2006年09月03日

yascd 002 PowerPop 古今東西

ありがたいことに、何名かの方から「まだ更新しないの?」というお言葉を頂いた。でも僕、基本的にはこれまでも週に1〜2回しか更新してないから、そんなにブランクはなかったはずなんだけど、みんなよっぽどあの半ケツ野郎をトップページから落として欲しかったのかなあ(笑)。


パワーポップという音楽ジャンルがある。まあ、ジャンルといっても例えばプログレとかヘビメタとかそういうメジャーな区分でもなくて、何というか、明るく?せつなく?メロディアスで?ちょこっとハードで?青春時代を思い出す(笑)?? まあそういう、ちょっとどこに分類していいかよくわからないような類の音楽。こんないい加減な説明しても知らない人にはわからないし、知ってる人にとっては「何言ってんだ馬鹿」ってことになるだけなんだけど。

僕が雑多なジャンルの音楽を聴くことは前に書いたけど、突き詰めていくとこのパワーポップと呼ばれる音楽が僕は一番好きなのかもしれない。でもね、そう断言する前に…

しばらく前の僕のコメント欄や、よく行く幾つかのブログで、音楽をジャンル分けすることの是非についてちょっと話題になったんだけど、その件への一つの回答として(なんて偉そうなこと書くつもりもないんだけど)今回の記事を書こうと思った。

一般的には、90年代前半〜中盤あたりにデビューしたアメリカやイギリスの一部のバンドをひっくるめてパワーポップと呼ぶことが多いんだけど、でも結局のところ、その人たちが演っていた音楽って、そんな取ってつけたような新しいジャンル名で呼ばれるようなものじゃなかったはず。そんなバンドはずっと存在してたし、今でもどんどん生まれてきている。

そこで、あのバンドもこのグループもパワーポップじゃないか、なんて紹介する代わりに、僕が定義するパワーポップを集めた架空のミックスCDを作ってみよう。yascd 第二弾、名付けて「PowerPop 古今東西」。

第一章

1. ジン・ブラッサムズ 「Follow You Down」

Outside Looking In.jpg

のっけからなんだけど、普通このバンドはパワーポップ系とは分類されないね。でも彼らはどう呼ばれていたんだっけ。オルタナ・カントリー?違うな。こういう、どこに分類していいか困ってしまうようなバンドは、いくら本国で人気があっても日本ではブレイクしないね。それがジャンル分けの功罪。

僕に言わせれば、このバンドやジェイホークスなんかは、70年代にリトル・フィートや(初期)イーグルスや(初期)ドゥービー・ブラザースなんかが担っていた役割を90年代に引き継いでいた、とても重要な人たちだった。地味だけど誠実。アメリカ音楽の良心と呼びたい。でもこのバンドは21世紀になる前に消滅してしまったし、ジェイホークスは一体どうしてるんだろう。

これは96年の最終作「Congratulations I'm Sorry」から。


2. ポウジーズ 「Solar Sister」

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ここからは誰にも文句を言わせない怒涛のパワーポップバンド連発。まずはポウジーズ。これは93年の名作「Frosting On The Beater」からの、事実上のタイトルトラック。

3月に彼らのライヴを観た。実はこのバンドはメインの二人以外は頻繁にメンバーが替わっており、一旦解散もしている。先のツアーは再結成後初のアルバムのプロモーション。ジョン・オウアはまるでジャック・ブラックのような風貌に変わり果てていたけど、狭いステージで演奏しながら狂ったようにジャンプしまくるケン・ストリングフェロウや、ギターの弦をブチブチ切りながら弾くジョンを見てると、本当に格好いいと思った。ポウジーズ健在! そのライヴで、本編最後(アンコール前)に演ったのがこれ。


3. ウィーザー 「No One Else」

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続いてはウィーザー94年のデビューアルバムから。恥ずかしながら僕はこのバンドとは遅れて出会ってしまったんだけど、一昨年にデラックス・エディションとして再発されたこのファーストを聴いて、数ヶ月で残りのアルバムも全部揃えたほど気に入ってしまった。ちゃんと10年前に聴いておきたかったな。


4. コットン・メイザー 「Payday」

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実際の発音が「メイザー」なのか「マザー」なのかわからないんだけど、17-18世紀のイギリスの宗教政治家から取った名前だというのは、今回この廃盤ファーストアルバムのジャケ写を探してたときに知った。この冒頭の一連のバンドの中では一番マイナーかな。

95年のこのアルバム(日本盤のタイトルはバンド名そのまま。米盤は「Cotton Is King」)、僕は大好きなんだけど、日本では江戸屋レコードなんてマイナーなレーベルから出たために誰にも知られることもなく廃盤。その後忘れた頃にぽろぽろとCDを出し続けている。最後に出たのはいつかな?01年か。おーい、もう忘れた頃なんで、また出してくれよー。


5. ベルベット・クラッシュ 「Atmosphere」

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これもまた「パワーポップといえば」の代名詞的バンド。94年の「Teenage Symphonies To God」(ブライアン・ウイルソンへのオマージュ的タイトル)から。このアルバムジャケットは当時結構あちこちで露出してたような気がする。そして、このジャケのイラスト通りの音。

さっきのウィーザーもそうだけど、このバンドもいまだ現役でがんばってる。いつの時代のどのアルバムを聴いても同じような音なんだけど、もうずっとこのままでやり続けてほしいね。


6. ベン・フォールズ・ファイヴ 「Uncle Walter」

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これはこの中ではちょと異色か。ピアノ、ベース、ドラムのギターレス・トリオ(トリオなのにファイヴなのがまた異色)。とにかくこのベン・フォールズの弾くピアノとファズのかかりまくったベースが格好いい! この95年のファーストにはこういうぶっ飛んだ曲がぎっしり詰まってて、ジャケのセンスは悪いけど、本当に名盤だと思う。

残念ながらこのユニットは解散して、ベン・フォールズはソロで同じような音を出しながら続けてる。最近来日して、かの悪名高きウドーフェスにも出演したはず。


第二章

ここからちょっと趣向を変えて、「じゃあパワーポップって結局94年とか95年に始まったの?」という質問(誰の?)に対する僕の回答。

7. ビートルズ 「And Your Bird Can Sing」

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30年遡ってるから確かに音は薄いけど、これは今までの6曲と全く同じ方向にベクトルが向かってる。誰もビートルズのことをパワーポップバンドだなんて呼ばないけど(そういう意味ではビートルズって究極のジャンルレス・バンドだね)、こうして並べて聴いてみて、僕は全然違和感ないと思う。

みんな知ってるとは思うけど、66年の「Revolver」から。


8. バッドフィンガー 「No Matter What」

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逆にこのグループなどは、よく元祖パワーポップなどと呼ばれる。どれだけの90年代の所謂パワーポップバンドがこの曲をカバーしたことだろう。最初から最後まで「ビートルズの弟分」みたいな言われ方をして、悲劇ばかりが付きまとったグループだけど、もう少しきちんと再評価されないものか。

70年の「No Dice」より。このレコード、裏ジャケは予想通りこのお姉ちゃんの下半身なんだけど、それを真似した日本のキャッシュというバンドの「Bedfinger」というCDは、裏ジャケがより一層エッチ。


9. ラズベリーズ 「Ecstasy」

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再評価といえば、こういう人たちもいました。抜群に格好いいと思うんだけどなあ。エリック・カルメンがソロになってからえらく軟弱な方向に行ってしまったのが敗因なのか。ラズベリーズといえば「Go All The Way」といきたいところだけど、僕はこっちのちょっとハードにエッジの効いたギターの音が好きなので。73年の「Side 3」から。


第三章

さてお次は、70年代後半から80年台前半にかけて、英米でパンク〜ニュー・ウェーヴが流行し出した頃。時代の流れで、この前の3曲などに比べるとより速くタイトな音になってきているのが特徴か。

10. チープ・トリック 「Dream Police」

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このグループはパンク〜ニュー・ウェーヴとは関係ないね。もっと前から地道にやってて、それなりにヒット曲も飛ばしてきていた。ジョージの旦那お気に入りの「Clock Strikes Ten」を入れようかと思ったんだけど、ここは僕が最初に聴いた彼らの曲を。79年の「Dream Police」からタイトル曲。


11. ナック 「Can I Borrow A Kiss」

Zoom.jpg Re-Zoom.jpg

世間的には「My Sharona」だけの一発屋だと思われてるし、一時期はこの名前を出すだけでギャグになっていたほどのグループ。でもね、僕は彼らのファーストアルバムの中では必ずしもあの曲が一番優れてるとは思わないし、どんどん人気が落ちていった時期のアルバムも、実に優れたパワーポップソング集だったと思う。

世間に忘れ去られながらも地道に活動を続けており、これは98年に出た「Zoom」からの曲。このアルバムは02年にタイトルとジャケを変え、ボーナストラックを入れて「Re-Zoom」として再発されている。いや、それだけのことをする価値のある名盤だと思うけどね。僕?当然両方持ってるよ。

夏のある日、浜辺で出会った「ラブソングから抜け出てきたような」素敵な女の子に言われる台詞がタイトル

  ねえ、キスをひとつ貸してくれない? ちゃんと返すから

いやー、そんなシチュエーションないですかねえ。ないよねえ…


12. ジョー・ジャクソン 「One More Time」

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80年代中盤以降はお洒落なアルバムを連発することになる彼の、これは79年のデビューアルバム「Look Sharp!」の1曲目。とんがってたねえ、この頃は。このジャケのセンスも最高。確かこの曲は、僕が初めて行った彼のコンサートのオープニング曲だったと思う。彼のコンサートにはこれまで3回行ったけど、毎回素晴らしい出来だったよ。ジャズに行ったりクラシックに行ったり、音楽的な幅の広い人だけど、ことコンサートになるとどんな音楽を演ってようと、基本はこれ。盛り上がるよ。


13. エニー・トラブル 「Second Choice」

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今や英国フォーク界の重鎮となってしまったクライヴ・グレッグソンが(まだ頭髪があった頃に)かつて率いていたグループ。この80年のスティッフ・レーベルからのファースト「Where Are All The Nice Girls?」は、同時期のレーベルメイト(エルビス・コステロとか)のどのアルバムに比べても遜色ないものだったのに、いつの間にかいなくなってしまってた。いつもクライヴのルックスのせいにされるんだけど、別にコステロのルックスだって五十歩百歩だと思うんだけど。


14. スクイーズ 「Vicky Verky」

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もう説明はしなくていいね。しばらく前に2話に亘ってくどくどと書いたグループ。僕の中では彼らはここに名前を挙げた他のグループと同じ方面にいるよ。これは80年の最高傑作アルバム「Argybargy」から。特にシングルカットされた曲でもないけど、ここの雰囲気にはこれがぴったりかな、と。


第四章

ここまでのグループは、殆どがアメリカ産、何組かがイギリス産。世界中で人気のあるロック/ポップバンドはその両国から出てきていることが多いんだけど、このミックスCDのタイトルを「古今東西」としたからには、英米以外の国々のバンドにも光を当てねば。

15. スプリット・エンズ 「History Never Repeats」

History Never Repeats.jpg

まずは地元から。ニュージーランドの誇り、スプリット・エンズ。ずっと前の記事(7月9日)に書いたフィン兄弟が在籍していたことで有名。今やしっとりとした大人のポップを唄う彼らも、若い頃はこんなやんちゃなことしてました。

これは本来は81年のアルバム「Corroboree」からなんだけど、僕はそのアルバムを持ってないので、ここは02年に出たベストアルバム「History Never Repeats」から。


16. アトミック・スイング 「Stone Me Into The Groove」

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お次はスウェーデンから。このアルバムを最初に聴いたときは、とんでもないバンドが現れたと思ったものだ。93年のデビューアルバム「A Car Crash In The Blue」。もうアルバム全編この調子。歌謡曲っぽい下世話なメロディーに油っこいギターの音。実に味のある声。この後2枚のアルバムを出して消えてしまったのが実に残念。と思ってたら、なんと今年に入って再結成。もうニューアルバムが出たみたい。このファーストの勢いが戻ってきていますように。

あ、青グリンさん、このバンドのボーカルの二クラス君、カーディガンズのボーカルの女の子となんか一緒にレコード作ったりしてたみたいですよ。実はこいつがカレシだったんですね。


17. スピッツ 「ヒバリのこころ」

スピッツ

こうして聴くと全然違和感ないよね。僕がおそらく一番すきな日本のバンド。日本産パワーポップの最高峰として聴いているよ。これは初期のインディー盤にも入ってる曲だけど、一般的には91年のファーストアルバムの最終曲。ああ、スピッツのコンサート行きたいよう。


第五章

さていよいよ最終章。ここでは、パンクもグランジも全部通り過ぎた後、今世紀になってからパワーポップがどう進化したのかを見てみよう(授業かよ)。

18. ジョン・ブライオン 「Meaningless」

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プロデューサーとして有名な彼だけど、自分でもこんなに優れたアルバムを出している。00年の「Meaningless」からタイトル曲。こんな曲が入ったアルバムを、「シングルヒットを狙える曲がないから」という理由でどこのメジャーレーベルも出してくれなかったそうな。ばかですね。

ちなみにこのアルバムの最終曲は、チープ・トリックの「Voices」の、胸が切なくなるような7分半にも亘るバージョン。入手しにくいアルバムだけれど、一聴の価値あり。


19. パニック!アット・ザ・ディスコ 「The Only Difference Between Martyrdom And Suicide Is Press Coverage」

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このミックスCDの中では一番の新参者。今年出たばかりのファーストアルバム「A Fever You Can't Sweat Out」から。

グリーン・デイを筆頭に、フォール・アウト・ボーイとかこのバンドなんかはポップ・パンクなんてわけのわからない呼ばれ方をしているけれど、僕から見るとこの人たちはみんなこの上にあるバンドが出していた音がグランジを経過しただけ。ちょっと速く、ちょっとハード。なので、この手の音に目のない僕としては、こうして変な名前の新人バンドもチェックしていかないといけないのです。

バンド名も変なら、この曲タイトルも。どうもフォール・アウト・ボーイ一派はこういう長ったらしいタイトルを付ける傾向があるね(このバンドはフォール・アウト・ボーイのレーベルからデビュー)。


20. ドッグス・ダイ・イン・ホット・カーズ 「Please Describe Yourself」

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変なバンド名というなら、こいつらも負けてないよ。どう反応しろと? これは04年発表の彼らのデビュー作「Please Describe Yourself」から。

この辺りのバンドについてはまた別記事で取り上げようと思ってるんだけど、僕が一番親しんできた80年代ニュー・ウェーブの焼き直し。焼き直しなんて書くとなんかネガティブな印象だけど、僕はもうこういう音を聴くとたまらなく嬉しくなってくる。この歌い方!アンディ・パートリッジそっくり! 

こういうバンドは(特にイギリス系は)ぱっと出てあっという間に消えてしまうので、旬を逃さないのが大切。こないだ東京でこのアルバムを4枚も中古屋で見つけたのにはちょっとあきれたけど。なんでこんないいアルバムを売るかねえ。おかげで、僕はもうこのアルバムのUK盤を持ってるのに、ボーナストラックの入った日本盤も買ってしまったよ。その4枚のうち1枚ね。


21. マシュー・スイート 「Thunderstorm」

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この手の音楽を知ってる人なら、ここまで読んでなんでこの人が入ってないのか不思議に思っていたかも。最後に取っておきました。パワーポップ界のオタク大王。一般的には92年の「Girlfriend」が最高傑作でその後はどんどんテンション落ちていくみたいなことを書かれることが多いけど、僕は全然そうは思わない。確かに「Girlfriend」の荒削りな魅力も捨てがたいけど、その後どんどん曲が洗練されてくるし、凝った作りにも挑戦してる。

で、これは99年のアルバム「In Reverse」の最終曲。もともと4曲だったものを組曲風にくっつけてる。9分半もあるんだけど、これがなかなか聴かせるんだよね。


というわけで、いつもに増して長い記事になってしまった。本当は曲を選んでた段階でゆうにCD3枚分ぐらいになる曲数が出てきてしまったので、そこから絞るのが大変だったんだけど、さっき実際にこの曲順でCD-Rに焼いてみたら、結構はまった(自分の好きな曲ばかり集めてるんだから当たり前なんだけど)。

いやー、僕本当にこの手の音楽が好きなんだと改めて思ったよ。もし無人島に流れ着くことがあって、そのときたまたま手に持ってたレコードがこの中のどれであっても僕は後悔しないね。まあ、無人島でレコードをどうやって聴くかという問題は残ってるんだけど。
posted by . at 00:34| Comment(26) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする