2006年07月09日

NZ音楽界の宝石   The Finn Brothers 「Everyone Is Here」

前回のCD評(PSB)をアップした後改めて自分で読んでみると、とにかく長い。論文じゃないんだからよっぽど興味なければこんなの誰も読まないよ、って文章でしたね。律儀にあんなの全部読んでくださった方には、厚く御礼申し上げます。まあでもあれは最近お気に入りのCDの感想を自分のために備忘録として書くことが目的だったからまあいいか。でもこのブログの最初の記事に付けていただいたコメントの中に、おすすめの音楽があれば教えて、と言っていただいた方がおられたことも考えて、これからはおすすめCDの紹介記事のときはせめてあの半分ぐらいの長さを目安にしますね(もうこの前置きからしてすでに長すぎですけど)。また、このブログを立ち上げようと考えていたときに、僕がいま海外に住んでいることから、海外についての話を期待していただいた方もいらっしゃいます。そこで、今回はその二つのご期待に少しずつ応えることにします。2004年発表のアルバムなので少し古いですが、ニュージーランドのアーティストです。

Everyone Is Here.jpg  フィン・ブラザーズ 「Everyone Is Here」

その昔、ニュージーランドにスプリット・エンズというグループがいました。NZ国内はもちろん、世界各国でアルバムを発売し、そのひねったポップなサウンドで一部の音楽ファンを惹きつけました。そのひねり具合は、Split Enz(枝毛)なんて変なグループ名からも少しは伺えるでしょうか。

やがてスプリット・エンズは解散し、中心メンバーであったティム・フィンとニール・フィンの兄弟は、クラウデッド・ハウスというグループを結成、これがスプリット・エンズ以上に全世界でヒットを飛ばすほどになります(細かいことを言うと二人が参加した経緯は少しこれとは違うのですが、それを書き出すとまた論文になってしまうので割愛します)。20年ほど前に洋楽を聴いていた方なら、日本でも流行った「Don’t Dream It’s Over」という曲をご存知かもしれませんね。

そしてクラウデッド・ハウスも解散。ティムとニールはそれぞれソロアーティストとしてアルバムを数枚ずつ発表。以前より地味な活動になりましたが、NZ国内では大御所アーティストとして確固たる地位を築いてきました。洋楽を聴かない方に説明するために、日本で言うと誰かなぁとずっと考えていたのですが、思い当たらないですね。強いて言えば、もし桑田圭佑が「稲村ジェーン」の後で映画にのめりこんでしまってサザンを解散してしまっていたとして、15年後に原由子と二人でアルバムを作った、という感じですかね。ちょっと違うか。まあお互い自国内ではそれぐらい大御所ってことで。

先の二つのグループが欧米で数々のヒットを飛ばしていたことから、その当時まだ若い音楽ファンだったであろう色んなアーティストが彼らのことをリスペクトしており、例えばCD・DVDにもなっているニールの数年前のコンサートツアーでは、パール・ジャムのエディー・ベダー、元ザ・スミスのジョニー・マー、レディオヘッドからの二人、などという、とんでもない豪華メンバーがバックを務めています。

また、当然それだけヒットした彼らの曲には誰が歌っても名曲という普遍性があり、これもまた色々なアーティストにカバーされています。nekoさんがブログに書いておられた、ジェームス・ブラントが日本のコンサートで演奏した“新曲”のうちの一曲は、おそらく彼らの「Fall At Your Feet」という曲ではないかと思われます(日本公演の少し前に録音された彼のライヴアルバムでその曲を演ってます)。nekoちゃん、読んでる?ほら、ちょっと興味でてきたでしょ?(^^)

その彼らが本当に久々に二人でスタジオに入り、2004年に完成させたのが、上に写真を載せたこのアルバムです。内容をひとことで言うと、“大人による大人のためのポップ”。息を呑む珠玉のメロディーが、素晴らしく芳醇なハーモニーに乗せて歌われています。2004年というのは僕がNZに来た年でもあるんですが、ちょうど今頃の時期(南半球では真冬)に街のあちこちでこのアルバムからの最初のシングルカット曲「Won’t Give In」が流れていました。いきなり赤道直下から真冬のNZに移り住んで、長年の熱帯暮らしで開ききった全身の毛穴にしみこむ寒さに死にそうな思いをしていた僕は、この曲の心温まるハーモニーとカフェで飲むロングブラック(エスプレッソをお湯で割ったNZのコーヒー)にずいぶん暖めてもらったものです。

もう前回のようにつべこべと曲ごとの解説はしませんが、とにかくアルバム冒頭の二曲「Won’t Give In」「Nothing Wrong With You」をまず聴いてみてもらいたい。もし2004年にブライアン・ウィルソンが「Smile」を完成させてさえいなければ、その年の僕のアルバム・オブ・ザ・イヤーになっていたはずのCDです。大人の方なら大抵の方に気に入ってもらえると思います(年齢的には大人でも、もしあなたの鼻と唇にピアスの穴が開いていたり、あなたのワードローブにドクロの絵が描いてあるシャツが二枚以上あるようでしたら、あとで他のCDをお薦めしますので、もうこの先は読まなくていいです)。じっくり聴いても素晴らしいし、押し付けがましくない音なのでBGMにも最適だと思いますよ。この人たちが今日本でどういう扱いなのかがよくわからないですが、恐らく町のCD屋さんですぐ見つかるような盤でもないと思いますので、上の写真にアフィ貼ってみますね(初挑戦!…でもどうやれば写真をクリックして別ウインドウに飛ばせるのかがわからなかった)。

彼らのことを知るにつけ、僕は誰かにこの二人のことを紹介するときには、“NZの宝石”と呼ぶようになりました。NZの音楽界というのは想像以上に層が厚いんですが、先にも書いたとおり、この二人は別格です。この次また二人でアルバムを作ってくれるのか、それともソロに戻るのか、まだわかりませんが、恐らく彼らの生涯最高傑作と思われるこのアルバムを凌ぐものを作ってくれるでしょうか。願わくは、僕がNZにいる間にまたニューアルバムを発売して、コンサートツアーをやってほしいものです。そのときは、皆さん、観光がてらNZに観にきませんか?
posted by . at 11:46| Comment(18) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする