2007年06月24日

yascd010 癒し系ではないけれど

カルシウムが足りないのかしら…
by Luna at 2007年05月29日 19:00


兄ィ、次回yascdのテーマが決まりましたね。“母に捧げるストレス解消ミュージック”でお願いします。
by ひそそか at 2007年05月29日 22:19


ストレスをためないで心安らかに引越しするために聴くといい曲ってなんでしょうか。心は休まるけど、気力は充実して、てきぱきと手が動き、さっさと準備ができるような曲、求む!
by minira at 2007年05月30日 05:10


私もストレス解消音楽切望中です。。。
by ひそそか at 2007年05月31日 03:00


と、なんだかやたらと消耗した人が多かった5月末から既に3週間も経ってしまった。横着してたわけじゃないんだよ。正直言って、引き受けてみたはいいものの、今回のが今までで一番難産だったね。というのも、まあまたいつもの僕の個人的なこだわりに過ぎないんだけど、単なる耳障りのいいBGM用みたいな曲ばかりを集めてもしょうがないな、と。そんなのならヒーリングミュージックのCDが巷にいくらでもあるしね。

それに、何を聴いてストレス解消するかなんて、それこそ十人十色。同じピーッてフィードバック音を聴いてイライラする人もいれば和む人もいるし。ここにこれから並べる曲だって、人によってはもしかしたら聴いてるだけで眉間にシワが寄ってくるようなのもあるかもしれない。あとね、miniraさんのリクエスト、難しすぎ!(笑)

まあ、文句ばかり言ってるようだけど、ほんとはいつも以上に楽しく選曲してたから、リクエストされた方々もご心配なく。それでは、おかんのカルシウム補給を促し、ミニ怪獣の引越しを円滑に進め、そしてヒッタイト人のおでこに更に磨きをかける(違う?)yascd010、どうぞ。


1.チャーリー・ハンター・カルテット・フィーチャリング・ノラ・ジョーンズ(Charlie Hunter Quartet featuring Norah Jones)
More Than This
『Songs From The Analog Playground』

Songs From The Analog Playground.jpg

まずはオーソドックスにノラ・ジョーンズでもと思ったんだけど、いろんな人が既に持ってるであろう彼女の大ヒットアルバムから選んでもつまらないので、これにしよう。デビュー作『Come Away With Me』を遡ること二年、8弦ギターを操るジャズギタリスト、チャーリー・ハンターの01年のアルバムに彼女が客演し、ロクシー・ミュージックの名曲「More Than This」をカバーしたヴァージョン。後のアルバムで開花するあのスモーキーな歌声が既にここで堪能できる。


2.ペンギン・カフェ・オーケストラ(Penguin Cafe Orchestra)
Air A Danser
『Penguin Cafe Orchestra』

Penguin Cafe Orchestra.jpg

ある時は壮大に、また時にはこじんまりと可愛い音楽を奏でる、(特に日本で)一世を風靡したペンギン・カフェ・オーケストラを覚えている人も多いだろう。久し振りにLPを引っ張り出してきて、八木康夫さんの詳細かつ楽しいライナーを、沢山のペンギンの写真やイラスト(クールミントガムの包み紙やポラロイドで撮ったペンギンの交尾の写真なんかも)と一緒に懐かしく読み返してみた。80年代初期の、高校生の僕にとっては未来都市みたいに思えた東京のことを思い出した。


3.デイヴ・エドモンズ&ニック・ロウ(Dave Edmunds & Nick Lowe)
Take A Message To Mary
『Sing The Everly Brothers』

Sing The Everly Brothers.jpg Seconds Of Pleasure.jpg

今回こそはいつものパターン(パブロックとSSWとスプリングスティーン)を避けて作ろうと思ってたんだけど、なんだかんだ言ってこれでyascd登場3回目となるデイヴ・エドモンズが、ニック・ロウと一緒にエヴァリー・ブラザーズをカバーしたEPからのこの曲だけは入れたいな。もともとはロックパイル(デイヴとニックのバンド。右の写真)唯一のアルバム『Seconds Of Pleasure』の初回盤に付いてた付録で、僕もそれは持ってたんだけど、例によって7インチ盤は全部紛失。後に買ったそのアルバムの再発CDにボートラとして収録されたので再入手。二人の透き通ったアコースティックギターの音と綺麗なハーモニーが心地よい。


4.アン・サリー(Ann Sally)
Disney Girls
『Day Dream』

Day Dream.jpg

日本在住の韓国人で、お医者様でもある彼女が03年に2枚同時発売したアルバムから、このビーチ・ボーイズのカバーを。ブライアン・ウィルソンが書いていない中期ビーチ・ボーイズの曲(これはブルース・ジョンストン作)で最高の出来だと僕が思うこの曲を、オリジナルをも凌ぐこんなにしっとりとしたバージョンに仕上げたのは見事。聴いていて心が和む声。彼女、もうすぐ新作が出るんだね。楽しみ。


5.グレイト・レイク・スイマーズ(Great Lake Swimmers)
Song For The Angels
『Bodies And Minds』

Bodies And Minds.jpg

とてもデリケートな弦の音をちりばめた、静かなアルバム。なにしろこんな覇気のない(笑)ポツポツとした曲が一曲目なんだからね。これは05年に出たセカンドだけど、ファーストアルバムから一貫して流れるこの侘び寂びのような雰囲気を気に入っていて、実は僕もあまりよく知らないバンドなんだけど、つい最近出たサードアルバムを試聴もせずに先日通販で買ったところ。行ったことないんだけど、カナダってなんかいいなと思わせてくれる、トロント出身のバンド。


6.ジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)
Mr. Curiousity
『MR. A-Z』

Mr. A-Z.jpg

今月になって発掘された11月30日「怒涛の四日間」記事のコメント欄で、かえでさんにピアノ特集yascdに入れるべきだったと指摘されたこの曲を今回のyascdに入れよう。そのコメント欄にかえでさんと僕がもう散々書いたけれど、優れたメロディーに文才溢れる歌詞を乗せ、おまけにこんなソプラノボイスで歌ってしまえるなんて、凄い才能だよね。ところで上のアフィリエイト先は通常盤のCDなんだけど、DVD付きの「最強版」なんてのも出てて、そっちには僕の好きな曲のPVやライヴが入ってるのを発見。そのうち中古で探して買い換えようっと。


7.ハーフセット(Halfset)
Marks Tune
『Dramanalog』

Dramanalog

このジャケには見覚えある人もいるかも。8月12日「そそるジャケ特集 第一回」で取り上げて、ひそそかさんが電球フェチであることを告白したんだった。そこにも「エレクトロニカとアコースティック楽器の融合」なんて書いたけど、聴いている間心地よい時間が流れるインストゥルメンタル曲。この曲自体にはそれほどアコースティック楽器は使われてないけど。こういう地味だけどいい音楽を沢山紹介してくれたブログ「何世紀分もの八月」は、残念ながら活動停止してしまったけれど、幸いブログ自体はまだ残ってるので、今でも僕は時々過去記事を掘り出しては未知の音楽を見つけてるよ。


8.フェアグラウンド・アトラクション(Fairground Attraction)
A Smile In A Whisper
『The First Of A Million Kisses』

The First Of A Million Kisses.jpg

エリオット・アーウィットの有名な写真をジャケに使ったフェアグラウンド・アトラクションの88年のアルバムのオープニング曲。グループ自体はすぐ解散してしまって、ボーカルのエディ・リーダーはこのあとソロで活動するんだけど、マーク・E・ネヴィンという優れた作曲家とエディが一緒にこんな素敵なアルバムを残せたことが奇蹟。ちょっとアコースティック・ジャズっぽい現代のフォークソング(20年も前だけど)。


9.トラッシュキャン・シナトラズ(Trashcan Sinatras)
Weightlifting
『Weightlifting』

Weightlifting.jpg

これまで出したアルバムの数に比して、彼らがネオアコ(ネオ・アコースティック。こんな呼び方をするのは日本だけらしいけど)界の大御所扱いされているのは、長い活動暦のおかげもあるけれど、やはり90年の名作ファースト『Cake』の鮮烈な印象故のこと。この曲は04年に8年ぶりに発表された4作目から。かつての、春の朝に土手を自転車で駆け抜けるような瑞々しい曲に加えて、こういう薄曇りの夕方に自転車を押して帰るような曲が増えてきたのが印象的。全身に受ける気持ちいい風の代わりに、河川敷の風景を慈しみながらゆっくりと歩く楽しみが増えたような。


10.アーチャー・プレウィット(Archer Prewitt)
Way Of The Sun
『Wilderness』

Wilderness.jpg

シー・アンド・ケイクのギタリスト、アーチャー・プレウィットの04年のソロアルバムのオープニングを飾る曲。キラキラとしたシンセ音のフェードインに始まり、アコースティックギターと彼の歌が、淡々とした曲調はそのままにくるくると調子を変えて展開し、おごそかに「Ave Maria」のフレーズまでが出てくるなんて(歌詞カードでは「Have Maria」となってるけど)、まるで素朴な作りの万華鏡を覗いているような曲だ。派手なところはないんだけれど、憑かれたように聴き惚れてしまう。この綺麗なジャケのイラストも彼自身の手によるもの。


11.タン(Tunng)
Jenny Again
『Comments Of The Inner Chorus』

Comments Of The Inner Chorus.jpg

これも僕は「何世紀分の八月」で教えてもらった秘密の宝物みたいなアルバム(でも、僕が通販で買ったあと、実は意外にNZのあちこちのCD屋でフィーチャーされていたのを発見。結構メジャーだったんだね)。イギリスの二人組ユニットによるフォークトロニカ(フォーク+エレクトロニカ)。この曲はアルバム中ではどちらかというとフォーク寄りかな。訥々と歌われていく曲の途中で時折り上品に挿入される台詞と不思議な装飾音が心地よい。


12.チャリ・チャリ(Kaoru Inoue Presents Chari Chari)
Plain Sailing
『In Time』

In Time.jpg

前回のyascdのコメント欄でにんじんさんに言われた「1曲は日本人アーチストを入れるというシバリ」を今回から適用してみよう。ディスカバー・ジャパン(笑)。とはいえ、これはちょっと反則っぽいかな。別に日本語で歌ってるとかいう訳じゃないからね。テクノミュージシャンでありDJでもある井上薫の変名チャリ・チャリの02年のアルバムから。基調はテクノとはいっても、この曲のようにアコースティック楽器を使ったちょっとレイドバックしたレゲエ調の曲とか、ダンスフロアでなく家や車でも気持ちよく聴ける優れモノのアルバム。


13.ベン・ワット(Ben Watt)
You're Gonna Make Me Lonesome When You Go
『North Marine Drive』

North Marine Drive.jpg

後にトレイシー・ソーンとエヴリシング・バット・ザ・ガールを結成し、どんどんお洒落でゴージャスな音に偏向していった彼がまだ素朴な音楽を演っていた83年のソロアルバム。アルバムタイトルの「北の海岸沿いのドライブ」とこのジャケに象徴される、寒々としたアコースティック・サウンドが印象的だった。これはそのアルバムを締めくくる、ボブ・ディランの名曲をボサノバ調にカバーしたもの。ディランのオリジナルだってもちろんいいんだけど、この音にこの声で「お前がおらんようになったら寂しなるよ」なんて歌われると、ほんとに寂しくなってくる気がしてしまう。


14.キャサリン・ウィリアムズ(Kathryn Williams)
White, Blue And Red
『Old Low Light』

Old Low Light.jpg

このジャケにも誰か見覚えあるかな(それともあんな追記なんてかえでさん以外には誰も見てなかったんだろうか)。12月24日の「女の子ジャケ特集」にどんどん追記していったうちの一枚。イギリスの女性シンガー・ソングライターの02年のアルバム。その「女の子ジャケ特集」には「ジャンル分けすると、ジャズ/ボサノバ/フォークということになるんだろうか。非常にスムーズで聴き易い音。スザンヌ・ヴェガとかノラ・ジョーンズとかを思い出す」と書いたね。今聴き返してもその通りだと思う。ジャケに惹かれただけだけど、買って正解のアルバムだった。500円だったし。


15.ダコタ・スイート(Dakota Suite)
Your Vigor For Life Appals Me (Part 1)
『Morning Lake Forever』

Morning Lake Forever.jpg

名前しか知らなかったグループのこの紙ジャケCDが、先日の東京出張の際に近場のCD屋で在庫一掃セールで500円で出ていたのでジャケ買いしてみた。ダコタなんて名前からアメリカのバンドなのかと思ってたら、イギリス人なんだね。これはそのCDから取った、水墨画のようなピアノ曲。これだけ聴くと、ちょっとブライアン・イーノの『Music For Airports』っぽくもある。しかしこのアフィ先のアマゾンマーケットプレイス、ユーズド商品5865円からってのも凄いね。5365円も得した。


16.タマス・ウェルズ(Tamas Wells)
When Do We Fail Abigail
『A Mark On The Pane』

Mark On The Pane.jpg

今回のテーマでyascdを作るにあたって一番困ったのが、このアルバムからどの曲を選ぶかということだった。極端な話、これ一枚そのままコピーした方が、僕がどんな選曲をするよりよっぽどストレス解消に役立つだろうし。10月29日の記事「心の鎮痛剤」で二枚目のアルバムを取り上げたタマス・ウェルズの幻のファースト・アルバム。先々月の東京出張の際にようやく手に入れることができた。

と思っていたら、なんとこのファーストアルバムにそれ以前に発表された9曲をボーナストラックとして収録したCDが7月20日に日本で発売されるとのこと。くそー、また買い替えかよ。しかも、待望の初来日公演決定!8月に金沢、大阪、奈良、東京で全5公演。うわー、行きたい!隣国オーストラリア出身のくせに、どうしてNZには来てくれないんだよ。8月に休暇取って日本帰ろうかな、マジで。


17.カーラ・ブルーニ(Carla Bruni)
Lady Weeping At The Crossroads
『No Promises』

No promises.jpg

6月8日の記事で取り上げたばかりのこれもやっぱり外せないな。この曲はW.H.オーデンの詩に彼女がメロディーをつけたもの。収録作品中では一番新しい世代の詩人の作。なんて一応データ的なことも書いてみたけど、詩にあまり興味のない聴き手からすると、今作の一番の興味はやはり彼女の英語がどのように響くかということだったと思うんだけど、あの落ち着きのあるハスキーボイスは不変。途中で一瞬メロディーを外して話すように歌う箇所なんて、聴いててぞくっとするよ。


18.ドゥルッティ・コラム(The Durutti Column)
Sketch For Winter
『The Return Of The Durutti Column』

The Return Of DC.jpg Return (Orig).jpg

やっとこのアルバムについて話す機会ができた。思い起こせばほぼ一年前、このブログの最初の記事のコメントに青グリンさんが好みの音楽として自己申告してくれたドゥルッティ・コラム。LP(右ジャケ)時代から愛聴している僕にとっても思い出深いアルバムだ。パンク世代のネガフィルムのような静かな音楽。僕は実物を見たことがないんだけど、この現行CDのジャケにちらっと写っている初回オリジナルLPはサンドペーパーに覆われていて、ラックの両隣に置かれるLPをボロボロにしてやろうという意思が込められていたという。このアルバムを単独で聴いた人は、なんだギターインストのBGMかと思ってしまうかもしれないけど、こうやって数多の和み系の曲と一緒に収めてみると、やはり明らかに異質。ヴィニ・ライリーとマーティン・ハネットという稀代のアーティスト達が作った、奇蹟のような作品。


19.ホルガー・シューカイ(Holger Czukay)
Persian Love
『Movies』

Movies.jpg

1月20日「水と油の芸術」記事の最後でちらっと触れた、元カンのべーシストの代表的ソロアルバム。79年作。80年代初頭にサントリーウイスキーのTVコマーシャルに使われたこの曲を覚えている人もいるかもしれない。曲のタイトルからもわかるように、中近東のラジオの音源などをコラージュした音楽。僕にとってはこの上ない至福の音楽なんだけど、これまで20年強に亘って勧めてきた友達からは「恐い」「不気味」とのコメントも貰った。先の記事にも書いたけど、「親しみやすい前衛音楽」の代表作だと思うんだけどなあ。また、同じく先の記事でこのCDが廃盤になっていて、とんでもない中古価格が付いていたことにも触れているが、さっきアフィリエイトしようとして気づいたのは、このアルバムがめでたく明日(!)再発されるとのこと。ボートラ入りで… いや、これは悔しくないよ。この完璧に構成されたアルバムにボートラ(アルバム1曲目のインスト)なんて不要だから(負け惜しみ)。


20.ロバート・ワイアット(Robert Wyatt)
Free Will And Testament
『Shleep』

Shleep.jpg

最後はこれで締めよう。ロバート・ワイアット97年の会心作。このアルバムは、フィル・マンザネラやポール・ウェラーら豪華ゲストが参加していることばかりが語られるけど、やっぱりこの前後の作品と比べても明らかに曲の出来が優れたアルバムだと思う。そしてこの曲は、その中でも代表作としてあげられるはずだ。ソフト・マシーンのドラマー時代から前衛的かつポップな音楽を作り続けてきた彼自身どう思っていようと、この声とこのメロディーはやはり聴く人全ての気持ちを落ち着かせる効果があると思うんだ。そういった意味では、僕にとっては極上のヒーリングミュージックでもある。


以上全20曲。どうだろう、こんな選曲がストレス解消に役立つんだろうか。え?こんな長文読むだけでストレス溜まったって?
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2007年06月17日

CD版 コレクターな人々

前回の僕の記事を受けて、Lunaさんが多重人格ブログに「コレクターな人々」というマニアックな記事をあげた。人のことをコレクター呼ばわりしておきながら、ちゃっかり自分のコレクションを自慢するという、卑怯かつ痛快な記事(笑)

その中で、「全く同一内容でも、ジャケットが違うだけで買っちゃうことがある」というのは、さすがのルナさんでも本ならともかくCDやレコードでそれをしたことはないという話だった(でも僕は本でそんなことをしたことはないからね)。

それで思い立ったのが今日の記事。全く同じ内容でジャケ違いのCDをどれだけ持っているかをリストアップしてみた。さすがに全CDをひっくり返してチェックするわけにもいかないので、自分の記憶だけを頼りに、思い出せる分だけ。

ルールとしては、「LPで持っていたものをCDで買いなおした」、「輸入盤や旧盤のCDで持っていたが、リマスターやボートラ入りで再発されたのでまた買った」などのケースは除いた。そんなのを入れてしまうと際限ないからね。


ではまずこれ。yascd008で特集したサニー・ランドレスのセカンド・アルバム。

Down In Louisiana 93.jpg Way Down In Louisiana 85.gif

左の写真が現在普通に流通している『Down In Louisiana』というタイトルのCD。93年にエピックから出たものだ。ただ、このアルバム自体は85年にサニー・ランドレス・アンド・バイユー・リズム名義で『Way Down In Louisiana』というタイトルで出ていたLPと同じもの。右側のジャケがそれ。実は僕は彼の音楽を聴きはじめた88年にこのLPを大阪は東通商店街の輸入盤屋で見かけたのだが、金がなかったのか腹が痛かったのか、その時は買わずに店を出てしまったんだ。そのLPが、もう既にその時点で廃盤になっており、その5年後に別タイトル・別ジャケでCDで再発されるまで手に入らないなんて思いもよらずに。

今から数年前、日本の中古CD屋でこの忘れもしない右側のジャケをCDで見かけたときの驚きは忘れられない。裏ジャケを見ると、大手エピックでなくイギリスのエヴァンジェリン・レコードというマイナーレーベルからの01年の再発盤。内容は自分で既に持っている左側のCDと全く同じなのはわかっていたけど、この懐かしいジャケに惹かれて買ってしまったというわけだ。

帰ってきて開封して再びびっくりしたのは、このジャケは一枚のペラペラの紙で、中に入っているブックレットの表紙自体はこの左側のものと同じだったこと。うーん、なんだか騙されたような…


続いては、ルー・リードのこのアルバム。

Live In Italy.jpg Live In Concert.jpg

左側は、彼の数多いライヴ盤の中でも最高傑作とされる84年の『Live In Italy』。僕はこの2枚組LPを買い、そこから彼の音楽にのめりこんで行ったんだった。そこからの数年間が彼の低迷期になるとも知らずに。

NZに来てすぐ、CD屋の安売りワゴンで投げ売られている右のジャケの『Live In Concert』というCDに気づいた。これはビデオ『A Night With Lou Reed』で使われてる写真の流用だよな。曲目を見ると、聴き慣れた例のLPと全く同じ。さてはあのアルバムをコピーした海賊盤かと思いきや、発売元は大手BMG。なんだかよくわからなかったけど、この名作ライヴをCDでも聴けるのならと思い、買ってみた。聴いてみたら、やっぱり同じ内容。そうか、きっとあの『Live In Italy』は契約の関係か何かで元のままのタイトルとジャケでは出せないんだろうな。

と思っていたら、確か去年だったか、この見慣れた『Live In Italy』のCDを中古で発見。日本盤だ。あれ?契約の関係とかじゃなかったんだ。まあいいや、これ買って、あのパチモンっぽいジャケのやつは売ってしまおう。

と思ったんだけど、やっぱりこの右のジャケもかっこいいんだよな。『A Night With Lou Reed』をDVDで買いなおすまではこれ売らずに置いとこうかな。という訳で、僕の家にはこの同じ内容のアルバムがCDが2種類とLPの形で存在している。内一枚はそのうち淘汰されるかもしれないけど。


最後はこれ。3月13日の記事「懐かしい不安感」で取り上げたシアウォーターの『Winged Life』。

shearwater_winged_life.jpg Winged Life U.K..jpg

左が僕が持っているオリジナルのアメリカ盤ジャケ(その記事のコメント欄で巨大イカとか言われてた)。同じコメント欄で「この(右側のイギリス盤の)ジャケでLP出てたら絶対買うのになあ」などとほざいていた僕だが、そんなLPなど存在しないことがわかってしまったので、つい先日アマゾンUKで他のCDを注文するついでに我慢できずにこのイギリス盤CD(右の写真)も買ってしまった。だってこのアルバム好きだし、この右のジャケもいいんだもん。という訳で、現在輸送中。どうしよう、届いてみたら左のジャケだったりしたら…


という訳で、わずか3組。なんだ、こんなもんか。ハリー・ポッター全巻をハードカバーとペーパーバックで揃えているというルナさんの足元にも及ばないね。

ちょっとお願いすれば、「ジャケ違いは別モノ」という名言を吐かれたクロムさんが更にマニアックなダブりCD記事を書いてくれるんじゃないかと期待してるんだけどな。クロムさん、よろしくお願いします(笑)
posted by . at 18:47| Comment(22) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月10日

才能と商魂 Jeff Buckley

94年のジェフ・バクリーのデビューは衝撃的だった。あれだけ荒削りでありながら完成度の高いデビューアルバムには、そうお目にかかれるものではないと思ったものだ。ちょっと自分の過去のベストアルバム暦を見てみたら、エルヴィス・コステロの『Brutal Youth』、ユッスー・ンドゥールの『The Guide』と共に、僕はそのアルバムをその年のベスト3の一枚に選んでいた。そのときはあえてどれが一番と決めなかったんだけど、現在の目で見れば明らかにジェフの『Grace』がその中でもダントツだろう。あ、ちなみに例によって通常の日本語表記はジェフ・バックリィ。「ッ」の有り無しと「ー」と「ィ」の違いでそう発音が変わる訳でもないような気もするけど、一応雰囲気で。コメンターの皆様はお好きなほうでどうぞ。

Grace.jpg Jeff Buckley 『Grace』

「Hallelujah」が白眉だろう。冒頭、ジェフがすっと息を吸い込む音だけでそれを聴いている部屋の温度がすーっと下がるような感じがする。そして、イントロのギターを爪弾く一音で小さなロウソクにかすかな火が灯され、やがて曲が進むにつれてその炎が揺れ動いたり一面に燃え広がったりするのを見つめ続けているような、そんなイメージを僕は持っている。

レナード・コーエンの作であるこの曲、彼自身のオリジナルを始め、ジョン・ケイルのライヴ・ヴァージョン、映画「シュレック」に使われたルーファス・ウェインライトによるカヴァーなど、これまでに様々なヴァージョンを聴いてきたが、僕にはやはりこのジェフ・バクリーによるものが最も優れていると思われる。

ところで一応このブログでは、過去の名盤とかを取り上げて紹介することはしないようにしている(きりがないからね)。今日の記事も、このアルバムを今さら改めて紹介するのが目的ではない。つい最近発売された彼のベストアルバムをCD屋で見かけ、思うところがあったのでここに書いてみることにしただけだ。

彼のことを知らない人のために。ティム・バクリーという60年代に活躍したシンガーソングライターの息子である彼は、先述のとおり94年にデビューアルバムを発表(それ以前にライヴEPを発表済み)。セカンドアルバムのレコーディング中の97年に、川で溺れて亡くなってしまう。あれだけ将来を有望視されていた彼のそのデビューアルバムが、結局最初で最後の作品になってしまったわけだ。

…になるはずだったのだが、レコード会社がこれだけの商材をそのままにしておくはずもなく、結構こまめにコンサートを録音していたと思われる彼のありとあらゆるレコーディングが、彼の死後発売されることになる。そして、僕のようなファンがそれらを次から次へと買わされてしまうという構造になっている。

ちょっと僕の手元にある彼のCDをリストアップしてみよう。タイトルの後ろの数字は発表年。

Live at Sin-E (EP 1993)
Grace (Album 1994)
Peyote Radio Theatre (Promo EP 1994)*
Grace (Single 1994)
So Real (Single 1995)*
Live From Bataclan (Promo EP 1995)*
Last Goodbye (Single 1995)*
Eternal Life (Single 1995)*
Grace EP (EP 1996)*
Sketches for My Sweetheart The Drunk (Double Album 1998)
Everybody Here Wants You (Single 1998)
Mystery White Boy (Album 2000)
Mystery White Boy Bonus Disc (EP 2000)
Live a L'Olympia (Album 2001)
Songs To No One with Gary Lucas (Album 2002)
Live at Sin-E Legacy Edition (Double Album 2003)
Grace Legacy Edition (Double Album 2004)

*印は02年に出たボックスセット『The Grace EPs』に一括収納。そのセットと、最後の2枚のレガシー・エディションを買ったため、オリジナルの『Grace』、『Live at Sin-E』と数枚のシングルは売却済み。

で、これらを聴いていて思うのが、「同じ曲ばっかりだなあ」ということ。まあ、元々アルバムが1枚しかなくて、死後なんとか体裁を整えて発売されたセカンドアルバム『Sketches for My Sweetheart The Drunk』からの曲はきっとライヴでは殆ど演奏されたことがなかっただろうから、畢竟ファーストアルバムからの曲のいろんな場所でのライヴ録音や別ヴァージョンが何度も出てくることになる。

そこで、『Grace』収録の10曲と、それと同時期に録音されていた曲が、これらのCDで何度形を変えて(あるいは元のヴァージョンのまま)収録されているか、調べてみた。僕はまだ買っていない、今回発売されたベストアルバム(未発表曲が一つと、未発表ヴァージョンが一つ収録されているというのが売り)も含めた数だ。

まず最も数が多かったのが、アルバムタイトル曲「Grace」。なんと10枚のCDに収録され、そのうち2枚では2回ずつ出てくるので、合計12回も収録されている。オリジナルのLPヴァージョン、シングルエディット、デモ録音、ロッテルダムでのライヴ、メルボルンでのライヴ、パリでのライヴ、別の時期のパリでのライヴ…同じヴァージョンがダブっている場合もあるんだけど、それを除いたとしても、この一つの曲を集めるだけで一枚のアルバムが出来てしまうほどの量だ。

続いて多いのが「Eternal Life」11回。これはオリジナルのLPヴァージョンよりも速い「Road Version」というのが人気のようで、シングルのカップリングとして何度も登場している。今回のベスト盤に収録されたのもこのヴァージョンのようだ。

続いてファーストアルバム冒頭の「Mojo Pin」と、エンディングの「Dream Brother」10回ずつ。「Dream Brother」なんて、『Grace Legacy Edition』には形を変えて3回も収録されている。

僕の一番好きな「Hallelujah」9回。アルバム収録前で別タイトルがついていたライヴ録音も含めた「Last Goodbye」8回「Lover, You Should've Come Over」6回「So Real」5回。地味な(でも僕の好きな)「Lilac Wine」までもが4回。最後に残った、2回しか(つまり、オリジナルのLPとそのレガシー・エディションにしか)収録されていない「Corpus Christi Carol」の方が珍しいほどだ。

ファーストアルバム未収録曲でも、「Je N'en Connais Pas La Fin」5回「Kanga-Roo」4回など、カヴァー曲が何度も収録されている。


これはちょっと、なんというか、すごいよね。商魂たくましいのもここまでくると… 同じくアルバム1枚しか出していないセックス・ピストルズも、解散後いろんな編集盤や海賊盤まがいのライヴアルバムが沢山出たけれど、ここまで極端じゃなかったはず。

まあ、ファンとしてはいろんな録音が聴けて喜んでいいのか、散在させられて悲しんでいいのか微妙なところなんだけど。という観点から今回発売されたベスト盤を見てみると、『Grace』から8曲(別ヴァージョンも含むけど、全10曲中8曲だよ)、セカンド・アルバムから3曲、その他のCDに既収録なのが3曲、未発表ヴァージョン(曲としてはライヴ盤で既に発表済みの、スミスのカヴァー曲)が1曲。

これって、どうなんだろうね。まずベスト盤から入門して、これからジェフ・バクリーのことを知ろうという人には、あえて名盤『Grace』の曲順を入れ替えて、お義理のようにその他の曲を追加したようなこんなCDよりも、オリジナルの『Grace』をそのまま聴いてほしいと思う。

一方、僕のようにこれまでありとあらゆる音源(ダブり含む)を買わされ続けてきたようなファンにとっては、「I Know It's Over」1曲、「So Real」の日本でのライヴ1曲、たったそれだけのためにアルバム1枚分の金を払わされるのは非常に不愉快。かといって、ここまで完璧に収集してきた僕がこの2曲だけを聴けないというのも困る。ここはひとつ、このアルバムはなんとかして1000円以下で手に入れると宣言しておこう。それなら新しいシングル盤を買ったようなものと自分を納得させられるからね。

なんか今日の記事は英語と数字ばかりになってしまったね。ちょっと気になって数え始めたらつい病みつきになってしまったので。いつも以上に読みにくかっただろうか。ここまでちゃんと読んでくれた方、お疲れ様でした。金曜日から僕の腹に居座っていた更新蟲も、これでしばらく休憩するんじゃないかな。


<追記 10月7日>

苦節4箇月、中古屋を探しまくって、お約束どおり本日『So Real: Songs From Jeff Buckley』をNZ$10(850円)で入手。内容自体はもちろん疑うべきものは些かもないし、丁寧に作られたブックレットも好感が持てる。未発表曲もありがたい。この中の何曲かは、いまでも酔ったときに聴くと涙がこぼれそうになるほどだ。でも、未だに彼の音楽を聴いたことがない人は、このベスト・アルバムじゃなく、『Grace』をまず手にしてほしい。今や、捨て値で手に入るはずだから。
posted by . at 15:44| Comment(26) | TrackBack(1) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月09日

視聴後感想文 押尾コータロー 「Blue Sky」

この文章は元々ブログ『妖月と喰いしん坊な正気のきんぎょ』4月29日記事「お塩買うたろう」への投稿コメントとして書き始めたんだけど、人様のブログに書き込むコメントとしては随分長いものになってしまったので、せっかくだから記事としてここに載せることにした。という訳なので、今日はいつもとちょっと違ったコメント文体になっている。内容も、このブログで単独で取り上げるのはこれが初めてとなる日本人アーティスト(先日の極秘ライヴを除く)。



遅ればせながら、先月の東京出張で手に入れたこのアルバムを何回か聴きましたので、感想など書いてみたいと思います。いや、本当にギターの上手な人ですね。かえでさんも書かれているように、アコースティックギター一つでありとあらゆる音が同時に出てくるんですもん。普段僕はあまりこういう音楽は聴かないんですが、これには感心しました。買ってよかったですよ。どんな分野であれ(音楽に限らず)、もの凄く上手な人を観たり聴いたりするのは、とても爽快な気分になります。

タッピング、ハマリング/プリング、ハーモニクス、右手でボディを叩く音(これって名前があるのかな?)、そういったテクニックをふんだんに盛り込んであるのが、CDを聴いているだけでもよくわかります。でもそれが全然ギター教則CDのようになっていないのが流石です。曲がしっかりと立っているからだと思います。

アルバム前半の曲は全部本人の作曲・編曲なんですね。どれもキャッチーなメロディーで、単なるBGMとは一線を画すものがあります。今のところ僕が一番気に入ってるのが、5曲目の「翼〜you are the HERO〜」ですね(このタイトル、なんだか「HERO〜ヒーローになる時、それは今〜」に似てますね・笑)。あと、2曲目「HARD RAIN」のエンディングが格好いいです。端正な「ボレロ」「カノン」もいいし、もちろん、他のスローな曲も気持ちいいです。

後半、ワムの「Last Christmas」のカバーなんかはちょっと毒気のないBGMぽくなってしまうし、CDの帯に書いてある“フルオーケストラとのジョイント曲”は、僕にはギター一本で奏でる曲よりも魅力的ではなかったです。まあ、カバー曲よりもオリジナル曲がいいというのは褒め言葉と受け取ってもらって差し支えないでしょう。

ブックレットを見ると、これまでに5枚のCDが出ているんですね。まあ、それを全部しゃかりきになって集めるほどではないと思いますが(東京で先日見たそのうちの何枚かは僕の嫌いなCCCDでしたし)、でもこのベスト盤はこれから何度も聴き返すことになると思います。


付属DVDに話を移しましょう。どれも弾き語る彼の笑顔とギターに、綺麗な風景やイメージイラストを重ねた、ファン心理をよくわかった作りになっていますね。僕のように特に彼のルックスに興味があるわけでない人にとっても、「あ、あの音はこうやって出しているのか」というのがよくわかる親切なビデオばかりです(曲によっては若干画面の切り替えが頻繁なものもありますが)。

あの打楽器風の音は、ああして右手の親指の付け根で低音、(おそらく)中指と薬指で高音を出していたんですね。それにあのタッピングの正確なこと!かえでさんもコメント欄に書いておられる、右手を宙に上げて客を煽りながら、左手だけで弦を弾いてメロディーを奏で続けるところなど、目が釘付けになります。

ちょっと似たような感じのPVが続いて、ライヴ演奏でも見てみたいなと思ったところにちょうど2曲のライヴが入っているのも好感度大。しかもその2曲は僕がさっき上に好きだと書いた曲。ちらっと写る観客席には殆ど女性客しかいないようで気恥ずかしいですが、機会があれば僕もこのコンサートに行ってみたいと思いましたよ。

あと個人的には、東京某所で撮影された「翼〜you are the HERO〜」のPVに、僕が東京で通っていた会社が一瞬写るのがなんだか嬉しかったです。全部観ても30分強しかかからないところも◎です。これなら繰り返し観てみようという気になりますね。

この2曲のライヴ映像ではわかりませんでしたけど、彼って関西弁を喋るんですか。へえ。この2曲が入っている、かえでさんも観られたライヴDVDには興味が出てきました。今度探してみようかな。何ヵ月後になるかわかりませんが、その際にはまた追記コメントを入れますので、それまでこの多重人格ブログ、勝手に閉鎖しないでくださいよ(笑)

ところで、実は僕このCDを東京で探すのにちょっと苦労したんですよ。ジャンルがなんだかよくわからなくて。最初はJ-POPなのかなと思っていたら、店によってはクラシックのコーナーにあったし、また別の店ではニューエイジに分類されていたし。ニューエイジってのもなんだかよくわからない名前ですけどね。こんなにポップな作品が(いくら「ボレロ」とかが収録されているとはいえ)クラシック扱いされているってのもねえ。まあ、日本で普通に日本の音楽に接している人は問題なく探せるのかもしれないですけど、万が一僕のような目に合う人がいては可哀想なので、一応ここにアフィリエイト貼っておきますよ。

Blue Sky.gif 押尾コータロー 『Blue Sky』
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2007年06月08日

水彩画のように Carla Bruni 「No Promises」

No promises.jpg Carla Bruni 『No Promises』

才色兼備を絵に描いたような人。イタリア出身の元(?)スーパーモデルの彼女が02年に出した最初のアルバムは、全世界で200万枚を売り上げたとのこと(彼女が活動しているフランスで120万枚、その他の国で80万枚。ちなみに僕はその両方に1枚ずつ貢献している・笑)。

実に柔らかい、綺麗なメロディーを書く人だ。そしてそのメロディーを奏でるこの少しジャジーでアコースティックな音。わかりやすい例えで言うなら、ノラ・ジョーンズをもっとこざっぱりとさせた感じか。

そのノラ・ジョーンズがあれだけヒットした理由の一つに彼女のスモーキーな声質があるが、このカーラ・ブルーニの音楽を特徴付けるのも、やはり彼女の声。極端なまでのハスキーボイス。音程によってはかなりかすれてしまうんだけど、それがちっとも聴き辛くなく、まるで絵の具がかすれた水彩画のようで実に味がある。

No Promises Inner.jpg上に載せたジャケットや、三つ折デジパックの内側の写真(少女のように眠る彼女、風船を手に佇む彼女、質素な瓶に活けられた薔薇の束、木漏れ日の差し込む室内)、それにブックレット内の数々の写真など、一枚一枚がポストカードにしたくなるような綺麗なものばかり。正統派美人である彼女自身のルックスはそれほど僕の趣味じゃないけど(そしてそんなことは彼女にとってもこの世の中の誰にとっても知ったこっちゃないけれど・笑)、音的にも映像的にも非常に質の高いアルバムだ。

フランス語で歌われた前作では殆どの歌詞を自作していたが、全編英語となった今回のアルバムでは、ウィリアム・B・イエイツ、ウィスタン・H・オーデン、エミリー・ディッキンソン、クリスティナ・ロセッティ、ウォルター・デ・ラ・メア、ドロシー・パーカーという、19世紀から20世紀中盤までのアイルランド/イギリスの詩人(ディッキンソンとパーカーはアメリカ人)の詩を歌っている。恥ずかしながら僕はこの中ではW.B.イエイツしか知らなかったんだけど、きっとイギリスやアイルランドの詩や文学に造詣の深い人には、これらの曲がもっと味わい深く聴こえるんだろうね。うらやましいな。

オープンディスクという仕様のこのCD、パソコンに入れて若干の個人情報を提供すれば、専用サイトにアクセスすることができる。その中の目玉の一つである無料ダウンロード曲「Those Dancing Days Are Gone」(ルー・リードがポエトリー・リーディングで参加したバージョン)が、僕の買った日本盤では既にボーナストラックとして収録済みなのが、得なのか損なのかよくわからないんだけどね。まあ、これもまた優れた美的感覚に溢れたプロモーションビデオが何曲か観られるのは嬉しいかな。

Quelqu'un M'a Dit.jpg Carla Bruni 『Quelqu'un M'a Dit』
ところでこれがデビューアルバム。僕のブログをしばらく前から読んでくださっている読者の方には、このジャケットに見覚えがあるんじゃないかな。そう、10月26日の記事「クッキングタイマー」で1分を計るのに使っていた曲だ。これも40分に満たない短いアルバムだけど(今回のもそう)、どちらもおすすめ。特にこの前作は歌詞対訳がありがたいし、今作はヘタに輸入盤を買うよりも日本盤の方が安かったりもするしね。ライナーも対訳もよかったよ。

今回はこれぐらいの短い記事にしておこうかな。もう既にネット上にはかなりの数のレビューが英語/仏語/日本語で出回っているようだし、これは前作以上に話題になるんじゃないだろうか。
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2007年06月04日

ゴキゲンなお天気マーク達 The Holloways 「So This Is Great Britain?」

イギリスの音楽業界って、かなりメディア主導みたいなところがあって、ひとつ売れたバンドが出てきたら、それに似たバンドをひとまとめにして○○ムーブメントとか言って盛り上げようとすることが多い。当然玉石混交になるし、そんな風に人工的に作られたムーブメントが健全なわけはないんだけど、リスナー側からすればひとつ好きなバンドがあればそれに似たような傾向の別のバンドを探しやすいとか、あるいはバンド側にすればうまくそういうブームに乗っかってデビューできるとか、まあ利点が全くないわけでもない。

たとえば僕が音楽を聴きはじめたころはちょうどパンク/ニューウェーヴが盛り上がっていた時期で、五大パンク・バンドとかいう括りで(これはもしかしたら、僕がその頃読んでいた日本側の雑誌で勝手にでっちあげたのかもしれないけど)セックス・ピストルズ、クラッシュ、ダムド、ストラングラーズ、ジャムがパンクの代表としてよく紹介されていた。その5組が本当に代表格なのかどうかはともかくとして、まあ初心者にはそうやってまとめてもらえると手っ取り早く覚えられるので便利ではあった。

ちなみにその5組を僕が好きだった順に並べると、(1)ジャム→(2)クラッシュ→(3)ストラングラーズ→(4)ピストルズ→(5)ダムド、てな感じなんだけど(1と2は僅差、3と4は入れ替えも可)、きっとクロムさんのご趣味とは完全に逆なんじゃないかなって勝手に思った。いや、今日の記事の趣旨とは関係なく、クロムさんとの趣味のすれ違い度合いを面白がってるだけなんだけど。

一昨年はフランツ・フェルディナンドがドカンと売れて、それに似たバンドがバラバラッと紹介されて、中には僕の好きなフューチャーヘッズやドッグス・ダイ・イン・ホット・カーズも含まれていたんだけど、肝心のフランツ・フェルディナンドのセカンドアルバムが大いにずっこけた(売上的にはね。内容はそんなに悪くないと思ったんだけど)のに歩調を合わせて他のバンドも低迷。

去年はなんといってもアークティック・モンキーズのヒットが大きかった。去年の7月28日の記事「人口密度の夜」に書いたけど、僕はどうせまたハイプだろうと最初は高を括っていたんだけど、聴いてみたら思いのほかよかった。去年のベスト20を選んだ1月29日の記事「yascd006」では、セカンドアルバムはきっとファーストの半分も売れないだろうなんて書いて、実は今日の記事にこないだ買ったそのセカンドアルバムのこと(果たして前作の半分も売れないのか?)も絡めて書こうかと思ったんだけど、そんなことをするとまた短編小説並みの論文になってしまうので割愛。

当然イギリスのプレスは、その手のバンドをガンガンとプッシュするよね。雨後のタケノコ戦略。去年から今年にかけて、また数え切れないほどの新しいバンドがデビューアルバムを発表している。で、去年アークティック・モンキーズをずっと聴かなかったのと同じ理由で、僕はそのほとんどのバンドをスルーしている。実は今晩、そういうイギリスの新人バンドの一つであるヴュー(The View)のライヴがオークランドであるんだけど、どうももう一つ食指が動かない。

そんな中、なんとなくジャケットに惹かれて先日東京で買ったCDがある(ジャケ買いだけでなく、3ヶ月限定スペシャルプライス2200円というのも魅力的だった。まあ、僕が買ったのは新品未開封で更に安くなっていたんだけど)。それが今日取り上げる、ホロウェイズの『So This Is Great Britain?』だ。

So This Is Great Britain? The Holloways 「So This Is Great Britain?」

雑踏の音に混じって、ディストーションをかけたエレキギターの独奏によるエルガーの「威風堂々 第一番」のフレーズでアルバムが始まるところは、バッドリー・ドローン・ボーイの『Born In The U.K.』と全く同じ。両アルバムとも本国ではほぼ同時に発売されているので、どちらがどちらの真似をしたというわけでもなさそう。お互いびっくりしたろうね。どちらも「こんなしょーもない国だけど、ここに生まれたからには俺は英国人だから」といういかにも英国的な自虐的な歌詞の曲の冒頭で皮肉っぽく使われている。このアルバムの日本語解説書にはこの「威風堂々」のことを「第二の英国国家といわれる」って書いてあるんですけど、miniraさん、Lunaさん、そうなんですか?

そのアルバムタイトル曲は、小気味いい音のギターを中心としたアップテンポの曲。と思っていたら、間奏ではいきなり更にテンポを上げてスコットランド民謡風のギターソロ。うわー、かっこいい!

二人いるギタリストのうち一人が曲によってはフィドル、もう一人がハーモニカを演奏し、音に彩りを添える。映画「タイタニック」で、船内のがやがやとしたパブで主人公たちがバンドの演奏に合わせて踊るところがあったけど、ああいう感じ。こういうごった煮みたいな音楽にフィドルの音ってよく似合うよね。ちょっと音楽性は違うけど、昔でいうとデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズみたいな感じ。なんでもこの人たち、バスキングもしていたということだけど、こんなのが道端で演奏してたらそりゃ盛り上がるだろうね。あ、そうだ。クロムさんにリクエストされてた、ヴァイオリン入りロック曲yascdにこれ使えるよ。メモメモ。

さっきアークティック・モンキーズを引き合いに出そうかと思ったって書いたけど、それは良くも悪くも似た曲調の多いモンキーズに比べて、この人たちの曲、特にイントロが実に印象的で魅力的なものが多いっていうことだったんだ。なるほど、そういうところもバスキング上がりだからなのかな。かっちょいいイントロでまず客をぐいっと引き付けるという。もちろん、バスカーが誰でもそんなかっちょいい曲を書けるかというとまたそれは別問題なんだけどね。

上に載せたジャケの左下に4つのお天気マークが載ってるけど、ブックレット内の歌詞にもそれぞれこの4つのマークがついている。それが歌詞と関連してるようで、がんばれ元気!的な曲は晴れマーク、とほほ振られちゃったよ…的な曲には雨マーク、てな感じで。で、このアルバムからは既に3曲がシングルカットされているんだけど、それぞれのジャケはこのお天気マーク。このいい感じの(と僕は思っているんだけど)アルバムジャケもそうだけど、そういうビジュアル的にしっかりした意思を持った人たちっていいよね。となると、ここはやっぱりもう一枚最後にシングルカットされるのかな。晴れ、雨、曇りがもう出たから、残るは雷マーク。ブックレットでこのマークが使われてるのは4曲か。どれになるのかな。

この記事のためにいろいろ調べてたら、この人たち来月来日するんだね。いいな、絶対にこういうバンドはライヴで観た方が何倍もいいだろうからね。nekoちゃん、アークティック・モンキーズ行きたかったのなら、これお勧めだよ。予習するなら、これまたとびきり格好いいボーナストラックが入った日本盤をどうぞ。輸入盤とあんまり変わらない値段設定だし。

さて、これだけ褒めちぎったこのバンド、アークティック・モンキーズ人気とは関係なくブレイクするだろうか。なんとなく、これだけで終わってしまいそうな気もするんだけどね。これまでどれだけこういう優れたバンドが、移り気なメディアのプッシュがなくなったばかりにアルバム1〜2枚で消えてしまったことか。まあそれにしても、これだけの出来のデビューアルバムにリアルタイムで出会えただけでもいいや。これで一度でも生で見られれば最高なんだけどな。

posted by . at 11:52| Comment(27) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする