2007年06月04日

ゴキゲンなお天気マーク達 The Holloways 「So This Is Great Britain?」

イギリスの音楽業界って、かなりメディア主導みたいなところがあって、ひとつ売れたバンドが出てきたら、それに似たバンドをひとまとめにして○○ムーブメントとか言って盛り上げようとすることが多い。当然玉石混交になるし、そんな風に人工的に作られたムーブメントが健全なわけはないんだけど、リスナー側からすればひとつ好きなバンドがあればそれに似たような傾向の別のバンドを探しやすいとか、あるいはバンド側にすればうまくそういうブームに乗っかってデビューできるとか、まあ利点が全くないわけでもない。

たとえば僕が音楽を聴きはじめたころはちょうどパンク/ニューウェーヴが盛り上がっていた時期で、五大パンク・バンドとかいう括りで(これはもしかしたら、僕がその頃読んでいた日本側の雑誌で勝手にでっちあげたのかもしれないけど)セックス・ピストルズ、クラッシュ、ダムド、ストラングラーズ、ジャムがパンクの代表としてよく紹介されていた。その5組が本当に代表格なのかどうかはともかくとして、まあ初心者にはそうやってまとめてもらえると手っ取り早く覚えられるので便利ではあった。

ちなみにその5組を僕が好きだった順に並べると、(1)ジャム→(2)クラッシュ→(3)ストラングラーズ→(4)ピストルズ→(5)ダムド、てな感じなんだけど(1と2は僅差、3と4は入れ替えも可)、きっとクロムさんのご趣味とは完全に逆なんじゃないかなって勝手に思った。いや、今日の記事の趣旨とは関係なく、クロムさんとの趣味のすれ違い度合いを面白がってるだけなんだけど。

一昨年はフランツ・フェルディナンドがドカンと売れて、それに似たバンドがバラバラッと紹介されて、中には僕の好きなフューチャーヘッズやドッグス・ダイ・イン・ホット・カーズも含まれていたんだけど、肝心のフランツ・フェルディナンドのセカンドアルバムが大いにずっこけた(売上的にはね。内容はそんなに悪くないと思ったんだけど)のに歩調を合わせて他のバンドも低迷。

去年はなんといってもアークティック・モンキーズのヒットが大きかった。去年の7月28日の記事「人口密度の夜」に書いたけど、僕はどうせまたハイプだろうと最初は高を括っていたんだけど、聴いてみたら思いのほかよかった。去年のベスト20を選んだ1月29日の記事「yascd006」では、セカンドアルバムはきっとファーストの半分も売れないだろうなんて書いて、実は今日の記事にこないだ買ったそのセカンドアルバムのこと(果たして前作の半分も売れないのか?)も絡めて書こうかと思ったんだけど、そんなことをするとまた短編小説並みの論文になってしまうので割愛。

当然イギリスのプレスは、その手のバンドをガンガンとプッシュするよね。雨後のタケノコ戦略。去年から今年にかけて、また数え切れないほどの新しいバンドがデビューアルバムを発表している。で、去年アークティック・モンキーズをずっと聴かなかったのと同じ理由で、僕はそのほとんどのバンドをスルーしている。実は今晩、そういうイギリスの新人バンドの一つであるヴュー(The View)のライヴがオークランドであるんだけど、どうももう一つ食指が動かない。

そんな中、なんとなくジャケットに惹かれて先日東京で買ったCDがある(ジャケ買いだけでなく、3ヶ月限定スペシャルプライス2200円というのも魅力的だった。まあ、僕が買ったのは新品未開封で更に安くなっていたんだけど)。それが今日取り上げる、ホロウェイズの『So This Is Great Britain?』だ。

So This Is Great Britain? The Holloways 「So This Is Great Britain?」

雑踏の音に混じって、ディストーションをかけたエレキギターの独奏によるエルガーの「威風堂々 第一番」のフレーズでアルバムが始まるところは、バッドリー・ドローン・ボーイの『Born In The U.K.』と全く同じ。両アルバムとも本国ではほぼ同時に発売されているので、どちらがどちらの真似をしたというわけでもなさそう。お互いびっくりしたろうね。どちらも「こんなしょーもない国だけど、ここに生まれたからには俺は英国人だから」といういかにも英国的な自虐的な歌詞の曲の冒頭で皮肉っぽく使われている。このアルバムの日本語解説書にはこの「威風堂々」のことを「第二の英国国家といわれる」って書いてあるんですけど、miniraさん、Lunaさん、そうなんですか?

そのアルバムタイトル曲は、小気味いい音のギターを中心としたアップテンポの曲。と思っていたら、間奏ではいきなり更にテンポを上げてスコットランド民謡風のギターソロ。うわー、かっこいい!

二人いるギタリストのうち一人が曲によってはフィドル、もう一人がハーモニカを演奏し、音に彩りを添える。映画「タイタニック」で、船内のがやがやとしたパブで主人公たちがバンドの演奏に合わせて踊るところがあったけど、ああいう感じ。こういうごった煮みたいな音楽にフィドルの音ってよく似合うよね。ちょっと音楽性は違うけど、昔でいうとデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズみたいな感じ。なんでもこの人たち、バスキングもしていたということだけど、こんなのが道端で演奏してたらそりゃ盛り上がるだろうね。あ、そうだ。クロムさんにリクエストされてた、ヴァイオリン入りロック曲yascdにこれ使えるよ。メモメモ。

さっきアークティック・モンキーズを引き合いに出そうかと思ったって書いたけど、それは良くも悪くも似た曲調の多いモンキーズに比べて、この人たちの曲、特にイントロが実に印象的で魅力的なものが多いっていうことだったんだ。なるほど、そういうところもバスキング上がりだからなのかな。かっちょいいイントロでまず客をぐいっと引き付けるという。もちろん、バスカーが誰でもそんなかっちょいい曲を書けるかというとまたそれは別問題なんだけどね。

上に載せたジャケの左下に4つのお天気マークが載ってるけど、ブックレット内の歌詞にもそれぞれこの4つのマークがついている。それが歌詞と関連してるようで、がんばれ元気!的な曲は晴れマーク、とほほ振られちゃったよ…的な曲には雨マーク、てな感じで。で、このアルバムからは既に3曲がシングルカットされているんだけど、それぞれのジャケはこのお天気マーク。このいい感じの(と僕は思っているんだけど)アルバムジャケもそうだけど、そういうビジュアル的にしっかりした意思を持った人たちっていいよね。となると、ここはやっぱりもう一枚最後にシングルカットされるのかな。晴れ、雨、曇りがもう出たから、残るは雷マーク。ブックレットでこのマークが使われてるのは4曲か。どれになるのかな。

この記事のためにいろいろ調べてたら、この人たち来月来日するんだね。いいな、絶対にこういうバンドはライヴで観た方が何倍もいいだろうからね。nekoちゃん、アークティック・モンキーズ行きたかったのなら、これお勧めだよ。予習するなら、これまたとびきり格好いいボーナストラックが入った日本盤をどうぞ。輸入盤とあんまり変わらない値段設定だし。

さて、これだけ褒めちぎったこのバンド、アークティック・モンキーズ人気とは関係なくブレイクするだろうか。なんとなく、これだけで終わってしまいそうな気もするんだけどね。これまでどれだけこういう優れたバンドが、移り気なメディアのプッシュがなくなったばかりにアルバム1〜2枚で消えてしまったことか。まあそれにしても、これだけの出来のデビューアルバムにリアルタイムで出会えただけでもいいや。これで一度でも生で見られれば最高なんだけどな。

posted by . at 11:52| Comment(27) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする