2006年09月16日

The Clash 「London Calling 25th Anniversary Edition」

僕の無人島レコを3〜4枚挙げた前回の記事で、当の「All Mod Cons」には誰もコメントしてくれなかったのに、併記した別のアルバムにLoonyLunaさんとかえでさんが反応してくれた。なんか日本でのジャムとクラッシュとスプリングスティーンの人気の差をうまく表しているようなエピソード。せっかくだから、それらのアルバムについても何か書いてみよう。無人島レコ有力候補三部作、第二弾はクラッシュの「London Calling 25th Anniversary Edition」。

London Calling.jpgユニヴァーサル・レーベルの「デラックス・エディション」に対抗し、ソニー・レーベルが「レガシー・エディション」というシリーズを出している。内容は前回説明したデラックス・エディションとあまり変わらないけど、まだ出ている枚数が少ない分、玉石混交のデラックス・エディションとは違い、本当に名盤と呼べるようなアルバムばかりがピックアップされている。このアルバムは、原題を見てわかるように、本来は1979年に発表された「London Calling」の25周年記念。日本でのみ「レガシー・エディション」という名で売り出されている。かなり分厚い紙ケースをパタパタと開けると、ディスクが3枚入っている。1枚目はオリジナルLPのリマスター盤。2枚目は今回の目玉、「London Calling」の録音に入る前のリハーサルをカセットで録音してあった通称「The Vanilla Tapes」。3枚目がDVD。

「The Vanilla Tapes」は、よほどのファンでないとちょっとお薦めできないような音質と内容。殆どがアルバム収録曲の初期バージョン。まだ最終タイトルになっていないものもある。歌は入っていたり入ってなかったり。未発表曲が5曲入ってるけど、ものすごく良い訳でもない(だからアルバムからは落とされたんだけど)。

元々発表するつもりのなかったリハーサルの録音だからしょうがないんだけどね。強いて言えば、誰かのホーム・ムービーを延々見せられてる感じ?それも音だけを。でも、僕にとってこれは「中学生のときに親しくしていた近所の兄ちゃんたちが映ってるホーム・ムービー」みたいなもの。しかも一番よく面倒見てくれた兄ちゃんは4年前に亡くなってしまったから、その人の声が聞こえるだけでもちょっと感傷的になってしまう。

「The Guns Of Brixton」の原型である「Paul's Tune」でのポール・シムノンのおっかなびっくりのベース。この人、クラッシュに入るまでろくにベースを弾いたことなかったし、この唯一の持ち歌「The Guns〜」をステージで歌うときも、歌いながらだとベースラインをキープできないから、ジョー・ストラマーのギターと交換してもらってたぐらい(それでも歌は下手)だったから、最終テイクでないこのバージョンがこれだけよれよれでも不思議はない。当時の仲間で言えば、例えばブロックヘッズのノーマン・ワット=ロイあたりにこの曲でベースを弾かせていれば、これはもっとグルーヴの効いた格好いい曲になってたかもしれないのに(そしたら今度はライヴでこの曲を演奏できなくなってしまうけど)。

どのリハーサル・テイクを聴いても、やっぱり一番テクニックがあるのはドラマーのトッパー・ヒードン。かつてジョーが彼を評して「このバンドにおける発電所みたいな奴」なんて言っていたのを思い出させる、タイトで小気味いいドラム。それだけに、この人が一番先にヘロイン中毒で脱落してしまったことが悔やまれる。

「The Vanilla Tapes」の最後から2曲目に入っている、最終テイクとは違う(ちょっとダサい)歌メロの「London Calling」のリハーサル・テイクを聴いたすぐ後に1枚目(リマスター盤オリジナル・アルバム)の1曲目(同じ曲)を聴いてみると、本当にいいプロデュースというのはこういうことだというのがよくわかる。

その、本当にいい(?)プロデューサーのことがよくわかるのが、3枚目のDVD。これは、@ドン・レッツ監督(偶然、前回のジャムのDVDもこの人が監督)の、メンバーのインタビューを中心にしたアルバムのメイキングビデオ、Aスタジオでの録音風景を撮った白黒ビデオ、Bプロモーション・ビデオの3部に分かれている。

@にはいろいろと興味深いエピソードが出てくる(彼らのことをしらない人が聴いても興味深いかどうかは不明)。僕はジャム・セッションでギターを弾くトッパーを初めて見た。ちなみにジョーはピアノ。ドラムを叩いている人は誰だかよくわからない。他には、予想はついていたとはいえ、ミック・ジョーンズ本人の口から出た「殆どの曲はジョーが詞を書き、俺が曲を書いた」という事実(それにしても、これだけ素晴らしい曲を書ける音痴を僕は他に知らない)。

しかし、意外とこのDVDの目玉なのはA。今回あえてこんなに画像の荒れたビデオを収録した目的が、これを観てよくわかった。スタジオでの録音中、メンバーが演奏してる横でハシゴを振り回したり椅子を床に叩きつけたりするプロデューサー(ガイ・スティーヴンス)。メンバー苦笑い。ピアノを練習するジョーの手の上に、鍵盤の端から端までワインを注いだとか(ピアノの修理費6千ポンド!)、とにかくメチャクチャな人。それでも、@ではメンバー皆が「今回のプロデューサーとはやり易かった」なんてコメントしてるところを見ると、前回のサンディー・パールマンってどんな奴だったんだって思ってしまう。

でも、その基地外プロデューサーが仕上げた作品が1枚目の「London Calling」。多くの人がクラッシュの最高傑作に挙げ(僕もそれに一票)、ローリング・ストーン誌が「80年代最高のアルバム」に選んだアルバム(それに対するジョーのコメント:「あれは79年に出たんだよ」)。全19曲、捨て曲なし。オリジナルのLPは二枚組。でも当時メンバーはそれを誰でもが買えるようにと一枚の値段で売り出した(そういうところが格好いいんだよね)。

格好いいと言えば、DVDのBにあたる3曲のプロモーション・ビデオ。最初は言わずと知れた「London Calling」。夜の埠頭、雨が降りしきる中を黒ずくめのメンバーが白い息を吐きながら演奏するこのビデオは、僕は世の中に存在する全ての音楽プロモ・ビデオの中で一番格好いいと思う。さすがに25年前の画像は今の基準からするとかなり貧弱だけど(こういうDVDに収録する機会にきちんとリストアしてほしかったんだけど)。

残る「Train In Vain」と「Clampdown」はライヴ風景。前者でキーボードを弾いてるのはブロックヘッズのミッキー・ギャラガーかな。後者を観て、僕は25年前の大阪公演を思い出した(あの時はこの曲の前にすこし変わったイントロがついてたと思うんだけど)。さっきも書いたように、ライヴでの演奏はどちらかというと下手なグループだったけど、こんなに粋なバンド、他にいなかった。とにかくステージで映える。こんなライヴ録画が残ってるんぐらいなら、この時のコンサート全部録画してるんだろうに。それはいつになったら出してくれるんだろう。もう一人メンバーが誰か死ぬまで温存しておくつもりか?

やれやれ、長くなってしまった。でもこれだけ僕を感傷的にさせるアルバムのことを短くまとめて書くなんて最初っから無理な話。ここまで読んでいただいた方、どうもありがとうございました。次回は無人島レコ三部作の第三弾、ブルース・スプリングスティーン。にんじんさん、お待たせしました(笑)。
posted by . at 21:27| Comment(6) | TrackBack(1) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする