2007年03月30日

実況 ソドムとゴモラショー Pet Shop Boys live in Auckland

まずびっくりしたのが、『40秒差で危うく大惨事』の記事。昨日のNZの新聞の見出しなんだけど、チリのサンチャゴからオークランドに向かっていた飛行機に、ロシアの人工衛星の破片か隕石だと思われる物体が衝突しそうになったとのこと。落下があと40秒遅かったら空中爆発という間一髪の話。その飛行機に、南米ツアーを終えて昨日のオークランド公演に向かっていたペット・ショップ・ボーイズ(以下PSB)の面々が乗っていたらしい。

おまけに昨日のオークランドは朝から豪雨警報が出るほどの暴風雨。幸い、開場時間前あたりには普通に歩ける程度の雨に変わっていたけれど、今朝の新聞の一面は、窓のところまで水に浸かった自動車の写真。NZを訪れるのは今回が初めてというPSB、なんて国だ!と思っただろうね。僕も思った。


さて、去年のホセ・ゴンザレス、アークティック・モンキーズに続いて僕にとっては三度目となるお馴染みのセイント・ジェームス・シアター。開場・開演まで散々待たされた話は毎度のことなんでもういいね。まあとにかく、開場と同時に場内にダッシュ。いつも彼らのライヴはステージ右側にクリスのキーボードが置いてあって、ニールが動き回ったりいろんなアトラクションがあるのは左側だというのを見越して、中央やや左、ステージ前の柵に貼りついた。よし、ステージまで手を伸ばせば届くほどの距離。こんな近くでPSBを見られるなんて。ちなみに3年前に中止になった東京公演は国際フォーラムの予定だったからね。日本ではこんな距離はありえないよ。

周りを見渡すと、大人ばっかり。いや、自分だって大人なんだけど、最近自分以外は皆ティーンエイジャーか20代とかいうライヴばかりなんで、妙に違和感(と、いつもは自分が他全員の違和感の元になっていることは棚に上げて)。

僕のとなりで柵にもたれてるのは、身長2mはある大男。僕の視界をさえぎるわけじゃないから別にいいんだけど、なんか圧迫感あるなあ。それより、こんな奴が一番前の真ん中にいたら、後ろの人たちさぞかし見えにくいだろうに。

ステージ上には、右手にキーボード、左手に簡素なベンチ、あちこちにマイクスタンド数本、それだけ。キーボードスタンドとベンチと、あとステージ後方にブラックライトっぽい色を出している蛍光灯が光っているが、いかにもシンプルなステージ。なんだか、コンサートというよりは、今から芝居でも始まるような雰囲気。


さあ、始まった。ステージ後方からタキシードにシルクハットとフード付パーカーに野球帽の二人組が。ニールとクリス!と思いきや、よく見ると顔が違う。と思ってる間に後ろからまた同じ服装の二人組が。さらにまた二人。二人のキャラをアイコンとして使ったようなこの辺の演出は、ニセモノPSBが登場する「I'm With Stupid」のPVに通じるところがあるね。

We're the Pet Shop Boys

最初の二人はコーラス、次の二人はダンサー、そして最後の二人が本物のPSB、ニール・テナントとクリス・ロウだ。

オープニングは意外な選曲「We're The Pet Shop Boys」。ロビー・ウィリアムズの最新作『Rudebox』に彼らが提供、プロデュースした曲だ。

曲の途中でお馴染みの女性ボーカル、シルヴィア・メイソン=ジェイムスが登場。なんか変な帽子。

Left to my own devices

曲は「Left To My Own Devices」、「I'm With Stupid」、「Suburbia」、「Can You Forgive Her?」と続く。二人のダンサーが凄い。ブレイクダンスとパントマイムとバレエと新体操を混ぜたような見事なダンス。それを二人で流れるように絡み合いながら、緻密に計算され、おそらく何百回も繰り返しているであろう動きで見せるものだから、片時も目が離せない。助走もなしでその場でジャンプして後方回転、なんてサーカスばりの動きも。

ステージがシンプルなだけに、その二人を中心としたダンスと、ステージ後方一面に張られたスクリーンに映し出される様々な映像だけに集中できる。もちろん、若干ガニマタで脚を踏ん張って熱唱するニールが一番引き立つような演出にはなっているんだけど。CDでは無表情でクールなボーカルというイメージのニールがそんな風に歌っているのが意外で、なんだか微笑ましかった。

6曲目が、「エムアイエヌアイエムエーイエール、ミニーマール、ミニーマール」のサビでお馴染み(?)の「Minimal」。スクリーンには歌に合わせてそれぞれの文字が点いたり消えたりする画期的な(笑)演出。

続いては、綴り読み上げソングの先輩、「Shopping」。もちろんサビの歌詞は「エスエイチオーピピアイエンジー、ショッピン」だ(笑)。この2曲、どっちの曲をバックにしてもそれぞれのサビをぴったり当てはめて歌えることに気づいた。焼き直しするにしてもそこまで徹底すると立派。

Rent

「Rent」ではニールとダンサーの一人がこのポーズで腰掛けて、時々歌詞に合わせてダンサーが手振りで動きをつけるのをこうしてシルエットで見せる。派手なダンスで魅せる曲とこうしたシンプルなビジュアルとの差の付け方も上手い。

作った時にはまさか追悼歌になるとは思わなかったであろう、故ダイアナ妃のことを歌った「Dreaming Of The Queen」では、スクリーンにダイアナ妃の葬儀の映像。曲が終わったときに今回初めてニールがシルクハットを脱いで敬礼。うわー、最近のビデオで髪の毛が薄くなってきてることは知ってたけど、もうほぼ丸坊主だね。

「Heart」、「Opportunities (Let's Make Lots Of Money)」といった初期の代表曲を続け、そこからほぼメドレーのようにして始めた(このつなぎが格好よかった)新作からの「Integral」を終えたところで、クリスを除いて全員退場。ということは、クリスの唯一の持ち歌「Paninaro '95」だ。この人、PVとかコンサートビデオでは常に無表情を貫いてるだけに、こうして歌ってるときにちらっと見せるはにかんだ笑顔が妙に新鮮。

Paninaro '95

今のところの最新シングル「Numb」では、スクリーンにPVを流して、コーラス隊はロシア軍人の服装。曲調そのままの重苦しい雰囲気だ。

Numb

かと思えば、曲が終わるといきなり軍服を脱ぎ捨て、下に着ていたカラフルな運動着で陽気に踊りだす「Se A Vida E (That's The Way Life Is)」に続く。いいね、この緩急の付け方。ここだけでなく、ほとんど1〜2曲毎にダンサーとコーラス隊の衣装換えがあった。ニールも、途中で別のタキシードに着替えてきたりして、あれは何の意味があるんだろう(笑)。で、クリスは最初の黄色のパーカーから着替えたかと思えば、次は青いパーカー。もう、この二人は徹底してそれぞれこのイメージ。

そういえば、二人のダンサーが上下入れ替えた服装(一人はジャージの上にスーツのスラックス、もう一人がスーツのジャケットにジャージのズボン)で出てきて、一人が立てひざで寝そべった上にもう一人が座って、変則二人羽織をしていたのはどの曲だっけな。あれは面白かった。

「Se A Vida E (That's The Way Life Is)」の最後に「Discoteca」の一節を入れ、そのまま曲間なしで「Domino Dancing」へ。更に、「英国人気質を歌った歌。きっとNZ人にも当てはまるよね」との前置きで「Flamboyant」。

ここでお待ちかねのアコースティック・コーナー。1曲だけだったのは残念だけど、僕の好きな「Home And Dry」を演奏してくれたのは嬉しかった。

Home And Dry

演奏後、ニールがこっちにピックを投げてくれて、一旦は僕の手に当たったんだけど、柵の向こうに落ちてしまった。隣の2mが柵から乗り出して拾っちゃったよ。でも、僕の胸ぐらいの高さの柵に腰のところをひっかけて床に落ちたピックを拾えるなんて、あの2m、もしかしたら座高が1.5mぐらいあるぞ。

そしてここからが終盤、代表曲のオンパレード。プレスリーの「Always On My Mind」、U2とボーイズ・タウン・ギャングの曲を合体させた「Where The Streets Have No Name (I Can't Take My Eyes Off You)」(他人のカバー曲ばかりが代表曲なの?と言われそうだけど、このオリジナルを茶化したような痛快な曲調がいいんだよ)、懐かしい「West End Girls」、そして、ニールを含めた6人が派手なキラキラの勲章だのバッヂだのを付けた軍服を着て登場した(クリスは相変わらず青のパーカー)「The Sodom And Gomorrah Show」で終演。やっぱりこの最新作からの名曲を一番いいところに持ってくるね。

The Sodom And Gomorrah Show


アンコールに出てきたのはニール以外の6人。かなりソウル風に変調されていた「So Hard」をシルヴィアが歌い、そのままメドレーで「It's A Sin」へ。ここでニール再登場。場内も本編終盤から続くヒット曲連発に大歓声。

「これが最後の曲」と言って始めたのが、予想通り「Go West」。歌いきったところでニールが退場。後半のアドリブのところでシルヴィアとコーラス隊が、今日演奏した「We're The Pet Shop Boys」、「I'm With Stupid」、「Shopping」、「So Hard」のサビを織り交ぜながら歌う。まさに大団円といった趣。


大満足。絶対に聴きたい代表曲から、いつも違ったところから引っ張り出してくる隠れたアルバム曲(今回でいうと「Shopping」や「Dreaming Of The Queen」)まで、これ以上はないと思える充実した選曲だった。「The Sodom And Gomorrah Show」の歌詞じゃないけど、僕が彼らに求めるエンタテインメントの全てを観ることができた。

この満員の会場が後ろから順に出て行って、僕が出られるまで何十分かかるだろうと思っていたら、あれ?まだ客電点かないよ。

また出てきた!いくらアンコール要求されたからって、あれだけ盛り上がった「Go West」の後に何か演るのは蛇足だろうと思ってたけど…

「Being Boring」。ああ、これを忘れてたよ。こんな素敵な曲を最後に演ってくれるなんて。なんだかキーボードのリフ、ちょっと音が外れてる?でもいいよ、それでこそ生演奏。ただでさえこういうグループのライヴはほとんど全音プログラミングされててCDで聞くのとあまり変わらない音なんだから、たまにはそういうのがないとね。

その曲に合わせて歌いながら気づいたんだけど、なんだか自分がやけに音痴。音が上がるところに声が全然ついていけてないよ。と思ったら、自分ではっきりわかるほど喉が腫れてる。そりゃ、それまでほぼ全曲大声で歌ってたら、喉も嗄れるよ。まあ、全曲って言っても、大抵はサビのところぐらいしか歌詞覚えてないんだけどね。

ああ、でもこうして歌詞まで知ってて一緒に歌える曲ばかりを演ってくれるコンサートなんて、考えてみたらすごく久し振りかも。楽しかったー。おまけに今日は会社で意味もなく低音の魅力で話せたし(笑)


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2007年03月17日

伝統芸能伝承の瞬間 The Slits live in Auckland

僕は今回初めて訪れる、オークランドでは老舗のパブ兼ライヴハウス、キングス・アームズ。一応8時半開場、9時開演となっていたが、例によって始まる時間なんて適当なんだろうなとは思いつつ、何かつまみながらビールでも飲んで待ってようと思って、8時ちょっと前に会場へ。

ビールとチリビーンズパイを頼んだところで、サウンドチェックの時間だから一旦パブを閉めるんで隣のパブに移動してくれとのアナウンス。え?僕これ頼んだばかりで、パイ熱くてまだ一口も食べてないんだけど…

「チケットは持ってる?」「うん」「じゃ居ていいよ」
とのことで、またしても関係者でもないのにサウンドチェックからゆっくりと観させてもらった。残念ながら、肝心のスリッツは出てこなくて、前座のバンドだけだったんだけどね。でも今回の前座の2バンド、結構よかったな。CD出てるか調べてみよう。


案の定、メインアクトのスリッツが登場したのは既に11時前。バラバラとステージに出てきた高校生ぐらいの女の子たちを見て、一瞬また別のバンドが演るのかと思ったけど、今のスリッツはオリジナルメンバーのうちアリ・アップとテッサ・ポリットが、新たに4名のメンバーを加えての再結成。新メンバーって、こんなに若い人たちだったんだ。

The Slits

ステージ後ろにドラムのアナが座っている他は、5人のメンバーが横一列にずらっと並ぶ。左からギターのノウ、バックボーカルのホリー、ボーカルのアリ、ベースのテッサ、ギターのアデル。僕はアデルの真正面、もちろん一番前でステージにもたれかかって楽ちんな好位置。

オープニングはスペイシーなダブ・サウンドを響かせる「Newtown」、続いてレゲエ・ナンバー「Man Next Door」、そしてミドル・テンポの「FM」と、79年のファーストアルバム『Cut』とそれ前後の曲を次々に披露。

アリの自由自在に素っ頓狂なボーカルは、ファーストアルバムから30年近く経っても全然変わってない。見かけこそあれから30年だけど(それでも確か彼女まだ40代中盤のはず?)声はまったく昔のままだ。すごく楽しそうに歌う人だなあ。客のこともガンガン乗せるし。

演奏中にアリが他のメンバーにしょっちゅうちょっかいをかけていたのが愉快。なんだか、寡黙にベースを弾いているテッサが教頭先生で、アリが口数の多い金八先生風の学年主任、他の4人が女子高の生徒って感じ。

学年主任のすぐ隣で、かつてのアリがやっていたような原始人風コーラス(?)とか、アメリカンインディアン(今はネイティヴアメリカンっていうのか)みたいに口に手を当てて「アワワワワ」ってのとか、一所懸命先生の見習いをしていますっていう風なのがホリー・クック。頭に髪の毛を丸めたお団子みたいなのが沢山ついてる。すぐ疲れるのか、しょっちゅう床にぺたんと正座してしまうのがおかしかった。

Hollie

ドラムのアナと左端のギター、ノウが優等生っぽく微笑みながら演奏していたのに対して、右側のギター、アデルは終始ニコリともせずに黙々とギターを弾き、コーラスを入れていたのが印象的。なんだか教室の隅で「こんな授業つまんね」って顔しながらクールに振舞ってる女の子みたい。でもたまに学年主任が廻ってきて「ちゃんとやってる?」みたいなことを言ったらニコッとしてたのが可愛い。そういえば彼女、6曲目が終わったところで「おしっこ」って言って退場しちゃったんだ。そういうところもなんだか学校ぽかったな。

Adele

僕がCDで持っている初期のライヴと違って、かなり達者な演奏。とはいってもスリッツだからそんなにテクニカルなことをやってる訳じゃないんだけど、パンクっぽいタテノリの曲から転調して急にレゲエのリズムになったり(あるいはその逆)、ミキシングに頼らず人力ダブをやったり(アリのダブ風ボーカル、上手!)、稚拙なふりしてとても安定感のある、楽しく踊れる演奏だった。メンバー紹介の際にアリがテッサのことを「こんなに上手くレゲエを弾ける女性ベーシストは他にいない」って言ってたけど、それもあながち間違ってないと思う。

Cutそう、アリがステージで何度も言っていたとおり、彼女らの音楽を一言で言うと、「パンキー・レゲエ」。「ニュー・ウェーヴの名盤」として紹介されることの多いファーストアルバム「Cut」で、スリッツとプロデューサーのデニス・ボーヴェルが作り上げたサウンド。まあ、このアルバムは「さあ、名盤を聴くぞ」と張り切って聴きだすと最初は肩すかしを食らうこと間違いなしなんだけどね。でも、聴けば聴くほど馴染んでくるいいアルバム。僕は79年にリアルタイムでこのアルバムを知ったわけじゃないんだけど、当時この泥んこ原始人ヌードジャケはかなりショッキングだったろうね。バンド名もスラングで「割れ目」だし。今流通しているCDには、マーヴィン・ゲイの「I Heard It Through The Grapevine」の全然ソウルフルじゃないのが痛快なカバーと、アルバム収録曲「Love Und Romance」をデニス・ボーヴェルが極限までグシャグシャにしたダブバージョン「Liebe And Romanze」がボーナストラックとして収録されている。なかなか充実したボートラなので、それを聴きたい人はCDを、それよりこのジャケを大きな画像で見たい人は中古LPを探して(笑)

コンサートの話に戻ろう。中盤で二度ほど余興があって、クイズに正解したらレコードがもらえるというもの(一問目のはなんだかよくわからないレゲエのアルバム、二問目のはアリが変名でジャマイカで出したレゲエのシングルだった)。僕は一問目はわかったんだけど、残念ながら学年主任があてたのは他の生徒だった。

上の写真を見てもわかるようにアリは銀色のぴったりしたミニスカートをはいていたんだけど、途中でそれがきついとか言い出して、別のミニスカートをビニール袋から取り出した。今度はこの人がトイレ休憩なのかなと思ったら、なんとその場でスカート脱いではき替えちゃった! まあ、どちらのスカートもお尻の長さぐらいしかないんで、動き回ってるときはもともとお尻丸見えだったし、終始くねくねとセクシーダンス(?)してたし、別に着替えを見られるぐらいはなんともないのかな、さすが元泥んこ原始人だなあと、妙に納得(笑)

途中に、去年25年振りに発表したEPからの曲を挟み、コンサート本編は10曲ほどで終了。アンコールで演った代表曲「Typical Girls」が終わったのは、もう1時前だった。曲数は少なかったけど、賞品付きクイズとか「おばさんに訊いてみよう」のコーナー(笑)とか、トイレ休憩(笑)とか、いろいろあったからな。楽しいコンサートだった。

そのEP「Revenge Of The Killer Slits」には、新生スリッツのメンバー以外に、セックス・ピストルズのポール・クックやアダム&ジ・アンツのマルコ・ピローニが参加していたり、クラッシュのミック・ジョーンズの娘ローレン・ジョーンズが入っていたりする。だいたいが新生スリッツのホリー・クックはポール・クックの娘だし、まるでこのEPは、オリジナルパンク世代とその娘世代が一堂に会したパーティーの記録のよう。

そう思えば、昨日のライヴのときに感じた、この新生スリッツは学校みたいという感想もあながち的外れでもないのかも。70年代にオリジナル・パンクスだったアリやテッサが、その頃の自分達ぐらいの年齢の子供達を集めて、いまやパンク・クラシックとなった「Typical Girls」などの曲を伝承している。なんだか伝統芸能みたいだ。冒頭、「もう二度と観られないかも」なんて書いたけど、もしかしたら10年後に僕が観るスリッツのステージで歌っているのはホリーなのかもね(いや、僕がまだライヴ行けるほど元気なら、僕よりほんの少しだけ年上のアリが引退してる訳もないか)。

30年使い込まれて貫禄のついたテッサのベースギターを見ながら、そんなことを思った夜だった。

Ragged Musicman

16 March 2007 at Kings Arms, Auckland, New Zealand
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2007年03月13日

懐かしい不安感 Shearwater 「Palo Santo」

覚えている限りで一番古い幾つかの記憶。多分僕が5歳か、もしかするともっと幼い頃だったのかもしれない。人ごみで、一緒にいたはずの親とはぐれてしまって、ひどく不安な気持ちになったことが2回ほどある。一度は(確か梅田の)繁華街、もう一度はどこかのお祭りのような場面。どちらも夜だったので、普段は見慣れないネオンや提灯など、様々な明かりが頭の周りに灯っていた。(子供なので)断片的にしか読めない奇妙なポスターなんかのこともやけに覚えている。まるで異空間に紛れ込んでしまったような感覚。

迷子になったとか、そんな大きな事件ではなかったんだと思う。きっとほんの少しの間、親の姿が見えなくなってしまったぐらいのことだったんだろう。そのとき怒られた記憶も、大騒ぎされた記憶も残っていないから。だから、そんな些細な出来事をいまだに覚えているのが不思議なくらいなんだけど、後にその時の光景と共に度々よみがえってくるあの“懐かしい不安感”は、今でも僕の趣味・嗜好に影響を与えている気がする。


ジョナサン・メイバーグが書くメロディーと彼のか細い声を聴くと、何故だかわからないけれど僕はいつも“懐かしい不安感”とともに、あの光景を思い出してしまう。

僕のブログに何度か登場しているオカヴィル・リヴァーで鍵盤類から弦楽器までありとあらゆる楽器を演奏するジョナサンと、中心人物であるウィル・シェフのサイド・プロジェクト、シアウォーター。先日近所のCD屋で彼らの見慣れないジャケットを見かけて、新譜が出たんだと思って調べてみたら、なんと発売は去年の5月。ちょっと注意を怠ってたね。

Palo Santo シアウォーター 「Palo Santo」

ファルセットも交えたか細い、しかし時には激昂するボーカル。基本的には繊細なアコースティックで、でもあちこちに不思議な音が紛れ込んでいる演奏。少し霞がかかったような、エコーの効いた音作り(そう、ちょうどこのジャケットのイメージのような)。そして何よりこの、人を心細い気持ちにさせる、でも心地よいメロディー。

2曲目「Red Sea, Black Sea」のイントロなんて、本当にどこか不思議な異国で奏でられている音楽みたいだ。冒頭の説明が僕の独りよがりな思い出でよくイメージが涌かないなら、映画「千と千尋の神隠し」で主人公が迷い込む不思議な街で流れているような音楽(実際にあの映画でかかっていた曲とは全然違うけど、あくまでも僕のイメージで)といえば少しは感触がわかってもらえるだろうか。


地味だけど、聴くほどに味が出てくるアルバム。発売から殆ど1年遅れたけど、買ってよかった。でも、もしこれからこのグループを聴いてみようという人には、この一つ前に出た(間にミニアルバムを挟むけれど)こちらの方をお勧めする。

Winged Life シアウォーター 「Winged Life」

04年に出たサードアルバム。幻想的なジャケットに写るのはShearwater(日本名ミズナギドリ)だろうか。これは新作以上にさっき僕が書いた彼らの特徴がよく出た好盤。「My Good Deed」や「The World in 1984」なんて、どうしてこんなメロディーが書けるんだろうと思ってしまう。新作には歌詞どころかメンバー名もろくに書いていないけれど、このアルバムにはちゃんと(ちょっと難解な)歌詞が載っているし。メンバー名も載っているが、誰がどの楽器を担当して、どの曲で歌っているかということはきちんと書かれていない。メンバー名と全ての楽器の名前がずらっと書いてあるだけ。その辺の情報を詳しく知りたければ、彼らのオフィシャルサイトに行けということなんだろうけど。ちなみにこのサイトの扉ページの写真、僕は好きだな。


この記事を書こうとしてあれこれ調べていたら、なんと彼らがマタドールレコードと契約して、4月10日に「Palo Santo」が2枚組で再発されるという情報を見つけた。くそぅ、買ったばかりなのに(笑)。でもそれは、全11曲中5曲を新たに録音しなおし、8曲の新曲を2枚目に収めるというもの。ジャケットも変わるし、これはもう買い直しじゃなくて買い増し決定だね。そのうち僕がこないだ買ったオリジナル盤の方が希少になるかもしれないし(笑)

しかも、再発盤のLPには、2枚組CDにも入っていない2曲が追加されるという話だ。これはもうLP買うしかないだろう。アマゾン見てたらもう早速再発盤が「近日発売」扱いで載ってるね。しかも現行の1枚ものと同じ値段。これは今から買う人は迷うね。曲数の多い再発盤か、そのうち希少になって高く売れる現行盤か(笑)
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2007年03月10日

精神的高校生にお勧め My Chemical Romance 「The Black Parade」

最近はこのブログタイトルに反してメジャーなものばかり取り上げてしまって、自分でもなんだかなあと思ってるんだけど、今日もまたそういうやつ。こないだ近所の安売りスーパーで買って以来、僕のヘビーローテーションになってるこのアルバム。

The Black Parade
マイ・ケミカル・ロマンス 「The Black Parade」

ピンク・フロイドの「In The Flesh?」の伴奏にデイヴィッド・ボウイの「Five Years」を歌っているような「The End」で幕を開けるこのアルバムは、今例に挙げた2曲を1曲目に持つ『The Wall』と『Ziggy Stardust』がそうであるように、コンセプトアルバムという形になっている。かつてはコンセプトアルバムというとプログレ・バンドの常套手段だったけど、グリーン・デイの『American Idiot』といい、最近はこの手のバンドがコンセプトアルバムを出すのが流行ってるのかな。

毎年1月にオークランドで行われている野外フェス「Big Day Out」の、今年のトリがこのバンドだった。僕はそれには行かなかったんだけど、行って来た同年代の友人に「マイ・ケミカル・ロマンスどうだった?」と訊くと、「いや、あれはいいよう」と答えた(「良いよう」でなく、伝染るんですのカエル君が照れて言う例の台詞を思い出してください。って、そんなの知ってる人の方が少ないか)。

まあ、そういうバンドだ。え?わからない?じゃあ、このビデオを観てもらえば話が早いかな。

http://www.youtube.com/watch?v=-QgKGsufg6k

この大仰な雰囲気から、その時どんなライヴをしたのかは容易に想像がつく。20年も30年もロックを聴いてきている僕らの世代から見ると、さっき冒頭の曲を説明したように、これは○○のパクリだな、とか、この曲は△△と××を組み合わせた感じ、とか思えてしまって仕方がない。だからきっと、僕らの世代のリスナーはそこでこのバンドを切り捨ててしまうのが普通なんだろう。

でも例えばこの最初のシングルカット「Welcome To The Black Parade」、曲の構成といい、ブライアン・メイ風の音色を持つドラマチックなギターソロといい、まるでクイーンの「Bohemian Rhapsody」だ。強いて言えば、そこから例のコミカルな「ガリレオ、ガリレオ」の部分を除いて、パンク風のアレンジを加えながら、アッパー系のドラッグをガンガン注入して5分間に凝縮した感じ?そりゃ、格好いいに決まってるよ。

他にも、エアロスミス風の伴奏に乗せてスコーピオンズのクラウス・マイネのように朗々と歌い上げる曲とか、ちょっとグラムロック風に始まったかと思うと、メンバー全員でわーっとユニゾンのコーラスに入る、まるでボン・ジョヴィのような曲(そういえばこいつら同郷だな)とか、元ネタを探せばいくらでも例が挙げられる。

「Mama」という曲はそのタイトルと歌詞からしてピンク・フロイドの「Mother」を元にしているのかなと思っていたら、同じ『The Wall』中の「The Trial」のようなオペラ調だった。うんうん、コンセプトアルバムだね。あ、その曲にゲスト・ボーカルとして参加してるのはライザ・ミネリだ。ここにもちらっとクイーンの影が。

僕が中学や高校の頃は、学生バンドが練習する曲といえば、基本のディープ・パープル「Smoke On The Water」に始まって、マイケル・シェンカー・グループとかホワイトスネイクとかが定番だったんだけど、きっと今の高校生はこれをしゃかりきに練習してるんだろうね。だって、さっきからやたらと引用している70-80年代の有名バンドの格好いいところばかりを合成しているようなもんだから。

コンセプトアルバムとか言いながら大したことを歌ってるわけじゃないのも、大人から見たらご愛嬌。まあ、70年代のハードロックだって、ちゃんと歌詞を読んだらろくなこと歌ってたわけでもないし、だからこそ王様が茶化したディープ・パープル他の和訳がギャグとして成り立った訳で。

前作と聞き比べてみると、格段の進歩だ。まあ、前作までのヘビーさがなくなったことで文句を言っている昔からのファンもいるようだけど。音だけでなく、前作と今作それぞれの裏ジャケに載っているボーカルのジェラルド君の容貌の変化

過去 現在

最初に今作の裏ジャケ見たとき、てっきりメンバーチェンジしたのかと思ったよ。まるで覚醒して41号になった鉄雄、ぐらいに顔つきが違うし。

まあ、音の変化も、髪の毛の色やメイクやユニフォームの変化も、すべて周到に考えられたマーケティングの結果なんだろうし、そんな作られたバンドの音なんて聴きたくないという人の気持ちはよくわかるけれど、僕の中に根強く残っている高校生の部分がこの音に強く惹かれてしまうんだから、しょうがない。

実年齢はともかく、中学の卒業式ってついこないだだったような気がしているような人(ボケ老人かよ)もきっとこれを気に入ってくれると思うな。
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2007年03月05日

1/1000の夜 Fall Out Boy live in Auckland

2月17日の記事で予告したとおり、フォール・アウト・ボーイのコンサートに行って来た。今帰ってきたばかりでまだ耳がよく聞こえないんだけど、印象が残ってるうちにざっとレポートしておこう。

会場は、オークランド郊外マヌカウにある多目的アリーナ、テルストラ・クリア・パシフィック。初めて訪れたが、結構新しくてきれいなところだった。床はコンクリート打ちっぱなしだったけど。

7時開場(開演時間は書いていなかった。どうせまた延々と始まらないんだろ)だったんだけど、僕の会社からだとオークランド市全域をほぼ縦断することになるその会場まで、夕方のラッシュ時にどれだけ時間がかかるか読めなかったので、少し早めに会社を出た。時間帯の割には高速道路が意外とスムーズで、6時過ぎには着いてしまったから、近くのショッピングセンターでCDでも掘るか早めの晩飯でも食うかな、と思っていたら

開場前

なんと、すでに入場ゲート前は黒山の人だかり。まあ見てのとおり黒髪の人は少ないんで、あんまり黒山という感じはしないんだけどね… とか言ってる場合じゃないよ。並ばなきゃ。

じりじりと進んで、7時ごろにはようやく入場できた。もうアリーナは前から10メートルぐらいまで埋まってる感じかな。そのあたりで周りの人とかなり接近した状態で待機。密着とまではいかないけど、かなり息苦しい感じ。もう押し合いへし合いやってるよ。今日は足踏まれても蹴られても痛くないように、気合入れてドクター・マーティンの10ホール履いてきたからね。僕のこと押すと踏むよ。あと、友達に目黒寄生虫館みやげにもらった回虫のTシャツを着ていったら、前に立っていた女の子に振り向きざま露骨に嫌な顔されたよ。そうそう、僕に近づくと回虫移るよ(笑)

僕が最年長ではなかったと思うけど、きっと僕を含めて計算しても、客席の平均年齢は僕の実年齢の半分ぐらいだったろうね(そのぶん精神年齢でバランスを取ってます)。客層はおよそ7:3ぐらいで女性が多め。なので視界にそれほど背の高い人がおらず、かなり快適。いや、あの湿度に加えて汗と各種香水が入り混じった匂いは快適からはほど遠かったんだけどね。

前座が2組終わった時点で既に9時前。腹減ったな。あんまり大したことない前座なのに皆モッシュするからしょうがなく僕もつられて汗だくになってるし(2組目のバンドは結構よかったけどね。後で名前調べとこう)。9時過ぎにようやく背景にバンドのロゴの入った垂れ幕が上がる。

ステージの4人

オープニングは前作『From Under The Cork Tree』の1曲目「Our Lawyer Made Us Change The Name Of This Song So We Wouldn't Get Sued」。続いてはこれも同アルバムの2曲目「Of All The Gin Joints In All The World」。なんだこれは。一体どのアルバムのプロモーションツアーなんだ?

僕は大体コンサートでは演奏曲目(曲順)を覚えることにしているんだけど(前のグレン・ティルブルックのときみたいに座れてテーブルもある場合はメモしてくるけど)、彼らの曲名はとにかく覚えにくい。今書いたようにやたらと長い曲名が多いし、かなりの曲のタイトルがサビの歌詞ではないどころか、曲中にその言葉が出てこないことさえある。今日のコンサートでも、演奏した曲は全部わかったんだけど、タイトルを覚えてないから、何を何曲目に演奏したかを覚えられなかった。

でも、覚えているのは、今日はやたらと『From Under The Cork Tree』からの曲を演ったということ。このアルバムの2/3ぐらいは演奏したんじゃないかな。一方、最新作である『Infinity On High』からはわずか3〜4曲のみ。うーむ、わけ分からん。

『Infinity On High』唯一のピアノ・バラッド「Golden」を、最初はギターの弾き語り、途中からメンバーが入ってきてヘビーなバージョンに変更していた以外は、どの曲も皆アルバムどおりのアレンジだった。まあ、そんなに器用なバンドじゃないけど。

上の写真では、ステージ中央にボーカル&ギターのパトリック、左手にベースのピート、右手にギターのジョー、後方にドラムのアンディという配置になっているが、ピートとジョーはしょっちゅう場所を入れ替わる。彼ら二人はとにかくステージを走り回る。くるくる回転する。ジャンプする。格好いい!

一方、かなり意外だったのがパトリックの地味さ。帽子を目深にかぶり(彼がずっと帽子をかぶっている訳は、前の記事に書いたDVDを観ればわかるよ。若いのにかわいそうにね)、ひたすら歌うのだが、目立ったアクションは一切なし。PAが悪いのか、彼がマイクに口を近づけすぎてるのか、声がやたらと割れて聞こえるのもちょっと今ひとつだったしな。

自分では(叫ぶだけで)歌わないのに歌詞を書いているピートがこのバンドのリーダーであろうことはなんとなくわかっていたが、曲間のMCも全て彼。ジョークを言ったときにたまに突っ込むのがジョー。他の二人は結局コンサート中一言も発せず。こんなボーカリストっている? パトリック、もしやバンド内で「デブ、ハゲ」といじめられているんじゃないだろうか(笑)

寡黙なボーカリスト

ほとんど各曲の合間にピートがMCを入れるので、速い曲を立て続けにたたみかけられるという感じではなかったのが少し残念。アルバムでは各曲のつなぎがかなり綿密に計算されてるから、つい同じ種類のカタルシスを期待してしまったからね。

どの曲のときか忘れたけど、ピートが言った言葉で印象的だったのが、「今夜はニュージーランドの全人口の1/1000がここに集まってるんだってね」。そうか、この会場は4000人入るんだ。日本でいうと、12万人を動員したようなもの?(笑)

本編最後は予想通り最新シングル「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」。前の記事でリンクしたビデオもそうだけど、NZでこの曲が放送される際には、歌詞中の「Goddamned」の「God」の部分が消されている。それを受けて、曲紹介の前に観客に「Goddamned」の合唱を強要(笑)

4曲のアンコールの最後は、アルバム『Take This To Your Grave』からの「Saturday」。曲の途中でピートがローディーにベースを預け、自分はマイクを持って客席へ。多分警備員に肩車されたまま(僕の位置からだとよく見えない)、どんどん客席に分け入ってくる。うん、やっぱりこいつが一番目立ちたがり屋だし、エンターテイナーだね。

終了時刻は10時半頃だったかな。いやー、汗かいた。4時間立ちっぱなしなのに、肝心のフォール・アウト・ボーイを観れたのはわずか1時間強というのがちょっと腑に落ちないけど、楽しかったからいいや。

さて、次は月末のペット・ショップ・ボーイズか。でもその前に、来週末になんと再結成スリッツが来るんだよな。どうしようかな。今観ておかないと多分もう一生観れないだろうな(と、いつものように迷っている件をわざわざブログに書いて、コメント欄で後押ししてもらう作戦)
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2007年03月03日

PSBがやって来る!

NZの音楽プロモーター(日本で言うウドーとかスマッシュとか)のサイトを何の気なしに見ていたら、なんとペット・ショップ・ボーイズが来る! 今月29日、お馴染みのセイント・ジェームスにて。すぐさまチケットを押さえたよ。あとで彼らのオフィシャルサイトを見てみたら、このNZのチケットは昨日発売になったばかり。なのに二階席はさっきの時点で既に売り切れ。そりゃそうだろう、腐っても鯛。いかに最近ヒット曲が出てないとはいえ、あんな小さなハコでPSBが観られるなんて! 僕は当然二階席など見向きもしないで、一階フロアの立見席だ。ようし、こいつは気合入れて前に行くぞ。


…これだけの記事にしてもよかったんだけど、せっかく気分が盛り上がったので、半年も前に買ってまだ観てなかったライヴDVDを引っ張り出してきた。

Montage 「Montage The Nightlife Tour」

99年から00年にかけての、アルバム「Nightlife」発売に伴ったツアーの記録。DVDとしては01年に発売になったのだが、すぐに廃盤になり、05年に廉価で再発(僕はその時に買った)。また廃盤になっていたんだけど、さっきHMVのサイトを見たら、ちょうど今月の14日にまた期間限定で再発されるらしい。偶然とはいえ、タイムリーな記事になったというわけだ。ちなみに、アマゾンにはその辺の情報が全く載っておらず、アフィリエイトしようにも飛んでいく先のページがない。一応上のリンクはHMVのページに飛ぶようになってるんで、この記事を読んで興味の涌いた人は見てみて。

1時間50分に亘るコンサートと、「Nightlife」からのシングル曲3曲のプロモーション・ビデオ、それに隠しトラックが1曲という内容。コンサートの選曲は、23曲中「Nightlife」から6曲と最多なのは当然として、各時代を代表するヒット曲がちりばめられている。デビュー曲「West End Girls」で幕を開け、代表曲「Go West」でアンコールを終えるというのが、何種類か出ている彼らのライヴビデオを参考にする限りでは、ありそうでなかったパターン。個人的には、隠れた名曲「Shameless」が入ってるのが嬉しい。

例によって奇抜な衣装(この時はまっ黄色のツンツンヘアーのウィグに、焼き海苔みたいな眉、テカテカの素材のコートに、ストライプの袴)と、ステージ後方の巨大スクリーンを使った、ビジュアル的にも楽しい(と思われる)ステージ。PSBの二人以外のメンバーは、殆ど画面には映らないキーボードとパーカッションの他、全て黒人のボーカリスト5名(女性1、男性4)。想像するとかなりミスマッチなのだが、ゴスペルのような彼らのソウルフルなコーラスが、ニール・テナントの無機質な高音ボーカルにやけに合う。

僕が彼らのライヴで一番楽しみにしている、お馴染みのアコースティック・セット、この時は「You Only Tell Me You Love Me When You're Drunk」、「Was It Worth It?」、「Se a Vida e (That's The Way Life Is)」の3曲。ニールのアコースティック・ギターとパーカッションだけをバックに、先述のゴスペル・コーラスが被さってくるところが最高。いつも違った曲を演ってくれるこのアコースティック・セット、NZではどんな曲を披露してくれるんだろう。楽しみ。

と、コンサート自体は申し分のない内容。今現在で一番最近のツアーの記録だし(HMVによると、去年の「Fundamental」ツアーのライヴDVDが5月に出るらしい!)、これは月末のコンサートのいい予習になると思った。

…なんだけど、正直言って、映像作品としては僕はこれには及第点はあげられない。なにより、映像がうるさすぎる。ステージをまともに映した場面なんて、全部で数分程度しかないんじゃないだろうか(さっき、「と思われる」なんて書いたのはそのせい)。大抵、それぞれの曲のプロモーション・ビデオやその他の画像、なんだかよくわからない幾何学模様などが被せられていて、落ち着いて観ていられない。画面分割や画面の中央でシンメトリーになる効果(なんていうのかな?)もやたらと多く、途中でイライラしてしまったほどだ。わざとかどうか知らないが、複数使っているカメラのうち一台で撮った映像が明らかに解像度が低く、その角度に切り替わるたびに海賊盤ビデオを観ている気分にさせられる。後半のメンバー紹介の際にも、パーカッショニストを紹介している時にコーラスの男性を映すなど、よくわからない編集も見られる。いつもビジュアル面にもかなり気を使っている彼らが、どうしてこんなビデオにOKを出したのか、僕には理解できない。

さっき書いた隠しトラックも、音声は明らかにこのコンサートの時のものなのだが、映像はCGや幾何学模様ばかりでステージは一切映らない。きっと、この曲はコンサートで演奏されたのだが、映像に何かトラブルがあったから、隠しトラック扱いになったのではないかと想像する。

あと、これは珍しくDVDの機能を活かしたマルチアングルと記載されているのだが、1曲分を観ただけでは、その第二アングルは、第一アングルからステージの模様を除いたもの(つまり、関係ない画像や幾何学模様だけが入っている)という、かなり人を馬鹿にしたものだ(あまりに呆れて1曲しか見てないので、もし他の曲がきちんとしたマルチアングルになっていたらごめんなさい)。

うーん、なんだか文句の方が多くなってしまったな(悪口って楽しいよね 笑)。でもさっき書いたように、選曲も演奏も悪くないから、このときのツアーを楽しみたいという人には、これをBGVとして使うか、音声だけを取り出して聴くことをお勧めする。本当は観ていてすごく楽しい彼らのライヴを観てみたければ、まずこれ以外のDVD(再発された「Performance」以外は現在廃盤だが)を先に入手するのがいいと思うよ。

PopArtこのDVDと同時に3月14日に再発になるのが、03年に出たベスト盤CD「PopArt」。前にも書いたと思うけど、この2枚組(今回は3枚組の箱入り限定盤は出ないようだ)は、PSBの入門編として最適。シングル曲と各アルバムからの代表的な曲が網羅されているだけでなく、2枚のCDがそれぞれ「Pop」「Art」と名づけられており、1枚目にはその名の通りポップな曲、2枚目には少しマイナーかつ音楽的に凝った曲、という風に振り分けられている。そして、何より今回の再発で特筆すべきなのは、今までCCCDだった日本盤が、今回のは通常のCDで発売されるらしいということだ。東芝EMI、よくやった。実はこれだけCCCD嫌いと言い続けている僕だが、今手元にある3枚組はEU盤CCCDなんだよ(マレーシアにいた頃、新譜なのに1枚もの並みの値段で売ってたからつい買ってしまったんだ…)。これを機会に、この日本盤に買い換えようかな。いや、3枚目を手放すわけにいかないから、買い替えじゃなく買い増しだね(笑)

うーん、明後日がフォール・アウト・ボーイのコンサートだというのに、なんだか気持ちがペット・ショップ・ボーイズに移ってしまっている。困ったな(関係ないけど、この二組、なんだか似た名前だね。あと、このコンサートのことを知らなければ本当は今日記事を書こうと思っていたのが、バッドリー・ドローン・ボーイ。なんだか最近ボーイづいてるなあ 笑)
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2007年03月01日

そそるジャケ特集 第二回 Peter Saville

レコードやCDのジャケットを中心にデザインしているアーティストは何人もいるけれど、そのジャケに包まれた肝心の音楽性に関係なく、その人がデザインしたジャケットのレコードだからという理由で買ってもらえるような人も中にはいる。ピンク・フロイドやレッド・ゼッペリンのジャケット・デザインで有名なヒプノシスなどはその代表格だろう。彼ら(ヒプノシスはデザイナーグループの名)の作ったジャケットを集めた本や雑誌も数多く存在し、もちろん僕もそういうのを一冊持っていて、暇さえあればそれを眺めている。それを見ていて思ったのだが、特にヒプノシス・コレクターでもない僕でさえ、多分彼らのデザインしたLPやCDを数十枚という単位で持っているんじゃないだろうか。もちろんその中には、デザインに惹かれて買ったものもあるはずだ。

ただ、ヒプノシスの優れたデザインセンスはもちろん認めるけれど、僕にとっては一世代前の人たちというイメージも拭いきれない。僕には別に、その人がデザインしたからというだけの理由でCDやレコードを買ってしまう(安く手に入れば、という理由も必要だけど)人がいる。それがピーター・サヴィル。

ファクトリー・レコードの創設メンバーの一人であり、初期ファクトリーの主要レコードの大部分は彼がデザインしている(ファクトリーの主要アーティストのひとつ、ドゥルティ・コラムのレコードは何故か彼のデザインではないのだが)。だから、一般的にはピーター・サヴィルのデザインといえば、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーのレコードを連想する人が殆どではないだろうか(このブログを定期的に読んでくださっている方々に限定すると、何も連想しない人が殆どだとは思うけれど・笑)。

今日はこのタイトルだけど、第一回のように妙にそそる面白ジャケを集めたものでなく、僕の持っているピーター・サヴィルがデザインしたレコードやCDの特集。とはいえ、持っているものをチェックしてみたら、出てくる出てくる、それこそ数十枚という単位になってしまったし、ニュー・オーダーのジャケばかりをずらっと並べるだけになってしまうので、ここでは、ジャケも好きだし中身もいい、という10枚(10種)を選んでみた。ここから先はあんまり能書きは垂れないで、ジャケ写と簡単な説明だけにするよ。ではどうぞ。


まずは、彼の代表作であり、僕も多分このジャケが一番好きだと思うこれから。

Unknown Pleasures CD Unknown Pleasures LP
ジョイ・ディヴィジョン 「Unknown Pleasures」

今流通しているCDのデザインは左側だけど、やっぱり僕はオリジナルLP(右側)のバランスがいいな。この次に出る「Closer」のジャケはそれほど僕の趣味ではないけど、やっぱり優れたデザインだと思う。内容?説明し出すと長くなるから、80年代以降のブリティッシュ・ロックの最重要アルバムのうちの2枚、とだけ書いておくよ。


ボーカリストのイアン・カーティスの自殺によってジョイ・ディヴィジョンが立ち行かなくなってしまい、残されたメンバーが中心となって継続したグループが、ニュー・オーダー。ピーター・サヴィルのデザインイメージは彼らの一連のジャケに縁るものが大きいだろう。アルバム毎にがらっと変わるデザインの変遷を見て行っても面白いのだが、それをやりだすときりがないので、今日は僕の好きな2種類のデザインを取り上げることにしよう。

Technique Round And Round
ニュー・オーダー 「Technique」 「Round And Round」

「Technique」は、このデザインだけでなく僕が一番好きな彼らのアルバムかもしれない。80年代末期という時代を反映した、クラブ・サウンド(言い代えると、ディスコ・ミュージック 笑)。右側はそのアルバムからのシングル曲。僕の持っている12インチシングルはこのデザインだが、CDシングルをはじめ、微妙に違うデザインも存在する。


ニュー・オーダーをもう一種。

Get Ready
ニュー・オーダー 「Get Ready」

このデザイン自体はそれほど気の利いたものでもないけど(それでも、レコ屋で有象無象の中にあっても圧倒的に目立つけどね)、ここから派生したシングルのデザインが全て同じトーン。中でも、この女の子シリーズの「Crystal」と「60 Miles An Hour」はデザインが複数あるので、見つけるたびに買ってしまう(笑)。

Crystal Crystal 2
ニュー・オーダー 「Crystal」二種

60 Miles An Hour 60 Miles An Hour 2
ニュー・オーダー 「60 Miles An Hour」二種


ちょっとエッチだったかな?まあ大目に見てください。次のはもうちょっとエッチかも。ピーター・サヴィルってもっと無機質なデザインが多いんだけど、この時期やけにこういうのが多かったな。欲求不満だったのかな?(笑)

This Is Hardcore
パルプ 「This Is Hardcore」

パルプはこの前のアルバムが大ヒットして、これはちょっとそのプレッシャーからか、やけに暗かったアルバム。最近この辺の一連のアルバムはスペシャル・エディションが出て、中心人物のジャービス・コッカーもソロアルバムを出したから、もうパルプというバンドは存在しないんだろうね。わりと好きだったのに。


スエードのアルバムを二種。

Head Music Sci-fi Lullabies
スエード 「Head Music」 「Sci-fi Lullabies」

彼らも一発屋かと思いきや、結構長持ちしたいいバンドだったのに、残念ながら解散してしまった。「Head Music」の方はそこからの一連のシングルもこの系統のデザイン。シングルのカップリング曲を集めた右側のアルバムは、あまりピーター・サヴィルらしくないデザイン(彼はデザイン・ダイレクションだけを担当)だけど、僕は好き。


ロキシー・ミュージック後期の傑作二点。

Flesh + Blood Avalon
ロキシー・ミュージック 「Flesh + Blood」 「Avalon」

これらは、実は調べてみるまで彼のデザインだとは知らなかった。言われて見れば、特に「Flesh + Blood」なんて彼らしい端正なレイアウトだと思うけど。これはどちらも名盤。特に「Avalon」は僕は高校生のときに聴きたおしたものだ。


単品を四点ほど。

Strange Boutique
モノクローム・セット 「Strange Boutique」

これは僕が持ってるのは、セカンドアルバムと一緒になったCDなんで、せっかくのこの綺麗なジャケがすごく小さくなってしまってるのが残念。これはLPで買いなおしたいな。後に結構有名になるバンドだけど、このファーストアルバムの頃のエキセントリックな感じはまた別格。


Metro Music
マーサ&マフィンズ 「Metro Music」

カナダ産ニューウェーヴバンド。ジャケも音も大好き。僕はこのファーストアルバムと、ファーストアルバム全曲が含まれたベスト盤(ジャケもこれを流用したもの)の両方を持ってる。2枚続けて聴くと、ファーストアルバムを2回聴くことになる。当たり前だけど。


The Lounge Lizards
ラウンジ・リザーズ 「The Lounge Lizards」

これもピーター・サヴィルだったとはね。ジャケット通りのきりっとした音。フェイク・ジャズの名盤。リーダーのジョン・ルーリーは俳優としても有名。


25 - Stop Me If You Think You've Heard This One Before...
ヴァリアス・アーティスツ 「Stop Me If You Think You've Heard This One Before...」

ラフトレード・レコード25周年記念アルバム。これが出た03年当時にラフトレードに在籍していたアーティストが、25年間の数々の名曲を演奏するという好企画アルバム。まあ、オリジナルを凌ぐものはなかったんだけどね。このシンプルなデザイン自体はピーター・サヴィルの手になるものではないんだけど、彼の事務所が手がけたもの。僕にしてみれば、ファクトリー・レコードのお抱えデザイナーとしてスタートした彼が、当時のライバル(?)会社だったラフトレードのオムニバス盤のデザインをしたというのがなんだか感慨深い。


これを読んで、彼のデザインに興味を持たれた方はいるだろうか。もし、もっと他にも見てみたいと思われるなら、彼のオフィシャルサイトを訪れてもいいし、僕がこの特集をまとめるにあたって参考にした、彼の全作品を網羅したこの凄いサイトを見てもらってもいい。


最後に、ロンドンで彼の個展が開かれた際のサントラとして、ニュー・オーダーが録りおろしたCDを紹介しよう。30分一曲入りのこのCD、全編インストだけどニュー・オーダーっぽいメロディと音色が満載で、聴いていて飽きない。残念ながら個展会場でしか売っていなかったので一般には流通していないが、オークションサイトでたまに見かけるよ。僕もそうして買ったし。皮肉なことに、数あるニュー・オーダーのCDの中で、これだけがピーター・サヴィルのデザインではないんだけど。

The Peter Saville Show
ニュー・オーダー 「The Peter Saville Show Soundtrack」

posted by . at 22:37| Comment(13) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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