれらの曲を聴いて、また彼らへの評価を高くしたんだけどね。

2枚目はアルバムからのシングルカット曲(なんと全8曲のアルバムから5曲もシングルカットされてた)のいろんなバージョン。さすがに同じ曲ばかり何度も何度も出てくるのでちょっと飽きてくる。こういうところが、同じデラックス・エディションでも貴重な音源を2枚目に収録したボブ・マーリーの『Catch A Fire』とかヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『Velvet Underground & Nico』なんかとは格が違うね。

あと、一つだけ文句を言いたいのは、僕はこの06年盤の前にリマスターして再発されていたボートラ7曲入りの同じアルバムをCDで持ってるんだけど、今回20曲ものボートラが入ったこの2枚組を買ったら当然それら7曲は重複するので前のは売ろうと思ってたのに、なんと7曲のうち1曲だけは06年盤には未収録。そんなメチャクチャにアヴァンギャルドなB面曲でもないのに、なんで?2枚目に同じ曲のよく似たバージョンを何度も入れるぐらいなら、この曲を入れればよかったのに、なんでこんなことするかな。これでこの99年盤も持っとかないといけなくなったよ。かくして僕の家からCDは一向に減らず。

これ以上引き伸ばすと話がとんでもなく長くなるので、こちらもまた名盤であるファースト『The Hurting』の、かわいい“悩める子供”のジャケ写だけ載っけておこう。

The Hurting.jpg Tears For Fears 『The Hurting』


posted by . at 08:56| Comment(16) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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