2006年10月29日

心の鎮痛剤 Tamas Wells 「A Plea En Vendredi」

Plea en Vendredi Tamas Wells 「A Plea En Vendredi」

先日、友人に会うために訪れた小さな街のCD屋でふと見かけたアルバム。
僕はそのグループの名前さえ聞いたことがなかったのだが、この無機質なジャケットにまず惹かれて手に取った試聴機のヘッドフォンを、最後の曲まで耳から離すことができなかった。

タマス・ウェルズ。ミャンマー出身のオーストラリア人シンガー・ソングライターが自分の名前を冠した4人編成のグループ。とはいえ、リズム楽器は非常に控えめに、タマスの声とギター、そしてピアノをサポートするにとどまっている。

なんというデリケートで儚い音だろう。こんな紹介文を書いておきながら甚だ申し訳ないが、僕は自分の拙い日本語でこの美しい音楽をきちんと説明することができない(いや、他の言語ならできるという意味じゃないよ)。

二つのインストゥルメンタルを含む全11曲。わずか33分の、ささやかな短編集のようなアルバム。

ライナーノーツによると、彼はオーストラリアからのNGOで医師として働く妻とともに、ミャンマーでエイズ教育の地域医療プロジェクトに関わっているという。そのライナーが結論付けているように、彼のその経験がこの美しい音楽を生み出したのかどうかは、僕にはわからない。

でも、日本盤CDの帯にある、

  「すべての痛みを除去する、この世で最も純潔な歌声」

というコピーが、このアルバムを如実に表現していると思う。心が痛んだときに聴いていたい音楽をまたひとつ見つけたことを喜びたい。
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2006年10月26日

yascd004 クッキング・タイマー

怒涛の記事更新が売りの「喰いしん坊 犯罪!」というブログで、妙に僕の心の琴線に触れる記事に出会ってしまった。詳しくはそちらを読んで貰えばいいんだけど、要は、料理をしている時の3分や7分という待ち時間をなんとか楽しく過ごせないだろうか、という話。その際、例えば3分ぴったりで終わる曲がかかっていれば、時計とにらめっこしていなくてもすむのにね、と。いいアイデアだよね。元々はそこのブログ主と僕の共通の友人である発明家の方にそういうプログラムができる機械を作って欲しいと持ちかけられた話だったのだが、その発明家の方は最近どうも忙しくされているようなので、僕が横から割って入ったというわけ。

それが一昨日の話だったんだけど、一体この話の何がそんなに僕を突き動かしたんだろう。もうそれからというもの、別に頼まれたわけでもないのに、あたかもかぐや姫に求婚して幻の宝を持って来なさいと無理難題をふっかけられた男たちの如く、自らを急き立てて二晩で完成させてしまった。yascd第四弾、音楽を聴くだけで時間も計れる、一石二鳥のクッキング・タイマー!


まずはルール決めから。最初はカップヌードル3分とか、そういう料理によく使われる時間単位の曲を入れていこうと思ったのだが、それよりも組み合わせによって何分でも計れるものにした方が便利じゃないかということに気づいた。CDの1曲目が1分、2曲目が2分、という具合に。そしたら、12曲入れれば78分。ほぼCD1枚のキャパに相当することになる。これなら、1分から78分まで、1分刻みで何分でも計ることができるよ。それに、1曲目が1分、12曲目が12分って決まってれば、CDプレーヤーやPCで選曲する際に待ち時間相当の曲番号を押せばいいだけだから簡単だし。しかもこれは、12曲しか入っていないのに、同じ曲が二回かからないようにしても、おそらく数百通りの選曲ができるはず。例えば5分待つ場合、

?5曲目
?4曲目+1曲目
?3曲目+2曲目

の三通りがあるよね(順序を入れ替えたら更に二通り増えるし)。本当は全部で何通りできます!って書きたかったんだけど、よくわからない。どなたか算数の得意な方、計算お願いします。

本当は、1:00なら1分ちょうどの曲を集めたかったんだけど、さすがにそれはちょっと無理があった。家中のCD引っ掻き回せばなんとかそういう曲が集まらなくもなかったんだろうけど、一応聞いて楽しめる作品にするためには、多少の誤差には目をつぶらざるを得ないと妥協した。でも、僕は「喰い犯」の記事で提案してもらった

20秒程度の誤差ならいいじゃないですか。

なんて甘い規律は自分には課さないから。毎分00秒からプラスマイナス5秒。そこまで。最後がフェードアウトで終わる曲なら、フェードアウトの時間よりも短い誤差になるはず。いくら長年のアジア生活で実生活ではひたすら時間にルーズになってるとはいえ、こういうところはきちんとするよ、僕は。

さすがにこれは自縄自縛かと思ったけど、やってみたら思いのほか簡単に集まった。しかもプラスマイナス5秒どころか、一番離れた曲で4秒差。長いのも短いのもあるから、全12曲で合計78分06秒。これは上出来だろう。しかも、曲調とかでなく時間で並べた曲集のわりには、予想外に流れがスムーズな気がする。それこそフレンチ・フォークから、英ニュー・ウェーヴ、アメリカン・ロック、プログレなど、曲調も滅茶苦茶なはずなんだけど。いや、さっきから自画自賛ばかりして申し訳ないけど、こんな適当なきっかけで作ったミックスCDのわりには、今朝からかなり気に入って聴いてるよ。



では、一応曲目紹介を。

1.カーラ・ブルーニ (Carla Bruni)
  La Derniere Minute (1:04)

Quelqu'un M'a Dit.jpg

イタリアの女優である彼女が、フランス語で歌った02年のデビューアルバム「Quelqu'um M'a Dit」から。僕はその年にパリに旅行に行って、たまたま訪れたCD屋で(というかCD屋ばっかり行ってたんだけど)一押しだったこのアルバムを彼女が誰かもよくわからずに買ってきたんだけど、これが大当たりだった。女優が片手間でやってるとは思えないほどの優れたアルバム。この曲はそのアルバムの最終曲。よく出来たエンディングの曲はオープニングにも使えるという見本(使えてるかな?)。


2.ロックパイル (Rockpile)
  Now And Always (1:58)

Seconds Of Pleasure.jpg

デイヴ・エドモンズとニック・ロウがこの名義で発表した唯一のアルバム「Seconds Of Pleasure」(80年)から。パブロックファンのバイブルみたいなアルバム。特にこの曲は、そのアルバムのおまけEPで二人がカバーしていたエヴァリー・ブラザーズ風の見事なコーラスが最高。この二人の声って、ほんとにこうしてコーラスすると合ってるよね。誰が見てもお似合いの組み合わせだったのに、些細な理由で別れてしまったのがいかにも残念。最近二人とも新作を発表してないけど、そのうちまた一緒にやってくれないかな。


3.エルヴィス・コステロ&アトラクションズ (Elvis Costello & The Attractions)
  Oliver's Army (2:59)

Armed Forces..jpg

ここはパブロックつながり、というかニック・ロウつながりかな。ニックがプロデュースしたコステロの初期の名盤「Armed Forces」(79年)から。最近はすっかり落ち着いたジャズヴォーカルのおじさんになってしまったけど、この頃のコステロのこういうメロディーのきらめきは唯一無比だったね。スティーヴ・ナイーヴのピアノも最高。


4.XTC
  The Mayor Of Simpleton (3:57)

Oranges & Lemons.jpg

個人的にはXTCの全盛期(の終焉時)に発表されたと思っている89年の「Oranges & Lemons」からのリード・シングル。このベースラインがたまらなく格好いい。前回の記事にも彼らの限定盤変形ジャケットを載せたけど、僕が持ってるこの「Oranges & Lemons」も、7インチCDが3枚、キャラメルの箱みたいな紙箱に入ってるという限定仕様。さっきから探してるんだけど見当たらない… しょうがないから通常ジャケットの写真を載せておくけど、そのうち見つけたら写真を差し替えよう。


5.トッド・ラングレン (Todd Rundgren)
  Just One Victory (4:58)

A Wizard, A True Star.jpg

4のXTCと関係なくもないけど、それを書き出すと長くなるので割愛。yascd003にも入れた天才的シンガーソングライターの、「神がかり的な」凄いアルバムのうちの一枚「A Wizard, A True Star」(73年)から。僕が何回か観に行った彼の(あるいは彼のバンド、ユートピアの)コンサートで、ほぼ毎回アンコールでこの曲が演奏されるのを聴くたびに背筋がぞくっとしていたのを思い出す。


6.ダイア・ストレイツ (Dire Straits)
  Romeo & Juliet (6:01)

Making Movies.jpg

中学生の頃に初めて聴いて以来、ずいぶん長い間僕の無人島レコだった80年の「Making Movies」から。85年の「Brothers In Arms」で大ブレイクして超巨大バンドになってしまう前の、本当に味のある曲を書いていた頃の彼ら。リーダーのマーク・ノフラーは解散後逆に地味地味のアルバムばかりを発表しているけど、もう一度こういうアルバムを作ってくれないかなあ。


7.ブルース・スプリングスティーン (Bruce Springsteen)
  Rosalita (Come Out Tonight) (7:04)

The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle.jpg

彼の曲は、5分のところに丁度5:00である「The River」を入れようかどうしようか散々迷ったんだけど、やっぱりこの初期の名曲を外すことはできなかったのでこちらに決定(別に同じアーティストの曲を複数入れてもいいんだけど、これもまた自縄自縛ルールの一つということで)。73年の「The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle」から。ほとばしる言葉の洪水が、それ自体が物語であるような曲調に乗って歌われるこんな素晴らしい曲を彼はもう書けなくなってしまったけれども、僕は大阪城ホールで観た彼がアンコールでこの曲を演ってくれたのを忘れない。


8.ジェネシス (Genesis)
  Dancing With The Moonlit Knight (8:04)

Selling England By The Pound.jpg

まだジェネシスのリードヴォーカリストがピーター・ゲイブリエルで、フィル・コリンズがドラムに専念していた頃の名作「Selling England By The Pound」(73年)からの、そのアルバムタイトルが歌い込まれた実質上のタイトルトラック。ちなみにそのタイトルは、「イングランドを英ポンドで売る」と「イングランドを切り売りする」の掛詞かな。さっきの曲からのつながりがちょっと不自然かも知れないけど、ここはLPでいうA面とB面の切り替わりだと思ってほしい(本当はこれからどんどん曲が長くなっていくんで、ちっとも全体の半分じゃないんだけど)。ここからしばらくプログレになるよ。Lunaさん、お待たせしました(笑)。


9.イエス (Yes)
  Siberian Khatru (8:57)

Close To The Edge.jpg

おそらく誰もがイエスの最高傑作と認めるであろう、72年の「Close To The Edge」からの最終曲。以前の記事に書いたけど、こういうのを聴くと、いかにピンク・フロイドとかがテクニックでなくムード重視のプログレ・バンドかというのがよくわかる(笑)。オープニングから最後のフェードアウトまで、超絶テクが満喫できる9分間。


10.キャラヴァン (Caravan)
  L'auberge Du Sanglier / A Hunting We Shall Go / Pengola / Backwards / A Hunting We Shall Go (Reprise) (10:03)

For Girls Who Grow Plump In The Night.jpg

カブ子さんお待たせ(笑)。カンタベリー派からはキャラヴァンを入れよう。73年の「For Girls Who Grow Plump In The Night」からのメドレー曲。丁度10分のところでドカンと大きな音が鳴って終わるから、うっかり何のためにこの曲を聴いていたか忘れた場合にも安心です(笑)。それにしても、さっきからなんだか73年発表の曲が多いなあ。これは何の偶然なんだろう。


11.フィッシュ (Phish)
  David Bowie (10:59)

Junta.jpg

えーと、デイヴィッド・ボウイの「Phish」じゃなくて、フィッシュというバンドの「David Bowie」という曲だからね(とは言え、歌詞は別にその有名歌手とは殆ど関係なく、単なる言葉遊び)。今はもう解散してしまった僕のお気に入りグループのデビューアルバム「Junta」(88年)から。ジャム・バンドの代名詞ともなった彼らの代表曲の一つ。元々がこんな長い曲だけど、数多く出ている彼らのライヴアルバムでは、これを更に引き伸ばして演奏している。ドライヴ中なんかに聴くと、最高。


12.へヴィーズ (The Heavy's)
  Slow Down Mix (12:02)

The Heavy's.jpg

これはちょっと反則か?僕もあんまりよく知らないんだけど、いろんなハードロック/へヴィ・メタル系の曲をメドレーにして、本物に似せて歌ったアルバム(全4曲)のうち、スローバラード系の曲を繋げたもの。超有名曲から僕もよく知らないマイナーな曲まで14曲がごちゃ混ぜに入ってて、この辺の曲を知ってる人なら聴いててそれなりに楽しめるかもね。まあ、反則かもしれないけど、この最後の曲は依頼主の、ハードロックファンでもあるかえでさんに捧げる、ということでよしとしよう。



曲を探していると、やっぱり3分、4分、5分あたりの曲はざくざく出てきたから、もし今回選んだ曲が気に入らない人用には別バージョンも作れるかも。例えば、もっとハードな曲を入れてほしいという人には、5のところにラッシュ(Rush)の「The Spirit Of Radio」(4:59)を入れるとか。あとは、オープニングはもっとでたらめでもOKという人のために、1にレジデンツ(The Residents)の「Commercial Album」(1分の曲が40個入ってる)から何か適当なのを一曲入れるとかね。

まあともかく、以上暫定12曲。こんなミックスCD作ったら、誰かタイマーとして使ってくれるかなあ。僕はそんなに料理するわけでもないから、室内で運動するときにでも使おうかな。ルームランナー30分とかね。
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2006年10月23日

所有欲の奴隷III 増殖編

このタイトルを見て、「まだ続くのか」と思っている人がきっといるね?そう、まだあるのです。あと、どういう訳かこのタイトルにするとコレクター仲間のクロムさんがコレクターの苦悩を綴ったコメントを書き込んでくれるので(笑)、面白がって続けている節もあり。

9月24日のオリジナル「所有欲の奴隷」記事での僕の宣言:

これから当分、DVDもボックスセットも買いません。来週アメリカに、来月日本に出張が入ってるんだけど(ということはレコ屋巡りもするんだけど)、DVDのコーナーには足を踏み入れないようにしよう。大きな箱は見てみぬ振りをしよう。


それに対する皆様のご意見:

>守れない宣言はダメです(LoonyLunaさん)

>ムリムリ。多分yas兄やんにはムリ。ゼッタイ見てしまうに100かっぱ!(青グリンさん)

>鉄の意思で素通りしてください。(かえでさん)



予定通りアメリカ出張と日本出張を終え、今朝オークランドに戻ってきたので、約束どおり結果報告。

○アメリカでの収穫:CD9枚
○日本での収穫:CD15枚とシングルレコード1枚



ふふふ、言ったでしょう。僕は言ったことを守ることだってあるんです。DVDにもボックスセットにも、見向きもしませんでしたよ。グリンさん、100かっぱ頂きますね。

僕と入れ違いに(数年ぶりに)アメリカから日本に出張に来ていたCDオタク仲間のK君は、その数日間の日本滞在期間中に98枚のCD類を買って帰ったとのことなので、それに比べると僕の16枚なんて買ったうちに入らないよね。いやあ、僕も大人になったなあ(笑)。


ただ、今回の収穫をリストにしてみると、どうもあるひとつの傾向が見えてしまって。今日はそのことについて書いてみることにした。

The Gardenまず、9月26日の記事に書いた、ゼロ7のニューアルバム。ボーナストラック入りデジパックの日本盤に買い換えた。三方見開きデジパックなので、綺麗な内側のコラージュもより豪華。僕が元々持ってたオーストラリア盤は、今頃日本のどこかで誰かに聴かれているだろう。さっき早速聴いてみたら、3曲のボーナストラックはまあまあといったところかな。ホセのヴォーカル曲はないし。


Yellow Country Teeth続いて、7月30日の記事に書いた、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーの、NZ盤に入っているミネアポリスのライヴ5曲(日本盤のアルバムに入っている5曲とは別物)が、日本オリジナル編集のEPに収録されたので、同じアルバムを3枚買うよりはいいかと、このEPを買った。EPのタイトル曲はもう持ってるんだけどね。ジャケのダーシャ・シシュキンさんのイラストもそこそこそそるし。


Girlfriend更に、これは記事にはしてないけど、レガシーエディションが出たから買い直そうと思っていたマシュー・スウィートの「Girlfriend」。出たばかりなのに中古で見つけたので、定価よりは500円ほど安く買えた。今持ってるオリジナルはどうしようかな。売ろうかな。これは人気盤なのでそこそこの値段で売れると思うんだけど。



化石ジャケまだある。この写真でわかるかな?これはXTCの「Fossil Fuel」という96年発売のベスト盤。「化石燃料」というタイトルに引っ掛けて、この限定盤はケースがアンモナイトの化石状になっている。触ると凸凹。XTCのCDなんてもう全部持ってるんで、当然このCDに入ってる曲も全部家にあるんだけど、やっぱりこういうのは手元に置いときたくなるよね。ちなみに、中のCDのデザインもやっぱりアンモナイト。

化石CD

話は変わるけど、自分のベストアルバムにこういう自虐的なタイトルをつけるアーティストって好き。スピッツの「リサイクル」とか。


Return前から青グリンさんに記事を書く約束をしていた、ドゥルティ・コラムのファーストアルバム「The Return Of The Durutti Column」のCDを中古で見つけた。その中古屋には、この同じCDが同じ値段で2枚出ていたのだが、どうも微妙に作りが違う。内ジャケの緑色は明らかに違う色だし、背表紙のタイトルは一方が上から下へ、もう一方は下から上へと書いてある。でもそれ以外はCD番号も曲目も皆同じ。発売年も発売国も同じ。うーん、迷う。どっちかが初期プレスでどっちかが現行プレスのはずなんだけど、どっちだ?10分ほど迷った挙句、カウンターに持って行って中身をチェックさせてもらう。一方のCDはなんだか手作りといってもいいような塗装。よし、決めた。こっちを買う。

Return (Orig)ちなみにこのアルバム、僕はオリジナルのUK盤LPを持っているんだけど、本当のオリジナルである、ジャケットにサンドペーパーが被っている限定盤をずっと探しているんだ。今日は中身の音楽については触れないけど、こんなちょっと聴いただけだとまるでイージーリスニングのように耳障りのいい音楽を包むジャケットが、レコード棚で周りに置かれた他のレコードを全てボロボロにしてしまうようになっているっていうのが過激。僕はそのサンドペーパージャケを写真ですらも見たことないんだけど、上のCDのジャケに写ってる黄色いのがきっとそうだね。


三姉妹最後に、スクリティ・ポリティのニューアルバム。この写真を見ればわかるように、何故かうちにはこれが3枚もある(別に間違えて買ったわけじゃないよ)。そのうち1枚は今回買ったボーナストラック&DVD付の日本盤。最初に買ったUK盤は日本盤を買った時点で売ろうと思ってたけど、こうして3枚並べてみるとなかなかに壮観なので、なんだか売りたくなくなってきたな。

こんな感じで、今回買ったCDの半数近くが、既に自分で持ってるものの買い替え・買い増し。そういえば昨日の記事のシングル盤も買い増しだな。同じものがどんどん増えていく。これも何かの呪いなのか。

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2006年10月22日

所有欲の奴隷II シングル編

壁に耳あり障子に7月29日の記事「NZのメリーさん」を読んだMさんという友達から、ヤフオクに日本盤の「メアリーの子羊」が出品されているのでは、という連絡が入ったのは、今回日本に出張に来る直前だった。そして、かつて引越しの際に他のシングル盤と一緒に紛失してしまい、件の記事を書くにあたって既に新しくUK盤を買ってしまったこのシングルの日本盤が、何故か(笑)これから日本を離れようという今日、ホテルの部屋にいる僕の手元にある。ああ、どうして僕の周りにはこうやって僕のことをそそのかして同じレコードを沢山買わせたり、同じコンサートに何回も行かせるような友達ばかりが集まるのだろう(笑)。ていうか、嫌なら買わなければいいんだけど。でも今回のように、ずっと昔の記事をたまたま僕の出張直前に読んだ人がその時たまたま安く出品されていたその記事内レコのことを知らせてくれるなんて素敵な偶然、無視するわけにはいかないよね。

うん、やっぱりシングル盤っていいよね。こう、持ってて可愛いと思える。机の上にずらっと並べて見たりすると、音を聴かなくてもなんだか嬉しくなってくる。今はまだ出張先なんで、とりあえずこの1枚のジャケと中身を左右にずらっと並べるぐらいしかできないけど(笑)。うーん、なんだかこれがきっかけで、紛失した昔のシングル盤をまた買い直したくなってきたぞ。やばいな。

と思っていた矢先、日本に来て買った雑誌の広告にこんなものが。

Singles Box

真に熱いクラッシュ・ファンのためだけに
1980年の日本独自企画
「the CLASH SINGLES」が
四半世紀の時を越えコンプリートな形でここに蘇る。
1977年〜1985年
ザ・クラッシュが走りぬけ、鮮烈に生き抜いた9年間。
ロックンロールが世界の真実であったその時代にUKで発売された
ザ・クラッシュのすべてのシングル19枚を、当時のままの仕様で完全復刻!
日本盤のみの特典も満載!!
完全生産限定商品です。必ずご予約を!!



…これも偶然の神様の仕業なのか?僕この「the CLASH SINGLES BOX」持ってたんだよ。当時、高校生のなけなしの小遣いで買ったんだったよな。でもやっぱりこれももう手元にはないんだよ。

「どうしよう?」なんて書くのも白々しいな。12月20日発売のネット通販限定か。次に僕が日本に来るのがいつになるのかわからないけど、2007年の年頭からそう時間の経っていないある日、ダイニングテーブルの上にこの19枚のシングルをずらっと並べ、それを見て悦に入っている僕の姿が既に見えるよ。

Mさん、ありがとう。40代ターゲットカスタマーの心理を読み尽くしたソニーミュージックの担当者さん、ありがとう。あなた方が僕のような人間を触媒に使って斜陽のレコード産業を活性化させているのです(笑)。

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2006年10月17日

Glenn Tilbrook Live In Tokyo (Part 3)

いよいよ最終日。あとで書くけど昨晩はいろいろあって結局ブログが書けるような時間に戻って来れなかったんで、一日遅れのレポートです。記事を心待ちにしていて下さった方(本当にそんな人がいるのか?)お待たせしました。今日は長い記事になりますよ。覚悟しててね。

前回の記事に書いたけど、この日の僕の整理番号は63番。100人ぐらいしか入らない会場でその番号では既に下層階級決定。まともな椅子に座れたらラッキー、ぐらいの気持ちで会場入りした。案の定、僕が階段を下りた時点でステージ際の席は既に満杯。でも、バーカウンター近くの、少し高くなったところに陣取ることができた。ステージまで数メートル、これ(↓)が僕の位置から見たステージだから、全然文句言うようなところでもなかったんだけどね。むしろグレンの目線と同じ高さで見られたし、唾も飛んでこないし(笑)ある意味これはこれでよかったかも。

Mandala

今日も、曲目表に沿って時系列で印象に残ったことを書いていくよ。まず今までと違ったのは、ステージに登場したグレンが片手にマックを持っていたこと(ハンバーガーじゃないよ)。「2006年の今、テクノロジーを使わなくちゃね」みたいなこと言いながら。で、一応それをセットしたけど、一曲目はギターの弾き語りで「Without You Here」。金曜のオープニングと同じ曲だ。少なくとも出だしの曲ぐらいは全日程変えるだろうと思っていたので、ちょっとこれは逆の意味で意外な選曲。でもこれ本当にいい曲だよな。誰だよ、「Domino」好きじゃないなんて言ったのは(笑)。

二曲目は、マックに入れてあった(全部自分で演奏した)バックバンドの音に合わせて披露した新曲「Melancholic Emotion」。多分今製作中だというニューアルバムに入る曲なんだろうな。歌詞はいまいちよく聞き取れないけど、相変わらず優れたメロディー。新譜が楽しみになるよ。

今日はここで早くもピアノに移動。「悪夢のようなコード進行の」と前置きして始まったのは「King George Street」。8月11日の記事でローリー・レイサムのオーバープロデュースに散々文句をつけた「Cosi Fan Tutti Frutti」からの曲だけど、こうして素のメロディーだけを取り出して聴くと、本当に魔法のようなメロディー展開の曲だというのがよくわかる。

スクイーズの未発表曲「Who's That?」も金曜に続いての演奏。「僕とクリスが確か74年に書いた曲だ」なんて言ってたけど、確か金曜には「75年に書いた」って言ってたような気がするぞ。どっちでもいいんだけど、こんないい曲、なんで今までレコーディングしてないんだろう。次のアルバムに入れて、クリスに少しでも印税が入るようにしてあげればいいのに。

ギターに戻っての最初の曲は、僕がリクエストした(けど、リクエストとは無関係に歌いだした)「Neptune」。あー、この曲大好き。これ確かクリスに捧げた(というか、皮肉った)歌詞の曲だったよな。と今から思えば、この日のグレンの言葉と行動の端々に、クリスに対する愛情が滲み出てたな。ライヴ終了後に「クリスと一緒に演りなよ」って言ったときには苦笑いしてたけど、本当は演りたいと思ってるんじゃないのかな。

九曲目、これも新曲の「Morning Dew」。ロン・セクスミスとの共作だそうだ。そういえば、この二人って同じような太り方してるよな。そういえば今回日本に来るほんの数日前にオークランドでロンのコンサートがあったのに行かなかったんだった。もったいないことしたかなあ。

十三曲目、リクエストに応えた「Love's Crashing Waves」は、僕が最初に彼の曲を聞いた思い出のアルバム「Difford & Tilbrook」から。これもリクエストしようと思って、ついうっかり忘れてたんだった。ああ、結構ソウルフルな歌い方してるな。聴けてよかった。リクエストしてくれた方、どうもありがとう。

前半戦最終曲、ここで本日最初のクライマックスがきた。「本日のスペシャルゲスト、クリス・ディフォード!」って、またこないだと同じギャグ言ってるよって思ってたら、マックにクリスのバンドのライヴ演奏を映し出して、それと競演を始めた!もう画面のクリスの方を意識しっぱなしで、後ろに回ってポーズを決めたり、ハモるのがちょっとずれて慌てたり、楽しい! 間奏のところでビデオの方は当然ギターソロやキーボードソロに入るのだが、そこでグレンが「俺のソロだ、俺のだー!」って張り合って弾き始めたのには大爆笑。最後には、画面内でクリスが「サンキュー」とか何とか言ってるのに、「もういいよ」ってマックをバタンって閉じてしまった(笑)。あー可笑しかった。

後半最初の曲は金曜にもリクエストに応えて演った「Yap Yap Yap」。実はそのときにこの曲をずいぶん久しぶりに演ったらしく、客席にコーラスをさせてみると意外に盛り上がる曲だということに気づいて喜んでいた。今日も客席は「Yap! Yap! Yap!」の大合唱。後半の方にも客席コーラス曲(と、32回手拍子の「Hourglass」)が出てくるけど、こういうのは楽しくていいね。それに、皆よく歌詞覚えてるよ。

後半三曲目が終わったところで携帯電話を取り出して、客席の写真を撮り始めた。冗談でやってるのかと思ったら、結構真面目に端から端まで何枚も撮ってたよ。あんまり足元の人達は写してなかったように思えたから、この瞬間だけを取ると、この座席は大正解だったかも。そのうちライヴアルバムが出て、内ジャケかどこかに僕の写真が載ってたらどうしよう。嬉しいな(妄想炸裂中)。

それから今度は携帯でクリスに電話し始めた!でも地下だから電波が届かなくて断念。「そういう時のためにもうひとつ携帯を持ってるんだ」って、別の携帯を出してかけ始めたけど、いや、電波が来てないんだからいくつ携帯持ってたって一緒なんだけど… 結局「くそっ!」って携帯をテーブルに叩きつけるふりをしてあきらめた(笑)。

「Parallel World」に入る頃にはもうかなり酔ってたのかな。さっきからビールに加えて熱燗もガンガン飲んでるからね。「My name is Glenn. And I am funky!」って、あんたはプリンスかよ、って突っ込みたくなるような台詞を連発(笑)。

ここで今度はリクエスト用紙を見ずに「誰かリクエストないの?」って客席を見渡す。観客席の前の方から「Weather With You!」って。でかした!僕のブログにも何度か登場しているニール・フィン(のクラウデッド・ハウス)の名曲。よくこんな曲リクエストして、グレンも即座に「OK」って言ったなと思ってたら、後で聞くと去年の来日時にもこの曲を演ったそうだ。

続いてはビートルズの「Can't Buy Me Love」。この2曲のカバーが続いて個人的に驚いたのは、そのうちブログにでも書こうと思っていたことがあるんだけど、ポール・マカートニー系列の顔ってあると思うんだよね。くりっとしたタレ目のベビーフェイス。しかも英国系。その系譜に繋がるのが、ニック・ロウ、ニール・フィン、そしてグレン・ティルブルックだと常々思っていたところ、そのうち二人の曲をこうして続けて演奏したから、また「あ、こんな偶然」って思ってしまった。よっぽど次に「Cruel To Be Kind」でもリクエストしようかと思ったけど。

「The Truth」ではまたしても演奏中に6弦を一瞬にして緩めるドローン奏法(?)を披露。格好いいよなあ。上の5弦だけを使って華麗なソロを弾きながら、6弦で低音をアクセントにつけるのが本当に見事。

ここで12弦に持ち替え、いきなりまたしてもジミヘンばりに歯で弾き始め、「俺はこんなにロックンロールしてるんだ!」とか言って、今日は乗ってるなあ。いや、酔ってるのか(笑)。

3日間見てて、この12弦ギターのチューニングにいつも一番てこずってたようだった。というか、この人本当に耳がいいんだろうね。12弦をチューナーも音叉も使わずに耳だけで音合わせして、一曲終わるたびにまた結構な時間をかけてチューニング、ていうのをずっと繰り返してた。

「Goodbye Girl」ではもう序盤からプラグを抜いて客席へ。最初はあちこちを練り歩き、やがて客席のほぼ中央に立って歌いだした。当然この曲も観客の大合唱つき。グレンもギターを持ったままその場でグルグル回ったりして、おいおい酔いが回るよ。続く本編最後の「Black Coffee In Bed」ではもう殆どアカペラ状態。

一旦楽屋に引っ込んだグレンがまたしても携帯電話を持って登場。今度は少しでも地上に近い階段に立ってクリスに電話してみるとのこと。それが成功し、マイクを通じてクリスの声が会場に流れたときには大喝采。でも、彼ちょうどお風呂に入ってたところらしくて(笑)、グレンも「雑誌を読みながら優雅に入浴しているところを邪魔しちゃったよ」なんて冗談にしてた。「彼と話すのは7年ぶりなのに」なんて言っちゃって(当然冗談・笑)。

アンコールはもうお馴染み、毎晩演ってる「Is That Love」と「Another Nail In My Heart」。後者のギターソロはやっぱりすごいよ。アコースティックでこんなに弾けるなんて。19フレットまで全部使った見事なソロ。僕はこないだの記事になんて書いたっけ。「僕の考える3分間ポップスのお手本みたいな曲」か。そう、こうしてギター一本での演奏でも同じことを思うよ。

06年の日本公演の最終曲は、トム・ジョーンズのカバー「It's Not Unusual」。最後は自作で締めてほしかったけど、まあいいや。もう(休憩時間を挟んで)開始から2時間45分にもなるから。あれだけ酒飲めばもうヘロヘロだろうし(そのわりに、あれだけ声が出ていたのはやはりすごい。さすがプロ暦30年)。


今回の個人的クライマックスはこの後。例によってライヴ終了後にグレンがバーのところに現れて、サインや写真を求める客の長蛇の列(とは言ってもせいぜい数十人だけど)ができた。僕はもう先日一緒に写真も撮ったしサインも貰ったんで、列とは反対側のグレンの横でバーカウンターにもたれてギネスを飲みながら、たまに英語が通じにくい人におせっかいにもちょっとだけ通訳してあげたりしていた(偉そうに言うなよ)。

やがて列が途切れた頃にグレンに話しかけ、今回はしばらく話すことができた。オーストラリアに住んでいる彼の息子さんの話、オークランドにライヴのために来る可能性があるかどうか、クリスとまた一緒に演ることはあるのかどうか、等々。金曜にも伝えた「『Cool For Cats』リクエストしてごめんね」を言うと、「あー、お前か」って感じで思い出してくれたようなのが嬉しかった。

そうしているうちに閉店時間になったので、「この後飲みに行きませんか」って言ってみた。そしたら「打ち上げがあるはずだけど、一緒に行けるかどうか訊いてみてあげるよ」だって。やった!さすが酔っ払ってるだけあって、判断力鈍ってるな(笑)。

結局は、主催者の方にOKを頂き(「できるだけそっとしておいてあげてください」と言われたけど)、仲良くなった数名の客と一緒に近所のベトナム料理店までついて行ったのだが、生憎満席。あらかじめ関係者が席を取っていたグレンと主催者の方までしか入店できなかった。そこで最後にグレンと握手をして別れた。ロンドンまでの長旅、気をつけてね。


今回僕は3晩観たんだけど、5晩連続(プラス渋谷でのフリーライヴにも参加)という方も結構いたようだ。この界隈では音楽に造詣が深いということになっている僕だけど、上には上がいるものだと思い知らされたよ。この最終日、ライヴは当然最高によかったんだけど、その後のグレンとの会話、それに会場で知り合うことのできたグレンファンの方々との出会いがすごく貴重な収穫になった。お陰で昨晩は3時間しか寝られず、今日の12時間ぶっ通しの会議は地獄の苦しみだったけど(えーと、今回何しに東京来たんだっけ?)、この3晩、本当に行ってよかった。LoonyLunaさん、全日程行け!と僕のことをたきつけてくださって、ありがとうございました。

Glenn & Me


1  Without You Here
2  Melancholic Emotion
3  King George Street
4  Last Time Forever
5  Who's That?
6  Tempted
7  Neptune
8  Woman's World
9  Morning Dew
10 Is It Too Late?
11 Reinventing The Wheel
12 Pulling Mussels (From The Shell)
13 Love's Crashing Waves
14 Take Me, I'm Yours

15 Yap Yap Yap
16 Great Balls Of Fire <ジェリー・リー・ルイスのカバー>
17 Walk A Straignt Line
18 No Place Like Home
19 Parallel World
20 Weather With You <クラウデッド・ハウスのカバー>
21 Can't Buy Me Love <ビートルズのカバー>
22 Walk Away
23 The Truth
24 Hourglass
25 Last Train To Clarksville <モンキーズのカバー>
26 Untouchable
27 Up The Junction
28 Goodbye Girl
29 Black Coffee In Bed

30 Is That Love
31 Another Nail In My Heart

32 It's Not Unusual <トム・ジョーンズのカバー>

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2006年10月14日

Glenn Tilbrook Live In Tokyo (Part 2)

Glenn.jpg

さて二日目。今日は昨日にも増して思い出に残る夜になった。今日はちゃんと開場前に着いたのだが、僕のチケットの整理番号は41番。これだと今日はいい席は無理かなと思っていたら、なんと正面一番前の席がまたしても空いていた。昨日はマイクスタンドやや右で、今日はやや左って感じ。ちなみに昨日と今日の写真は僕が撮ったものではなくて去年の来日時の写真をオフィシャルサイトから拾ったものなんだけど、今日の僕の位置からだとこの上の写真と同じ角度で見えた。今日の位置だとピアノを弾いてるときにもちゃんと顔が見えるし。場内で一番いい席と言っても過言ではないようなところ。なんで空いてたんだろう。

下に曲目表を載せるけど、今日はアンコールを含めて昨日より2曲多い全32曲。そのうち14曲が昨日とダブっている(はい、ここで算数の問題です。昨日と今日で僕は合計何種類の曲を聞いたことになるでしょうか?)。印象に残ったことを時系列に沿って書いていこう。

1曲目「Without You Here」。これにはびっくりした。なぜって、実は今日の昼にスクイーズのことを少し知ってる友達と、僕のあまり好きでない「Domino」というアルバムからようやく見つけた好きなこの曲を今日リクエストしようかな、なんて話してたところだったから。しっとりとした、いいオープニング。

最初の数曲をギターで演奏した後ピアノに移るのは昨日と同じ展開だったのだが、そのときに彼が話したこと。「初日はピアノ使わなかったんだけど、昨日は使ってみたよ。あんまり上手じゃないんだけどね」。そこで僕が「上手かったよ」って言ったら、「そうだろ?」だって。ちゃんと目が合って話してしまったよ。嬉しい。

ピアノで弾き語りした中の一曲「Last Time Forever」の途中で急に演奏を止め、「ごめん、鼻水が出てきた」ってタオルで拭いてからまた始めたのが可笑しかった。あんなシリアスな曲の途中で(笑)

昨日と同様、スケッチブックをフリップボードとして使って色んなメッセージを伝えようとするのだが、今日新たに出てきたメッセージは、「僕の友達のクリス・ディフォードの新譜を買ってください」。昔の記事に書いたけど、クリスってのはグレンと共にスクイーズのキーメンバーだった人。最近ニューアルバムを出して、それが今回の会場の入り口でも、グレンのCDと並べて売られていた。で、そのメッセージをめくると、「僕のCDを全部買ってからね」(笑)

15分の休憩後3曲目、「オーケー、次はまたリクエストの曲を演ろう。これはyasから。君、今日はラッキーな日だね」と紹介されて「Vicky Verky」が始まった。本当は名前呼ばれたら返事してやろうと思っていたのだが、あまりにびっくりして声も出ないうちに曲が始まってしまった。でもその曲への歓声はけっこう大きく、皆が待ってた曲だということもわかった。僕がリクエストしたんだよ、って自慢してやりたかったよ。

今日のカバーの一曲、ジミ・ヘンドリクスの「Voodoo Chile」。これには驚いた。オリジナルそのままの演奏をアコースティックギターで完璧にこなす上、ギターを頭の後ろに持っていって弾いたり、マイクスタンドに擦り付けて弾いたり、すっかりジミヘンになりきってたよ。でも、頭の後ろにギターを持っていったまま急に演奏を止め、「ジミが亡くなったのは27歳のとき。その頃の彼は僕より少しスリムだったはずだから、お願いだから僕の腹より下は見ないでおいて」だって(笑)。

他にも驚いたのは、「The Truth」演奏中に(演奏を止めずに)一瞬で6弦のペグをぐるっと緩め、低音弦でドローンのような音を出し始めたこと。あんなの初めて見たよ。

「Hourglass」演奏後、またフリップボードを取り上げ、「僕の友達のクリス・ディフォードの新譜を買ってください」を見せながら、「今の曲もこのCDに入ってるから」って言ったはいいが、その後おもむろに「僕はただページを順番にめくってるだけだよ」ってまた自分のCDの宣伝に(笑)。もう全編にわたってこういうジョークが満載だった。

「Up The Junction」を12弦で弾いている途中で弦が切れ、ギターリフの続きを観客が声で歌うなど楽しい場面も。アンコールのラスト「Black Coffee In Bed」でも、コーラス部分を観客に歌わせ、自分はアンチョコを見ながら日本語で「明日も来てくださ〜い」とか歌い出して、でもその後日本語が続かないもんだから、「コンバンハ〜」とか歌って大爆笑。

最後にお知らせがあったのだが、明日の2時から渋谷のヤマハでフリーコンサートを演るとのこと。うーん、明日はどうしても抜けられない大事な用があって行けない… 僕の記事を読んで行ってみたくなった方がおられたら、これどうでしょう?タダですよ(笑) あと、元々明日と明後日は当日券は出ないとのことだったけど、今日受付の人に訊いてみたら「出るかも」とのこと(チケット売れてないのか!)。どなたか日曜一緒に行きませんか?(笑)。

さて最後に一番嬉しかったこと。コンサートが終わってしばらく隣の人と話した後に外に出たら、なんと外から戻ってきたグレンとすれ違った。「いいショーだったよ」って言ったら、背中をぽんって叩かれて「ありがとう」って。もう嬉しくてそのまま彼についてまた会場内に戻る。既にバーカウンターのところには列ができており、皆でサインをもらったり一緒に写真を撮ったり。僕もチケットの裏にサインをもらい(今はスキャナーがないので、後日ここに載せます)、一緒に写真を撮ってもらった。

「『Vicky Verky』リクエストしたの僕ですよ」とか、(本来クリスの持ち歌の)「『Cool For Cats』なんてリクエストしてごめんなさい。でも貴方の歌うあの曲を聴いてみたかったんですよ。あ、もしかして歌詞知らない?」とか言ってみた(「知ってるよー」って返されたよ)。ほんの1〜2分しか話せなかったけど、すごく思い出に残る瞬間だった。

果たして明後日の最終日、僕にとってこれ以上いいイベントになることがあり得るのだろうか。チケットの整理番号は今日に輪をかけて悪い63番。どうやって一番前に潜り込もう…(笑)


1  Without You Here
2  Reinventing The Wheel
3  Piccadilly
4  Who's That?
5  The Waiting Game
6  Last Time Forever
7  Tempted
8  Jolly Comes Home
9  Hostage
10 Annie Get Your Gun
11 Wichita Lineman <グレン・キャンベルのカバー?>
12 Yap Yap Yap
13 Vanity Fair
14 Parallel World
15 Oh Well <フリートウッド・マックのカバー>
16 Another Nail In My Heart

17 This Summer
18 I'm A Believer <モンキーズのカバー>
19 Vicky Verky
20 Walk A Straight Line
21 Voodoo Chile <ジミ・ヘンドリクスのカバー>
22 The Truth
23 In Quintessence
24 Hourglass
25 Untouchable
26 Up The Junction
27 She Doesn't Have To Shave
28 Goodbye Girl
29 Slap & Tickle
30 Is That Love

31 They Can't Take That Away From Me <ジョージ・ガーシュインのカバー>
32 Black Coffee In Bed
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2006年10月12日

Glenn Tilbrook Live In Tokyo (Part 1)

Tilbrook.jpg

楽しいコンサートだった。本当は今回の一連のコンサート全部が終了してからまとめて記事にしようかと思っていたけれど、毎日の興奮が冷めないうちに少しずつ書いていくことにしよう。今日は10月12日(木)、グレン・ティルブルック東京公演の二日目。僕は全5日公演のうち、今日、明日、最終日のチケットを確保した。

会場は南青山マンダラ。僕にとっては初めての場所だったが、なかなか感じのいいところ。地下に降りると左手にバーカウンター、右側には、おそらく三人編成のバンドが入ったら一杯になると思われる程度の、低めのステージ。ギターが2本(どちらもヤマハの、6弦と12弦)とグランドピアノが置いてある。ステージ前のいくつかの小さなテーブルをはじめ、壁際のソファ、バースツールなど様々な大きさと形の座席が配置されており、席は全て自由席になっている。僕が到着したときにはもう大方の席は埋まっていたのだが、例によってあつかましく一番前のテーブル席に「ここ空いてますか?」と入り込む。譜面台正面、足の置き場はステージの上しかないような好位置。

開演予定時刻の7時ぴったりに会場が暗くなった。うわあ、本当に近い。目尻の皺まで数えられるような距離。比喩でもなく、飛び散る唾や汗が全部見えるよ。しかし、太ったなあ。指なんてころころした虫みたい。あれでよくあんな高速の運指ができるよ。それに、思ったより背も低く(多分180もないのでは?)なんかタレ目の可愛いフワフワ頭のぬいぐるみみたい。

会場にはリクエスト箱が備え付けてあり、前日のリクエスト曲から本人が選んだ曲を演奏するようになっている。そんなわけで、のっけからマイナーな曲を連発。彼の過去30年近くに及ぶ数百曲のデータベースからランダムに選んだような順番で意外な曲が次々に演奏されるのを聴くのは、思いもよらぬ快感。

途中、コーラス部分の歌詞を書いたスケッチブックを前にいた客(僕の隣の奴だ)に持たせて観客にコーラスさせたり、いきなりギターのケーブルを抜いて客席を練り歩きながら歌ったり、楽しい趣向も色々。ある曲では二番の歌詞から歌い始めてしまい、あれ?って感じで舌を出して苦笑いしながら一番に戻ったり、譜面台に置いた紙の束を見せて「俺、歌詞を覚えてない曲がこんなにあるんだよ。リクエスト入ったからこれ見ながら歌うよ」なんて言ったり。楽しい楽しい。

間に15分の休憩を挟んだ二部制。第二部の途中で「ちょっと手を洗ってくる。一分ちょうだい」なんて言ってトイレに駆け込んだりする場面も。アンコールも含めると、全部でなんと30曲、2時間15分に及ぶ熱演だった。

特に第二部の出だし数曲は、僕の大好きな曲が目白押しだった。以前記事にしたyascd001と、実は未発表ながらひそかに存在するyascd001.1という二つのミックスCDを押さえていれば、今日のライヴのかなりの曲は(ヒット曲だけでなくマイナーな名曲まで)わかったはず。我ながらあのミックスCDの選曲の妙に感心してしまった。

ああ、少しずつなんて言って、またいつもの長文記事になってしまった。最後に今日の曲目表を載せて、あとは明日にしよう。僕がリクエスト箱に入れてきた3曲(どれも今日は演らなかった)、明日は演奏してくれるかな。僕の名前も呼んでくれるかな。明日も一番前に座って、スケッチブックを持つ役やろうかな。

1  Someone Else's Bell
2  Oh Well <フリートウッド・マックのカバー>
3  Genitalia Of A Fool
4  Piccadilly
5  Take Me, I'm Yours
6  Last Time Forever
7  Point Of View
8  Tempted
9  Messed Around
10 Hostage
11 This Is Where You Ain't
12 I Can Hear The Grass Grow <ムーヴのカバー>
13 Slightly Drunk
14 Goodbye Girl

15 Electric Trains
16 She Doesn't Have To Shave
17 Jolly Comes Home
18 Some Fantastic Place
19 You Can't Do That <ビートルズのカバー>
20 Hourglass
21 Untouchable
22 Monkey On You
23 No Place Like Home
24 Up The Junction
25 Another Nail In My Heart
26 Footprints
27 Parallel World
28 Pulling Mussels (From The Shell)

29 (You're So Square) Baby I Don't Care <プレスリーのカバー>
30 Is That Love
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2006年10月11日

早朝の唄 Ray LaMontagne 「Till The Sun Turns Black」

緯度が高いためか針葉樹の目立つ鬱蒼とした森の奥深く。夜明けまであと少しといった時間帯。さっきから歩を進めるたびに夜の色が少しずつ薄くなっているのがわかる。空気は澄んでいるのに視界があまりよくないのは朝もやのせいか。この時間帯では虫の音さえ聞こえず、ここしばらくは自分が踏みしめる湿った枯葉の音しかしない。まだ冬には早いはずなのに、身を引き締めるような寒さが体を包んでいる。やがて、名も知れぬ野鳥の巣が視界に入ってくる。そこには手のひらに収まるような小さなたまごがひとつ。親鳥はどこへ行ってしまったのだろうか。固唾を呑んで見守っていると、その殻に小さな亀裂が入り、そして数分と経たないうちに中から小さなひな鳥が現れる。荘厳な瞬間。目を上げるとちょうどそのとき東の空から陽が昇り、木々の間から薄い木漏れ日が差し込んできた。

Till The Sun Turns Black.jpg

実際の歌詞とは全く関係ないが、レイ・ラモンターニュのニューアルバム「Till The Sun Turns Black」の一曲目「Be Here Now」を聴いて僕が勝手に思い浮かべた情景はこういうものだった。使われている楽器類のせいだろうか、とても視覚的な一曲。アルバム冒頭から意表をつく6分強にもわたる長尺、しかも曲自体にドラマティックな展開があるわけでもないのに、あっという間に6分が過ぎ去ってしまう。

続く「Empty」は、数ヶ月前にリリースされた(ジャムバンドの祭典)ボナルー・フェスティバルでのライヴを収録したミニアルバムにも既に新曲として収められていた曲。そのときの演奏はレイ本人を含むギター、ベース、ドラムのスリーピースのこざっぱりしたものだったが、今回は弦楽器をふんだんに使ったとてもふくよかな音になっている。ボナルーでの演奏も決して悪いものではなかったが、これは別格。これを聴いただけで、プロデューサーのイーサン・ジョンズの力量がよくわかる。

このまま全曲解説をしていたくなるほど、このアルバムにははまってしまった。これは04年の名作デビューアルバム「Trouble」を凌いでいるかもしれない。今回のアルバムの特徴としては、レイとイーサンが基本的な楽器を演奏している以外は、アルバム全編に亘ってチェロやバイオリンなどの弦楽器が多用されていること。数曲でブラッド・ジョーンズ(懐かしい)がベースを弾いている他、レイチェル・ヤマガタが一曲でバッキング・ボーカル、ジョン・メデスキが一曲でウーリッツァーを弾いている。ヤマガタはそっと寄り添うようなハーモニーをつけている程度だが、メデスキは下手すると一本調子になってしまいそうなこのアルバムにファンキーなジャズ風味の彩りを添える重要な役割を果たしている。

確かこの人、アメリカ北部だかカナダで郵便配達をしていたが、あるときスティーヴン・スティルスの歌を聴いて曲を作ることを思い立ち、20代後半にしてデビューしたとか(手元に資料がないのでうろ覚え)。ほんとかよ、と思うような経歴。なんで今更スティーヴン・スティルス?とも思わなくもないけど、でもこれだけの才能を持った人が手紙を配りながら人生を終えなくてよかったと素直に思うことにする。

インストゥルメンタルを含む全11曲。長めの曲が多い割にはアルバム全体はコンパクトにまとまっているので、飽きずに何度も繰り返し聴ける。淡々としながらも底に熱いものを感じさせる、(北半球では)これからの季節に絶好のアルバムだと思う。もちろん南半球の僕もこれからじっくり聴きこんでいくけどね。

これも先日のアメリカ出張で駆け込みで買ってきたCDのうちの一枚。出たばかりの新譜なのに幸運にも中古で$8.99で買えた(ええ、そういうのが自慢です)。あの出張はいろいろあって大変だったけど(え、全然大変そうには見えなかったって?)、前回の記事のジン・ブラッサムズといい、僕の2006年度ベスト10候補作品がいくつも手に入って、振り返ってみたらいい出張だったな。
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2006年10月07日

帰ってきた! Gin Blossoms 「Major Lodge Victory」

Major Lodge Victory.jpg

ドラムの音から始まるアルバム。
このブログを定期的に読んでくれている方の中にも何名かおられる、ブルース・スプリングスティーンの「The River」を愛聴されている方なら、あのアルバム冒頭、「The Ties That Bind」のスネアの一音がどれだけ胸躍らせるものか判っていただけるだろうか。このジン・ブラッサムズのニュー・アルバム「Maojor Lodge Victory」を聴き始めてまず思ったのはそんなことだった。ついでに言うと、このアルバム1曲目「Learning The Hard Way」のイントロのドラムパターンは、同じ「The River」からでも「Two Hearts」のものと全く同じだ。身震いするほど格好いい音。これから始まる最高のロックンロールアルバムの幕開けを宣言しているような。

一月ほど前の記事「yascd002」に、このグループについても書いた。21世紀を迎えることのできなかった、アメリカ音楽の良心。そう、このグループは96年の名作「Congratulations I'm Sorry」を出して、解散した。実は僕もその記事を書くために久しぶりにベストアルバム(記事中にジャケット写真を載せたもの)を引っ張り出してきて聴き、やっぱりオリジナルの「Congratulations〜」を持っていたくなって、その記事を書いた後、中古屋でそれを入手したばかりだった(500円弱で売られていたのには、得したような、自分のお気に入りが捨てられているのを見て悲しいような、不思議な気分だったが)。

先日のアメリカ出張で、最後の最後、LAXでの乗り継ぎ時間に空港を抜け出し、近場のレコ屋に駆け込むことができたのだが、そこで何の気なしに「G」のコーナーを見ていたら目に飛び込んできたのがこのアルバム。おや?見慣れないジャケ…と思ったら、なんと06年発売の新譜! もう既に世間一般には忘れ去られたグループが、僕がブログの記事にした途端に10年振りの再結成アルバムを発売し(実際は僕が知らなかっただけで、このアルバムは僕の記事より1ヶ月ほど前に出ていたらしいが)、そのCDがたまたま訪れたレコ屋の「G」のコーナーを見た僕の目に留まって、今ここにある。なんだか高いところから見ている人が仕組んだような偶然…

アルバムによって音を変えるような人達じゃない。3分台、4分台の曲が全12曲、どこを取っても奇をてらったところはない。曲調だって、ワンパターンと言ってしまえるかもしれない。飛びぬけた演奏テクニックがあるわけでもない。ただ、切なくなるようなメロディーと芳醇なハーモニーを、おそらく今まで何千回とこなしたであろうライヴで鍛えた確実な演奏に乗せているだけ。それが、最高。このアルバムジャケットが象徴しているような、アメリカのどこか田舎のハイウェイを、青空の下(でもちょっと曇ってる)をどこまでもドライブするような感じ。

さっき書いた冒頭の曲もいいんだけど、2曲目「Come On Hard」もまたいい。僕には、LPのA面2曲目に名曲が入っているアルバムに外れはないという持論があるんだけど(それについてはまた別途記事を書こう)、このアルバムもまたそれに当てはまるかも。引き続きスプリングスティーンの「The River」を引き合いに出すと、実は僕があのアルバムで一番好きな曲は「Sherry Darling」だったりする。

再結成と書いたが、メンバーを見ると、オリジナルのドラマーは戻ってきていないようだ。残念だけど。でも、最初にも書いたけど、それを知らずにまず聴いてみて、もうとにかくこのアルバムを聴いて僕の印象に残るのがドラムの音。あとベースも。これは録音がしっかりしているということに加えて、やっぱり演奏自体がいいんだろうね。アメリカで地道に生き残っているこういうバンドのライヴが悪いわけないから、是非一度観てみたい。偶然の神様、なんとか次の手を仕組んでくれないだろうか。
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2006年10月04日

yascd003 秋の夜長に

一週間の出張から戻ってきたらもう月が替わっていた。しかもNZは先週末から夏時間(Daylight Saving Time)に入っており、これで日本との時差が4時間になってしまった。ますますあちこちのブログやチャットで日本の人達と直接やりとりするのが難しくなってしまうなあ。こちらはどんどん春の陽気になり、あちこちで桜や色とりどりの花が咲き乱れているんだけれど、きっと日本は少しずつ秋が深まっている頃だろう。

日本の秋が恋しいなあ。来週また出張で日本に行くから、秋の空気や食べ物を堪能してくるのが楽しみ。秋は僕の好きな季節の一つで(他にも好きな季節はあと三つぐらいあるんだけど)、特に夕刻から夜にかけてのちょっと物悲しい、もう夏じゃないんだなって思わされる時間帯がいい。今日はちょっと趣向を変えて、そんな時間帯に聴いていたい曲を集めたCDを空想してみる。最初の選曲段階ではもうちょっとバラエティーに富んだ人選だったんだけど、できあがってみると、新旧シンガー・ソングライター(SSW)のショーケースみたいな内容になった。


October Road.jpg JT.jpg

ジェームス・テイラー (James Taylor)
1.September Grass
2.Handy Man

最初はスタンダードにこの人から。70年代アメリカンSSWの代表格。最近はすっかり影が薄くなってしまったようだが(頭がすっかり禿げ上がってしまったことと関係あるのか)、今でもゆっくりとだが充実した内容のアルバムを発表し続けている。この節回しにこの声が乗るだけで、何十年経っても変わらない彼の世界に浸れる。1は今のところの最新作である02年の「October Road」から。もう九月は終わってしまったけど、この歌のように秋の草むらでのんびり過ごすのも楽しいね。多分ヴィンテージのマーティンであろうアコースティックの弦の音が実に芳醇。2は元々オーティス・ブラックウェルのカバーでありながら、もうこの人の代表曲のようになってしまった曲。77年の「JT」からのシングルカット。「貴女の心に傷がついてしまったら、僕が修理してあげる。僕は便利屋なんだよ」って、原曲はちょっとコミカルな感じなんだけど、彼がこうして歌うと本当に優しく頼りになる感じがするね。


Australian Tour EP.jpg Veneer

ホセ・ゴンザレス (Jose Gonzalez)
3.Suggestions
4.Heartbeats

7月のライヴ(7/21の記事参照)でも3曲目と4曲目にこの順序で演奏した組み合わせ。こうして繋げて聴くとしっくりくるってのをその時に覚えた。この流れはこれからもいろんなミックスCDに使えそう。ライヴのときは3の最後の音と4の最初の音が全く同じ高さだったと思ったんだけどな。あと、曲間が0.5秒ほど短くなれば聴いててもっと気持ちいいんだけど、PCで編集するとそういうのが中々難しい。カセットデッキでコンマ何秒の切り貼りをしてたのが懐かしいよ。曲の話に戻ると、さっきのまだ夏の名残があった感じのJTから3に移ったところで、なんだか急に秋風が吹き始めたような気分になる。僕は4を最初に聴いたのが春(NZの。要は去年の今頃)だったんで、3から4に移るところで雪解けをイメージしてしまうんだけど、まあここは無理やりこじつけて、小春日和をイメージした流れということで。


Trouble.jpg

レイ・ラモンターニュ (Ray Lamontagne)
5.Hannah
6.Jolene

最近の僕のお気に入りSSWの一人。これは両方とも04年に出たファーストアルバムから。今年の初頭に出たライヴ・ミニアルバムに続いて、つい最近セカンドが発売された。実は今回のアメリカ出張でこれを早くも中古で(破格値で)手に入れることができたのが一番の収穫かも。今日早速聴いてみたが、素晴らしい出来だった。近いうちにこのブログで単独で採りあげるよ。ファーストアルバムは日本の雑誌やブログで結構取り上げられていたようだが、実際はどれぐらい売れたんだろう。ジェームス・ブラントがあそこまで売れるなら、この人ももう少しメジャーになっても全然おかしくないと思うんだけど。要所要所で奏でられるバイオリンの音がなんだか切ない。


Songbook Vol.1.jpg

ランディ・ニューマン (Randy Newman)
7.When She Loved Me
8.Sail Away

自分の過去の代表曲をピアノの弾き語りで再録した「Songbook Vol.1」から。それだけ書くとなんかやっつけ仕事みたいな感じがするけど、これがまたしっとりとしたいいアルバムに仕上がっている。「Vol.2」も早く作ってくれないかな。7は、小さいお子様をお持ちの方なら聴いたことのあるメロディーかも。某有名映画の挿入曲。この曲だけじゃなくて、この人は沢山の映画のスコアを書いてるから。8はアフリカからアメリカに連れてこられる黒人奴隷のことを(白人のことを皮肉った視点で)書いた名曲。


Yola.jpg

エレノア・マケヴォイ (Eleanor McEvoy) 
9.Did I Hurt You?
10.Seasoned Love

このミックスCDで唯一の女性アーティストになってしまった(最初の選曲段階では他にもいたんだけど)、アイルランドのSSW。僕はあまり彼女のことを知らなかったんだけど、この01年の「Yola」というアルバムを試聴してすっかり気に入ってしまい、それ以来他のアルバムも見つける度に購入している(悲しいことに、どれも捨て値でバーゲン箱に入れられてることが多いんだけど)。ちなみに僕はこのアルバムをSACD(スーパーオーディオCD)で持ってるんだけど、これは意外と隠れた高音質タイトルかも。SACDでもたいしたことのない音質のものもよくあるからね。オーディオマニアの方にはお薦めの盤。


Closing Time.jpg

トム・ウェイツ (Tom Waits) 
11.Ol’ 55
12.I Hope That I Don’t Fall In Love With You

近年はすっかり潰れた声でアクの強い歌い方をするようになってしまった彼の、まだ真っ当なSSWだった73年のデビュー盤から冒頭の2曲。最近のアルバムもそんなに嫌いじゃないんだけど、やっぱりこの頃の方がよかったと思う。このファーストは今でも僕が一人で酒を飲むときに一番よく聴くアルバムかもしれない。うん、イメージ的にはかつてコメント欄で空想上の僕のことを描写してもらった、茶系の背景(なんだそれは)に煙草をくゆらせながら(僕は煙草を吸わないので、かわりにビーフジャーキーでもしがみながら)カウンターでバーボンのショットグラスを傾けてるような感じ?(笑)。丁度このジャケットの写真のような。11は、もしかしたらイーグルスがカバーしたバージョンを知っている人の方が多いのかな。


At Home.jpg

ランバート&ナティカム (Lambert & Nuttycombe)
13.Ode To Drugan
14.Putting Myself Together Again

今回のミックスの中では実は僕が一番よく知らない人達。ユニバーサルから名盤の殿堂シリーズの紙ジャケで再発された時に、同時発売のロン・デイヴィス「UFO」などと一緒に手に入れたアルバム「At Home」から。日本盤のアーティスト名表記は「ナッティカム」。彼らの経歴やなんかを、そのCDのライナーノートを写して書いてもしょうがないんで、興味のある人は自分で探してね(なんといういい加減な音楽紹介ブログ!)。ちょっと内省的なメロディーに二人の味わい深いハーモニーがいい感じ。


O.jpg

ダミアン・ライス (Damien Rice)
15.Cannonball
16.Older Chests

彼も僕の最近のお気に入りSSWの一人。この上に載せたファーストアルバム「O」を始め、他のシングル盤などのジャケットのイラストも好き(ええ、通販でTシャツ買おうとしてますよ)。この15や「The Blower’s Daughter」などはシングルカットされて少しはヒットしたはず。日本ではどうだかわからないけど、実は僕が思ってるよりもメジャー展開されてるような気がする。あちこちで紹介されていたこのデビューアルバムに続く作品を早く出してほしいものだ。個人的には16の雑踏のような音が入ってくるところがなんともいえず郷愁を誘う。どうしてだろう。


Acoustic Live.jpg 1+1.jpg

ニルス・ロフグレン (Nils Lofgren)
17.Some Must Dream
グリン (Grin)
18.Lost A Number

無人島レコは決められない僕がはっきり決めている、世界で二番目に好きなギタリスト(一番の人についてはそのうち書く)。最初に結成した自身のバンド、グリン(以前「そそるジャケ」特集で採りあげたね)を結成した後ニール・ヤングのアルバムに参加、その後長い間ソロで活動していたが、「Born In The U.S.A.」以降のEストリート・バンドのリード・ギタリストとなる。基本はエレキギターを弾く人だが、この17の見事なアコースティックギターを堪能してほしい。このミックスCDの中でこの曲だけ例外的にライヴ録音を収録したのは、この曲がスタジオでは録音されていないから。何故こんなにいい曲が?って思うよ。曲が終わった後に次の曲紹介をしているけど、それはこの18じゃないから、念のため。18が収録されているグリンの71年のセカンドアルバム「1+1」は、僕の無人島レコ候補の一枚。


Runt.jpg Healing.jpg

トッド・ラングレン (Todd Rundgren)
19.Believe In Me
20.Tiny Demons

この人のことはどう紹介しよう。僕がこうしてマニアックにレコード・CDを集め出すきっかけになった人、かな。僕が大学生の頃、廃盤になっていたレコードを散々探し回った挙句、LP一枚に数千円から一万円以上も出して買うほど欲しくなったのは彼が最初。ちなみにこの「Runt」は9500円で買ったはず。最近出すアルバムはぱっとしないものが多くなってしまったのがとても残念なのだが、この19が収録されたファーストアルバムから数年間は、神がかり的に凄いアルバムを何枚も量産していたものだ。単なるSSWでなく、音的にもあれこれ冒険する人で(最近の迷走はそこから始まったのだが)、20のようなひっそりとした雰囲気の曲でも後ろで色んな音が鳴っているのがわかる。


Harvest Moon.jpg After The Gold Rush.jpg

ニール・ヤング (Neil Young)
21.Harvest Moon
22.Birds

JTで始めたからという訳ではないが、最後はもう一人の70年代SSWの代表格でしめよう(とは言え、彼こそ単にSSWというカテゴリーには簡単に入れられないのだが)。21はまさにこのミックスCDのテーマにふさわしい、中秋の名月を歌った曲。92年の同タイトルのアルバムから。22は彼の代表作の一枚、70年の「After The Gold Rush」からの隠れた名曲。このアルバムが、さっきのニルス・ロフグレンが初めて参加したもの。ただしその時はピアノとコーラスだけだったけど。僕の持ってるCDには細かいクレジットが載ってないので、このピアノがニルスなのかニールなのか、あるいはジャック・ニッチェなのかは不明。


おお、やっぱり一人二曲ずつの選曲にすると記事が短い。え、別に短くないって?(笑)。まあとにかく、僕は来週の出張に、このミックスをMP3プレーヤーに入れて持っていこう。おそらく毎晩会議と宴会で、こういう曲を聴きたくなる落ち着いた気分になるのは帰りの機内まで待たないといけない気がするけど。
posted by . at 19:38| Comment(30) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

ラスヴェガスにて

出張でロサンジェルスとラスヴェガスに来ている。LAでは結局自由時間が全く取れず、楽しみにしていたアミーバ・レコード(世界最大の独立系レコード店)には行けなかった。今ラスヴェガスにいて、今日の午前中だけフリーになったのでレコード屋に行こうとしたら、調べておいたヴァージン・メガストアは閉店、それから散々歩き回ってみたが、どのショッピングモールにもCD屋などなく、唯一見つけたところはろくな品揃えも無いくせに値段はアマゾンで買ってNZに送ってもらうよりも高いという始末。こんなところでCDなんて買う人、ほんとにいないんだね… で、結局ホテルの部屋に戻ってきて、こうしてブログを書いてる。わざわざアメリカまで来て何やってんだか。

飛行機のチェックインに始まって、ほんの数日間でこの国にうんざりしたことは山のように書けるほど貯まったんだけど、昨晩素晴らしいものを見たので、今回のうんざりツアーはこのためにあったと思うことにした。今回の出張は、取引先の人達を接待するのが目的で、昨晩はシルク・ドゥ・ソレイユの「KA」を観に出かけた(遊びみたいな出張ですみませんね)。僕はこういうものに関しては殆ど何の知識もないから専門的なことは全然書けないんだけど、これには本当に感動したので、感想文程度でも書き残しておこう。

ka.jpg

Cirque du soleil、直訳すると「太陽のサーカス」かな?その名前からてっきりフランスの団体なのかと思ってたら、カナダの劇団なんだね。サーカスというよりは、アクロバットを中心にしたショーっていう感じ? 実は僕はもう20年ぐらい前に東京で一度彼らの公演を見たことがあって(演目は忘れた)、その時もそれなりに楽しんだ覚えがあるんだけど、今回のはそれとはもうスケールが全く違った。

メンバーの動きが超人的。まるで「少林サッカー」の動きを目の前で実際に再現されてるように錯覚してしまう。例えば、トランポリンでもない普通の床から飛び上がって二回転した後、前後に180度開脚したままぺたっと着地する、とか(本当はあの技には専門用語があるのかも知れないけど)。舞台には一度に何人も(下手すると十何人も)出ているんだけど、それぞれのメンバーがそういう物凄い動きをしているので、もう一体どこを見ていいかわからなくなるような瞬間も。

一番の驚きは、ステージそのもの。ショーが始まる前は、ステージのあるべき所になにもなくて、奈落から火と煙が出ているだけなのだが、一旦ショーが始まったら、普通の平たいステージだけでなく、船や工場のセットなどが次から次へと現れる。奥行きもあるから、一度に前後や上下に複数のステージが現れて、それらをメンバーが行き来することもあった。「普通の平たいステージ」と書いたけどこれがまた凄くて、縦横に回転したり斜めに傾いたりするだけでなく、果ては垂直に立ってしまう。その上(?)をワイヤーで吊られたメンバーがまた素晴らしい動きでショーを続ける。あれ、高さはきっと20メートルぐらいあったよな。奥行きもきっとそれぐらいあったから、一辺が20メートルの立方体の中全てがステージ、と言っていいと思う。その中をメンバーが、まるで水の中か宇宙空間にいるかのように自由自在に(超人的な動きで)動き回るのが圧巻だった。

そういう大掛かりな部分だけでなく、影絵を用いたり、海の小動物(カニやヒトデなど)に扮したメンバーが登場するところなど、思わずにこっとしてしまうような楽しい演出もある。そういえば、ショーが始まる前にも「カメラ撮影・携帯電話・タバコ禁止」のお知らせがあるのだが、それも普通のアナウンスでなくちょっと面白い演出になっている。

ストーリーはわりと単純な勧善懲悪の物語。普通の台詞は一切なく、何か話しているのを表現するにも、まったく何語かわからないような言葉をあえてつかっている。ちなみに結構重要な役で出ていた女性は高橋典子さんという日本人らしいが、彼女が喋っていた言葉も「ニセ日本語」みたいな感じだった。

普段紹介している音楽と違って、こういうのって映画と同じで途中でどうなるか・何が出てくるかをあんまりばらしてしまうのはルール違反になるだろうから、説明はもうこれぐらいにしておくよ。今回は出張前に予約していたこともあって、前から5列目のど真ん中という最高の席だった。ワイヤーで吊られたメンバーが客席の方まで飛び出してくるのだが、それを僕はもうほとんど真上に見ていた。残念なのは、前夜いろいろあって2時間しか寝ていなかったので、静かなシーンではつい目をつぶってしまうことがあったぐらいか。ってそれは僕のせいなんだけど。

聞くところによると、この舞台装置を他で作るのは不可能なので、このショーをこの規模のまま見られるのは、世界中でこのMGMグランドだけだそうだ。決して安いチケットじゃないし(個人的にはあれだけのショーで$150は破格だと思うけど)、カジノやトップレスショーに興味のない人はラスヴェガスに行って他に何をするのかという問題もあるけど(CD屋さえ無いし!)、でも僕は時間とお金に少し余裕ができたら、これを観るためだけにもう一回この場所に来てもいいと思った。で、帰りにLAのアミーバに寄っていくことにしよう。
posted by . at 06:33| Comment(11) | TrackBack(0) | 非音楽的 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする