2006年12月29日

21世紀型70年代スプリングスティーン The Hold Steady 「Boys And Girls In America」

Boys and Girls in America.jpg The Hold Steady 「Boys And Girls In America」

CDプレイヤーの再生スイッチをオンにすると、まず左チャネルから聴こえてくるソリッドなギターリフ。続いて軽快なピアノの音。このピアノ、(ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドの)ロイ・ビタンじゃないの?というのが最初の印象。でも、それはあくまでもイントロにすぎなかった…

アメリカはミネアポリス出身の主要メンバーがニューヨークで結成したという、ホールド・ステディの通算3枚目のアルバム「Boys And Girls In America」。ある程度ロックを聴いている人がこのアルバムを聴いて、他の感想を持つことがあるのだろうか。とにかく、ブルース・スプリングスティーンにそっくり。それも、初期の。もっと具体的に言えば、セカンドアルバム「The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle」の頃の彼に。

まず、声が、信じられないほどに似ている。あの、ちょっと鼻にかかったような、少しだらしない発音の歌い方。その声で、初期のスプリングスティーンがそうであったように、一小節の中にはとても入りきらないほどの数の言葉を詰め込んで、性急に歌う。あちこちに出てくるちょっとしたメロディーや節回しに、件のセカンドアルバムのみならず、初期スプリングスティーンのいろんな曲を彷彿とさせる箇所がある。

2曲目「Chips Ahoy!」のイントロのハモンドオルガンの音なんて、もう最高に格好いい。ちょっと歌謡曲風のメロディーでもあるかな。そういう下世話なところもいいよな。

いくら似ているとはいえ、その2枚のアルバムの発表年には33年もの開きがあるので、当然違うところも沢山ある。さすがにパンクもグランジも通過してきた時代の音という感じがする。全体的に音がタイトで、例えば「The Wild〜」の「Wild Billy's Circus Story」のようなちょっとのんびりした曲は見当たらない。その辺りは評価が分かれるところか。もちろん今の耳で聴けば、このソリッドな音の方が遥かに受けがいいんだろうけど。

ソリッドな音、そう、4曲目「Same Kooks」なんて、まるでパール・ジャムをバックに歌うスプリングスティーンのよう。なんて言ってしまうと褒めすぎかもしれないけど、とにかく、そういう音を想像してもらえればあまり外れていないはず。

もともとの5人のメンバーに、ヴィオラ、ヴァイオリン、サックス、トランペット、トロンボーン、ラップスティール奏者が準メンバーとして記載されている。なので、音的にもパール・ジャムやEストリート・バンドよりもバラエティに富んでいる。要所要所でそれらの楽器がいいアクセントをつけているのがいいね。

語彙豊富な歌詞は、やはり初期のスプリングスティーンがそうであったように、都会に暮らす若者の生活を描いたものが多い。かつての彼の曲よりも、ちょっと多めのドラッグと、ギャンブルと、少し斜に構えた態度と。今という時代を映して。

全11曲、40分丁度という、最近では珍しくなったコンパクトなアルバム。やっぱり1枚のアルバムはこれぐらいの長さが丁度いいよ(80分ぎりぎりの編集CDばかり作ってる奴が言うなって?)。殆どの曲が3分前後というのもまた、長尺曲が多かった初期スプリングスティーンとは違うね。強いて言うなら、最終曲「Southtown Girls」が、この小気味良いアルバムを締めくくるにはちょっと弱いか、ということかな。せっかくこのアルバムで一番長い5分強もある曲なんだから、もう少しメリハリつけてほしかったな。「Rosalita」みたいな曲を作れとまでは言わないまでも。

まあ、最後にちょっとだけケチをつけたけど、いいアルバムであることに間違いはない。それに、このバンドはきっと凄くいいライヴをするんだろうというのは容易に想像できる。アメリカでどういう位置にいるバンドなのかよく知らないけど、まだ人気が爆発する前に、小さいハコで観てみたいな。
posted by . at 19:23| Comment(4) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする