by Luna at 2007年05月29日 19:00
兄ィ、次回yascdのテーマが決まりましたね。“母に捧げるストレス解消ミュージック”でお願いします。
by ひそそか at 2007年05月29日 22:19
ストレスをためないで心安らかに引越しするために聴くといい曲ってなんでしょうか。心は休まるけど、気力は充実して、てきぱきと手が動き、さっさと準備ができるような曲、求む!
by minira at 2007年05月30日 05:10
私もストレス解消音楽切望中です。。。
by ひそそか at 2007年05月31日 03:00
と、なんだかやたらと消耗した人が多かった5月末から既に3週間も経ってしまった。横着してたわけじゃないんだよ。正直言って、引き受けてみたはいいものの、今回のが今までで一番難産だったね。というのも、まあまたいつもの僕の個人的なこだわりに過ぎないんだけど、単なる耳障りのいいBGM用みたいな曲ばかりを集めてもしょうがないな、と。そんなのならヒーリングミュージックのCDが巷にいくらでもあるしね。
それに、何を聴いてストレス解消するかなんて、それこそ十人十色。同じピーッてフィードバック音を聴いてイライラする人もいれば和む人もいるし。ここにこれから並べる曲だって、人によってはもしかしたら聴いてるだけで眉間にシワが寄ってくるようなのもあるかもしれない。あとね、miniraさんのリクエスト、難しすぎ!(笑)
まあ、文句ばかり言ってるようだけど、ほんとはいつも以上に楽しく選曲してたから、リクエストされた方々もご心配なく。それでは、おかんのカルシウム補給を促し、ミニ怪獣の引越しを円滑に進め、そしてヒッタイト人のおでこに更に磨きをかける(違う?)yascd010、どうぞ。
1.チャーリー・ハンター・カルテット・フィーチャリング・ノラ・ジョーンズ(Charlie Hunter Quartet featuring Norah Jones)
More Than This
『Songs From The Analog Playground』

まずはオーソドックスにノラ・ジョーンズでもと思ったんだけど、いろんな人が既に持ってるであろう彼女の大ヒットアルバムから選んでもつまらないので、これにしよう。デビュー作『Come Away With Me』を遡ること二年、8弦ギターを操るジャズギタリスト、チャーリー・ハンターの01年のアルバムに彼女が客演し、ロクシー・ミュージックの名曲「More Than This」をカバーしたヴァージョン。後のアルバムで開花するあのスモーキーな歌声が既にここで堪能できる。
2.ペンギン・カフェ・オーケストラ(Penguin Cafe Orchestra)
Air A Danser
『Penguin Cafe Orchestra』

ある時は壮大に、また時にはこじんまりと可愛い音楽を奏でる、(特に日本で)一世を風靡したペンギン・カフェ・オーケストラを覚えている人も多いだろう。久し振りにLPを引っ張り出してきて、八木康夫さんの詳細かつ楽しいライナーを、沢山のペンギンの写真やイラスト(クールミントガムの包み紙やポラロイドで撮ったペンギンの交尾の写真なんかも)と一緒に懐かしく読み返してみた。80年代初期の、高校生の僕にとっては未来都市みたいに思えた東京のことを思い出した。
3.デイヴ・エドモンズ&ニック・ロウ(Dave Edmunds & Nick Lowe)
Take A Message To Mary
『Sing The Everly Brothers』


今回こそはいつものパターン(パブロックとSSWとスプリングスティーン)を避けて作ろうと思ってたんだけど、なんだかんだ言ってこれでyascd登場3回目となるデイヴ・エドモンズが、ニック・ロウと一緒にエヴァリー・ブラザーズをカバーしたEPからのこの曲だけは入れたいな。もともとはロックパイル(デイヴとニックのバンド。右の写真)唯一のアルバム『Seconds Of Pleasure』の初回盤に付いてた付録で、僕もそれは持ってたんだけど、例によって7インチ盤は全部紛失。後に買ったそのアルバムの再発CDにボートラとして収録されたので再入手。二人の透き通ったアコースティックギターの音と綺麗なハーモニーが心地よい。
4.アン・サリー(Ann Sally)
Disney Girls
『Day Dream』

日本在住の韓国人で、お医者様でもある彼女が03年に2枚同時発売したアルバムから、このビーチ・ボーイズのカバーを。ブライアン・ウィルソンが書いていない中期ビーチ・ボーイズの曲(これはブルース・ジョンストン作)で最高の出来だと僕が思うこの曲を、オリジナルをも凌ぐこんなにしっとりとしたバージョンに仕上げたのは見事。聴いていて心が和む声。彼女、もうすぐ新作が出るんだね。楽しみ。
5.グレイト・レイク・スイマーズ(Great Lake Swimmers)
Song For The Angels
『Bodies And Minds』

とてもデリケートな弦の音をちりばめた、静かなアルバム。なにしろこんな覇気のない(笑)ポツポツとした曲が一曲目なんだからね。これは05年に出たセカンドだけど、ファーストアルバムから一貫して流れるこの侘び寂びのような雰囲気を気に入っていて、実は僕もあまりよく知らないバンドなんだけど、つい最近出たサードアルバムを試聴もせずに先日通販で買ったところ。行ったことないんだけど、カナダってなんかいいなと思わせてくれる、トロント出身のバンド。
6.ジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)
Mr. Curiousity
『MR. A-Z』

今月になって発掘された11月30日「怒涛の四日間」記事のコメント欄で、かえでさんにピアノ特集yascdに入れるべきだったと指摘されたこの曲を今回のyascdに入れよう。そのコメント欄にかえでさんと僕がもう散々書いたけれど、優れたメロディーに文才溢れる歌詞を乗せ、おまけにこんなソプラノボイスで歌ってしまえるなんて、凄い才能だよね。ところで上のアフィリエイト先は通常盤のCDなんだけど、DVD付きの「最強版」
7.ハーフセット(Halfset)
Marks Tune
『Dramanalog』

このジャケには見覚えある人もいるかも。8月12日「そそるジャケ特集 第一回」で取り上げて、ひそそかさんが電球フェチであることを告白したんだった。そこにも「エレクトロニカとアコースティック楽器の融合」なんて書いたけど、聴いている間心地よい時間が流れるインストゥルメンタル曲。この曲自体にはそれほどアコースティック楽器は使われてないけど。こういう地味だけどいい音楽を沢山紹介してくれたブログ「何世紀分もの八月」は、残念ながら活動停止してしまったけれど、幸いブログ自体はまだ残ってるので、今でも僕は時々過去記事を掘り出しては未知の音楽を見つけてるよ。
8.フェアグラウンド・アトラクション(Fairground Attraction)
A Smile In A Whisper
『The First Of A Million Kisses』

エリオット・アーウィットの有名な写真をジャケに使ったフェアグラウンド・アトラクションの88年のアルバムのオープニング曲。グループ自体はすぐ解散してしまって、ボーカルのエディ・リーダーはこのあとソロで活動するんだけど、マーク・E・ネヴィンという優れた作曲家とエディが一緒にこんな素敵なアルバムを残せたことが奇蹟。ちょっとアコースティック・ジャズっぽい現代のフォークソング(20年も前だけど)。
9.トラッシュキャン・シナトラズ(Trashcan Sinatras)
Weightlifting
『Weightlifting』

これまで出したアルバムの数に比して、彼らがネオアコ(ネオ・アコースティック。こんな呼び方をするのは日本だけらしいけど)界の大御所扱いされているのは、長い活動暦のおかげもあるけれど、やはり90年の名作ファースト『Cake』の鮮烈な印象故のこと。この曲は04年に8年ぶりに発表された4作目から。かつての、春の朝に土手を自転車で駆け抜けるような瑞々しい曲に加えて、こういう薄曇りの夕方に自転車を押して帰るような曲が増えてきたのが印象的。全身に受ける気持ちいい風の代わりに、河川敷の風景を慈しみながらゆっくりと歩く楽しみが増えたような。
10.アーチャー・プレウィット(Archer Prewitt)
Way Of The Sun
『Wilderness』

シー・アンド・ケイクのギタリスト、アーチャー・プレウィットの04年のソロアルバムのオープニングを飾る曲。キラキラとしたシンセ音のフェードインに始まり、アコースティックギターと彼の歌が、淡々とした曲調はそのままにくるくると調子を変えて展開し、おごそかに「Ave Maria」のフレーズまでが出てくるなんて(歌詞カードでは「Have Maria」となってるけど)、まるで素朴な作りの万華鏡を覗いているような曲だ。派手なところはないんだけれど、憑かれたように聴き惚れてしまう。この綺麗なジャケのイラストも彼自身の手によるもの。
11.タン(Tunng)
Jenny Again
『Comments Of The Inner Chorus』

これも僕は「何世紀分の八月」で教えてもらった秘密の宝物みたいなアルバム(でも、僕が通販で買ったあと、実は意外にNZのあちこちのCD屋でフィーチャーされていたのを発見。結構メジャーだったんだね)。イギリスの二人組ユニットによるフォークトロニカ(フォーク+エレクトロニカ)。この曲はアルバム中ではどちらかというとフォーク寄りかな。訥々と歌われていく曲の途中で時折り上品に挿入される台詞と不思議な装飾音が心地よい。
12.チャリ・チャリ(Kaoru Inoue Presents Chari Chari)
Plain Sailing
『In Time』

前回のyascdのコメント欄でにんじんさんに言われた「1曲は日本人アーチストを入れるというシバリ」を今回から適用してみよう。ディスカバー・ジャパン(笑)。とはいえ、これはちょっと反則っぽいかな。別に日本語で歌ってるとかいう訳じゃないからね。テクノミュージシャンでありDJでもある井上薫の変名チャリ・チャリの02年のアルバムから。基調はテクノとはいっても、この曲のようにアコースティック楽器を使ったちょっとレイドバックしたレゲエ調の曲とか、ダンスフロアでなく家や車でも気持ちよく聴ける優れモノのアルバム。
13.ベン・ワット(Ben Watt)
You're Gonna Make Me Lonesome When You Go
『North Marine Drive』

後にトレイシー・ソーンとエヴリシング・バット・ザ・ガールを結成し、どんどんお洒落でゴージャスな音に偏向していった彼がまだ素朴な音楽を演っていた83年のソロアルバム。アルバムタイトルの「北の海岸沿いのドライブ」とこのジャケに象徴される、寒々としたアコースティック・サウンドが印象的だった。これはそのアルバムを締めくくる、ボブ・ディランの名曲をボサノバ調にカバーしたもの。ディランのオリジナルだってもちろんいいんだけど、この音にこの声で「お前がおらんようになったら寂しなるよ」なんて歌われると、ほんとに寂しくなってくる気がしてしまう。
14.キャサリン・ウィリアムズ(Kathryn Williams)
White, Blue And Red
『Old Low Light』

このジャケにも誰か見覚えあるかな(それともあんな追記なんてかえでさん以外には誰も見てなかったんだろうか)。12月24日の「女の子ジャケ特集」にどんどん追記していったうちの一枚。イギリスの女性シンガー・ソングライターの02年のアルバム。その「女の子ジャケ特集」には「ジャンル分けすると、ジャズ/ボサノバ/フォークということになるんだろうか。非常にスムーズで聴き易い音。スザンヌ・ヴェガとかノラ・ジョーンズとかを思い出す」と書いたね。今聴き返してもその通りだと思う。ジャケに惹かれただけだけど、買って正解のアルバムだった。500円だったし。
15.ダコタ・スイート(Dakota Suite)
Your Vigor For Life Appals Me (Part 1)
『Morning Lake Forever』

名前しか知らなかったグループのこの紙ジャケCDが、先日の東京出張の際に近場のCD屋で在庫一掃セールで500円で出ていたのでジャケ買いしてみた。ダコタなんて名前からアメリカのバンドなのかと思ってたら、イギリス人なんだね。これはそのCDから取った、水墨画のようなピアノ曲。これだけ聴くと、ちょっとブライアン・イーノの『Music For Airports』っぽくもある。しかしこのアフィ先のアマゾンマーケットプレイス、ユーズド商品5865円からってのも凄いね。5365円も得した。
16.タマス・ウェルズ(Tamas Wells)
When Do We Fail Abigail
『A Mark On The Pane』

今回のテーマでyascdを作るにあたって一番困ったのが、このアルバムからどの曲を選ぶかということだった。極端な話、これ一枚そのままコピーした方が、僕がどんな選曲をするよりよっぽどストレス解消に役立つだろうし。10月29日の記事「心の鎮痛剤」で二枚目のアルバムを取り上げたタマス・ウェルズの幻のファースト・アルバム。先々月の東京出張の際にようやく手に入れることができた。
と思っていたら、なんとこのファーストアルバムにそれ以前に発表された9曲をボーナストラックとして収録したCDが7月20日に日本で発売されるとのこと。くそー、また買い替えかよ。しかも、待望の初来日公演決定!8月に金沢、大阪、奈良、東京で全5公演。うわー、行きたい!隣国オーストラリア出身のくせに、どうしてNZには来てくれないんだよ。8月に休暇取って日本帰ろうかな、マジで。
17.カーラ・ブルーニ(Carla Bruni)
Lady Weeping At The Crossroads
『No Promises』

6月8日の記事で取り上げたばかりのこれもやっぱり外せないな。この曲はW.H.オーデンの詩に彼女がメロディーをつけたもの。収録作品中では一番新しい世代の詩人の作。なんて一応データ的なことも書いてみたけど、詩にあまり興味のない聴き手からすると、今作の一番の興味はやはり彼女の英語がどのように響くかということだったと思うんだけど、あの落ち着きのあるハスキーボイスは不変。途中で一瞬メロディーを外して話すように歌う箇所なんて、聴いててぞくっとするよ。
18.ドゥルッティ・コラム(The Durutti Column)
Sketch For Winter
『The Return Of The Durutti Column』

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やっとこのアルバムについて話す機会ができた。思い起こせばほぼ一年前、このブログの最初の記事のコメントに青グリンさんが好みの音楽として自己申告してくれたドゥルッティ・コラム。LP(右ジャケ)時代から愛聴している僕にとっても思い出深いアルバムだ。パンク世代のネガフィルムのような静かな音楽。僕は実物を見たことがないんだけど、この現行CDのジャケにちらっと写っている初回オリジナルLPはサンドペーパーに覆われていて、ラックの両隣に置かれるLPをボロボロにしてやろうという意思が込められていたという。このアルバムを単独で聴いた人は、なんだギターインストのBGMかと思ってしまうかもしれないけど、こうやって数多の和み系の曲と一緒に収めてみると、やはり明らかに異質。ヴィニ・ライリーとマーティン・ハネットという稀代のアーティスト達が作った、奇蹟のような作品。
19.ホルガー・シューカイ(Holger Czukay)
Persian Love
『Movies』

1月20日「水と油の芸術」記事の最後でちらっと触れた、元カンのべーシストの代表的ソロアルバム。79年作。80年代初頭にサントリーウイスキーのTVコマーシャルに使われたこの曲を覚えている人もいるかもしれない。曲のタイトルからもわかるように、中近東のラジオの音源などをコラージュした音楽。僕にとってはこの上ない至福の音楽なんだけど、これまで20年強に亘って勧めてきた友達からは「恐い」「不気味」とのコメントも貰った。先の記事にも書いたけど、「親しみやすい前衛音楽」の代表作だと思うんだけどなあ。また、同じく先の記事でこのCDが廃盤になっていて、とんでもない中古価格が付いていたことにも触れているが、さっきアフィリエイトしようとして気づいたのは、このアルバムがめでたく明日(!)再発されるとのこと。ボートラ入りで… いや、これは悔しくないよ。この完璧に構成されたアルバムにボートラ(アルバム1曲目のインスト)なんて不要だから(負け惜しみ)。
20.ロバート・ワイアット(Robert Wyatt)
Free Will And Testament
『Shleep』

最後はこれで締めよう。ロバート・ワイアット97年の会心作。このアルバムは、フィル・マンザネラやポール・ウェラーら豪華ゲストが参加していることばかりが語られるけど、やっぱりこの前後の作品と比べても明らかに曲の出来が優れたアルバムだと思う。そしてこの曲は、その中でも代表作としてあげられるはずだ。ソフト・マシーンのドラマー時代から前衛的かつポップな音楽を作り続けてきた彼自身どう思っていようと、この声とこのメロディーはやはり聴く人全ての気持ちを落ち着かせる効果があると思うんだ。そういった意味では、僕にとっては極上のヒーリングミュージックでもある。
以上全20曲。どうだろう、こんな選曲がストレス解消に役立つんだろうか。え?こんな長文読むだけでストレス溜まったって?