2007年01月21日

喰いしん坊 バイバイ Cuckoo 「Breathing Lessons」

ブログ「喰いしん坊 犯罪!」が閉鎖したときに僕はかなり取り乱してしまい、そのために何人かの方々に必要以上にご心配をかけてしまったんだけど、僕があのブログ自体を気に入っていたということは勿論のことながら、やっぱりあの一つの記事に尋常でないほどの思い入れがあったというのが、僕があれほどまでに落胆してしまった大きな理由だろう。

ブログ主のかえでさんが24枚の100円CDをジャケ買いしたときのことを綴った「第一印象で決めました」というその記事の、彼女が「公開交換日記」と呼んでいたコメント欄は、僕にしてみれば自分のブログの出張所のようにも思えていたし、子供の頃に交換日記なんて甘酸っぱいものを経験したことがなかった僕にとっては(そして、何でも取っておく所有欲の奴隷としても有名な僕にとっては)、それがなくなってしまうことはすごく大きな痛手に思えてしまったんだ。

まあ、本人のかえでさんがあちこちでカラッと明るくコメントされているのに、当事者でもない僕がいつまでもメソメソしていてもしょうがないので、ここはひとつ、その記事が僕に教えてくれた大事なものを取り上げ、この記事を「喰いしん坊 犯罪!」への鎮魂歌にすることによって(「だから死んでないって!」byかえで)、あの楽しかったブログにお別れを言うことにしよう。本当はこの記事が、ひとつのブログから別のブログのひとつの記事への3つ目のトラックバックとなる記念すべき記事になるはずだったんだけど、もうそれもいいっこなし。


Breathing Lessons Cuckoo 「Breathing Lessons」

かえでさんがその24枚の中で一番気に入り、僕のためにも1枚(100円で?)手に入れてくださったこのアルバム、これが僕にとってもこのクックーというバンドとの出会いになった。最初に聴いたときの感想は僕の前回の東京出張報告(笑)の記事に書いてあり、アルバム全体に対する僕の印象はそのときとあまり変わっていないのだが、今日はそのアルバムについてもう少し深く掘り下げるとともに、そのアルバム以外の事柄についても書いてみよう。

かつて「第一印象」のコメント欄でも話題になっていたのだが、このバンドは結局このアルバム1枚だけで消滅しており、「クックー Breathing Lessons」と入れてグーグルで検索してみても、音楽ブログでもない喰い犯がトップに出てくるなど、ネット上での情報(特に日本語のもの)が殆ど見つからないというのが現状だ。ちなみに今グーグルで同じことをしてみると、僕のブログがトップ、喰い犯が2位という状況(3位はかえでさんもご存知の、とある音楽紹介ブログ)。ここはひとつ、僕のブログを日本で最もクックーに詳しいデータベースとして更に磨きをかけるような記事を書いてみようと思う。誰がそんなデータベースを必要としているのかという疑問は置いといて。

北アイルランド出身の4人組パワーポップバンド。歴史に残るような名曲は残せなかったものの、この手の音楽が好きな人なら買って損はない内容だと思う。最早このCDは簡単には手に入らないのが残念だけど。デビューアルバムの割には結構こなれた曲作りにも感心するし、若いバンド故の熱さがアルバムのあちこちから声や音になってほとばしってくるのがありありとわかるのもいい。

11月の記事で僕は「ときどき声がひっくり返る、ちょっと癖のあるボーカル」という風に書いたが、何度も繰り返して聴いていると、それほど癖があるわけでもないように思えてきた。ただやはり結構音程の上下動が激しいメロディアスな曲を書くので、高音で裏声になってしまう箇所が何度もあり、若くて元気な様子が伺える。おそらくかえでさんのような方はそういうのをセクシーだと思われているのではないだろうか。このアルバム中では「Gold And Silver」「Non Sequitur」「Assume」などの曲でセクシーな裏声が顕著。

ひとつ僕がここで特筆したいのは、アルバム構成についてだ。全12曲のこのデビューアルバム、後述するようにシングルでもアナログ盤が多数出ていることから推測すると、おそらくアナログ盤も存在するはずだ(イーベイでもgemm.comでも未確認だが)。極端に長い曲も短い曲もないことから、そのLPはA面6曲、B面6曲と考えるのが妥当だろう。

通常(特にこの手のストレートなポップ/ロックアルバムでは)A面B面6曲ずつというアルバム構成はこんな感じかな

A1:アンセム的な大仰な曲(シングル曲であることも多い)、または軽いジャブ的曲。
A2:大仰な曲に続く隠れた名曲、またはジャブ曲に続くアルバム代表曲。
A3〜A5:ミディアム曲を含む、B面中盤ほど捨て曲ではない中堅の曲。
A6:B面に期待を持たせる、結構重要な位置。ちょっと異色な曲を入れることもある。

B1:仕切りなおし的代表曲。シングル曲であること多し。
B2〜B4:一番ダレる箇所。ここに佳曲があるとアルバムの評価が変わる。
B5:ラスト前のムードメイカー。最後の曲にうまくつなげる意外と重要な役。
B6:アルバムの余韻をもたらす重要な位置。


必ずしも全てのアルバムがこの法則に当てはまるわけじゃないけど、こうして書き出してみると、こういう風にするのは作り手側からみると当然かなと思う、わりと当たり前のことを書いたつもりだ。

ところでこの「Breathing Lessons」には4つのシングル曲が入っているのだが(シングルの発売は全てアルバム発表前だった模様)、それら4曲の位置はLPだとこうだ。

A4 Blackmail
A6 Don't Wanna Get Up
B1 What's It All About
B2 Non Sequitur


シングルにするような曲はアーティストにとって特に自信のある曲のはずだが、普通こんな配置にするだろうか。さっき僕が書いた法則に当てはまるのは、B1「What's It All About」ぐらいのものだ(そして、これはB面1曲目に相応しい、痺れるようなギターのイントロを持ったとびきりの曲だ)。仮にこれが、LPのことを考えずにCDを前提にした曲順だとしても、4、6、7、8曲目というのは控えめに見てもCD内であまり目立つ場所ではない。

もちろん、シングル曲以外にも優れた曲があるというのも一つの理由だろう。先述した「Gold And Silver」(但しこれもA3という妙な位置)は僕のお気に入りの一曲だし。こんなやんちゃなアルバムのトップ「Big Mistake」が意外なほど大人しい始まり方をすることなども含めて、面白い曲順にするなあ、というのが僕の感想。ネガティブな意図は全く含まずに。


シングル盤のことを書こう。さっき書いたとおり、彼らはこのアルバム発売以前に4枚のシングルを発表している。今回僕はその4枚を7インチのアナログ盤で手に入れたので、ネット上で確認できるCDシングルとの収録曲の違いなどにも触れながら書いてみるね。

おっとその前に、「第一印象」での名脇役「エビちゃん」にちなみ、この記事でシングル盤を紹介してくれるマスコットを登場させよう。マナティのマナちゃん、どうぞー!

マナちゃん


ではまず、アルバムに先立つこと2年、1996年にペット・サウンズというマイナーレーベルから発売された「I Don't Wanna Get Up」

寝坊

これはアルバム作成時に再録音されたようで、アルバム6曲目とは別バージョン。B面の「Bound To Break」はアルバム未収録だ。ジャケットに記載されているバンドのロゴも、その後の作品で統一されるものとは違う。ついでに言うと、アルバムに収録された方は題名から「I」が抜けている。曲に関しては、正直言って僕はこの曲がアルバム中一番ヘンな曲だと思っていた。まさかこれが記念すべきファーストシングルだったなんて。まあ、サビ前に早口になるところなど、アイデアが溢れていたのはわかるんだけど。

僕がネット上で調べた限りでは、この曲のCDバージョンは見当たらない。まさか96年にもなってアナログだけしか発売されなかったなんて思えないんだけど。


続いて、ここからアルバムと同じロゴとデザイン構成になる、メジャーレーベル、ゲフィン移籍後第一弾「Non Sequitur」

不合理な推論

この曲は好き。後にアルバムの8曲目なんて全然目立たないところに収録されることになったけど、きっとそれはこのシングルが発売されてからアルバム発売までに時間が開いたためではないだろうか。B面は「See Through」。

CDシングルのジャケットはこれ。まあ基本的に同じなんだけど、横長なんでちょっとトリミングが違う?(どこまでマニアックな話をするんだか)

Non Sequitur

CD版は先ほどの2曲に加えて、「Brim」を3曲目に収録。確か「Breathing Lessons」の日本盤に入っていたボーナストラック2曲というのは、この「See Through」と「Brim」だったはず。


次のシングル「What's It All About」。印象的なイントロを持った、これが一番シングルらしいシングル曲だろう。

何について

B面には「Something I Am Not」「Out Of Habit」の2曲を収録。そのせいかこれは7インチ盤なのに33回転。それはいいのだが、1曲しか入っていないA面までもが何故か33回転。さっきのシングルから続けて聴いていた僕は当然回転数を間違えたよ。くそ、せっかくの格好いいイントロがだいなし。「Something I Am Not」には、11月の記事に書いた「まあるい感じのギター」が全面にフィーチャーされている。

CDシングルには更に4曲目「Coasting」が入っている。これも同じジャケットだけど、横長のデザインのためにミラーボールの左端まで全部見えるね(それがどうした)。

What's It All About


最後のシングル「Blackmail」は、今回買ってみてアナログとCDで収録曲が全然違うことに気がついた。

恐喝

「Blackmail」は静かなイントロから「ピーッ」というフィードバック全開になる、なかなか痛快な展開を持った曲。アナログ盤のB面は「CEO Breakdown (Demo)」「For A Week Or Two (Acoustic Version)」。このB2はアルバムに入っている曲のアコースティック・バージョン。地味だけど僕この曲も好きなんだよね。なんだか得した気分。ところでこの盤はA面が45回転、B面が33回転という、さっきともまた違う不規則盤。せっかくシングル盤を買ってこれから新しいバンドを聴いてみようという人にいきなり回転数を間違わせる可能性を高くする意図がわからない。もしかしたらアルバム1枚で消えた本当の理由はそこにあったりして…

このCDシングルのジャケを見ると、アナログ盤のデザインは結構大胆にトリミングしてあるのがわかる。というか、これ顔の角度違うね。別写真だ。

Blackmail

表題曲以外のCDシングル収録曲は、「Most Peculiar Way Of Leaving」「Big Mistake (Acoustic Version)」「Cartoon Moves」の3曲。実は後述する編集盤のお陰で僕はアナログシングルに未収録の曲も聴いているのだが、この「Most Peculiar Way Of Leaving」は大のお気に入り。きっとライヴの後半でこんなのやったら客席大爆発だよね。なんでこれをアルバムから落としたんだろう。僕なら、例えば「Potential」の替わりに10曲目に入れるかな。そしたら11曲目、12曲目の静かな流れがまた一段と際立つと思うんだけど。


最後にもう一枚、これはどういう経緯で発売されることになったのかよくわからないんだけど、シングルのカップリング曲を集めたEPが出ていた。そういう需要があったんだろうね。

Artificial Light EP Cuckoo 「Artificial Light EP」

このジャケも「Blackmail」CD版のジャケの変形版、というか、トリミングしてからちょっとフォーカスを外したような感じになっている。ちなみに裏ジャケは「Blackmail」CD版の表ジャケそのままのデザイン。このCDには、上に書いたシングルのカップリング曲全部から、「Bound To Break」「CEO Breakdown」「For A Week Or Two」「Big Mistake」を除いた7曲が収められている。うーん、全曲揃えようと思ったら、やっぱり「Blackmail」のCDシングル買わないといけないのかよ。7曲だけなんて中途半端にせこいことせずに、あと3曲ぐらい入れろよな。


11月の記事にも書いたように、クックーはここに書いただけのCD/レコードを出した後に解散。中心人物のアンドリュー・フェリスとベースのジェイミー・バーチェルは、その後ジェットプレーン・ランディング(Jetplane Landing)というバンドを結成している(ただし、このバンドも今やほぼ活動停止状態のようだ)。あまりにも長くなるので、今回の記事ではそれについては書かないでおこう。

代わりに、1998年にイギリスから出てきたクックーと同期のバンドが今どうしてるんだろうということが気になったので、ちょっと調べてみた。98年にデビューアルバムを出した(一部97年末のものもあるが、日本盤が出たのは98年になってから)グループにはこういう人たちがいた。

アラブ・ストラップ
ベータ・バンド
ファイヴ・サーティー
ヘフナー
ミジェット
モントローズ・アベニュー
シルヴァー・サン
ステレオフォニックス
シンポジウム


うーん、地味な顔ぶれ… この中で今でも生き残ってるのは、ベータ・バンド(デビュー当時の勢いは全然ないけれど)とステレオフォニックスぐらい? イギリスの98年組っていまいちぱっとしなかったんだね。

とはいえ、個人的にはファイヴ・サーティーは今回のと同じぐらいの長さの記事を書いてもいいと思っているぐらいの僕の超お気に入りバンド。愛すべきパワーポップバンド ミジェットもいるし、モントローズ・アベニューなんてどうしてあのデビュー盤1枚で消えてしまったのかわからないぐらいに格好いいバンドだったのに(100円箱でよく見かけるよ)。

クックーも含めて、そういういいバンドが地道に生き残っていけるような土壌があればいいんだけど、なかなか現実は厳しいよね。僕は、ファイヴ・サーティーはちゃんとデビュー時に聴けたうえに、唯一の来日公演も観ることができて幸運だったんだけど、僕もかえでさんも(そしてこれを読んでくれている大多数の方々も)クックーとはそういう同時体験をすることができなかった。せめてこの記事が、これを偶然読んだユニバーサルミュージックの方にこのアルバムを再発しようという気になっていただく手助けになればいいんだけど。


えーと、もう収拾つかないぐらい長い記事になってしまったな。まあ、いつも長い記事を文句も言わずに読んでくださるかえでさんに捧げる記事だから、これぐらいで丁度いいか。かえでさん、これ貴女の記事ですから、もし何か音楽関係の文章を書きたくなった際にはご自由にコメント欄使ってくださいね。画像を載せたいならメール頂ければ追記しますよ。コメント数50で潰えてしまった公開交換日記、ここのコメント欄で再開させましょうよ。
posted by . at 18:57| Comment(116) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする