2006年07月21日

Jose Gonzalez live in Auckland

昨晩はホセ・ゴンザレスのライヴだった。

Jose in town

スウェーデン人のフォーク系シンガー・ソングライター(SSW)。名前から察せられるように、彼の両親はアルゼンチン人。去年リリースしたデビューアルバム「Veneer」が世界各地で話題になった。日本ではどうなんだろう。一応日本盤は出ているようだけど。地味な存在なんだろうな、きっと。

ここNZでは彼の人気は高いようで、そのブレイクのきっかけとなったのが、去年ソニーのブラビアのテレビCMに使われた「Heartbeats」という曲。僕もそのCMで彼の存在を知った。それで、次の日にはアマゾンにオーダーするほどに気に入ってしまった(当時まだNZ盤は出ていなかった)。左のリンク先の「The Commercial」をクリックすれば見られます。元々2分40秒の曲なので、エクステンデッド・バージョンだとほとんど一曲全部聴けてしまう。そのエクステンデッド・バージョンに出てくるカエルと犬がかわいい。このCMはヨーロッパでも流れたはずなので、ヨーロッパにお住まいの方なら見られたことがあるかもしれませんね。

少しこの手の音楽を聴いている人なら、アルバムを一聴してまず連想するのがニック・ドレイクだろう(僕も最初は彼の未発表曲かと)。

僕はずっと宇宙や星の話が好きなんだけど、彼の音楽を聴くと小さい頃に教わった恒星の色の話を思い浮かべてしまう。夜空に見える冷たそうな青白い星は、赤く燃えているように見える星の何倍もの温度になるって。子供心にそれが不思議でね。

彼の音楽を形容すると、そんな感じ。とても静かなんだけど、触れると火傷しそうなほど熱いっていうか。

Veneer.jpg Jose Gonzalez 「Veneer」

アルバムは基本的には本人のアコースティックギター(とパーカッション)の弾き語りのみ。最後の曲にちょっとトランペットが入ってるか。このジャケットを見てもらえば、フォーク系SSWっていっても、例えばジェームス・テイラーとかの暖かい感じとは違うっていうのがわかってもらえるかな。なんかこう、荒涼とした雰囲気っていうのかな。このアルバムは自己プロデュースだけど、故マーティン・ハネットがプロデュースしたらどんな風になっただろう、なんて想像してしまう。そんな音。

歌われてる歌詞も、俳句っぽいというか、侘び寂びの世界に近いものがある。たとえば、

「Remain」
  僕らは生き残る
  みんな雨で洗い流されてしまったあとも
  僕らは今みたいにまっすぐに立っている

「Lovestain」
  きみは僕の心に愛の傷をつけていった
  きみは地面に血の跡を残していった
  血は洗い流せるけれど

これ歌詞の抜粋じゃないですよ。これでそれぞれ一曲ずつ。まあ、多分英語が母国語じゃないってことで、あんまり難しい詞は書けないんだろうけど。

Australian Tour EP.jpg Jose Gonzalez 「Australian Tour EP」

さっきジャケット画の話をしたけど、僕が買ったもう一枚CDのジャケットはこれ。これには惹かれる人もいるのでは?森林浴ルームランナー(笑)これは最初の3枚のシングル盤の中から、「Veneer」には収められていない曲を網羅したお徳盤。プラス「Heartbeats」の“ロケットボーイ”リミックスなんてのも入ってて笑える。

このCDの1曲目がジョイ・ディヴィジョンの「Love Will Tear Us Apart」のカバー。これも結構この人の音楽性を物語っているかも。もちろん音楽的にはジョイ・ディヴィジョンとは正反対と言っていいほど違うんだけど、この音楽には何か情念のようなものを感じる。もしイアン・カーティスがバーナードのギターだけをバックに録音を残していたとしたらこんな風に聴こえたんじゃないだろうかと思えてしまう。

ただ、5曲目ではカイリー・ミノーグのカバーなんて演ってるんで、僕がさっきから情念云々書いてるのがどこまで本人の自覚と合致してるのかちょっと不安にはなるんですけどね。


そろそろライヴの話を書こう。会場はセイント・ジェームス・シアター。オークランドでは中規模のコンサート会場。多分キャパは1000人ぐらいかな。日本で言うとどこかな(ずっと日本でコンサート行ってないから最近のハコはよくわからん)。ずっと昔に行った川崎クラブチッタ、に2階・3階席を付けたって感じかな。ヨーロッパ風のクラシックな内装。

St. James.JPG

7時半開場、8時半開演と書いてあったけど、前にオークランドで行った別のコンサートでは、開演予定時間から一時間以上も経って始まった経験があるんで、余裕を見たつもりで8時過ぎに到着(ええ、それまでレコード屋で時間を潰してましたとも)。意外にも既に結構な人の入り。そこは一人で行った利点、ムリムリと人の間を掻き分けて一番前まで進出。ステージ前に置いてあるスピーカー前に陣取ることに成功。もたれられるから楽ちん。ただ、一人で行った欠点、一旦トイレに立ってしまうと元の場所に戻って来れなくなるので、待ち時間ビール飲みたいけどぐっと我慢。絶対開始時間とか遅れてこれから下手したら3時間とかこのままじっとしてないといけないからね。

予想に反して、予定時間わずか5分遅れで前座が登場。NZのSSW、クリス・ノックス(Chris Knox)。ぱっと見、スティングをちょっとおっさんぽくした感じ(そりゃ褒めすぎ?まあスティングみたいなおっさんをどうやってあれ以上おっさんぽくするのかという問題点はありますけど)。チェロのレイチェル(苗字失念)がサポート。クリス曰く、この組み合わせでステージに立つのは初めてとのこと。その割りにはしっくりきてたけどね。

NZではベテランのクリス、客を煽るわ笑わせるわ、結構楽しいステージでした。ギターの弦を切って(6弦だけが切れたのなんて初めて見た)それを張り替えてる間もずっとしゃべりっぱなし。楽しかった。音楽的にはちょっと僕の好みじゃなかったんで、CD買うほどではないけれど。CDといえば、ステージでの彼の談:「今度出した新譜は“Chris Knox And The Nothing”て名義なんだけど、そのグループ俺だけなんだ(笑)で、そのCD、真っ白のデジパックジャケットの真ん中にオフホワイトでタイトルが書いてあるんだけど、誰も買わねえ(笑)」

さて、自分で予告したとおりクリスのステージは(弦交換も含めて)きっちり45分で終了。15分ほどの間をおいて、いよいよホセがステージに現れた。オープニングは「Veneer」のLPだと多分B面1曲目にあたる「Deadweight On Velveteen」。ギターが巧い!ガムテープでピックアップを取り付けただけのなんの変哲もないクラシックギターに、この音は多分スチール弦を張ってるんだろうな。ラテン系の名に恥じない、フラメンコっぽいリズム感。ものすごくパーカッシヴなプレイ。スピーカーにもたれかかって聴いてるせいもあって、低音弦の音が体にビンビン響く。格好いい!

Jose1.JPG Jose2.JPG

3曲目のインストゥルメンタル「Suggestions」からほとんどメドレーのように始まった「Heartbeats」。え、もう演るの?って感じ。でもこの繋ぎが絶妙。始まった途端にぞくっときたよ。一番有名な曲を早や4曲目に披露してこの後大丈夫かなとも思ったけど(実際、僕の近くに立っていた奴はこの曲が終わったら帰っちゃいました)でもその後も全然飽きさせない。さっきのクリスとは違って、曲間には恥ずかしそうにボソボソ話すだけなのに。

冒頭にニック・ドレイクを連想って書いたけど、こうして実際に目にすると、エリオット・スミスのライヴってきっとこんな感じだったんじゃないかな、とも思う。繊細だけど力強い音。

アルバムでは大半の曲でボーカルがダブルトラックになっていたので、ライヴではどうするのかなと思っていたら、6曲目からは2人のサポートメンバーが登場。パーカッションとコーラス担当の男性(名前が聞き取れなかった)と、僕には名前がわからないなんだかささやかな音を出す楽器とコーラス担当の女性。

3人.JPG

この女性、なんか日本人っぽい顔してるなって思ってたら、メンバー紹介で「ユキミ・ナガノ」って。僕知らなかったんだけど、帰って調べてみたら、北欧・クラブ・ラウンジ・ジャズ(なんかそれらしい単語並べてるだけですが。僕その辺あんまり詳しくないんで)の世界ではちょっと有名な人みたい。

このあたりでどこからともなくマリファナの匂いが…

ホセの10曲目の紹介:「これは新曲なんだけど、まだタイトルがないんだ。でもいい曲だよ」てのがなんだか可愛かった。後で手に入れたセットリストを見ると「NY」となってたので、もしかしたらユキミさんの曲かも。

本編最後の2曲は他人のカバー。まずは先述のカイリー・ミノーグ「Hand On Your Heart」、続いてマッシヴ・アタックの「Teardrop」で幕。あ〜あ、「Love Will Tear Us Apart」演ってほしかったな。それにしてもこの時点で始まってまだ40分ぐらい。ちょっと、前座より短いってのはあんまりじゃない?

で、まあ予定調和的にすぐアンコールに応えて2曲を弾き語り。最後にまた二人を呼び戻して(これはセットリストには載ってなかったけど)スウェーデンの民話を基にしたという「Sensing Owls」で終了。「また来年」だって。うーん、物足りない。

でも、短かったけど、ライヴの内容自体には大満足。本当にいいライヴだった。帰りの車の中から今に至るまで、ずっと彼の2枚のCDをリピートして聴いてしまってるほど、どっぷりはまってます。


さっき歌詞が俳句っぽいなんて書いたけど、コーラスをユキミさんにやらせていることから考えても、もしかしたら彼は日本びいき、というか日本文化が好きなのかも、と思ってしまう。そんなところに彼のサイトで見つけたこの「Hand On Your Heart」のビデオ、最高です。浮世絵アニメ(笑)YouTubeでも見られますが、残念ながらYouTubeからのビデオの貼り付け方がわかりません。“Jose Gonzalez”で検索して、この曲名を探してみてください。(追記:カブ子さんがコメント欄にリンクを貼り付けてくれました。興味のある方はそちらをご覧ください。カブ子さん、ありがとうございました)

もうひとつ、「Stay In The Shade」のビデオは彼のアルバムジャケットのイラストを描き続けているElias Araya(多分スウェーデン人なので正確な読み方を知りません)の絵が動くこのビデオも好きです。他にも「Crosses」のビデオを観たけど、この人のセンス、好きだなあ。

あ、よく見ると、セットリストの紙に彼の名前のロゴ(?)がついてるけど、それも同じ人のデザインっぽい。見えるかな?

setlist.pdf


よく、ライヴで聴くとレコードの音と違ってがっかりすることもあるけど、今回はまったくその逆。あのひっそりした、でも熱を持ったレコードの音がそのまま再現されててすごいと思った。

正直言って、僕はここまで気に入ってるけど、これを万人にお薦めできるのかどうかわからない。さっきリンクを載せたCMやプロモーション・ビデオを観てくれた人ならもう音は聴いたから自分で判断できるだろうけど。こんな音がオークランドの1000人級の会場(実際には3階は使ってなかったので1000人は入ってないと思うけど)を埋めるほどのファンに受けるとは思えない。CM効果なのかなあ。

でもこの人は大化けすると思う。出たばかりのゼロ7の新譜にもゲスト参加してるらしいし、もっともっと露出が増えてくるだろう。でも、ふと気になったのが、さっき僕がこの人を形容するときに出した3人の名前。ニック・ドレイク、イアン・カーティス、エリオット・スミス。自ら命を絶った人ばかり。ライヴ中、曲間は終始嬉しそうにニコニコしてた彼を見るかぎりは、この人はそんな道を選ぶことはないと思うんだけど。

いいコンサートに行くと本当に生活が充実した気分になるよ。さあ、来週はアークティック・モンキーズ!今度はスピーカーにもたれてなんて聴いてられないぞ。

セットリスト

1. Deadweight On Velveteen
2. Storm
3. Suggestions
4. Heartbeats
5. All You Deliver
6. Stay In The Shade
7. Slow Moves
8. Remain
9. Lovestain
10. 新曲 (NY?)
11. Hand On Your Heart
12. Teardrop

Encore
1. Crosses
2. Hints
3. Sensing Owls
posted by . at 21:51| Comment(12) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする