2006年12月10日

2006年、Garland Jeffreys と Don Dixon の新譜が出た年

昨日の記事に、20年以上も活動しているミュージシャンがいまだにクリエイティビティを保ち続けていられること、今までよりも良い作品を作り続けられることについて、僕にしてはやけに興奮して書いた。だって普通は、70年代〜90年代に全盛期を迎えていたアーティストが最近まで活動していたとしても、その人たちにその頃を越えるような作品を期待するのはもう無理なことが多いからね。皆だいたいアルバムを出すペースが落ち、内容も昔の焼き直しになることが多くなり、ベスト盤や発掘ライヴ盤でお茶を濁すのがよくあるパターン。どんどんジャズに傾倒していくニック・ロウや、自分の国のルーツ音楽としてフォークを掘り下げているブルース・スプリングスティーンのような人たちもいるが、ジャズヴォーカルやフォークを好きな新しいファン層を開拓できているのかどうかは甚だ疑問。昔からのコアなファンが買い続けているだけなんだと思う。

僕は自分で、自分の歳にしては新しいアーティストを聴いている方だと思うから、昔から聴いているアーティストのペースやクオリティが落ちてもまだレコード屋(リアルの店であれ、ネット上であれ)に行って何か新しいものを探したいと思うし、聴くものに不足することもない。でも、ここを訪れてくださっている音楽好きの方々なら皆経験されているように、もういい歳した僕らの友達は誰もCDなんて買わなくなっているものだ。それは、僕らが若い頃にあれだけ熱狂させてくれたアーティストの失速と無縁ではないだろう。

僕が高校に入った年に「Escape Artist」という素晴らしいアルバムを発表し、結局はそれがキャリア最後のピークになってしまった、ガーランド・ジェフリーズという歌手がいる。97年の「Wildlife Dictionary」を出したのを最後に、最近は地元ニューヨークで地道なライヴ活動をしているだけだったのだが、今年になって何の前触れもなく新譜を出した。

Alive.jpg5月に東京でこの「I'm Alive」というCDを見かけたときには、小躍りしたものだった。この、決意満々なんだかいじらしいんだかよくわからないタイトルに苦笑しながら裏ジャケットを見ると、全18曲中15曲が知っている曲。なんだこれは?アルバムタイトルに引っ掛けたライヴ盤か?なんで最後にボーナストラック扱いで過去の名曲「Matador」が入ってんの?とにかくジャケットにそれ以外何も情報がない。ともかく9年振りのガーランド・ジェフリーズの新譜、内容はどうあれ買うしかない。

1曲目「I'm Alive」。お、これは小気味いいロックンロール。9年振りに戻ってきたことを高らかに宣言するような曲だ。2曲目「Return Of The Matador」って、これただの「Matador」の再録じゃないか。3曲目でまた新曲を披露。これはまあまあかな。とにかくライヴ盤じゃないんだね。ということは…

4曲目以降は単なるベスト集だった。なんだこれは?9年振りの帰還を宣言したはいいが、その間に新曲が2曲しか書けなかったの?これは寂しい。

でも、もうここは贔屓の引き倒しだ。残念なことに彼の過去のアルバムは殆どが廃盤になっているから、ユニヴァーサルなんてメジャーレーベルから出たこのベスト盤で、少しでも新しいファンが増えればいいよ。なにより、新曲での彼の声が、過去の曲と比べても全く衰えていないのが嬉しい。よし、久し振りにアフィリエイトでも貼るかな、と思ったら、なんだこれは…(今日はこればっかり)4078円?アマゾン一体何を考えてるんだ?売る気ないのか?あ、HMVだと三種盛りで1803円。興味のある方はそちらでどうぞ。


Combustible.jpg偶然なのか、ドン・ディクソンもほぼ同時期に久々のアルバムを発表した。「The Entire Combustible World In One Small Room」という長いタイトルのこのアルバム、01年の「Note Pad #38」がそれまでの未発表トラックの寄せ集めだったから、きちんとしたアルバムとしては00年の「The Invisible Man」以来。

80年代中盤から90年代初頭にかけて、REMをはじめとしたその当時のアメリカで最も活きのいいアルバムの多くを手がけた敏腕プロデューサー。彼自身の最初の2枚のアルバム「Most Of The Girls Like To Dance But Only Some Of The Boys Like To」(85年)と「Romeo At Julliard」(87年)も、知る人ぞ知る名盤だ。

さてこの新作、残念ながらそれら過去の名盤と比べてしまうと見劣りがしてしまう。でも、彼自身によるライナーにある、もう何年も諦めていた曲作りを娘のダンスパーティーのために再開した(娘の学校の先生が自分のファンだったらしい)とかいう話を読んで、まだまだ頑張ってほしいと思ってしまった。内ジャケの、もうすっかり禿げ上がってスキンヘッドになった彼の写真を見たときには、さすがに時の流れを実感させられたものだけど(まあ、僕だって20年前と比べたら、スキンヘッドではないけれども随分髪の毛の量は減ったんで、お互い様なんだけどね)。

もう二人とも、僕にとってはたまにしか連絡が入らない親戚の小父さんみたいなものだ。こうして何年かに一回、元気で便りをくれるのなら、それがどんな内容であろうと(いや、そんな滅茶苦茶に酷い訳でもないんだけどね)買って応援してあげよう。とりあえず、今年はこの二人の小父さんから同時に便りが届いためでたい年だった。
posted by . at 14:39| Comment(8) | TrackBack(1) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする