2007年05月11日

yascd009 ピアノ三昧

yascd006のコメント欄で、Eストリート・バンドのピアニスト、ロイ・ビタンについて熱く語ってしまい、そういえば今まであまり意識したことはなかったけど、僕の好きな曲の中にはピアノが印象的に使われているものが結構多いんじゃないかなと思ったのが、この記事のきっかけ。

という訳で今日は、12人のピアニストを切り口にしたyascd。うち後半の4人は、バンドとソロで、または別名義のバンドで、あるいは他人のアルバムへのセッション参加など、同じ人が複数のパターンで登場する。ジェリー・リー・ルイス/リトル・リチャード風にアップテンポの曲に激しくピアノが鳴り響いている曲もあれば、(そればかりだとあまりに単調なので)ピアノでの弾き語りの曲もある。必ずしも全部が生ピアノの音というわけじゃないだろうけど、まあその辺は大目に見て。

前置きはこれぐらいにして、早速曲紹介に入ろう。ジャケ写の下に書いてあるのは、

ピアニスト名
曲名
アルバム名
アーティスト名 の順。


D.E. 7th.jpg
ジェライント・ワトキンス(Geraint Watkins)
1.From Small Things (Big Things One Day Come)
『D.E. 7th』
デイヴ・エドモンズ(Dave Edmunds)

まず最初は、“かっちょええ”ロックンロール・ピアノをフィーチャーした曲を入れよう。パブロック界の大御所、デイヴ・エドモンズが82年に発表した7枚目のソロアルバム(なのでこのタイトル。ジャケにはギターのDとE7のコード図が載ってる)から。ブルース・スプリングスティーン作のいかしたロックンロール。ギター中心の曲なので、ピアノは隠し味的に使われている程度だが、それでも後半コロコロと心地よく転がるソロが聴ける。このジェライント・ワトキンスは、80年代にデイヴのバックバンドに参加しており、その後90年代にはニック・ロウのバックバンドに参加。もはやパブロック界の中心的キーボーディストと呼んでいいだろう。


Get Happy!!.jpg
スティーヴ・ナイーヴ(Steve Nieve)
2.King Horse
『Get Happy!!』
エルヴィス・コステロ&アトラクションズ(Elvis Costello & The Attractions)

最初の3枚のアルバムで自分の音楽性をすっかり確立し、その後マンネリに陥らないために、エルヴィス・コステロが自分のルーツ音楽を掘り下げ始めた80年の、この手のロックンロールやR&Bが満載のゴキゲンなアルバム。バックバンドのアトラクションズも乗りに乗っていた時期で、溌剌とした演奏が聴ける。もともとこのスティーヴ・ナイーヴというピアニストはどちらかというとクラシック畑の出のようで、彼が最初に発表したソロアルバムはいかにもそういう音だった。コステロからの信頼も厚いようで、アトラクションズが解散した後も彼ら二人でツアーに出たりしている。96年の限定5枚組CD『Costello & Nieve』は、その時のライヴを収録した隠れた好盤。


Too Low For Zero.jpg
エルトン・ジョン(Elton John)
3.I Guess That's Why They Call It The Blues
『Too Low For Zero』
エルトン・ジョン(Elton John)

ピアニスト特集の編集CDにこの人を入れるようなベタな真似をするかどうか一応悩んだんだけど、この曲はやっぱり大好きなので入れることにした。わざわざ説明の必要もないぐらい有名な彼の、83年のアルバムから。間奏でハーモニカを吹いてるのは、スティーヴィ・ワンダー。僕はこの曲のプロモーションビデオも好きで、今回の記事の趣旨に沿わないんであえてYouTubeから貼り付けたりはしないけど、機会があれば見てみてほしい。


Warm Your Heart.jpg
ドン・グローニック(Don Grolnick)
4.Louisiana 1927
『Warm Your Heart』
アーロン・ネヴィル(Aaron Neville)

ネヴィル・ブラザーズのシンガー、アーロンの91年のソロアルバムから。このアルバムからは「Ave Maria」のカバーの方が有名かもしれない。実は僕はこのピアニストのことは知らなかったんだけど、調べてみたら結構有名なジャズ・ピアニストだった。この曲を入れた理由はもちろん、前回のyascdでサニー・ランドレスが演奏する同曲を紹介する際に「有名なアーロン・ネヴィルの芳醇なヴァージョンには遠く及ばない」なんて書いてしまったものの、きっと僕のブログを読んでくださっている方の殆どはアーロン・ネヴィルなんて聴いてないだろうと思ったから。オリジナルのランディ・ニューマンのヴァージョンも悪くないんだけど、やっぱり僕はこれが好きだな。


Life In Cartoon Motion.jpg
ミカ(Mika)
5.Grace Kelly
『Life In Cartoon Motion』
ミカ(Mika)

こちらのラジオでここ数ヶ月ヘビーローテーション中のイギリス発の新人。僕が最初にラジオでこれを聞いたときの感想は「なんやこれは?」だった。このあまりにもあざといメロディーとポップすぎる曲調。最初は生理的にちょっと受け付けなかった。だけど、何度か聴くうちにすっかり病みつきになってしまい、先日ついにCDを買ってしまった。そしたら、他の曲も結構よかったんだ、これが。ジェリーフィッシュをクイーンの亜種として聴いていたような人ならきっと楽しめると思う。うん、歌い方がフレディ・マーキュリーそっくりになる瞬間もしばしば。あちこちのCD評を読むと、絶賛か酷評かの両極端。さて、この人は将来21世紀のエルトン・ジョンになるのか、それとも07年度の一発屋としてひっそり記憶されることになるのか。ちなみに調べてみたら、日本盤はまだ出てないみたい。6月発売予定か。この手の流行りモノをそんなに遅れて出してどうするんだよね。


9.jpg
ダミアン・ライス(Damien Rice)
6.9 Crimes
『9』
ダミアン・ライス(Damien Rice)

前回の記事で取り上げたばかりのこの人のこのアルバム。その記事でも触れた、冒頭の曲がこれだ。もうつべこべ解説しなくていいだろう。そっちの記事、あるいはその記事を書くきっかけになったyascd006のコメント欄(の下の方)を読んでもらえればいい。ちなみに、変に偏った印象を植え付けたくなかったんであえてその記事では触れなかったんだけど、この曲のプロモーションビデオのインパクトは相当なもの。興味のある人はYouTubeで勝手に探して見てみて。


Turnstiles.jpg
ビリー・ジョール(Billy Joel)
7.Summer, Highland Falls
『Turnstiles』
ビリー・ジョール(Billy Joel)

えーと、まずいつもの通りこの名前のカタカナ表記について書かないといけないかな。日本での通名(?)はもちろんビリー・ジョエル。でもJoeという名前をジョエと呼ばないのと同様、この苗字はジョエルとは読まないと思う。さて、この人もさっきのエルトン・ジョン同様、一応ちょっと捻った選曲をしようと心がけてるこの編集CDに入れるにはあまりにもストレートな人選かなと躊躇しかけたんだけど。まあ、さすがに「Your Song」や「Piano Man」を入れるような真似はしないんでよしとするか。以上、曲には全く触れていない、自己満足満載の解説。一言だけ書いておくと、これは「The Stranger」で大ブレイクする前の、76年のアルバムからの綺麗な曲。今や声も風貌もやたらと野太くなってしまった彼がまだきりっとした佇まいだった頃だ。


Lift The Lid.jpg
ジュールス・ホランド(Jools Holland)
8.Wish I Knew How It Felt To Be Free
『Lift The Lid』
ジュールス・ホランド&ヒズ・リズム&ブルース・オーケストラ(Jools Holland & His Rhythm & Blues Orchestra)

はるか昔、去年の8月12日の初代そそるジャケ特集の記事にこのジャケを載せたんだけど、誰もそんなの覚えてないよね。元スクイーズのキーボーディストの97年のソロアルバム。その時の記事ではもちろんジャケットにしか触れていないんだけど、このアルバムはかなりの力作。全編に亘ってニューオーリンズスタイルのピアノが聴ける。このソウルのスタンダード曲のカバー、中盤までなかなか歌が出てこないんだけど、その前半の各楽器の掛け合いがとても気持ちいいよ。


Audioboxer.jpg Everything In Transit.jpg
アンドリュー・マクマホン(Andrew McMahon)
9.(Hurricane) The Formal Weather Pattern
『Audioboxer』
サムシング・コーポレイト(Something Corporate)
10.Dark Blue
『Everything In Transit』
ジャックス・マネキン(Jack's Mannequin)

2月17日の記事で取り上げたジャックス・マネキン。そこに書いたように、中心人物のアンドリュー・マクマホンが元々在籍していたバンドがサムシング・コーポレイトだ。この2曲を続けて聴けばわかると思うけど、やっぱりなんでわざわざ別バンド名義で?と思ってしまうぐらい似通った音作り。まあ、それを言いたいがためにこうして2曲並べて入れたんだけど。この『Audioboxer』はサムシング・コーポレイトのデビューEP(01年)。で、『Everything In Transit』が、今のところのアンドリューの最新作(05年)。この「Dark Blue」が、2/17の記事のコメント欄でかえでさんが「ハノン教本」に近いと言った、正確なリズムを刻む美しさを再認識できる曲。


Songs For Silverman.jpg Naked Baby Photos.jpg
ベン・フォールズ(Ben Folds)
11.Jesusland
『Songs For Silverman』
ベン・フォールズ(Ben Folds)
12.Philosophy
『Naked Baby Photos』ベン・フォールズ・ファイヴ(Ben Folds Five)

さっきのサムシング・コーポレイトなど、ピアノをメインにした元気なロックバンドが出てくるたびに決まって引き合いにだされるのが、今はなきベン・フォールズ・ファイヴ(BFF)。ピアノ+ベース+ドラムというジャズみたいな楽器編成なのに、演ってる音楽はメロディアスなパワーポップ(?)というのが、登場当時はとびきり新鮮だった。ただ、実はベン・フォールズ自身はもっと歌詞を重視したシンガーソングライター体質の人だったようで、BFFのアルバムも次第にそういう傾向が見られ、やがて解散。ベンは引き続き後期BFFの音楽性の延長でソロアルバムを出し続けている。

『Songs For Silverman』は05年のアルバム。ここに写真を載せた、僕が持っているバージョンはDVD付きの限定盤(今でもずっと売ってるけど)。いつもジャケットの写真のセンスの悪い彼にしては珍しく、写真集のようになったブックレットの写真がとても綺麗。「Philosophy」はBFFのデビューアルバムに収録された曲だけど、ここには後に出た未発表曲やライヴテイクを集めた『Naked Baby Photos』からのヴァージョンを入れよう。ライヴでもスタジオヴァージョンとほぼ変わらないこの演奏。歌いながらこれだけ弾きこなせるなんて凄いね。


Making Movies.jpg Escape Artist.jpg

Dedication.jpg Born To Run.jpg
ロイ・ビタン(Roy Bittan)
13.Tunnel Of Love
『Making Movies』
ダイア・ストレイツ(Dire Straits)
14.R.O.C.K.
『Escape Artist』
ガーランド・ジェフリーズ(Garland Jeffreys)
15.Jole Blon
『Dedication』
ゲイリー・US・ボンズ(Gary U.S. Bonds)
16.Backstreets
『Born To Run』
ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)

さていよいよ、今回の編集盤のメインアクトだ。yascd006のコメント欄には「あまり数多くのセッションをこなしている人ではない」なんて書いたけれど、調べてみたら結構な数のアルバムに参加していることもわかって(しかもそのうち僕が持ってるのも何枚もあった)、こんなことならこないだのサニー・ランドレスみたいにこの人だけの特集にしてもよかったかなとも思ったぐらい。まあ今回のはこうしていろんなピアニストの演奏を聴き比べるという違った面白みもあるんで別にいいんだけど。ここではちょっと彼だけ特別扱いで、4曲入れてみよう。

まずはダイア・ストレイツの80年の名作から。彼らの全ての曲の中で僕が一番好きなのがこれ。特に後半、マーク・ノフラーの流麗なギターとロイ・ビタンの可憐なピアノが絡み合うところが最高。この曲を初めて聴いてから四半世紀以上が経ち、もう何百回聴いたかわからないぐらいだけど、いまだにこれを聴くと背中がぞくっとする。

次に、12月10日の記事で新譜を取り上げたガーランド・ジェフリーズの、これは81年のアルバムから。ニューヨークとジャマイカから豪華ゲストが参加したこのアルバムも、本当に内容の濃い優れたアルバム。ちなみに、中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」が出たときに僕はこの曲のパクリだと思った。

続いて、ブルース・スプリングスティーンが60年代に自分がファンだった、当時はもう落ちぶれていたこの人を全面的にバックアップした81年の復活作。この曲のみならず、アルバム全体に亘ってスプリングスティーンがプロデュース、曲の提供、演奏、コーラスで参加。当然バックの演奏はEストリートバンドだ。さっきの2枚もそうだけど、80〜81年のEストリートバンドといえば、かの『The River』発表直後。彼らが最高に充実していた時期だ。当時僕は『The River』に夢中になっていた頃で、全然名前も知らなかったこの人のこのアルバムを、ここに書いたような情報だけを頼りに買ったわけなんだけど、それが大当たりだったことは、この曲を聴いてもらえばわかるだろう。

そして、本家スプリングスティーン&Eストリートバンドの、言わずと知れた75年の代表作『Born To Run』から。数ある彼らのアルバムの中でも、ピアノが印象的なのはやはりこのアルバムだろう。ここまでのこの4曲で、僕が一番好きなピアニストと言ったロイ・ビタンの端正で溌剌としたプレイを存分に味わってほしい。


Tried And True.bmp Night And Day.jpg
ジョー・ジャクソン(Joe Jackson)
17.Left Of Center
『Tired And True』
スザンヌ・ヴェガ(Suzanne Vega)
18.A Slow Song
『Night And Day』
ジョー・ジャクソン(Joe Jackson)

最後に登場するのは、ジョー・ジャクソン。この人こそ特にセッションピアニストとして有名なわけじゃないけど、スザンヌ・ヴェガが映画「プリティ・イン・ピンク」に提供したこの「Left Of Center」でクールなピアノを弾いている。「A Slow Song」は、元々イギリスのパンク/ニューウェーヴ期に出てきた彼がニューヨークに移り住み、「Steppin' Out」のヒットと共に大ブレイクしたアルバム『Night And Day』の最後を締めくくる名曲。僕が観た彼のコンサートでもアンコールの最後でこれを演奏し、エンディングはちょっといかした演出があったんだけど、それは市販されているDVDで観られるはずなのでここでは種明かしはしないでおこう。


以上18曲、この記事のタイトルにしたようにピアノ三昧を味わってもらえるだろうか。子供の頃にピアノなんて習わせてもらえなかった僕だけど、ここに入れたような曲を聴くたびに、「ピアノが弾けたらよかったのに」と思ってしまう。まあ、僕の場合はことあるごとに「ギターが弾けたらよかったのに」とか「ベースが弾けたらよかったのに」とか思ってるんだけどね。


posted by . at 23:47| Comment(51) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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