2007年02月17日

気弱君の自伝 Jack's Mannequin 「Everything In Transit」

ロックバンドのリーダー、通常は曲と詞を書き、歌を歌い、メインの楽器を演奏することも多い人物がそのバンド存続中にソロアルバムを出すというのは、どういう心境によるものが多いんだろう。有名バンドの例を挙げてみよう。

フィル・コリンズ(彼がリーダーかどうかは別として、当時の中心人物であったことには間違いない)がソロを出した理由は極めて明白だろう。しっとりとしたバラッドのラヴソングを歌いたかった。モータウンのカバーを演りたかった。彼が最初にソロを出した当時のジェネシスは、どんどん音が明るくポップになっていたことで往年のファンを困惑させていたが、それでも彼が出したソロに比べるとまだまだテクニック応酬の長尺曲ばかりだったから、ちょっと気を抜きたかったんだろう。後に、実は彼はドラムは上手に叩きはするものの、本質はバラッドのラヴソング&ポップソング系の人だということがはっきりしてくるのだが。

フレディ・マーキュリーやミック・ジャガーの場合は、同じバンドのメンバーと何十年も同じような音楽を続けてきて、ちょうどメンバーとの仲もぎくしゃくしてきた頃に、自分の知名度を利用して、当時の有名ミュージシャンやスタジオミュージシャンを集めて、楽曲的には自分達のバンドとあまり変わらない、でもそれよりもやけにあっさりとした演奏と80年代風の妙にデジタルな音作りで、「うーん、いいんだけど、これクイーン(又はストーンズ)で演った方がいいんじゃないの?」という結果だった。

前置きが長くなった。今日書くのは、サムシング・コーポレイトのリーダー(詞と曲を書き、それを歌い、ピアノを弾く)アンドリュー・マクマホンが自分のソロ・ユニットとして作ったバンド、ジャックス・マネキンのファースト・アルバム。いつもこのブログを読んで何が面倒かって、あのわけのわからんカタカナの羅列だけはやめてくれよな、と思っている人、今日は一気に沢山覚えないといけません。はいもう一回、サムシング・コーポレイトのアンドリュー・マクマホンが作ったジャックス・マネキンだからね。覚えた?

更にここでサムシング・コーポレイトのことから説明しだすと、またヨロヨロする人が続出するので、それはやめておこう。興味のある人は自分で勝手に調べるか、コメント欄で別途質問してね。

Everything In Transit ジャックス・マネキン「Everything In Transit」

長々と前置きを書いたのは、まだデビューして数年しか経ってない上り調子のバンドの中心人物が、どうして同じ系統の音を出す別のプロジェクトを作る必要があったんだろう?という疑問があったから。アルバムのサンクス・クレジットにサムシング・コーポレイトのメンバーの名前がちゃんと入ってることから察して、喧嘩したりいじめられたりして飛び出した訳でもなさそうだし。

聞いたところによると、アルバムの表裏に書いてある「This Is A Story...」という言葉がどうもキーワードらしい。つまり、このアルバムは全て一人称で歌われており、それがどうやら自分のことだということだ。

その話を聞いて、ちょっと真面目に歌詞カードとにらめっこしながら聴いてみた。そしたら、これが思いのほか僕みたいな男の考えてるようなことを綴った歌詞が多くて、なんだか一気に親近感を持ってしまったよ。

基本的にはラヴソングが多いんだけど、なんだか1曲目からいきなり現実逃避の曲だし、なんていうのかな、ちょっと気弱な男子が一所懸命がんばってる感じがいいんだよね。

最初のシングルだったという2曲目「The Mixed Tape」(もうタイトルだけで僕でしょう?笑)。

僕はこうしてまたミックスを作ってる
誰の心をも焼き尽くして、太陽でさえ沈めてしまうようなやつだ
でも、これは君のことだけを考えて作ったんだよ
まるで全ての曲を僕のこの指で作り出したような気分


くぅー、こういうこと言ってみたいな。前に「ショック」の記事にきんぎょさんから頂いたコメント

>バレンタイン用に愛の告白yascdでもどうです?

この曲で返事すればよかったよ。あの時これ持ってたらな。いや、特にきんぎょさんに宛ててってわけじゃないですよ(汗)

収録曲はそれぞれ章になっており、第十章の「MFEO組曲」でひとまずハッピーエンド(MFEOって何かと思ったら、Made For Each Otherの略か。こんなの一般的に使うのかな?)。その曲の最後1分間に亘って、彼自身のナレーションが入っている。その後、ボーナス章として「Into The Airwaves」が後日談のようになっているという作り。なるほど、「This Is A Story...」ね。

日本盤にはその後更にボーナストラックが入っているようだが、いくらなんでもそれにはストーリーは続いてないよね。それでなくても、僕がアマゾンで買ったアメリカ盤は上に載せた写真のようにParental Advisoryのマークがでかでかと印刷されていて(1曲目のサビでいきなりF○CKとか連発してるから)、アフィリエイト先に載ってる日本盤(ジャケの左下の赤いゴミ箱?までちゃんと写ってる)に買い換えたいなと思ってたところなのに、その上ボーナス曲までいいとなったら、こんな悔しい話はないよ。

詞のことばかり書いてしまったけど、もちろん音楽自体も僕好み。この手の音楽はどう分類されているんだろうね。パンクっぽい…わけでもないか。この一つ前の記事に書いたフォール・アウト・ボーイなんかに比べると随分メインストリームに近いところにいると思う。ダニエル・パウターを筆頭に最近ピアノを弾くシンガー・ソングライターが沢山出てきているが、そういう人たちとエモ/メロコアの中間あたりに位置しているという感じかな。ちょっと前で言うと、ベン・フォールズ・ファイヴの三人が座っていた場所。それよりもうちょっと分厚い音。人数多いからね。

そういえば、その多い人数のうちの一人、ドラマーのトミー・リーは元モトリー・クルーだ。どういう人脈なんだ、一体?

歌詞はともかくとして、「Bruised」「I'm Ready」「Dark Blue」などが僕の好きな曲。さっきの「MFEO」も、組曲としてはあっさりした作りだけど、いいメロディーだと思う。「Holiday From Real」のエンディング近くのホーンの音(シンセ?)は中期ビートルズを髣髴させるし。

そういえばこれはエンハンスドCDで、パソコンに入れるとシークレット・サイトに飛ぶようになっている。ただ、そこで個人情報をたっぷり取られてしまうので、気が引けてしまう人も多いだろう。僕は気にせず入れてしまったので、こっそり内容を教えてあげるね。あのね、あんまりたいしたことないよ(笑)。「Kill The Messenger」のアコースティック・バージョンが聴ける他は、特にびっくりするようなものはなかった。そのうち僕の個人情報を元にあれこれ送られてくるだろうから、あんまり期待せずに待ってよう。面白いものが送られてきたらまた追記するね。

アンドリューは、このアルバムを05年の初頭に完成させ、コンサートツアーに出ようとした矢先に急性白血病にかかって入院し、妹(姉?)さんから骨髄移植を受けて助かったそうだ。先日無事日本公演も終えたようで(東京は追加公演が出たほどの盛況だったようだ)なにより。

今後はどうするのかな。ひとまずこのストーリーを書き終えたことで、サムシング・コーポレイトに戻るんだろうか。それとも、こっちが気に入っちゃったんで、このまま続けるのかな?僕みたいなにわかファンにとってはどっちでも歓迎なんだけど、両バンドのメンバーにしてみたら気が気じゃないだろうね。


posted by . at 22:55| Comment(19) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

祝来NZ! Fall Out Boy 「Infinity On High」

Infinity On High フォール・アウト・ボーイ「Infinity On High」

お気に入りのフォール・アウト・ボーイの新譜が出たんで、最近の僕にしては珍しく新譜を定価で買った翌日、ふとしたことで彼らがNZに来ることを知った。

実はその情報自体相当遅れていて、本当は(以前僕がホセ・ゴンザレスやアークティック・モンキーズを観た)セイント・ジェームス劇場で予定されていたコンサートが、チケットが発売された瞬間に売り切れてしまったために、急遽アリーナ級の会場に場所を移し、その追加分のチケット発売のお知らせを見たというわけ。

すごい人気だなあ。そういえば僕がこの新譜を買ったときも、店頭に何枚もディスプレイされていて、おそらくどこのCD屋でも今の一押しであるノラ・ジョーンズのすぐ隣に、そして、他の大物(たとえば少し前に出たエリック・クラプトンの新譜)なんかよりも目立つところに置いてあったし。アルバム発表毎にどんどんメジャーになっていってるのを実感する。

僕のブログをいつも読んでくださっている方なら、yascd002「PowerPop古今東西」に入れたパニック!アット・ザ・ディスコが、このバンドのレーベルからデビューしたという記述を覚えているかもしれない。音的にはどちらのバンドもとてもよく似ている。一般的にはメロコアとかエモとか呼ばれる音。あの時の僕の書き方で言うと、パンクやグランジの時代を通過したパワーポップ。速くてうるさい、でもとってもメロディアス。そんな感じ。どちらかというと装飾気味な音のパニック!よりもこのフォール・アウト・ボーイの方がかなりストレートに(所謂)パンクっぽいかな。もっとメジャーなところでいうと、グリーン・デイにも近いかも。

さすがに売れるだけあって、今回のアルバムはかなりバラエティに富んだ音になっている。それでいて、以前の音のエッセンスは失っていないのだから、大したものだ。アルバムからのリードシングル「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」は今こちらのラジオでもMTVでもヘビーローテーションだ。

実はこの曲は今までの彼らの曲に比べて(そして今回のアルバム中でも)かなり異色で、サビ以外はなんだかブラックミュージックっぽい造りになっている。僕も最初にラジオでこれを聴いたときには、まさかこれがフォール・アウト・ボーイの新曲だとは思わなかったものだ。

http://www.youtube.com/watch?v=SA0ND31p8bg

このビデオでも、彼らがヒップホップ系のプロデューサーと録音を始めるが、ノリが悪くてスタジオの黒人に馬鹿にされる、ところがサビにきていきなり曲調が倍のテンポになり、いつものフォール・アウト・ボーイになりました、というお話になっている。

それにしても、ボーカルのパトリック君、4年前に出たアルバムのジャケットには可愛い顔した好青年らしく写っていたのに、なんだこの太り様は?

アルバムには他にも、今までになかったようなピアノをバックにしたバラッドや、ちょっとパニック!に影響されたかな?という感じの曲も入っており、とても聴きやすいアルバムだと思う。ときどき声がひっくり返ってしまうボーカルの声質も僕好みだし。


From Under The Cork Tree以前のアルバムの話も少しずつ書こうかな。05年に出た「From Under The Cork Tree」が、おそらく彼らがメジャーになっていくきっかけとなった盤だろう。ここから、彼らのフューエルド・バイ・ラーメン・レーベルがアイランド/デフ・ジャム/ユニヴァーサル配給に変わったことも原因だろうけど、アルバムの内容自体も今回のものに近く、聴きやすいものになってきている。今回のアルバムではそれほどでもなかったが、この頃は曲のタイトルがやたらと長く、「Our Lawyer Made Us Change The Name Of This Song So We Wouldn't Get Sued」とか「I Slept With Someone In Fall Out Boy And All I Got Was This Stupid Song Written About Me」とか、おいおいそれが曲のタイトルかよ、ってな感じの曲ばかりだった。僕の持ってるのはこのジャケットの通常盤だが、今流通してるのは、ここにリンクした限定盤かな(限定盤のくせにいつまで流通してるんだ)。

Take This To Your Grave今でも僕が一番好きなのは、03年の「Take This To Your Grave」。とにかく曲がかっこいいし、それぞれの曲のつながりもよく考えられてて随所でカタルシスを感じる(たとえば前の曲の残響音がまだ残ってるところに次の曲のイントロのドラムが入ってくるとか)。ジャカジャーン、カッカッ、ダカダカダカダカ、キューンンン、という音がいっぱい詰まったアルバム(これで興味を引かれた人もいることでしょう)。まだ荒削りなところもあちこちに見られるけど、曲の良さとアルバムの完成度が一番高いのはこれじゃないかな。僕が去年、当時の新譜だった「From Under The Cork Tree」でなくこっちを買った理由の値段の安さもまだ健在だし、これはお買い得だと思う。

実はこのアルバムの前に、別のレーベルから出たファーストアルバムがあるんだけど、本人達はそれを(主にレーベルとのゴタゴタがあったことが理由で)あまり気に入っていないらしく、僕もまだそれは手に入れていない。

My Heart Will Always Be The B-side To My Tongueあともう1枚、上記2枚のアルバムの間に出たアコースティック・ミニアルバムとDVDのカップリング盤「My Heart Will Always Be The B-side To My Tongue」がある。このジャケットは女の子ジャケ特集のときに載せたね。実はこの紙ジャケの内側にも、高野文子風のレトロな女の子のイラストが二つ載ってて、一体誰を目当てにデザインしたんだろうと思わせる。以前流行ったMTVアンプラグドのように、彼らのようなハードな曲でもアコースティックで演奏することによって、素のメロディがどれだけ優れているかよくわかる好演奏だ。まあ、これは上記のアルバム群を買って興味が涌いた人だけが買えばいいけど。DVDは玉石混交。今度行くライヴがひたすら楽しみになるような格好いい演奏シーンもあれば、内輪受けの楽屋落ちシーンが果てしなく続くフィルムもある。あーあ、パトリック、ガーリックバターの一気飲みなんてしてるよ。そんなことするからあんなに太るんだよ。


コンサートのチケットを買った日から、これらのCDを繰り返し聴いてるよ。歌詞カード見ながら、このやたらと早口の歌詞を一緒に歌えるように練習してるし。そうしていて思ったけど、この手のバンドがこんなにポピュラーになるのは、一昔前でいうボン・ジョビとかが担っていた需要を満たしているからなんだろうね(音楽的には違うけど)。大声で一緒にシングアウトする快感。車の中で爆音で聴きながら歌っても、相当気持ちいいよ(良い子の皆さんはやめておきましょうね)。

あ、アマゾンにアフィリエイトしてて気づいたけど、この新譜のDVD付き限定盤が出てるぞ。やれやれ、また買い替えか…
posted by . at 12:16| Comment(10) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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